自作ドブソ詳解コーナー




 32cm F4.5 ドブソ 

 25cm F5 ドブソ 

 317mm F6ドブソの変遷 















  ドブソとは正しくは「ドブソニアン式望遠鏡」という、アメリカのドブソンさんという方が考案した簡便な手動式経緯台式望遠鏡のことです。
  そのシンプルな形態は、自作が簡単で、しかも大口径望遠鏡を持ち運べるということでまたたくまに世界中に広まりました。
  でも、最初の頃は「軽量」とか「大口径」とかが強調されるあまり、「強度」や「構造」、「精度」と言った重要な点が無視され「粗製濫造」を絵に描いたようなものがたくさん作られました。
  以来30年、今では「自作」の必要がないほど安価で高精度のものがメーカーから供給され、スタイル的に「ほぼ完成した」と思えるほど洗練された姿になっています。

  私も、20代の頃、当時度肝を抜かれるほど巨大な30cmの鏡を、それこそ清水の舞台から飛び降りるような決意で手に入れ作製したのを皮切りに、作り変えを含め10台以上製作してきました。(その割に進歩がない!)

  ここでは、現在使用しているものを紹介しながら、愛しのドブソについてその薀蓄などを述べてみたいと思います。






32cm F4.5 ドブソ


  この望遠鏡は1997年の春から製作に取りかかり秋に一応の完成を見ました(表紙の写真)。しかし、購入していた主鏡の精度が使用できないほど悪く、以来鏡が入れられないまま倉庫の肥やしにされるという憂き目に遭ってきました。
  2002年暮、某社の「年末キャンペーン」に同じ会社(米国)製と思われる鏡が、なんとか買えそうな値段に値下げされて出ていたので思い切って購入、まる5年来の「開眼」となりました。


  上の写真左が32cm、右は弟分の25cmドブソの収納状態です。

  どちらも鏡筒を分割して、持ち運びに便利なようにしていますが、そのやり方が少し違います。
  25cmが分離式なのに対して、32cmは抜き差し式になっていて、右の写真のように引き抜いた(引き上げた)前筒をガラス窓のカギなどに使う留めネジで固定するようにしています。




  材料はほとんどがベニヤ板で、それをボンドで張り合わせて組上げています。しかも鏡筒に使用しているのはベニヤの中ではいちばん薄い2.5mmのものです。ただし、主鏡セルは精度が保持できませんから厚手のものにしてあり、この部分だけ取り外してふたをして「主鏡保護ケース」になるようにしてあります。もちろん主鏡はシン・ミラーと呼ばれるごく薄いガラス板から作られていますのでセルは「9点支持」、ずれ止めはベルトでつるす形式を取っています。

  斜鏡とそれを吊るしているいわゆる「斜鏡金具」もベニヤ板。
  こちらは鏡筒の補強もかねて鏡筒より厚い板を使っています。斜鏡を収めるセルは厚い紙筒を使っています。








  架台部分は特に変わったものではありませんが、ごらんのような「遊び」をしてあります。当時10歳だったいちばん下の娘に大好きな「トトロ」の絵を描いてもらい、それをジグソ−でくりぬきました。

  塗装の色やこうした遊びから、いいかげんに作ったように見えるかもしれませんが、塗装は乾いたあと手でさすってザラザラ感がなくなるまでヤスリがけと塗りを10回近く繰り返し、水洗いにも絶えるほどにしてありますし、星像も結構イケていると思います。









25cm F5 ドブソ





  25cmのほうは、何度も述べていますが、30cmの代替の為急遽作ったものです。が、けしてそれだけの目的ではなく、「より軽くて持ち運び便利なもの」ということをとことん追求しました。
  実は、本当に不思議に思うのですが、25cmと30cmでは、口径がわずか5cmしか違わないのに、大きさも重さもびっくりするくらい違うのです。我が32cmも御多分に漏れずなかなかの大きさで、加齢も手伝って「気軽」と言うにはもうひとまわり軽く、小さな物が欲しくなったわけです。


  構造は32cmとほぼ同じですが、上の写真のような部品で構成され、移動時は32cmのところの写真のような姿にまとめることが出来ます。(興味深げに見学している猫様は、この後鏡筒内部にも入り、構造などを入念にチェック!?して帰られました・・・。左の写真は三脚部の収納状況)

