□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2001/04/16]            【子 育 て 羅 針 盤】                               (第29号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  高校野球などのトーナメント戦の試合数を計算してみませんか? 例えば, 50チームのトーナメントでは試合数は何試合でしょう。一回戦が25試合, 二回戦が12試合とあまり1?,三回戦は…と進みます。不戦勝が出てきて組 み合わせがややこしくなります。  逆転の発想をしましょう。トーナメントとは一試合毎に負けたチームが消え ていくことです。優勝校だけが勝ち続けます。つまり,50校中49校が負け ればいいのですから,試合数は49試合になります。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育てtips★              『大声よりも』                               (第15号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ある幼稚園の送迎バスの係で,保母見習いの娘さんがいた。もの静かな声の やさしい人で,いったいあんな人がこの騒がしい幼稚園の保母として務まるの かしら,というのが大方の母親たちのもっぱらの観測だった。  ところがこの娘さん,正式に幼稚園の先生になってからというもの,すこぶ る評判がいい。性格が荒っぽく,乱暴すぎてほかの子にケガをさせたりする男 の子も,この先生の言うことは素直に聞くのである。ほかにもいじめっ子がい じめを止めるようになったりで,親たちからは絶大の信頼を集めるようになっ たのである。  彼女は,いつでもマイペースをくずさなかった。ふつうは子どもが騒ぐと, それ以上に大きな声を出して話をしたり,叱ったりする。しかし彼女は,いつ もの静かな声で語りかけるのだ。そのうち騒いでいた子どもたちが,その話を 聞こうと,じっと耳を傾けるようになる。大きな声で叱られるのに慣れっこに なっていた子どもたちは,愛情をこめてやさしく語りかけてくれる先生が,い っぺんに好きになってしまったのだった。                 「言葉の魔術師」:多湖 輝著・ごま書房 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★パパ・ママ12章★         『親の字は 木上に立って 見ると書く』                             《第3-03章》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ■はじめに  親たちが思うしつけの悪い子とは,どんな子どもだと思われますか?  前にも紹介したように,最も多いのは言葉づかいの悪い子だったそうです。  挨拶や敬語などを含めて,情報化の中で言葉の質が粗末になってきました。  物心のついた子どもは母親から「第二の母乳」として母国語を摂取します。  つまり,言葉を覚えたときに子どもは育っていくことができます。  だからこそ,言葉づかいは品性といった人となりを醸し出すのです。  言葉は他人とのコミュニケーションの道具であるばかりではありません。  言葉によって学びが可能になり,言葉によって心の整理ができます。  悩みや苦しみは言葉になったときに,解決への手がかりがつかめます。  子どもを育てていると,親になったという充実感をお持ちでしょう。  「親」という言葉を自分のものにしたとき,親になれるのです。  人類という生物種は言葉を獲得したときから,人間になれたのです。  身体の健康のためには,栄養のバランスを気に掛けています。  心の健康のためには,言葉のバランスを考慮することが大事です。  そのために,ママの母乳が豊かなものであることが望まれます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問3-03:あなたは,お子さんの言葉づかいが気になりませんか?】  《「言葉づかい」という内容について,説明が必要ですね!》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○いただきます?     お年寄りは孫が可愛くて仕方がないようです。二歳の誕生日に鯛の尾    頭付きで祝ってやりました。ところが,孫がその塩焼きを見て泣き出し    てしまいました。「この魚,目がある」というのです。     普段は切り身のパック入りの魚しか見たことがなかったからです。切    り身には生き物を食べるという実感がありません。食べることは殺すこ    とである事実が見えにくくなっています。牛や豚,鶏に限らず野菜や果    物もすべては生き物です。命を頂いているという気持ちが「いただきま    す」という食事前のお礼になり,「ごちそうさま」の食事後の感謝のは    ずです。     命の尊さを心に刻むのに最も相応しい時期は,感性豊かな幼いときで    す。幼いときは一生懸命に生きていますから,生きることに敏感だから    です。その意味で,おじいちゃんが孫に尾頭付きのお祝いをしたことは    よい学習の機会です。ともすれば,幼い子どもには古くさいお祝い事な    ど喜ばれないとママは考えて,それよりはハンバーグでお祝いしようと    しがちでしょう。