|
|
【正直のはず？】
真実を見極めることは難しいことです。証拠という事実によって証明できる論理が発達する前は，ほとんどお手上げ状態だったことでしょう。そこで拠り所にしたのが，自然の事象になぞらえるということです。自然の背景にあるはずの神の手に委ねるという信心でもあります。
うけい（うけひ）は、古代日本で行われた占いである。宇気比、誓約、祈、誓などと書く。ある事柄について、そうならばこうなる、そうでないならばこうなるとあらかじめ宣言し、そのどちらが起こるかによって吉凶、正邪、成否などを判断する。日本神話では、重要な場面で誓約が行われている。葦原中国平定において、アメノワカヒコに与えた矢が高天原に飛んで来たのを見て、これが蘆原中国を平定するために射られた矢かどうかを判断するために誓約が行われている。高木神は、もしそうならアメノワカヒコに当たるな、そうでないならアメノワカヒコに当たれと宣言して矢を下界に落とした。矢はアメノワカヒコの胸に当たり、アメノワカヒコは死んでしまった。天孫降臨の後、ニニギはコノハナノサクヤビメと結婚したが、コノハナノサクヤビメが一夜で身篭ったことを怪しんだ。そこでコノハナノサクヤビメは子を産むときに産屋に火を放ち、ニニギの子でなければ無事には産まれない、ニニギの子ならば無事に産まれると宣言して、無事に子を産んだ。
盟神探湯（くかたち、くかだち、くがたち）は、古代日本で行われていた神明裁判のこと。ある人の是非・正邪を判断するための呪術的な裁判法（神判）である。探湯・誓湯とも書く。対象となる者に、神に潔白などを誓わせた後、釜で沸かした熱湯の中に手を入れさせ、正しい者は火傷せず、罪のある者は大火傷を負うとされる。毒蛇を入れた壷に手を入れさせ、正しい者は無事である、という様式もある。あらかじめ結果を神に示した上で行為を行い、その結果によって判断するということで、うけいの一種である。類似の方法は日本に限らず、ヨーロッパなどの神明裁判でも行われた。
神判としての盟神探湯の歴史が終わると、この言葉は神前に拝する時に身を清めるために沸かす湯の意味となった。釜で沸かした熱湯を笹の葉などで参拝者にかける湯立、湯起請などの神事は、この意味の盟神探湯に由来するものである。中国の史書である『隋書』東夷伝倭国の条にも、倭国の風俗の一つとして盟神探湯のことが記載されている。古代から倭国の風俗として、朝鮮半島や中国大陸の間で認知されていたことが分かる。
神明裁判（しんめいさいばん）とは、何らかの手段を用いて神意を得ることにより、物事の真偽、正邪を判断する裁判方法である。古代、中世(一部の地域では近世まで）において世界の各地で類似の行為が行われているが、その正確な性質は各々の神、宗教によって異なる。
《以上：ウィキペディアより》
神明裁判は，正直者が神の加護を受けて必ず勝つという信念に基づいたものです。その一つの方法として，夏の暑い日，争っている二人に濡れた着物を着せて，早く乾いた者を正しいと決めるというやり方がありました。ところが，悪い者ほど知恵が働き，途中で誤魔化すなど，結局は正直者が敗訴になることが多く，そこから「濡れ衣を着る」という表現が生まれたそうです。つまり，無実の罪を背負うことになります。
神の手に変わるものとして，事実・真実を積み上げていく論理によって真偽・正邪が判定されるようになりました。ところが，その基本である真実にも曖昧さが紛れ込む場合があります。嘘であっても真実と言い張る者がいますし，正直な者でも思い違いや理解力不足とか，意識されていない願望によって真実でないものを真実と思い込むことがあります。さらには，同じ事実を逆の意味づけにする論理が可能な場合もあります。事実の認定という作業は，人の世では難しいことのようです。
ゴルフコンペには，勝者の表彰の他に，ブービー賞というビリから２番目の人の表彰があります。元々はスペイン語のボボに由来しカツオドリのことで，大航海時代に不用意に帆にとまり，船員に捕まるので，アホ，マヌケという意味を持つようになりました。英語になるとブービーとなって，競技の最下位の人を指すようになりました。ゴルフでも，最下位の人のことでした。ところが，ブービーに表彰があると，狙うのは簡単です。わざと悪いスコアを出すという人も出てきました。そこで，狙っても取りにくいビリから２番目の人に変えられたのです。
人は弱いものです。正直であるべきとは分かっていても，その思いに目を瞑ってしまい，欲に目を眩ませることがあります。その弱さを咎めることよりも，その弱さが現れないようなシステムをつくることが大切です。そのような社会を作る知恵が人にはあると，神は期待しているのかもしれません。
（2010年05月06日）
|
|
|
