【生きる羅針盤の提案(32):幸福6感度】
人権宣言等から導き出した「人権羅針盤」は,人権という言葉が目指すものに言い換えると人が穏やかに生きるための羅針盤と考えなければなりません。だからこそ,先に示した子どもの育ちを考える羅針盤としても有効になることができたのです。ここでは,「生きる羅針盤」としての様子を描き出しておくことにします。ふと立ち止まって,「生きるとは?」という疑問に出会った際に,その思考のお手伝いができたら幸いです。
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「私が生きる羅針盤」を考える第32版です。今号では,小さな幸せを丁寧に味わい,幸福をより感じられるようになるために,幸福を感じやすい人の6つの特徴を解説している情報に接したので,生きる羅針盤に参照してみました。日常の同じ出来事に出会っても,それを幸せに感じることができるような手がかりになるかもしれません。
【1. 小さな幸せに敏感に気付ける】
《説明》幸福度の高い人は,日常の小さな出来事を幸せと感じやすい傾向にあります。例えば,
・信号がずっと青でスムーズに運転できた
・早起きして家事を済ませ、ゆっくりする時間を持てた
・偶然スーパーの特売に遭遇した
など,日常の些細な出来事にも「ラッキー」「うれしい」と気持ちを切り替え,心を豊かにするのです。このような小さな喜びを見つける力があると,幸福感が積み重なり,人生全体が明るく感じられるようになります。
※幸福に気付くために使える6感度の一つは,もう一人の自分が日常の暮らしの中で自分に関わる事象をプラスに意識する感度です。何気ない当たり前なことであっても,そこにタイミングの良さやちょっとした安らぎなどを見つけようとする観測眼を発揮すれば,幸せな気持ちが生まれてくるはずです。自分にとって良いこと,うれしいこと,楽しいことの具体的なイメージを描いておけば,感じやすくなるでしょう。逆に嫌なことをイメージしていると,不幸になります。どちらを選ぶか,決めておきましょう。
【3. 家族や身近な人との時間を優先する】
《説明》幸福度の高い人は,仕事や外部の人間関係よりも家族や身近な人との時間を優先しています。もちろん仕事も重要ですが,不必要な飲み会やイベントに参加せず,仕事後は家族と過ごす時間を大切にしています。家族や信頼できる人との時間を持つことは,精神的な安定につながり,結果的に仕事のパフォーマンスや日常生活の質の向上にもつながるのです。
※幸福に気付くために使える6感度の一つは,人とのつながりに濃淡を感じ取る機能を働かせることです。例えば,何らかの活動をするために一緒に過ごす人間関係から,何もしなくても一緒にいたいという関係まで,相手と自分との間にある信頼の深さが,幸福の指標に結びついています。仕事の付き合い時間が長くて,心の安まる人との時間がとれないという状況では,幸福感はしぼんでいきます。少しでもいいから,深いつながりを大切にした時間を確保することです。
【6. ポジティブ思考で感謝を忘れない】
《説明》ポジティブ思考であることは,幸福度を高めるために欠かせない要素です。実際に,感謝を日常的に表現する人ほど,精神的な安定性や幸福度が高いという研究結果があります。具体的には,
・晴れた日は「気持ちが良い」と喜び,曇った日は「歩きやすい」と前向きに捉える
・誰かに助けてもらったら「ありがとう」と積極的に伝える
といったことです。さらに最近の調査では,「感謝日記」をつけるだけでも幸福感や生活満足度が上昇することが分かっています。ポジティブな感情を意識的に持ち続けることは,生活全体の質を向上させます。
※幸福に気付くために使える6感度の一つは,自分に起こっていること,自分の思いを表現する際に,ポジティブな言葉を選ぼうとすることです。人は肯定的言葉を使うときは明るく前向きになり,否定的言葉を使うときは暗く後ろ向きになります。選ぶ言葉によって気分が支配されるようになります。状況をポジティブな言葉で表現できる感度が,幸福感を招き寄せます。状況の理解は選ぶ言葉によって変化することを知っていれば,幸福への歩みができることでしょう。
【2. 人から受けた行動を「当然のこと」と捉えない】
《説明》人間関係や家庭生活において,他人の協力は欠かせませんが,相手が自分のために何かをしてくれることを「当然だ」と思っていると,幸福度は下がってしまいます。幸福度が高い人は,誰かが自分のために行動してくれたことを「ありがとう」と自然に感謝できる習慣があります。「こんなにやってくれて嬉しい」という感謝の気持ちが積み重なることで,人間関係が良好になり,幸福感も増していきます。