でもそれでいいのか,考えてみませんか?            ・・・意味が分からねば,言葉は流れてしまいます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○ボディランゲージ?     表現の学習として子どもたちに一行作文を書かせている先生がおられ    ます。「アヤメが咲いた。となりの犬が見に来た」。きれいという言葉    を使ってなくても,言外にその意味はあふれていますね。「雨が降る     今日の雨はいい音してる」。雨から音を聞く感受性を発揮して,雨を耳    で観察できています。     「おめでとうと言われ,くすぐったかった」。直接にうれしいとは言    っていませんが,身体で感じている様子が見事です。もしどんな気持ち    と尋ねられたら,「うれしい」と言葉で答が返ってくるでしょう。でも    子どもの様子をよく見ていると,口ではうれしいと言いながら,妙に身    体をくねらせていることはありませんか? ママは姿勢がしゃんとして    いないことを気にしているかもしれません。くすぐったいのですから,    大目に見てやって下さい。     ママのこともよく見ていますよ。「お母さん 向こう向いたまま怒    る」。子どもは自分の切なさの原因が何処にあるのか,具体的に直感し    ています。この作文はママの気持ちを動かすはずです。「お母さんの手    冷たい,しんどいのかな」。冷たい手がふつうではないことを感じ,そ    れを疑問に思っています。その疑問を引き出したのは,ママが大好きだ    ということです。ママのことが心配だからです。             ・・・目は耳よりもよく聞こえることがあります。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○心変わり?     子どもたちは本を読み聞かせてやると喜びます。ある保育園で先生が    参観日に親たちにその様子を見せてあげようとしました。話がクライマ    ックスになったとき,いつも落ち着きのない子が「オシッコ」と言い出    しました。その後はガヤガヤと流れが乱されてしまいました。     前の日まではおとなしくお話しが聞けていたのに,どうしたのでしょ    うか? 変わっていたのは先生の方なのです。先生が親たちに見せよう    という気持ちを持っていたために,子どもとの心の交流が薄くなってし    まったからでした。不安定な子どもはそれに敏感に反応したのです。そ    して,「オシッコ」と言うことで,先生との関係を結び直そうとしまし    た。     ママがよその人と話していると,わざと邪魔するようにまとわりつい    てくることがありませんか? ママから「うるさいわね,あっちに行っ    ておとなしく遊んでいなさい」と言われてしまいます。子どもはママと    の普段の関係に何となく安心できないものを感じているからです。ママ    との関係に空腹なのです。満腹していれば,ママなど見向きもしないで    一人で遊びます。                   ・・・子どもはママに恋しています。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○離乳語?     わが子が赤ちゃんのときには,分かるはずもないのに言葉をかけてい    ましたね。言葉は物心の母乳だと言い続けてきました。ものの考え方や    感じ方を作り上げる総合食なのです。     さて,言葉について話を少し進めておきましょう。母乳語は具体的も    のごとを表します。ワンワンではなくて犬,机や椅子,パパやママ,ご    飯ですよ,走る,座るといった日常語です。「ちゃんとして,きちんと    して」といった曖昧な命令語ではありません。ところが,それだけでは    済みません。離乳語に替えていかなければなりません。抽象的な物事を    表す言葉を教えます。例えば,おとぎ話などからはじめるといいでしょ    う。     おとぎ話では動物がしゃべります。テレビのキャラクター任せでは栄    養が偏りますし,味も濃いめですから控えめにしてください。ただ,控    えめにするために禁止するという手は勧められません。別の栄養豊かな    ものを与えれば,自然に控えられるはずです。絵本を読んで聞かせるこ    とも手軽にできることです。     抽象的なものには,時間の概念,数字の概念,何より気持ちの表現な    ど,いろんなものがあります。初めのうちは,子どもの気持ちをママが    表現してみせる必要もあるでしょう。子どもが転んだとき,ママが「痛    かったわね」と語りかけます。夕暮れ時,「パパが帰ってくる時間よ」    と,時計を一緒に見ましょう。ママは子どもに向けておしゃべりである    べきです。              ・・・心の栄養不良は,言葉の欠食が原因です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○理性語?     若者言葉がやり玉に挙がることはしばしばです。いわく,語尾が伸び    たり上がったりする。言葉を発しながら次の言葉を考えているからです。    いわく,話が長々と続き,切れ目がない。考えを自分の中でまとめる作    業ができていないからです。いわく,「やっぱり,とか,なんか,みた    いな感じで,…」と,感覚的で曖昧な表現が多い。理性の発育が未熟な    状態だからです。     理性の発育とは,豊かな語彙を身につけていることです。言葉を操る    能力が理性を醸し出します。