〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 2000/12/04 〇〇〇〇           【子 育 て 羅 針 盤】 ★パパコラム★         『考える 楽しみ知れば よい学び』                              (第11号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  大阪府の教育委員である女優の三林京子さんの講演を聴く機会がありました。 彼女の友人で大きな美容院経営をしている方の話として,「ものになるかどう かは見ていてすぐに分かる」とのことでした。昼食の取り方を見るそうです。 ラーメンでもいいのですが,自分でちょっと野菜を入れたりして手を加える娘 さんは将来必ず店が持てるようになり,コンビニ弁当などを飽きずに食べてい る娘さんはものにならないそうです。  食べるというごく日常的な行動にも,どうしたら美味しくなるか,栄養はと いった関心を持ち,やってみるということを面倒がらないのがいいのでしょう。 あれこれ考えることが人を育てていきますから,実力が備わっていきます。食 事と美容技術とは全く関係はありませんが,考える癖を持っていることが伸び るための出発点になります。  「こうしたらどうなるだろう?」と結果をイメージしながらやってみて,思 った通りになったとか,違ったとかを確認していきます。物事のプロセスを一 つ一つ見極めていくことによって,いろんなことが見えるようになります。同 時にバラエティが豊かになり,創造性への暗証番号も手に入れることができま す。また,たとえしくじったとしても別のやり方があるはずと思うことができ るので,めげることがなく,常に前向きになれます。  最近,若者や子どもたちの体験不足ということが言われています。どんな体 験なのでしょう。特別な体験ではなくて,ごく日常の生活体験です。そこで何 が育つのでしょう。考える癖です。何事でもやり遂げるためには,過不足無く 準備をし順序よく事を運ばなければなりません。そのために自分なりの設計図 をイメージして事に当たる姿勢が必要です。それは教えられてできるものでは なく,体験から学び取るものです。  子どもにとって家事の手伝いは無駄な時間と思っていると,大切な学びを奪 うことになります。任された仕事の中で何をどのように考えたか,それがいわ ゆる勉強する行為の基本になります。子どもに考える癖をつけるためには,暮 らしの中にいくらでも転がっている考える材料を提供すればいいのです。お風 呂の掃除ではどうすればきれいに掃除できるか,頼まれたお使いを忘れないた めにはどうしたらいいのか,鉢植えの草花はどれくらいの水をよろこぶか・・ ・,考えようとすればいくらでも考えられます。 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 2000/12/04 〇〇〇〇           【子 育 て 羅 針 盤】 ★子育ち12章★        『失敗が 子ども育ちの バロメータ』                              《第11章》 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  ■はじめに  第9,10章では,子どもは弱いから希望に向けて育てると書きました。  もう一人の子どもが自分を見捨てない要件は,育ちへの意欲です。  自分にも可能性があると期待することができたら,育とうとします。  でも,意欲だけでは実際の育ちはできないでしょう。  いくら気持ちがあっても,具体的に実行できなければ何にもなりません。  育ちのプロセスには基本的なメカニズムがあるはずです。  子どもは親の言うようには育たず,親のするように育つと言われます。  親に言われたら,もう一人の子どもはその気になるかもしれません。  でも,できるように育たなければならないのは,子どもなのです。  頭でいくら考えたことでも,手足を駆使して実行するのとでは違います。  思いやりの話を知れば,優しい気持ちは育ちます。  それだけでは,人に優しくしてあげることはできないでしょう。  子どもは未熟ですから,何をやらせても中途半端になります。  どう指導すればできるようになるのでしょうか?  子育ちを促す子育てとはどんなものか,それがこの章のテーマです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 【質問11:あなたのお子さんは,小さな失敗を経験していますか?】  《「小さな失敗」という意味について説明が必要ですね!》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○どうして若者は指示待ちに育ったのでしょうか?     小学校六年生の男児が冬休み最後の日に,宿題の書き初めをしていた    ときです。ついうっかりして墨をこぼしてしまいました。流れ落ちた真    っ黒な墨は床の絨毯に吸い込まれていきました。あわててティッシュで    拭き取ろうとしましたが,間に合いませんでした。