□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2001/05/21]            【子 育 て 羅 針 盤】                               (第34号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  今年は150世帯ほどの隣組の組長をしています。不燃ゴミの回収後に集積 場の掃除をしますが,バッテリーが2個置き去りにされています。回収できな いものだからです。要らないものだから捨てるという積もりでしょうが,捨て るにも作法があります。不作法の始末を組長がしております。やり場の分から ない怒りが湧いてきます。モリのクマさんはご機嫌斜めです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育てtips★             『ネコババの原理』                               (第20号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  純粋理性批判などの書を著し,近代哲学の祖として名を残しているエマニュ エル・カントが言っている。「あなたの意志を動かす原理が,同時に普遍的な 立法の原理としてつねに適当であるように行為せよ」。  あなたがさりげなくおこなう行為にも,その背後に,かならず一つの原理が ある。  たとえば道で財布を拾って,それをそのままネコババする−−この行為の背 後には,「拾いものは自分のものとしてもかまわない」という原理がある。  この原理が立法の原理になってよいか,悪いか。よいと思ったらもちろんネ コババもよかろうというのである。自分のほうで財布を落とし,青くなって交 番にかけこむようでは,もちろん原理をよしとする資格はない。             「ユーモア人間一日一言」:阿刀田高著・ワニ文庫 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★パパ・ママ12章★         『こだわりは 心に結ぶ 飾り紐』                              《第3-08章》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ■はじめに  私たちの暮らしはとても快適なレベルに到達しています。  100年前の上流社会にも今ほどの生活はできなかったはずです。  この暮らしを支えているのは,ものをつくる精密な技術の発達です。  いかなる製品や部品も,それを作る機械よりも精密ではあり得ない。  そういう言葉が技術世界では大事な常識になっています。  それが,このマガジンとどんな関係があるのかと問われそうですね。  ビィーナスのような彫刻,モナリザのような絵画は人類の財産ですね。  その芸術作品を生み出したのは,感性を具体化できる手の能力でした。  そのことを忘れているから,創造性の発揮ができなくなっています。  ナイフで鉛筆を削れない子どもたちは,表現能力が未熟ということです。  次世代は,美術を鑑賞,批評出来ても,作者を越えることはできません。  その作者たちの技量も低下しているはずです。  技の世界はかつて職人技としてものづくりの力を育てていました。  今は,器用な頭を育てるだけで,器用な手を育てていないように見えます。  つくることへのこだわりが,創造性の発露を促してくれるはずです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問3-08:あなたは,お子さんのこだわりが気になりませんか?】  《「こだわり」という内容について,説明が必要ですね!》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○こだわるべきこと?     考えさえすれば分かるはずのことを考えていない稚拙さが横行してい    ます。赤ん坊を床に叩きつけるなどの親の虐待,腹いせに火をつけて親    を焼き殺す子どもの反逆,どうなるか考えることを忘れています。とい    うより,人としての基本的思考を捨てています。     考えることなどうざったいと思考を捨てている子どもがいます。何も    考えず,自分の意見もありません。あるのは欲求だけです。欲求は今の    充足を求めますから,考える必然性はありません。我慢をすれば,どう    しようかと考えるチャンスが生まれるのですが。     課題の写生が描けなくて友だちの作品を盗んで提出した少女がいまし    た。見つかって注意を受けると,盗んだ少女も家族も教師の指導力の不    足を批判するばかりです。盗まれた少女の苦境を分からず,考えようと    もしていません。     障害を持った友達に「オイチニ,オイチニ」と囃し立てる学年トップ    の子どもがいました。その障害を持つ子どもは学校に行きたがらなくな    りました。昔もそんな子はいました。でも,からかわれる痛みを思いや    れないと,「将来ろくな人間にならないぞ」と,昔は周りから総すかん    を食らったものでした。そういう矯正力を大人社会が備えていました。    社会が持っていた「優しさへのこだわり」が力を落としていることは,    大人自身が反省すべきことです。                ・・・品性へのこだわりを復活しましょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○わけあり?     灰皿のあるところで喫煙するように注意書きが出ています。ところが,    灰皿を持ち込んだり,勝手に移動させて喫煙する大人がいます。