□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2001/05/14]            【子 育 て 羅 針 盤】                               (第33号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  昨日は「母の日」でした。カーネーションの花が花屋さんの店先にたくさん 並んでいました。「父の日」は母の日につられてお情けの感があって,寂しい と思ってしまいます。でも,自分自身が感謝するのはやはり母の日と思うので, しようがありません。ママにぜひ「夫の日」を作ってもらうことを期待してい ます。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育てtips★         『秀才児が平凡な社員になる不思議』                               (第19号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  「十で神童,十五で才子,二十歳過ぎればただの人」とは,よくいわれる言 葉だが,最近はその傾向がますます強いようだ。幼稚園時代から,母親に手を 引かれて,あっちの塾,こっちの塾と飛びまわっていれば,社会に出るころは 心身ともに疲れはて,ただの人になってしまうのは無理からぬ話だ。  その,ただの人をつくっている最大の元凶が,教育熱心なママたちだという のは,ドイツの心理学者ヘッツア先生である。彼の長年の調査,研究によれば, 2〜5歳期に強い反抗期を示した子どもは,大部分が意志が強く判断力のある 青年に成長したという。それに反し,反抗期があまり強くなかった子どもは, 意志力や判断力に欠けた青年に育ったのだそうだ。  幼稚園の時から,ママの言うことを素直に聞き,いたずらもしないでお勉強 にはげんだ結果,いわゆるエリートコースを歩んでも,二十歳過ぎてただの人 になったのではなんにもならない。子どもへの干渉は,ほどほどがいい。           「不思議なふしぎな人間心理」:多湖 輝著・ごま書房 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★パパ・ママ12章★         『夢に見る わが子はいつも 幼い日』                              《第3-07章》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ■はじめに  いつまでも幼稚で手がかかるんだからと愚痴が出てきます。  いつまで言わなければならないの,早く大きくなってと思います。  しつけをする意欲は,幼稚なままでは困っちゃうということです。  子どもが成長しめでたく反抗期になると,ママの言うことを聞きません。  ママの気持ちが伝わらなくなって,急に子どもが離れてしまいます。  ママーと甘えてくれた小さいころが良かったと思ったりします。  いつまでも子どもと思っていたら,とんでもないことをしでかします。  ある日パパは娘にどこの誰かも分からない男性をいきなり紹介されます。  パパは適齢期の娘をいつまでも子どもだと思っていたいのに。  親である喜びは,私がいなければという思いこみから生まれます。  内心では,いつまでも手がかかることがうれしいと感じています。  でも,そのことに気がつくのは子どもが離れてしまった後です。  子どもは幼稚であることによって,大人を親に育ててくれています。  親は幼稚である子を可愛いと愛おしむ気持ちに支えられています。  幼い子どもの愛らしさは,親になったママへの手みやげなのかも? 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    子どもはパパと遊ぶのが好きです。どうしてでしょうか? パパは子    どもと同じように,「あなたって,ほんとにバカね!」と言われていま    す。ママたちが寄ると,「大きな子どもがもう一人いるみたい」と評さ    れています。子どもからすれば,幼稚なパパは気の合う仲間なのです。     ママは公園で子どもを遊ばせています。危ないことをしないか見張り,    汚いものに触れないか注意し,文字通りの保護者になっています。ママ    たちは子どもをそっちのけでおしゃべりをすることができます。パパは    違います。子どもと一緒に遊びます。子どもに遊んでもらっているよう    に見えるときさえあります。だから,子どもはパパが好きなのです。     ママから見れば愚にもつかない他愛のない遊びに,子どもとパパは夢    中になります。「いつまで遊んでいるの?」と声を掛けるのはママです。    「私が止めなければいつまでも遊んでいて,パパは何も考えていないか    ら,しようがないでしょ!」。                  ・・・ママも一緒に遊んでみませんか? ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○いい加減?     あるときママが言います。「いい加減にしなさい!」。子どもが小遣    いの値上げをしつこく言い立てるときなどです。あるときママは言いま    す。「いい加減にしちゃダメ!」。手伝いをダラダラしているように見    えるときなどです。     いい湯加減だからと言われてお風呂にはいると,熱かったりぬるかっ    たりすることがあります。いい加減は人によって違うようです。冬や夏    の気候に比べて,春や秋はともに過ごしやすいいい季節です。ところで,    春分の日の温度は約10度,秋分の日は約22度で10度以上も違って    います。人が感じる気候のいい加減さも,いい加減なようです。     「神様はきっと凡人を愛しておられるに違いない。だから神様は凡人    をたくさん作っておられるんだ」とリンカーンが語っています。「世の    中の役に立つ人間になりなさい」と,役に立ち方による評価・査定が無    意識に行われ,人間がランク付されています。平凡な普通に生きている    私たち,神様はそんな人を愛していると思いましょう?     イギリス紳士の信条に「ジェントルマンのC」というものがあります。    紳士たるものは学校の成績はCを取れということです。学校の評価であ    る通信簿ではオール3を取れということです。いい加減とは中道,真ん    中,ほどほどと考えるべきことです。