〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 2000/10/30 〇〇〇〇            【子 育 て 羅 針 盤】 ★パパコラム★         『親心 素のまま出せば 子には邪魔』                              (第6号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  私の住む町には保育園が4つあります。そこの年長さん総員80名が和太鼓 の演奏をしています。毎年町民運動会での人気種目です。かわいいかけ声とき びきびした動作で叩く5種類の太鼓の音はトントントトトンと心地よくしみこ んできます。前後の挨拶も幼児特有の語尾を大きな声で言い終わる語り口で, その健気さが拍手を誘います。連れ合いはこれだけは涙が出るとお気に入りで す。  一糸乱れぬ演奏に,よくもここまで教え込むものと感心します。もちろん保 育園の先生方自身も太鼓を楽しみ,迫力ある演奏を別の機会にアトラクション として聴かせてくれます。一緒に楽しんでいるから長続きしているのでしょう。 子どもを育てるには同じようにしてみせるのが何よりです。  園児たちは本部席に向かって演奏します。そのとき本部席はビデオや写真の 撮影をする親たちや祖父母に占領されます。本部要員がちょっと外している最 前列の席に座りこむ人,座って鑑賞している来賓の前で立ち上がってしまう人 などさまざまです。それも一言の挨拶もなしです。皆さんは仕方ないと温かく 見守っていますが,親心を振りかざすのはみっともない仕儀です。  我が子の晴れ舞台を台無しにしています。公の活動を私的なレベルに引きず りおろしているからです。我が子が地域の人を喜ばせようとしているのに,親 が前に立ちはだかっては,折角の子どもの思いをないがしろにします。親は基 本的に子どもの後押しをする位置に着いていなければなりません。我が子を正 面から見るのではなく,我が子が向いている方を一緒に見てやることが親の視 線です。見守るのは子どもの背中です。そうしないと子どもの邪魔になります。  子どもは自分が他人の目からどう見えているかという視点を身につけなけれ ばなりません。自分を客観視することです。自分の行為が他者に対して及ぼす 影響を深く洞察する入り口であり,迷惑を掛けないような身の処し方につなが ります。これが最近の子どもに最も失われている点です。他者を意識すること で私的な思いにどれほど制動を掛けてみせるかが親としてのお手本ですが,親 心のバーゲンセールでは今後も思いやられます。  親心に対してきつい苦言のようですが,砂糖だけの甘いぜんざいではなくて, 塩味の隠された本物の甘さを求めてほしいからです。こくがあるのは何も料理 だけではなく,親心にもあるということです。 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 2000/10/30 〇〇〇〇            【子 育 て 羅 針 盤】 ★子育ち12章★         『姿見の 我が身ながめる 他人の目』                              《第6章》 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  ■はじめに  第5章では,「もう一人の子ども」が育っていると書きました。  分かりにくいようでしたら,精神とか心と読み替えてください。  子どもが悪さをしたとき,「この手が悪い」とつねったりしませんか?  本当は手に悪さをさせたもう一人の子どもが諭されるべきなのです。  ところで,皆さんは読書をなさいますか?  子どもには本を読ませたらいいと言われています。  本を読んでどんな効果があるんでしょうか?  学校では作文を書かせたり,日記の宿題があります。  どうしてあんな面倒でイヤなこと(?)をさせるんでしょうか?  その疑問にお答えしようとするのが,この章のテーマです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 【質問6:あなたのお子さんは,他者の目で自分を見ていますか?】  《「他者の目で見る」ということの意味について説明が必要ですね!》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○自分を見つめるのは?     作文や日記を書くときは,自分の思いや生活をもう一人の自分が思い    出そうと目覚めます。内省と言われる行為の基本です。     イジメを受けた子どもは,いじめられるような弱い自分,惨めな自分    をもう一人の自分が許せなくなります。自分なんか居なくなればいいと    見捨てるとき,命を絶たせます。もう一人の自分が自尊心の傷つくこと    に絶えられなくなるからです。イジメという負の体験がもう一人の子ど    もを目覚めさせ追いつめてしまうのは不幸です。     犯罪を犯した少年に更生のために作文を書かせるのも,もう一人の自    分を目覚めさせ反省させるという目的があるからです。     自制はもう一人の自分が自分を制することです。もう一人の自分が眠    ったままでは,責任能力が無く社会人になれないのです。  ・・・もう一人の子どもを目覚めさせるきっかけを豊かに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○トイレのしつけ     はじめは「オシッコ出た」と言ってきます。不快感があるので出たこ    とが分かり訴えます。言葉を使うのは「もう一人の自分」ですが,もう    一人の自分がまだ自分と常につながっていないので,タイミングを失し    て「出そう」とは言えないのです。出そうと言えるようになるためには,    もう一人の子どもがいつも目覚めて自分を見守っていることが必要です。  ・・・もう一人の子どもが育てば,自然に言えるようになります。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○読書の楽しみは?     推理小説を読むことがあります。もう一人の自分は本の世界に入り込    み,主人公の探偵に同化します。決して被害者にはなりません。被害者    ははじめに消えるからです。謎解きをしているもう一人の自分は疑似体    験をしていることになります。本を読むことで,もう一人の自分が目覚    めて,主人公という他人になって得難い体験をします。読書はもう一人    の自分を一回り大きく育てていると言うことができます。     子どもはヒーロー遊びが好きで,自分がなったつもりで飛び回ります。    もう一人の子どもが夢いっぱいの体験をしています。正義の味方として    振る舞うことで,正義の意味や気持ちを身に付けていきます。  ・・・もう一人の自分は他者の体験をすることで育っていきます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○みんなの中で!     モノをおねだりするとき,「みんなが持っている」と理由付けしてき    ます。もう一人の子どもが持っていない自分は他人と同じでないと判断    するからです。     この他人と同じでありたいという意識は大切な社会性の始まりです。    大切だと感じているから,親との交渉に口実として持ち出してきます。    言い寄られた親が「本当に必要なモノなら」と査定するのも,そこに社    会的必然性を見つけようとしているからです。