  組み立て方は、三脚部を裏返して地面に置き、フォーク部を載せます。鏡筒部は主鏡側の筒に斜鏡側の筒を先端部からひっくり返した形で差し込んでありますので、これを引き抜いてひっくり返しボルトでつなぎます。上の写真のいちばん右の円筒はファインダーや接眼鏡などの部品入れで、収納した状態での主鏡や斜鏡を守るふたの役目をします。(容量が大きいので、部品のほか星図や双眼鏡まで入ってしまいますが、重くなるので移動時は分けて運んでいます)

  この望遠鏡、「愛機」コーナーでも書きましたが、コンセプトが『スバルの全体像を山のてっぺんで見るための25p』。
  軽くすることで、多少の距離なら人力で運び上げることができ、スバルの全体像を余裕で見るために必要な「2度」の視野を、見かけ視界65度の接眼鏡で有効最低倍率で得る最大の口径が25cmと言うわけです。(現在32mm82度という接眼鏡がありますから、これなら口径30cm近くまで可能ですが・・・)







317mm F6ドブソの変遷





  このコーナーの冒頭で「清水の舞台から飛び降りたつもりで購入した」と書いた、ミードの32cmF6 の鏡を使って私が初めて作製したドブソニアン式望遠鏡です。最初に掲げた写真は最新の姿。
  私が所属する『つくば星の会』の中心メンバーの一人である宮崎さんの愛機として、メシエマラソンに、 彗星観測にと大活躍しています。10年以上の使用で痛みもひどく百戦錬磨の貫禄充分!本当に器械 としても、作ったものとしてもありがたい限りでした。(このページ最後の写真)
  そこで、感謝の意味を込めて2003年夏「無料リニューアル」をさせてもらいました。(2003.8完成)
  鏡筒をイレクターで骨組みを組み、いちばん薄いベニヤで風船張り(それほど立派ではありませんが) して、「密閉式」とし多少明るい場所でも使えるようにしています。主鏡セル部を切り離し接眼等や 斜鏡部分と共にフォーク部に収めて車内に。鏡筒部は軽いので屋根のキャリヤーに載せてはこびます。

  でも、この《かたち》になるまでには何回もの改造を繰り返してきました。ここではその『歴史』を かいつまんでご紹介いたします。


  これが鏡を購入後最初に作製した「かたち」です。ドブソニアン式が日本に紹介されたとき、多くの人がこのような姿を頭に描いたことでしょう。「反射望遠鏡としての必要最低限まで肉抜きをした」姿です。
  この望遠鏡も接眼部と斜鏡部が一体化され、運搬時はこれがミラーボックスをかねた主鏡部分の箱の中にすっぽり収まるようになっており、その状態ではほぼサイコロ型の立方体になります。
  しかし、使ってみればすぐにわかりますが、まず斜鏡や接眼部を支える細いステーはへなへなで、鏡筒を振るたびふらふらとして導入が大変です。そこで苦肉の策で取りつけたのが写真に見える細い棒。これで筒を振れば接眼部がゆれなくてすむというわけです。
  当時作られたドブソニアン式望遠鏡を見ると、他の人のもおおよそこのようなもので、ドブソニアン式というものが、最初「兎に角軽量に作ればそのほかは二の次」といった理解がされていたことがわかります。
  次は、『イレクター』というものを発見してすぐにこれを利用して改造したものです。
必要な部分以外固定せず、運搬時は箱部分と鉄パイプという姿になります。スジカイ状に補強を取りつけ、特に左右のぶれを防いでいます。
  しかし、相変わらず斜鏡部分は丸裸同然で、空が少しでも明るいとたちまちコントラストが落ちてしまいましたが、最初の頃、それは鏡が悪いからだと信じて疑いませんでした。


  しかしその後、鏡筒を振ったときのぶれを解消するには鏡筒を丈夫にする、つまり「組立てない」固定した形式にするのがもっとも確実な方法だと気がつきました。また、コントラストをあげるには、なるべく完璧に対象方向以外から来る光をカットすることも大切なことだと解りました。
  また、斜鏡は職場のゴミ捨て場でいくらでも手に入る厚い紙筒を使い非常に軽く作ったセルをM10のズンギリボルト使った一本足式とし、移動時は保護ケースに入れます。この方法だと斜鏡位置の再現が非常に簡単で、いちど光軸を合わせれば、移動先での光軸調整はあっという間に済むようになります。

  このような何度かの改造(学習)の結果、F6という無理のない口径比も手伝って、惑星の解像力でも、暗い彗星の視認性能でもほぼ不満のない“見え味”を実現できました。



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