※幸福に気付くために使える6感度の一つは,周りの人とのつながりに込められている温もりへの感度です。人は生きていくために共同生活をしています。そのことはあまりにも基本であるために普段は気がついていません。お互い様なのは当然なのです。しかしながら,そのお互いを気遣う気持は,お互いを大事にしようとするぬくもりを運んできます。人が生きていく上で,互いに気を配っている意識を感じ取れると,幸福を感じずにはいられないはずです。何が大事なのかを見失わない冷静さが大事なのです。どの程度お互いが分かり合えているのか,常に確認しておくことです。
【4. 自然と積極的に触れ合う習慣がある】
《説明》幸福度の高い人は,自然の中で過ごす時間を意識的に取り入れています。近年の研究によると,1日にわずか6分間自然に触れるだけでも,ストレスやネガティブな感情が軽減されることが明らかになっています。家庭菜園をしたり,公園で散歩をしたりするなど,自然と触れ合うことで心がリフレッシュされ,幸福感も増します。また,自然に触れる機会が多い人ほど精神的に安定しやすいという研究結果もあります。日々の生活で自然と関わることが少ない場合は,少し意識的に自然に触れる習慣を持つと良いでしょう。
※幸福に気付くために使える6感度の一つは,今ここに生きている自分の存在を感じることです。そのためには,生きている世界に触れて共感することです。それはすぐそばにあるはずの自然です。仰げば青空に雲が流れ,歩けば風が髪を揺らし,足下の花が咲こうとしています。自然はゆったりとしかし確実に動いています。そのことを感じ取ることができれば,自分が生きている状況も共感することができます。人が普段いる環境は人工の変わらない時間の止まった世界であり,そこでは生きていることは想定されていないので,息苦しくなります。外に出かけて,いのちを感じましょう。
【5. 自分のために適切なお金の使い方ができる】
《説明》幸福度が高い人は,適切な範囲で自分のためにお金を使っています。特別な機会だけでなく,日常的に自分の気持ちが豊かになるようなお金の使い方を意識しているのです。たとえば,
・自分が本当に好きな洋服を購入する
・新しい趣味や習い事を始める
・美容や健康維持のための投資をする
などです。ただし,頻繁にご褒美を買いすぎてしまうのではなく,月々の予算を決め,その中で自分の満足度を最大化するようなお金の使い方が重要です。金額よりも「使い道」や「満足感」を重視すると幸福度がより高まります。
※幸福に気付くために使える6感度の一つは,自分のためにしていることを具体的に見届ける感度です。その例の一つが,表記の自分のために消費したお金を見届けることです。そのほかに,健康や学習に関する活動でも,何をしたという実績が認定できるなら,お勧めです。衣食住以外で自分のために使うものやことは,生きていく自分への支援であり,生きるという自覚を得ることになります。自分への関わりは成長を元にした生きることへの意欲の表れになります。その意欲の実現を具体的に認知できることで,生きる喜びが溢れて幸福になっていくことができます。
○以上,幸福に気付くために使える6感度を,「生きる羅針盤」に対応させてもらいました。これまでの対応事例と同じように,あまり違和感もなく整理をすることができているはずです。それぞれの想定している世界観における具体的な表現は違っていても,人が思い至る幸せに生きる境地は本質的に同じ構造になっているようです。それぞれを別個にしておかずに,まとめていく作業から,人の生き方について深い理解が得られるのではないかと期待しています。
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社会に真剣に向き合って生きていくことは,人として誰もが願っていることです。ただ人には本能から派生する弱さもあります。その弱さを押し込めていく意思が必要になります。そしてその意思は目標を必要とします。それが羅針盤なのです。
人としてすべきことから外れないようにすることは大事であり,それは誰にとってもできることであり,気持ちの良いものです。しあわせは誰かだけにあるのではなく,皆に同時にあるものです。権利を守る,言葉は堅く響きますが,人として生きていく自然な姿であればいいのです。
(2025年09月14日)