「人並みに」という暮ら    しの知恵です。     子どもは知らないうちに悪さをしでかします。もう一人の子どもがま    だ社会的に未熟だからです。河原でビンを石垣に投げつけて割って遊ぶ    とき,後から河原に来る人に危険だと考える力が未発達です。自転車盗    も持ち主の迷惑を察することができない未熟さのせいです。雪下ろしの    苦労を思わずに,雪国に憧れるのも未経験からくる幻想です。     「みんな」という範囲が狭いのです。身内や仲間だけを「みんな」と    思っていて,「赤の他人」はみんなの中に入れていません。限定された    「みんな」に止まっているから,社会性が偏狭なものに固定化し,問題    行動に発展していきます。     もう一人の子どもが「みんな」の目を持っていますが,それを他人の    目にまで見開けるように育てなければなりません。昔の人が「かわいい    子には旅をさせよ」といったのは,他人の目を持つために多くの人との    関わりを体験させることだったのです。そこから生まれた「恥の意識    (文化)」はすでに消滅しています。新しい目を・・・  ・・・公共性は,見ず知らずの人もみんなの中に含めることです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○考えるもう一人の自分     夜道を歩いていると無灯火の自転車が音もなくすり寄ってきます。一    瞬びくっとさせられます。車での帰り道,目の前にいきなり自転車が現    れます。はっとさせられます。自転車に乗る人は勝手知った道なので,    灯火なしでもこわくはないのでしょう。     しかし,歩く人に対して身を隠して加害者になる可能性,ドライバー    に対して陰のようになって被害者になる可能性を考え及んでいません。    自分を見る他者の目を持っていないからです。     シートベルトを装着していないドライバーを見かけます。シートベル    トは自分のためにする安全策です。自分の命への気配りのない人は他人    の命など考えることはできないでしょう。とてもこわいと感じます。他    者の目を持つことは,自分を大事にすることにつながります。     思いやりは相手の立場になって考えることであり,もう一人の自分が    することです。自分を大切に思うのはもう一人の自分であり,他者の目    を持つもう一人の自分が他者も同じ人として大事に思うのです。人が人    間らしくなるには,もう一人の自分が育つことです。   ・・・豊かな心とは,もう一人の自分がいなければ現れません。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《他者の目で見るとは,もう一人の自分が社会化するという意味です》  ○子どもたちは,「何となく」,「皆がするから」という曖昧な形で社会化 しはじめますが,もう一人の自分が体験し考えるようになれば,さらに成長し ていきます。大人の社会的な目で見た意見を子どもに伝授し続けましょう。 【質問6:あなたのお子さんは,他者の目で自分を見ることがありますか?】    ●答は?・・・どちらかと言えば「イエス」ですね!? ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第6号はいかがでしたか。  第5,6章では育っているのは子どもではなく,もう一人の子どもであると 書きました。実はここの部分が「子育て羅針盤」の最大の難所ですので,ちょ っと分かりにくい点があったことと思います。ただこのように考えるといろん な課題が見えやすく整理できるのではないかと考えた次第です。何か気になる 点がありましたら,下記の発行者連絡メールを利用してください。 ◎第6号から購読されている方へ  第5号を発行(10月23日正午)後に購読登録をされた方は,恐れ入りま すが配信協力先,もしくは下記の発行者URLからバックナンバーをコピーし てくださるようにお願いいたします。 ☆予告☆  次号では  【質問7:あなたのお子さんは,力とは何かを知っていますか?】 について考えます。お楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●リビング北九州紙に4年間掲載されたコラム「パパな毎日」や,  子育てに関する考察テキスト,調査結果などをホームページ「徒然窓」      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/  に掲載しています。予習ができますので,のぞいてみてください。  ●また皆様の場として掲示板を設けました。ドウゾ積極的にご利用下さい。    http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/bearbbs/index.html  ●講演依頼を希望される方は,メールでお問い合わせ下さい。 ※お願い※  もし,この「子育て羅針盤」がお気に召したら,是非あなたのメル友にも登 録をお勧めして下さい。一人でもたくさんのママやパパに読んでいただいて, みんなで子育てを考えるきっかけにしていただければと願っております。子育 てを自分でチェックできる素敵なママやパパになってほしいとはじめたメール マガジンです。  皆様が育てていくマガジンであるように,応援をよろしく・・・。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [KOSODATERASINBAN] 〇発行責任:モリのクマさん ○発行期日:2000年9月25日より,毎週月曜日 ○連絡mail:mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp 〇URL=http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/MailMag/MMannai.html     (こちらからも,このメールマガジンの登録解除ができます) 〇転載許可:クマさんまでメールのご一報下さい。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 〇配信協力:  ・インターネットの本屋さん『まぐまぐ』=http://www.mag2.com/     解除:http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ・メルマ***『melma!』=http://www.melma.com/     解除:http://www.melma.com/mag/37/m00019737/     BBS:http://bbs.melma.com/cgi-bin/forum/m00019737/  ・読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』=http://www.pubzine.com/     解除:http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ・無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』=http://melten.com/     解除:http://melten.com/m/2166.html 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