*****《ある町の退任人権擁護委員のメモ》*****

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【生きる羅針盤の提案(36):ストレス5減】


 人権宣言等から導き出した「人権羅針盤」は,人権という言葉が目指すものに言い換えると人が穏やかに生きるための羅針盤と考えなければなりません。だからこそ,先に示した子どもの育ちを考える羅針盤としても有効になることができたのです。ここでは,「生きる羅針盤」としての様子を描き出しておくことにします。ふと立ち止まって,「生きるとは?」という疑問に出会った際に,その思考のお手伝いができたら幸いです。

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 「私が生きる羅針盤」を考える第36版です。人間関係におけるストレスは終わりがなく,「もう少し気楽に付き合えたらいいのに」と思いつつ,つい深く考え込んでしまうことは多くの人が経験していることではないでしょうか。その人間関係のストレスを軽減し,もっと心地よく生きるための5つの方法が紹介されていましたので,生きる羅針盤に参照してみました。少しでもストレスを減らすことができるような手がかりになるかもしれません。

生きる羅針盤の提案(ストレス5減)です
【1.自分の感情を正しく認識する】
《説明》人間関係のストレスを減らすための第一歩は,自分の感情を正確に認識することです。心理学の研究では,自分の感情を理解してコントロールする力が,人との関係を円滑にするために重要なスキルだとされています。感情に気づいて認識することでストレスの原因が明確になり,対処法が見えてきます。例えば,「今、私は不安を感じている」「だから,今はやめておこう」「だから,少し時間をかけて考えよう」など,感情を冷静に受け入れるだけでも,心の負担が軽くなることがあるのです。

※ストレスを減らすためにできることは,もう一人の自分が自分のありのままの感情を素直に見極めることです。現状の自分に向き合うことで,判断が自分の寄り添ったものになります。一つ一つの判断を進めていく中で,新たな局面が見えてくるようになります。してみないと分からないことがありますが,自分の感情に逆らっていなければ,ストレスは軽減されています。自分に正直な判断をする,それが自分を自由に導くことになります。

【2.共感力を意識する】
《説明》人間関係のストレスの多くは,相手との誤解や期待のズレから生まれます。スタンフォード大学の研究では,相手の立場に立って物事を考える「共感力」が高い人ほど,対人関係のストレスが少ないことが示されています。例えば,友人や同僚がイライラしているときに,「何がこの人をそうさせるのか」「自分が同じような言い方しかできないときは,どのような状況なのだろう」と考えてみましょう。そうすることで感情的に巻き込まれるのを防ぎ,自分自身の心の平穏を保つことができます。

※ストレスを減らすためにできることは,相手と同じでなければならないと自分を追い込むことをしないことです。人にはそれぞれの背景や事情があり,違った感情を選んでいきます。共感力とは,自分と相手の感情が同じであることではなく,相手の事情に応じた感情を理解できることです。互いの感情のすれ違いは,それぞれの事情が背景になることを認めると,ストレスにはならないはずです。お互いの違いを認知すれば,ストレスを招かないことにつながるのです。

【3.コミュニケーションの質を向上させる】
《説明》人間関係がストレスに発展する背景には,コミュニケーションのすれ違いが大きく関わっています。UCLAの研究では,質の高いコミュニケーションは,信頼関係の構築とストレスの軽減において重要な役割を果たすことが分かっています。まずは,「相手の話を〇分は聞こう」と傾聴の姿勢を示し,自分の気持ちを適切に伝える方法を3パターンほど用意しておくことが,日常の些細な摩擦を解消するカギです。近しい人にほど感情的になってしまいやすく,言葉足らずで相手に察してもらいたいと思ってしまうもの。しかし,誰に対しても丁寧に伝えることを心がけることで,適切な言葉の選び方や伝え方を身につけることができます。

※ストレスを減らすためにできることは,自分の表現を振り返り,相手からの応答を落ち着いて聞き取ることです。コミュニケーションは双方向で成り立つものであり,伝えたことが伝わったかを核にすることが必須になります。伝えたつもり,その思い込みがすれ違いを生みます。特に近しい間柄にある人に対しては,分かってくれているはず,私も分かっているつもり,その期待があるためにストレスを生じやすくなります。特に感情的なやりとりでは,ストレスに直結してしまうので,落ち着いたやりとりをするこつを日頃から学んでおくことです。