挨拶でも決まり切った言葉だけを並べたも    のは,心に届かないばかりか,言語明瞭意味不明といった印象を受けま    す。理性が感じられません。若者が何を考えているのか分からないとい    う声もあります。それは若者の語彙が少なすぎて,それも感性的なもの    に片寄っているために,理性での理解が不可能だからです。     さらにいわく,発音が曖昧。これも若者が自分の使っている言葉の意    味をきちんと理解していないからです。言葉を雄叫び程度にしか意識し    ていません。その例が「ムカツク」でしょう。意味を伝えるよりも,一    種の叫びです。若者が大人の話に耳を傾けないのは,言葉が叫びではな    いからです。マンガで育った世代は擬音語や擬態語といった感性語には    反応できますが,意味を持った理性語は外国語のように聞こえているの    かもしれません。           ・・・理性語とは意味が明らかで伝達可能な語彙です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○しゃれた会話?     つい昨日のことのように覚えているでしょうが,パパがママを口説い    たことでしょう。好き同士であればどんな表現であっても,十分気持ち    は伝わります。でも,外国人に比べると日本の男性は,女性を口説くこ    とが上手ではないようです。普段から話を聞かせる訓練をしていないか    らです。聞いてもらうという気配りが働いていません。     おしゃべりはできるのですが,しゃれた会話ができません。因みに,    おしゃれの「しゃれ」とはしゃれこうべのしゃれと同じです。「さらさ    れる」という言葉なのです。水にさらすと言えば,意味はお分かりにな    るでしょう。お化粧を塗ることはおしゃれとは逆の行為になると思いま    すが?     スピーチなどはひどいものです。いい話を聞いたという経験はめった    にありません。しゃべりが下手という問題ではありません。内容に洗練    さとか新鮮さがないのです。聞いた直後に思い出せないほどのものです。    話すことばかりに気を回すので,聞き手のことを疎かにします。その人    の個人的な経験を知性の流れにさらして,人に分かるように言葉を選ぶ    手間をかけさえすればいいのです。     ある披露宴で,木訥な農家のおじさんが,親族としてぼそぼそと話し    てくれました。畑をしていると青虫は害虫です。作物の花が交配する助    けをしてくれるチョウチョは益虫です。そして青虫がチョウチョになり    ます。だから,畑の周辺には青虫のための作物を残してやっているとい    う話でした。そこから教訓めいた話には続かず,そこで話はプツッと終    わりです。でも,生活とか,生きるということに向き合う姿勢を鮮やか    に切り取って見せてくれました。     ・・・言葉を丁寧に紡ごうと努めれば,会話のおしゃれができます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《言葉づかいとは,意味を正確に表現し伝達しようとすることです。》  ○「ありがとうございます」ではなく「どうも」という言葉が幅を利かせて います。意味不明な言葉づかいをしているから,感謝の心が湧きません。曖昧 なままではとても頭は下がりません。コミュニケーションがうまくいかないと きは,言葉が通じていません。伝えたということと伝わったということは違う のです。  【質問3-03:あなたは,お子さんの言葉づかいが気になりませんか?】    ●答は?・・・どちらかと言えば,「ノー」ですよね!? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第29号は,いかがでしたか?  言葉遊びでしりとりをすることもいいでしょう。ところで,しりとりができ ない子どもがいました。そのわけは,ママが何にでも「お」を付けて言葉を教 えていたからです。「おミカン」,「お座布団」,「お箸」,「お茶碗」, 「お顔」などです。これでは,しりとりはできませんよね。  最近,皆さんからのメールが減ってきております。反応がなくなってくると, 執筆の迷いが生まれ,キーを叩く力が弱くなります。もっとメールを!  迷いや課題についてのご希望がありましたら,どうぞ気軽に申し出て下さい。 適当な章の中で,ご一緒に考えさせていただきます。 ☆予告☆  次号では,  【質問3-04:あなたは,お子さんの理解の悪さが気になりませんか?】 について考えます。お楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページ「徒然窓」,      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   には,〜「掲示板」,マガジンの「バックナンバー」や登録解除   コラム「パパな毎日」,「子育ち12章(Ver.1)」の他に,   「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,   組織活動の指導者用テキストなど〜 を掲載しています。   是非訪ねてみて,積極的にご利用下さい。  ●講演のご依頼も承ります。メールで気軽にお問い合わせ下さい。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先から解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○