□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2001/03/05]            【子 育 て 羅 針 盤】                               (第23号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  カラスは山に七つの子がいるそうです。これが悩みの種です。七歳なのか七 羽なのかということです。お子さんに尋ねられたら何と答えますか?  正しい解釈をご存じでしたら,ホームページ「徒然窓」の掲示板にでも書き 込んでください。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育てtips★              『相 対 性』                               (第09号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  「半分だけ飲み物の入った瓶をテーブルの上におきなさい。楽天主義者はそ れを見て,『しめた,まだ半分ある』,厭世主義者は『ちぇっ,もう半分しか ない』という」  そういったのはバーナード・ショウでした。  これとよく似た小ばなしがあります。Aは江戸へ出ていきましたがすぐ舞い もどってこういいました。  「江戸というところは住みにくい。水まで金を出して買わなければならない」  おなじように江戸に出ていったBはこういいました。  「江戸は住みよいところだ。水を売ってでも生活できる」  同じ状態が見る人の視線によって正反対の価値を持ちます。  小学生の女の子に親戚のおばさんが,  「学校のベルは授業の始めと終わりに鳴るのね」  というと,その子が首を横にふって,  「ううん。学校のベルは休み時間の始めと終わりに鳴るの」  と答えました。               「笑いとユーモア」:織田正吉著・ちくま文庫 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★続・子育ち12章★         『忙しい ママには育ちが 遅く見え』                              《第2-09章》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ■はじめに  子どもとのつきあい20年,なんで親になったやら。  始めチョロチョロ,中パッパ,気がつきゃ財布はカラッケツ。  焦らず,慌てず,くじけずに,期待しません親孝行。  子育て最中の親には,何をのんきな戯れ言と思われるでしょう。  そうですね,子育てとは今がたいへんなのです。  それはどういうことなのでしょうか?  子どもは今現在一生懸命に育っているからです。  今必要なものを唯一の頼りである親に求めてくるからです。  でも親はそこでちょっとばかり欲張ってしまうようです。  大人になるためには,たくさんのものを身に付けなくてはなりません。  とても多いのですが,日々の育ちからは減っているように見えません。  ついあれもこれもと余分に持たせようとして果たせず,焦ってきます。  子どもの育ちには,子どもの都合があります。  食べたいときに食べたいだけ食べることしかできません。  いくら身体によいものでも,一度に食べられる量はしれています。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問2-09:あなたは,お子さんの今を大切にしていますか?】  《「今を大切に」という意味について,説明が必要ですね!》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○今のままでは心配?     マラソン競技でスタートから飛び出した走者がそのままゴールするこ    とはありませんね。子育ちは20年かかります。小学3年生頃が折り返    し点に当たるでしょうか。長い道のり,そんなに急いでも息切れするだ    けで無駄になります。     成長には大きな個人差があります。そのときどきを充実させることが    大切です。他の子より早く歩いたとか,早くしゃべったとか,そんなこ    とを競っても意味はありません。逆に成長が遅いようだと心配すること    もありません。     親が子どもを見るときに,「こんなこともできない」という視線を当    てます。今のままでは将来が不安であり,不幸であると感じます。親は    子どもの将来を案じます。目指すのは将来の幸せです。でも,幸福はあ    くまでも現在の幸福でしかありえません。「幸せだな〜」と感じるのは,    今です。「明日は幸せだな」とは思いません。     この不安は「今のままでは」という所から産まれます。子どもは育っ    ている途中ですから,今のままで終わるはずがありません。明日は違い    ますし,一年後も違っています。それよりも,今日一日,できないまま    で精一杯生きることです。明日のために今日を犠牲にしていては,今日    がむなしくなります。     子どもはできないなりの子ども時代をきちんと過ごさなければなりま    せん。子ども時代を自分の時代としてやり尽くすから,大人になれば家    族の時代に入ることができます。