男児は習字紙に「墨    をこぼしてしまいました。ごめんなさい」と書き残して,自宅の6階か    ら飛び降りてしまいました。書き初めの課題は「希望の光」という字で    した。     レンタルビデオを紛失して自殺した高校生,卒業論文の修正が期日に    間に合わないと自殺した大学生がいます。どれも死ぬほどの大層なこと    ではないと思われるでしょうが,当人にとっては死ぬほどのことであっ    たのです。そう思いこませるように育ててきたのです。絶対に失敗して    はいけないともう一人の子どもを追いつめてきたから,若者は自分の失    敗を極端に恐れ,回避しようと心を砕きます。     失敗は命がけですから失敗できません。そこで子どもは保身として失    敗しない方法を見つけだしました。それは自分からは何もしようとしな    い決意です。何もしなければ絶対に失敗はしません。これほどの安全策    はありません。     何もしないでは育てませんから,親は無理にさせようとして指示を出    します。言われたらします。そんな状態を大人は「言わないとしない」    と嘆き,指示待ちの若者を非難しますが,そのように育てたことの反省    がありません。ところで,なぜ言われたらするのでしょうか?     言われてした場合でも失敗は起こります。大人がその失敗をとがめよ    うとしたとき,「自分がしようとしてしでかした失敗ではない。言われ    るからしたのであって,失敗の責任はさせた方にある」という言い訳が    できます。自分の責任で失敗はしていないのです。だから言われればし    ます。  ・・・指示待ちの若者を育てることができたことは,育ての成果です?。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○失敗しないように育てて,いったい何処がいけなかったのでしょうか?     失敗しないようにしていると,子どもはいつも安全圏に閉じこめられ    ます。親としては安心ですが,親も子どももここまでは大丈夫という限    界が見えなくなります。親は子どもの能力の育ちが見えない,子どもは    自分の実力が分からないので,自信が持てず育ちにブレーキを掛けて臆    病になるか,抑えが効かず暴走するようになります。     失敗したところは,子どもが最高の能力を発揮している育ちの芽に相    当します。これ以上できないところで失敗をします。つまり,失敗の一    歩手前までは子どもの能力が育っているのです。スポーツの練習でもも    うちょっとでできそうなところを繰り返し練習するから,できるように    なっていきます。     失敗をさせないということは,この育ちの芽を握りつぶすことになり    ます。失敗しないように育てることは,育てることにならないのです。    育てるとは失敗を上手に引き出すことから始まると考え直すべきでしょ    う。子どもが余計なお手伝いをかってでて,かえって手間がかかること    があります。そんなしくじりをさせてやれるのは,ママしかいないとあ    きらめてください。  ・・・失敗の繰り返しが,親も子も育ちの年輪を刻んでくれます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○過保護と保護の違いは何なんでしょうか?     親は保護者ですから,あれこれ気を遣って保護します。ところが,最    近の親は過保護であると言われてしまいます。過保護とは子どもができ    ることまで親がしてやることと考えられています。確かにそういうこと    なのですが,肝心な点が今ひとつ分かりにくいので,親は自分の過保護    に気づくことができません。肝心な点とは,「子どもができること」を    親が正しく見極めているかということです。親は誰でもどちらかといえ    ば心配性ですから,保護するためにいつも安全な所に子どもを置こうと    します。それが過保護につながるのです。     例えば,赤ちゃんが伝い歩きをはじめるときです。ふらふらしていま    すから,転ぶとテーブルの角に頭をぶつけるおそれがあります。そこで    保護者としては転ばないように赤ちゃんの身体をそっと支えるでしょう。    それが過保護です。保護するというのは,転んでも怪我がないように,    テーブルの角に親の手を待機させておくことです。大切なことは転ばせ    ることです。転ばないように歩くのが,歩くという育ちだからです。転    ぶことを取り上げたら,歩く練習にはなりません。繰り返しますが,転    ばなくなったときが歩く能力のできあがりです。     小学生であれば,朝遅れないように親が起こしています。起こし忘れ    たら,親に文句を言うようになります。自分で起きるようにし向け,何    度か遅刻をさせたらいいのです。もちろん,一時間目には間に合うよう    に保護者として起こしてやらねばならないでしょう。小さな失敗をさせ    て,どうすれば失敗しなくなるか何度も練習するチャンスを与えないと,    起きるしつけは成人するまでできません。     子どもはできないことばかりです。