守るべ    きルールを知っていても,そのわけが分かっていません。形だけルール    に従えばいいというこだわりが臆面もなく登場しています。     ママがいけないと言うから,子どもはママの言いつけを守ります。マ    マが怖い顔をするから,子どもはしてはいけないことを知ります。ママ    が叱らなければ,してはいけないことでも平気でしてしまいます。子ど    もはママの言動にこだわっています。幼い間は意味が分からなくてもい    いでしょう。もう一人の子どもが産まれるまで,ママがルールブックに    なってあげてください。     ルールの意味が分かっていないと,細々とルールを作らなければなら    なくなります。応用ができないからです。ママがついて廻っていちいち    言わなければなりません。     時間を守るというルールがあります。朝時間通りに起きなければなり    ません。毎朝起こしてやっていると,起きる意味が分かりません。もう    一人の自分がわけを納得しなければ,自分を起こそうとはしません。友    だちとの約束の時間に間に合うように出かけることもできません。その    場その場のルールではなくて,どんな場合でも時間を守るというわけあ    りのこだわりをもう一人の子どもが持つように育てましょう。            ・・・しつけとはよいこだわりを持たせることです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○共生できるこだわり?     フランスという国は文化を大切にしています。大切にしている証拠と    して,文化に対する予算が多いということが言われています。国民性と    して文化にどのように接しているかが大事なポイントです。普段の態度    に現れるようでなければ,本物ではないからです。     かつて,パリで唐招提寺展が開催され,鑑真像が持ち込まれたことが    あります。会場作りの職人たちは像の前を通るとき必ず立ち止って軽く    頭を下げていました。鑑賞に来た小学生の団体はおしゃべりが盛んでし    たが,像の前に来るとぴたっと静かになりました。館内の警備員は像の    前を横切るとき恭しく帽子を脱いで礼をしていました。     像の崇高さもあるかもしれませんが,フランス人にとっては単なる珍    しい異文化の像に過ぎません。しかし,たとえ自分には縁のない異文化    であっても,文化そのものを敬愛するというこだわりがなければ,この    ような礼儀は示されないことでしょう。文化を身につけるとは,頭での    理解ではなく,謙虚さが自然に出てくるような振舞いができることです。    これからの異文化と共生する国際化の中では特に必要になる素養です。     地域には神社やお寺などがあります。お地蔵さんが道ばたにひっそり    と立っています。信心するかどうかという宗教上のこだわりは個人の選    択すべきことですが,自分には関係ないと無視したり,あげくは落書き    をして恥じないようでは,文化を愛せない野蛮さ丸出しです。敬意を表    することは心を開くことです。           ・・・閉じこもるこだわりは,人と仲良くできません。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○自分を生かすこだわり?     ダーティハリーが,不愉快なゲームをしている男に向かって,「ゲー    ムを楽しみたけりゃ ルールを勉強するんだな」と忠告します。同じル    ールに従うからゲームは成り立ち,楽しむことができます。ルールを無    視すれば優位に立つことができるでしょうが,それはもはやゲームでは    なくなります。     社会で生きていくためにはそれなりのルールがあります。そのルール    を教えようとママは子どものしつけをしています。乗り物の運賃は子ど    もは半額です。半額なのに一人前の座席を占領させている親子がいます。    乗るときは順番に並んでいますが,子どもは脇から滑り込みます。ルー    ルを無視しています。そこには何のこだわりも見られません。それくら    いのことで目くじらを立てては大人げないですか?     クラーク博士は札幌農学校で細かな学則は制定しませんでした。「私    がこの学校に望む規則は Be Gentleman。(紳士であれ)。ただこの一    言に尽きる」という理由からです。もう一人の自分が「自分を紳士にし    たい」というこだわりを持てという意味です。     ルールは普通,規則で束縛するという形になります。してはいけませ    んと禁止されます。このやり方では紳士の教育はできません。奴隷の教    育になるからです。禁止されるのではなくて,自ら進んで封鎖するので    す。禁止されていると思うからルール破りをしたくなります。もう一人    の自分が「こうありたい」というこだわりを持っていれば,そのための    ルールは苦にならず気持ちよく受け入れることができます。そういう育    ちをさせたいものですね。             ・・・芯のある子とは,こだわりの持てる子です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○変なこだわり?     個性的な人とはどういう人のことを言うのでしょうか? 個人的な関    心を傾倒するこだわりが持てる人です。大なり小なり誰でもこだわりは    持っているのですが,ちょっと変わったこだわりであると感じられると    き,個性的と評されます。     最もよい例が趣味の世界で発揮されます。石にこだわって集める人,    流木の旅にこだわり集める人,昆虫の多様性にこだわり集める人,草花    の可憐さにこだわる人,ラーメンのこくにこだわる人,酒の銘柄にこだ    わる人,ファッションのブランドにこだわる人など,いろんな個性があ    りますね。     