子ども時代を明日のためにとよそ見も    許されず走らされるから,大人になって自分だけの夢を追うパラサイト    (寄生)傾向が現れてしまいます。            ・・・つぼみのままでは花ではないと心配しますか? ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○与え過ぎか,与え足りないか?     子どもの育ちを止めてしまうのは簡単です。自分だけは特別で自分の    思うことは全部叶うべきであるというジコチュウ(自己中心)にしてし    まえばいいのです。皆んな自分を祝福し尊敬し可愛がり特別扱いをして    くれるのが当り前と思えば,育つ気にはなれません。     育つとは明日に向かってよくなろうという意欲に支えられるものです。    今が一番いい状態であれば,何もしなくなります。少しばかり過激な言    い方をすれば,現状に何らかの不満を感じなければなりません。思い通    りにならないこともあるという歯がゆさを実感すれば,何とかしようと    します。それが意欲というものの中身です。     ものを与え足りないことと与え過ぎることの影響を考えてみましょう。    与え足りないときは,何かが欲しいという目標が意識できます。我慢し    ながらもどうにかして手に入れたいと考えるでしょう。お小遣いを貯め    て手に入れることができたらうれしいものです。そこまでして手に入れ    たいと思うか,思わないかで,本当に欲しいものなのかという,自己チ    ェックができます。思いがけず誕生日などにプレゼントされたら,大喜    びします。足りないことは補ってやりさえすれば,子どもには喜んで受    け止めてもらえます。     与え過ぎの場合は,自分が本当に欲しいのかというチェックが出来な    いまま,そのときに気まぐれ的に欲しいなと思っただけで手に入ります。    欲しいという気持ちの深さが伴いませんので,すぐ飽きてしまいます。    ましてや欲しいとも何とも思わないのに親から与えられるようなものは,    子どもには何の意味もありません。そこで親は与え過ぎを反省し与えな    いようにしようとします。何でも手に入ると思っていますから,ものを    取り上げられるような感じです。これは子どもには苦痛ですから,素直    には受け入れてくれず抵抗することでしょう。        ・・・与え足りない方が,先の喜びを子どもにもたらします。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○チャンとできない!     子どもが積み木遊びをしていますが,積んでは倒れてしまいます。身    のまわりのことでもママの手をさえぎって自分でやろうとしますが,な    かなかうまく出来ずにカンシャクをおこすこともあります。ハヤクチャ    ンと出来ないのを見て,ママの方がいらついて手を出してはいませんか?     先ずママが気持ちをゆっ〜〜たりと持ってください。たとえできなく    ても,やろうとする気持ちを大切にしてあげてください。できなくて元    々,できたら自信になります。何の害もないのですから。ママが感じる    チャンとできないという不満は,子どもの今には関係ないことです。     もう少しダメを押しておきましょう。子どもの育ちにとって,チャン    とできないことをすることが重要なのです。自分にはできないことがあ    るということをもう一人の自分が自覚することは,育ちに向かうために    必要なことだからです。できないからこそ何とかできるようになりたい    と願うようになります。もしもママがしてやっていたら,自分の弱さが    見えなくなります。     教育と治療の違いをママは知っておく必要があります。お医者さんは    検査をして悪いところを見つけようとします。悪いところを治すためで    す。子育てが治療的になっていませんか? 教育や子育ては悪いところ    を正すのではなく,正常をよりよいものに伸張する営みだと言われてい    ます。そこで親は勘違いをすることがあります。後半の正常を伸ばすと    いうところにとらわれるのです。     チャンとできないことを正常ではないと判定します。何はさておいて    も子どもを正常に戻さなければと考えます。本当はチャンとできないこ    とが正常なのです。能力の欠けていることは子どもには当たり前のこと    です。繰り返しますが,それを子どもが自覚することが必要なのです。                 ・・・できないことが育ちの始まりです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○子どもが見えない?     ときどき子どもが見えないと思うことはありませんか? 何が見えな    いのかというと,どれほど育っているかです。久しぶりに会った子ども    は大きくなったと思いますね。毎日見ている我が子の育ちは見えないも    のです。     子どもの今が見えるためには,ママが正確な子ども像を持っていなけ    ればなりません。○歳の子どもはこんなものだというイメージです。多    子の家庭ではごく自然な経験として子ども像が手に入りますが,少子で    は親が意図しなければなりません。     育ちは時間の経過に沿ったものなので,今の我が子だけを見ていては    見えません。親は大人である自分を基準に子どもを観るので,小さな育    ちは無視されてしまいます。