できるようになるためには,小さ    な失敗をさせながら,ゆっくり育て上げなければなりません。今,子ど    もはできないから親が保護してやっている,できることをしてやってい    るのではないので過保護ではないと考えていたら,育ちの邪魔になりま    す。  ・・・小さな失敗を取り上げることが,育ちの邪魔をする過保護です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○0点は好きですか,嫌いですか?     我が子の短所を思いつくままに数え上げてください。五本の指では足    りないかもしれません。では次に長所を挙げていってください。即座に    三つまで言えたら親として立派ですし,このマガジンは無用でしょう。    普通はなかなか思い出せませんが,だからといって悲観しないでくださ    い。そのためのマガジンなのですから。     子どもはほめて育てるように言われます。でも,我が子はほめように    もほめるところがないという声も聞こえます。何をほめるかが曖昧にな    っているからです。100点取れたらとか,クラスで一番になったらほ    めてやれるでしょうか。ほめる子育てとは,そういったものとは違いま    すよね。     赤ちゃんが立っちできるようになったら,家中でほめましたね。歩き    出した日は記念日になったことでしょう。子どもが大きくなってくると,    課題も難しくなります。「ママ」や「パパ」としゃべりはじめたときは,    笑顔でほめてやったのに,「本は一冊,鉛筆は一本,犬は一匹,鶏は?」    と数え方をすべて覚えてくれないとママはご機嫌斜めです。「鶏は何て    言うの?」と問いつめられて,幼い子どもは「コケコッコー」と答えま    す。     試験の点数は0点から100点の間ですね。どうしてなのか知ってい    ますか? 試験の採点をしているとひどい間違いをしていて,マイナス    点をつけたいと思うことがありますが,採点者はマイナス点を使えない    のです。どんな間違いをしても0点なのです。社会では間違いに対して    罰点としてマイナスがあり得ます。しかし子育ての場では決してマイナ    ス点をつけないのです。間違いはすべて水に流して,できたところだけ    にプラスの点数を与えます。言い換えれば,「できたね」とほめる点数    しかないのです。     子どもは勉強する前は0点です。勉強したからプラスの点がつきます。    これが過去これまで全国で実行されてきた「ほめる子育て」です。とこ    ろが,何を勘違いしたのか,子どもは最初から100点を持っているは    ずと考えて,評点が60点なら40点も間違えたとマイナス点を持ち込    んできました。これでは叱る子育てに裏返ってしまいます。0点が60    点まで増えたのですから,ほめられるはずです。できなくて当たり前,    できたらほめる,それがほめる極意です。   ・・・0点の意味をもう一度再確認してください。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○健全な子どもとはどんな子どもなのでしょうか?     プロとアマの違いは何でしょうか? 失敗をうまくごまかせるのがプ    ロの資格だそうです。人は誰でも失敗やしくじりをします。そのことを    認めた上で,失敗を有効利用してきたのが人類の知恵です。     ロケットの制御をするサイバネティックスという理論があります。あ    る目標を定めて飛行するとき必ずズレが発生します。そのズレを検出し    て修正し,行きすぎたらまた修正と,繰り返しながら目標に向かってい    きます。大事なことはズレがなければ制御が出来ないということです。    このやり方は元々は生物の行動様式でした。二輪車も左右に小さくズレ    を繰り返しながら,前に進んでいます。     人の行動はやってみながら,ずれたかなと感じ取ったら修正してやり    遂げられていきます。生きること,育つことも同じです。失敗すること    でその原因が見えてきて,物事が分かり,次から失敗しなくなります。    逆に言えば,失敗しなかったときが恐いのです。たまたまうまくいった    場合があるからです。そのときは危険なポイントに気づいていないので,    いつか必ず失敗の憂き目に会います。子どものうちならいいのですが,    大人になって現れたら致命傷になりかねません。     自然界は人間の成長のために失敗を利用する知恵を授けてくれていま    す。動物は偶然の成功しか当てに出来ません。この天与の才能を使わな    い手はありません。勉強が出来るとは,誤りをせず迷わないことではな    く,それにつきあうことでセンスを磨き上げることです。     健全であるとは,失敗をしないことや間違えないことではなく,しく    じりが小さな内にそれに気づき,立ち直る力を持つことです。悪いこと    をちょっとしてしまって,しまったと気づき,その原因を見つけて,二    度と悪いことはしないという修復が出来ることが大事です。それが自制    するプロセスです。悪いことをしなければ,悪いことに気づかないので    す。