【生きる羅針盤の提案(12):幸せ6習慣】
人権宣言等から導き出した「人権羅針盤」は,人権という言葉が目指すものに言い換えると人が穏やかに生きるための羅針盤と考えなければなりません。だからこそ,先に示した子どもの育ちを考える羅針盤としても有効になることができたのです。ここでは,「生きる羅針盤」としての様子を描き出しておくことにします。ふと立ち止まって,「生きるとは?」という疑問に出会った際に,その思考のお手伝いができたら幸いです。
******************************************************************
「私が生きる羅針盤」を考える第12版です。今号では,幸せな人が行っている習慣を10通り提示している記事を人権羅針盤に6つにまとめ直して配置してみます。
【心身の必要事を選定する】
《説明》《2.細かいことにとらわれない》 幸せな人は,「本当に重要なものであること」,「自分のコントロールができる範囲内のものであること」の条件を満たす物事に努力を費やします。自分の手に負えないものや役に立たないことを無視できることは幸せになる確実な道です。
《6.自分の身体をいたわる》 自分の体をいたわれば,精神的なエネルギーは向上します。十分に睡眠をとり,良い食べ物を食べてよく運動することは心に栄養を与えることなのです。
○幸せは,まず自らの存在の健全な状況の確保が必須です。身体が健康であること,精神が安定していること,そのことをコントロールできるには自分しかいません。もう一人の自分が自分を見失うことがないように判断し選択できることは自分を尊重する要件です。
【快適な環境を共用する】
《説明》《5.幸せな人たちに囲まれている》 幸せな人は,一緒にいる人が自分の感情や考え方や行動に大きく影響することを知っています。幸せな人の周りにいることで自分も幸せになり,反対に不幸せな人と一緒にいれば自分も不幸せになります。ネガティブな人や体質的に不幸せな人と完全に関わらないことは現実には難しいかもしれませんが,彼らの思考パターンを拒否することで,その悪影響を最小限に抑えることは可能です。
《10.人間関係を築く》 深い関係なしに幸せになることは不可能です。他者とのつながりは幸福感を増大させます。そのためには,他者を自分の人生の中に受け入れることであり,同時に他者に自分を受け入れてもらい,応援してもらうことです。
○幸せは自分一人だけがなれるものではありません。幸せは私たちという人の温かなつながりに備わっていきます。私たちというつながりには,お互いの存在を信頼できることが必須であり,幸せを共に求める意思の確認が十分な要件なのです。
【対処の情報を取得する】
《説明》《7.対処方法を備えている》 困難な状況下での良いマネジメントは自分の成長と幸せにつながります。起こりうる状況とその対処の情報を普段から取得して,予め必要な最小限の対処法を準備しておくことで,困難をポジティブに乗り越えることができます。困難な状況を予想してあらかじめ対処しておけば,問題が起きても手に負えない状態にならずに済みます。
○生きていく中では,幸せを妨げる不都合な状況に出会うことを避けられません。その困難な状況を検知し,判断し,対処できるために,人智という情報の取得が有効です。狼狽して混乱すると状況の悪化を招くことになるので,日頃から備えを怠らないことも,幸せになる有効な習慣なのです。
【良好な関係に参画する】
《説明》《8.自分が得るよりも多くのものを与える》 幸せな人は,なにかを受け取るよりも与えることを好みます。より多くを人に与えることで,自分はより多くを手にすることができるということを理解しているからです。謙虚さと人助けは相互に幸福感を生み出すので,幸せになるための最良の方法は,我をなくして人のために尽くすことです。
○幸せは人の間にあるものであり,そのことに気付いたから,人間という言葉が生まれたのだと思ってみましょう。人間らしい振る舞い,それはお互いを豊かにすることであり,決して自分が豊かになることではありません。相互扶助に喜びを見つけることができると,幸せへの道に踏み込んでいけるはずです。
【改善の目標を希求する】
《説明》《4.目標やビジョンを達成するためにがんばる》 幸せな人は大きな夢を見て,目標に設定して,実現のために努力します。
《9.居心地のの悪いところへ飛び込んでいく》 幸せな人は居心地の良い場所で留まることでは満足できません。良いタイミングを待つのではなくて,居心地の悪さを引き受けて自分で良い瞬間をつくり出すのです。なにかを達成したいならリスクを取ることは避けられません。
○生きている幸せは,生きようとするから訪れてきます。朝を迎え目を覚ましたとき,今日は何をするということが見えている,その自分を動かす意欲の維持が,時間という無情に失われていく価値を幸せに転換してくれます。もちろん,休息という無為の時も,日々の繰り返しに織り込むことは言うまでもありません。安らかな日々の休みも幸せの一部なのです。
【失敗の克服に集中する】
《説明》《3.辛いときでも諦めない》 幸せな人は,失敗をものごとの終わりとは考えずに,なにかをはじめる準備と考えるのです。彼らは辛い時期を乗り越える険しい道を行くほど美しい光景が待っていることを知っています。
《1.余裕がある》 幸せな人々は立ち止まった瞬間を楽しみ,違うことに注意を向けて自分の見える範囲内だけに留まりません。辛いときでも逃げずに,そこから美しいものやポジティブなものを見つけます。
○人が願う幸せは,人としての成長として獲得するものです。昨日の自分から今日の自分に育つことが認識できるためには,昨日の自分が失敗してできなかったことを,今日の自分はできるようになるということです。失敗してできない自分のままに見限っては,自分を見捨てることになります。成功するようになることができるという明日への可能性があるから,幸せの扉が開くのです。
○以上,幸せな人の10習慣をまとめていたネットで見つけた記事を,「生きる羅針盤」に対応させてもらいました。これまでの対応事例と同じで,一応の整理をつけることができていると思います。それぞれの想定している世界における具体的な表現は違っていても,人が思い至る生きる幸せな境地は本質的に同じ構造になっているようです。それぞれを別個にしておかずに,まとめていく作業から,人の生き方について深い理解が得られるのではないかと期待しています。
******************************************************************
社会に真剣に向き合って生きていくことは,人として誰もが願っていることです。ただ人には本能から派生する弱さもあります。その弱さを押し込めていく意思が必要になります。そしてその意思は目標を必要とします。それが羅針盤なのです。
人としてすべきことから外れないようにすることは大事であり,それは誰にとってもできることであり,気持ちの良いものです。しあわせは誰かだけにあるのではなく,皆に同時にあるものです。権利を守る,言葉は堅く響きますが,人として生きていく自然な姿であればいいのです。
(2025年04月20日)