何かに秀でた専門家は紳士にはな    れないようです。     校則やしつけによる押しつけをいい加減にしないと,自律の精神が育    てなくなります。「〇〇しなければならない」という押しつけの過剰さ    は,子どもが幼稚だからという思いこみから生まれます。ママの目が子    どもを幼稚とみる色眼鏡でないことを祈ります。管理されると息が詰ま    ると言われますが,自由を与えられずに息が詰まると同時に,「しっか    りしなくっちゃ」という自律への芽も摘まれることになります。                 ・・・いい加減なママがいいようですよ! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○幼稚に見えても?     ママが生け花をしようとハサミを使っています。そばで見ている子ど    もが「お花さん,かわいそう」とつぶやきます。花は痛いと思うわけが    ない,つまらないことを考えちゃいけませんと,その幼稚さを叱ります    か?     花は誰のために美しいのでしょうか? 次世代を残すための受粉を手    伝ってくれる虫たちのためです。人は花の美しさに横恋慕して,拉致し,    自分の美を完成させるという狂気によって,花を陵辱しています。花に    対する思いやりを失っていることに気づいていないことが,狂気なので    す。子どもの目はそれを見ています。     教育は方向性を持っています。つまり,人の行為を正と負の価値に分    けて,正(プラス)の価値を追求する方向性です。教育的であることは,    負の価値を否定します。もちろん,そのことは教育においては正しいこ    とです。しかし,この二者択一ばかりでは,子育ては行き詰まってしま    います。     教育的には負の価値に見えることでも,個性を伸す材料になりますし,    正の価値を生み出すこともあります。おとなしい子は優しい子です。の    んびりしている子は確実な子です。そして幼稚な子は感性の鋭い子です。    別の尺度を当てると,無駄なものはありません。                   ・・・ママは教育者ではありません。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○し忘れたしつけ?     子どもは家庭や学校でお客様として育っていると言われています。余    計なことはさせないように管理されています。さらに社会的なしつけの    仕上げを受ける時期の二十歳前後は親元を離れて,自由奔放な環境に入    ります。大人として幼稚なままに留め置かれることになります。     ある会合で,ドアを開け放しにして入ってくる女性がいます。「閉め    て下さい」と言っても,平然としています。「ドアは自然に閉るものだ    と思いますが」と言いながら,「あれ違ったかな」とドアを見ているだ    けで,それでも立とうとしません。     研修の場で昼食の仕出し弁当を喜々として配っています。「あれ一つ    余っちゃった?」と見回して,「ああ,そうか,先生の分だわ」と気が    ついて持っていきます。社会の中では,まず先生に真っ先に持っていく    ものというしつけを受けていません。自分中心のままで育ちがストップ    しています。場の流れに従うという「礼儀」が欠落しているのは,大人    社会におけるしつけの仕上げを受ける機会が失われているからです。     このような幼稚さはよその親である大人が,そのときにあらためて教    えれば解消できます。幼稚さをとがめるのではなく,社会が教え忘れて    いることに気づくべきです。大事なことはしつけの機会は今だというこ    と,しつけをするのは大人だということです。何歳までに親がしつけて    おくべきことというテキストにあまりこだわらないほうがいいでしょう。                ・・・よその子のしつけも忘れないように。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《幼稚さは,簡単に切り捨てられない大切な意味を含んでいます》  ○あるタレントの後にたまたまトイレに入ったご婦人が,ロールペーパーの 端がきちんと折ってあったことを感心しておられました。次の方へのやさしい 思いやりを感じられたようです。ところが,この話に異議を唱えるご婦人もお られます。良かれと思ってする気持ちは分かるが,余計なお世話だというので す。前の人が触ったペーパーは汚いと感じるそうです。偽という字は人の為と 書きますが,偽善なのでしょうか?  【質問3-07:あなたは,お子さんの幼稚さが気になりませんか?】    ●答は?・・・どちらかと言えば,「ノー」ですよね!? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第33号は,いかがでしたか? ぜひ感想をお聞 かせくださいね!  講義の合間に執筆しているマガジンですが,一週間があっという間に過ぎて, 月曜日の締切が恨めしくなることもあります。登録していただいている皆様に 少しでもお役に立っているかもしれないと言い聞かせて,せっせと書き続けて います。最近少しばかり理詰めになりかかっているかなと反省しています。気 長にお付き合いください。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページ「徒然窓」,      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   には,このマガジンの「バックナンバー」,〜「掲示板」や登録解除   コラム「パパな毎日」,「子育ち12章(Ver.1,2)」の他に,   「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,   組織活動の指導者用テキストなど〜 を掲載しています。   是非訪ねてみて,積極的にご利用下さい。  ●PTAや家庭教育学級などでの講演のご依頼も承ります。   メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問3-08:あなたは,お子さんのこだわりが気になりませんか?】 について考えます。お楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先から解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○