兄弟げんかをしでかすから,仲良くするにはどうしたらいいのかを    学べます。嫌な思いを体験するから,人に優しくするテクニックを覚え    ていきます。     子どもは失敗や間違い,イタズラや口げんか,嘘や汚い言葉など,少    し羽目を外します。それを修復できるように育てなければなりません。    それが健全な子どもなのです。健康とは風邪をひかないことではなくて,    風邪にかかったかなと感じ取ったらすぐに対処できることであるという    ことと同じです。  ・・・小さな失敗をすることで,健全な子どもが育ちます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《小さな失敗体験が育ちのエンジンを回しはじめます》  ○叱咤激励という言葉があります。叱って激励することですが,この逆説は 今時の子どもには通じないでしょう。昔のように子どもがたくましく育ってい るなら,負けん気を引き出すことが出来ました。本来励ましとは,失敗したと きに「気にしなくていい」と言ってやることです。まず親が子どもの失敗を気 にしなくなることですね。  【質問11:あなたのお子さんは,小さな失敗を経験していますか?】    ●答は?・・・もちろん「イエス」ですよね!? ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第11号はいかがでしたか。  12章からなる羅針盤も,来週は最終章です。その後のアンコール章は,ま とめと12章の意味について解説をする予定です。このメールマガジンの趣旨 は子育て全体を見渡すということでした。そのことについて最後に触れておか なければなりません。  なお,21世紀版の「子育て羅針盤」について,皆様のご希望やご意見を〜 12月16日までに〜メールか掲示板で是非お聞かせください。ご回答がなけ れば,役目が終了したということで廃刊も考えなければなりませんので。 ◎途中から購読されている方へ  途中登録をされた方は,配信協力先,もしくは下記の発行者URLにある バックナンバーを参照してくださるようにお願いいたします。 ☆予告☆  次号では  【質問12:あなたのお子さんは,学ぼうとしていますか?】 について考えます。お楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●ホームページ「徒然窓」,      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   に,過去4年のコラム「パパな毎日」や子育てに関する考察テキスト,   調査結果などを掲載しています。開いてみて下さい。  ●また皆様の場として掲示板を設けました。ドウゾ積極的にご利用下さい。    http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/bearbbs/index.html    http://bbs.melma.com/cgi-bin/forum/m00019737/  ●講演依頼を希望される方は,メールでお問い合わせ下さい。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] 〇発行責任:モリのクマさん ○発行期日:2000年9月25日より,毎週月曜日 ○連絡mail:mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp 〇URL=http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/MailMag/MMannai.html    (このメールマガジンの登録解除やバックナンバー参照サイトです) 〇転載許可:クマさんまでメールのご一報下さい。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 〇配信協力:  ・インターネットの本屋さん『まぐまぐ』=http://www.mag2.com/    登録・解除:http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ・メルマ***『melma!』=http://www.melma.com/    登録・解除:http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ・読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』=http://www.pubzine.com/    登録・解除:http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ・無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』=http://melten.com/    登録・解除:http://melten.com/m/2166.html 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