【4.相手への期待をやめる】
《説明》頭では人それぞれ違うと分かっていても,つい期待をしてしまうものです。自分がこれだけやったのだから,「これくらいは手伝ってくれるだろう」「見たら分かるはず」などと,思ってしまいがちではないでしょうか。また,「普通はこうするべき」「これが正しい」といった自分の価値観を他人にも当てはめてしまうことがあります。このような期待こそがストレスを生み,期待通りの反応が返ってこないと,相手への否定的な感情が生じることも。言葉にして伝えなければ,相手には理解されません。"人はそれぞれ違う=期待通りでないのは当たり前"だという事実を認めるだけで,お互いのストレスを減らすことができます。

※ストレスを減らすためにできることは,社会的な人間関係においては,あるべきという価値観が共有されます。しかし,そのあるべきことの具体的な形は,時期や程度という面で,実際にはすれ違いがあります。お互いに確認をしながら遂行していけばいいのですが,つい自分流のペースを期待してしまいます。その期待と実際のズレが起こると,相手を責めるストレスになってしまいます。日頃からの情報交換を密にするなどの,連携の相互理解を深めておき,突発的な状況では相手の行動をよく観察して,必要な情報を伝えるようにします。社会的な物事では期待されることに参画したくなりますが,関わる者には焦りは禁物です。

【補足.希望が関係を紡ぐ】
《説明》自分の「期待」が「人間関係のストレス」になっているかもしれません。期待は自分に向けるものであり,他者に向けてしまうとすれ違いなので,ストレスとなって跳ね返ってきます。他者に向けた期待を封じていくことで,自分への期待がよみがえり,ストレスが自然に消えていくはずです。現状の停滞した部分に対して,それぞれが自分にできることを仕向けていきたい期待を持てば,共に希望を育てるようになります。ストレス回避をするだけではなく,希望を生み出していきたいものです。

※ストレスを減らすためにできることは,時間の経過に沿う状況の進展を想定することです。物事を為すときは,予め想定しておいた段取り通りに進捗することを期待します。しかし,してみなければ分からない状況が隠れていて,うまく運ばないことも起こりえます。その停滞を過度に意識してしまうとストレスになります。そのときはこれからなんとかなるという楽観を持ちながら,次の一手に注目していきます。先のことが分からないのは当然であり,そのときになんとかできることもあると,自分を頼りにしましょう。ストレスを感じている暇はないのです。

【5.適度な距離感を保つ】
《説明》いくら仲が良くても,過度に密接になりすぎると逆にストレスを増やすことがあります。適度な距離感を保つことは,心の健康にプラスの影響を与え,関係を長続きするための秘訣です。家族であっても,適度な距離があるほうが心地良いと感じるのは自然なことです。そのため,家族や友人,同僚との関係においても,ちょうどよい距離を保ち,自分の時間を確保しましょう。人間関係のストレスを減らすためには,自分を大切にしながら,他人との距離感を調整することが必要です。

※ストレスを減らすためにできることは,自分と相手では,向き合う状況に対する立ち位置が違うということを認めることです。考え方や感じ方,関心の深さなど,それぞれが違っていることにより,自分の同じでありたい思いが裏切られたと受け止めると,ストレスを感じることになります。適度な距離感を意識すると,違う存在という直感が働くようになります。空間的な関係が見えて,気持の間隔が感じられると,自分に戻ることができます。お互いにどのように関わればいいのかという次の一手に注力していけばいいのです。

○以上,ストレスを減らすためにできることを,「生きる羅針盤」に対応させてもらいました。これまでの対応事例と同じように,あまり違和感もなく整理をすることができているはずです。それぞれの想定している世界観における具体的な表現は違っていても,人が思い至る幸せに生きる境地は本質的に同じ構造になっているようです。それぞれを別個にしておかずに,まとめていく作業から,人の生き方について深い理解が得られるのではないかと期待しています。

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 社会に真剣に向き合って生きていくことは,人として誰もが願っていることです。ただ人には本能から派生する弱さもあります。その弱さを押し込めていく意思が必要になります。そしてその意思は目標を必要とします。それが羅針盤なのです。
 人としてすべきことから外れないようにすることは大事であり,それは誰にとってもできることであり,気持ちの良いものです。しあわせは誰かだけにあるのではなく,皆に同時にあるものです。権利を守る,言葉は堅く響きますが,人として生きていく自然な姿であればいいのです。

(2025年10月12日)