人の悩みの根っこにもこだわりがあります。こだわりとは「拘り」と    書くように,心を拘束するからです。自分の心との相性が悪いものにこ    だわると,心が痺れてきます。悩む人に対するときは,その拘りという    紐を見つけてゆるめてあげなければなりません。解く必要はありません。    こだわりは個性でもあるのですから,解き放せば心が不安定になります。    個性的であることを認めてあげれば,隠れていた結び目が見つかるはず    です。     子どもにも何か特別なこだわりを持つ物があります。寝るときは決ま    ったぬいぐるみを抱いていないといけないとか,決まったバスタオルで    ないといけないとか,お出かけはこの服でないといけない,バスの席は    この席,などです。たとえママの目には気になるこだわりでも,許され    ないものでない限り無理に取り上げることは要注意です。こだわりは心    に直接まとわりついているので,心を傷つける心配があるからです。        ・・・こだわりは個性なので,他人には変に見えるものです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○こだわりの行く末?     ペットが家族だという人がいます。ペットと暮らせることを売り言葉    にするマンションもあります。生き物にこだわると愛情という気持ちに    転化します。考えてみれば,男女の結びつきも「この人でなければ」と    いうこだわりです。     子どもにペットを飼わせることが情操教育として有効だと言われます。    優しさを育み,また世話をする忍耐を教えます。子どもは小さな動物を    可愛いと感じるとき,飼いたいと思ってパパにねだります。ママは自分    でちゃんと世話ができるのと念を押します。世話はわが子だけで手一杯    です。     ペットの行く末は二つに分かれます。一つは家族の一員としての地位    を与えられて天寿を全うします。そうではないケースもあります。子ど    もが育ってくると勉強やクラブなどで忙しくなり,ペットも大きくなっ    て可愛さが薄れ,また興味も変わります。結局ママが生き物を放置する    こともできずに世話をしなければならなくなります。ペットが邪魔な存    在に転落していきます。     処分という最悪の結末を迎えるとき,それを子どもが悲しむからと内    緒にはしないで,きちんと説き伏せる厳しさが必要です。一時の気まぐ    れが悲しい結果になる事実に直面させて,痛みを感じさせなければ,ペ    ットは文字通り犬死になります。     人にまつわる生老病死という四苦から逃れるためには,こだわりを捨    てることだと諭されています。心の平安を得るためにはそれしかないの    でしょう。しかし,その境地に至るためには,こだわりに振り回される    修行が前提になります。                  ・・・こだわりは喜怒哀楽のタネです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《こだわりは,生きることを楽しくもし,辛くもします。》  ○ある作詞家が演歌の傾向を今と昔で比較していました。昔の演歌は「遠く, 皆で」という広がりを持っていて,視点は「LONG」であったが,今の歌は 「近く,二人」という狭さになり,視点は「CLOSE UP」であるということで す。カラオケブームは自分が歌うことの快感を求めており,みんなで歌を聞く, みんなに聞かせる快感が喪失しています。歌への見えないこだわりが狭いもの に閉じこもっている傾向は,時代の姿なのかもしれません。  【質問3-08:あなたは,お子さんのこだわりが気になりませんか?】    ●答は?・・・どちらかと言えば,「ノー」ですよね!? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第34号は,いかがでしたか?  前号とともに,「何が育つのか?」というテーマを考えました。生きていく 上での価値観の育ちです。自分を幸せにし,自分たちを幸せにできる価値ある こだわりが見つかればいいですね。あれこれいろんなことにこだわって,焦ら ず,ゆっくり,探しましょう。自分らしさというこだわりに向けて…。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページ「徒然窓」,      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   には,このマガジンの「バックナンバー」,〜「掲示板」や登録解除   コラム「パパな毎日」,「子育ち12章(Ver.1,2)」の他に,   「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,   組織活動の指導者用テキストなど〜 を掲載しています。   是非訪ねてみて,積極的にご利用下さい。  ●PTAや家庭教育学級などでの講演のご依頼も承ります。   メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールは上記のHPを参照してください。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問3-09:あなたは,お子さんの意気地無さが気になりませんか?】 について考えます。お楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先から解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○