小さな育ちをしている我が子を見る工夫を    しなければなりません。それには異年齢の子どもたちを視野に入れるこ    とです。     授業参観を例にとってみましょう。我が子の背中だけを参観していま    せんか? せっかくのチャンスを無駄にしないようにしてください。1    年下の学年の教室を見てください。そこには1年前の我が子がいるので,    今はずいぶんお兄ちゃん,お姉ちゃんになったことが見えるでしょう。    それから1年上の学年の教室ものぞいてください。そこには1年後の我    が子がいるはずですから,この程度に育てばいいのかという目安が見え    るはずです。     最後に我が子の級友を見渡します。同じ年齢での育ちのばらつきが見    えます。ママが気にしていることもみんな同じだと分かるでしょう。落    ち着きがないと思っていても,みんなそうなのです。大して気にしなく    ていいと分かれば安心できるはずです。         ・・・よその子どもたちが子どもの育ちを見せてくれます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○あれもこれも?     子どもが算数の計算をしているときに,横からママが「字をきれいに    書きなさい」とちょっかいを出します。子どもの頭の中では今は数字が    駆けめぐっていて,字の形までは気が回らないはずです。子どもには一    つのことに没頭させましょう。大人になって仕事中に髪の乱れを気にし    ていては,仕事が疎かになりませんか?     台所で洗い物を手伝うと,そこらじゅう水浸しです。お皿を洗うこと    に集中しているからです。パパも何かに熱中していると回りが見えなく    なりますよね。手伝ってもらうのはうれしいのですが,かえって手間が    かかります。だから,つい「余計なことはしないで」とさせなくなりま    す。     子どものお手伝いは,実はお手伝いではないのです。猫よりはましと    揶揄することもありますが,実のところはあまりお手伝いにはならない    でしょう。     子どもにはお手伝いという理由でさせていますが,本当は練習なので    す。単なる皿洗いでも皿を洗うだけではなく,周りに水撥ねをさせたら    次にそれを拭くということまでさせてやります。そうすることで,水撥    ねをしないように皿を洗った方がいいことに気づき,どうしたらいいの    か考えるようになります。           ・・・子どもには一つずつ,やり遂げさせてください。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《今を大切にするとは,子どもの育ちをチャンと見届けることです》  ○親は子どもの将来を考えます。そのときに親が参考にするのが今の社会で す。大学生が卒業して就職するとき,今現在景気のよい会社を選びます。しか し,10年後では状況は全く変わっています。小さな会社に渋々就職した者が 後になって笑うといったことはざらです。今の大人時代を将来として子どもに 押しつけていたら,成人したときには時代遅れになります。今を育つようにし ていれば,子どもは将来も今を育っていけることでしょう。  【質問2-09:あなたは,お子さんの今を大切にしていますか?】    ●答は?・・・もちろん「イエス」ですよね!? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第23号はいかがでしたか?  さて,皆さんはお子さんとの暮らしの中でいろんな迷いや不安,疑問の体験 をお持ちでしょう。よろしかったら,クマさんに一緒に考えさせてください。 皆さんのための羅針盤にするために,ぜひお聞かせください。  読者の方からたくさんの感想や相談のメールを頂いております。できるだけ ご返事をしておりますが,遅れた場合にはしばらく時間をくださるようにお願 いします。 ☆予告☆  次号では,  【質問2-10:あなたは,お子さんにお手本を見せていますか?】 について考えます。お楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページ「徒然窓」,      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   には,皆様の場として〜「掲示板」〜,   このマガジンの登録解除やバックナンバー参照ページを設けています。   また,   コラム「パパな毎日」,「子育ち12章(Ver.1)」の他に,   子育てに関する受賞論文,県教委の事業として実施した養育調査結果,   組織活動の指導者用テキストなどを掲載しています。   是非訪ねてみて,積極的にご利用下さい。  ●講演のご依頼も承ります。メールで気軽にお問い合わせ下さい。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] 〇発行責任:モリのクマさん ○発行期日:2000年9月25日より,毎週月曜日正午 ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp 〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先から解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○