□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2001/08/27]            【子 育 て 羅 針 盤】                               (第47号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  長かったようであっという間の夏休み,あと一週間です。緩んでいた気持ち をきりっと引き締めてと子どもに言い聞かせながら,実のところ自分に向けて 言っているのかもしれませんね。「明日がある」と口ずさみながら,気合いを 入れてみたりして・・・。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育てtips★             『ふとしたことで』                               (第33号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ある朝のことでした。おとうさんが出張で,いつもとちがって,子どもたち より早く家を出たことがありました。家を出るとき,玄関で靴をはこうとして 何気なく,  「みんな脱ぎ捨てるように上がっているじゃないか。きちんとそろえている のはヨウジだけじゃないか。」 とつぶやきました。そのつぶやきをヨウジ君は耳にしました。  ヨウジ君も,ほかのきょうだいと同じく脱ぎ捨てるように上がる口なのです が,その日は,たまたまじょうずにそろえられていたのでした。ふだんを知っ ているおかあさんは,おとうさんのつぶやきに驚きはしなかったのですが,驚 きはその後にきました。それから以後,ほかのきょうだいの靴はちらばってい ても,ヨウジ君の靴だけは,いつでもきちんとそろえられていることに気がつ いたからです。  「ああ,そうか・・・」。おかあさんは思わずつぶやきました。  ほめることがないと思っていたのはまちがいだったのです。ほめることは, どこにでもあったのです。ほめることが見つからないのは,美談善行を探して いたからです。そんなことがしょっちゅうあろうはずもありません。  おとうさんのつぶやきが教えたのは,ほめることはごくあたりまえのことだ ということでした。ごくあたりまえのことができたときに,それをほめてやれ ばよいということでした。あたりまえのことだから,ほめるほどのことはない と考えるのは,おとなの考えであるということでした。           ・・・「おかあさんの知恵」:戸田 唯巳著:明治図書 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★新・子育ち12章★          『親めざし 親超えてゆく 子の育ち』                              《第4-08章》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ■はじめに  育っているのは何でしょうか?  どんな子に育って欲しいと願っていますか?  親なら,「よい子」に育って欲しいと思いますね。  育ちの目標としての将来像はどうでしょう?  大多数の親が目指すのは,優しく思いやりがあり仲良くできる人です。  育つのは人としての資質,能力,価値観といった生きる力なのです。  「キレル人」とは,昔は能力の優れたことをほめる言葉でした。  今ではとても近寄りたくないこわい人というイメージに変わりました。  キレタ人がこわいのは,いったい何がキレタからなのでしょうか?  キレタということは見境がなくなることです。  社会人としてのルールが無効になる狂気であり,凶器になることです。  わがまま,自分勝手,傍若無人,ジコチュウへの歯止めが壊れることです。  生きる力とはこの負の力を抑え込む能力だけではありません。  正の力が発揮されなければ,生きる甲斐がなくなります。  そのプラスの力を親は子どもにどのように伝授すればいいのでしょうか? ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問4-08:あなたは,お子さんに魅力を示していますか?】      ・・・・・・・「魅力」という内容について,説明が必要ですね! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○学ぶママ?     「勉強は済んだの?」と急かせているとき,ママはどんな思いを抱い    ていますか? 人を出し抜いて競争に勝つためにですか? それとも落    ちこぼれないようにしてほしいからですか? 進学してサラリーマンに    なって・・・という将来像への道順でしょうか? 親が長寿であるため    に財産や家業を渡してやれない今,子どもにはせめて学力という資産を    長期的に積み立ててやりたいという思いは自然でしょう。     何かと問題視された学歴社会は,これからますます薄れていくことで    しょう。学校で勉強した証明を武器に世間を泳ぎきることはできなくな    っています。代わりに現れてくるのは学習社会です。常に学び続けてい    く時代に入っています。もう勉強しなくていいという卒業がなくなって    きました。生涯学習の世紀なのです。     情報社会がやってきたのは,単にパソコン技術の発達がもたらした偶    然な結果ではなくて,社会の動きが本質的に求めてきたことだったから    です。学習するための環境として渇望されていたのです。     パパやママは学歴として「親学科」を履修してはいなかったでしょう。    今こうしてメルマガを紐解きながら,学習している最中ですね。必要な    知識をあらかじめ学習しておく暇はありません。必要なときに自ら学べ    ばいいのです。ママが見せる学びの後ろ姿は,新しい時代の本物の学び    方を子どもに示してやることにもなっています。今のママは素敵ですよ!     ・・・試験のためではなくて,わが子のために学ぶ姿は魅力的です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○パパは得?     「ぼくのおとうさんはとてもこわいです。でもときどきぼくとキャッ    チボ−ルをしてくれます。そんなおとうさんが大好きです」。子どもは    こわいから嫌いとは言わずに,たまに遊んでくれることを覚えていて好    きだと言ってくれます。ところでママはパパのことをどう思っています    か? たまにしか構ってくれないから嫌いなんて言ってはいないでしょ    うね?。     ママは普段あれこれと子どものために気配り三昧ですが,たまに口を    ついて出てしまうきつい小言に「ママなんか大嫌い」と反撃されてしま    います。パパにくらべて不公平ですね。でもそれは子どもが抱いている    父親像と母親像が違っているので,仕方のないことです。     厳父慈母,父厳しくて母優しい,この対立したイメージを子どもは持    っています。厳しいはずのパパが見せる優しさ,優しいはずのママが見    せる厳しさ,その対比の中で子どもは親についてバランスの取れたイメ    ージを作り上げていきます。その意外性が人間味の魅力としてクローズ    アップされるのです。     ただ最近,父が優しくなって,子どもから「ママが二人いるみたい」    と言われているようですが,これは父親としての存在感をないがしろに    してしまうことです。他方,パパが何も言ってくれないからと,イヤな    小言を言わざるを得ないママの胸中は辛いですね。父厳しくて母優し,    世間はそれでいいのですが,うちは違う? 子どもはそう思っているか    もしれません。     ・・・厳しくて優しい,優しくて厳しい,そのバランスが魅力です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○前向きという魅力?     世の中のこと,周りの人のことでつい不平不満を言い募っているパパ    とママのそばで,子どもはイヤな気持ちを味わっています。他人のこと    をとやかく言っているご本人はどうなのと。中学生くらいになると,親    を大人として評価しはじめます。     楽しそうに家事をする母を見たことがない子どもは不幸です。世間を    斜めにしか見ていない父の話を聞かされる子どもは不幸です。なぜなら,    そこには主体的に生きている親の姿が見えてこないからです。生きる力    のモデルであるはずなのに,その期待が裏切られるという不幸です。     世の中には裏もあります。だからといって裏ばかりではありません。    表があっての裏なのですから。かつてお天道様の光の下でのまっとうな    暮らしと言われていたものが今でもあるはずです。それを親が自分の姿    で子どもにきちんと見せておかないと,楽して金儲けという裏道に迷い    込みます。棚からぼた餅という不労所得を待ちぼうけします。楽して生    きることが楽しいという考え方には,人としての魅力はまったくありま    せん。     親は苦労した。だからせめて子どもには苦労をさせたくない,楽させ    てやりたいというのが親心だと錯覚している場合があります。三代目に    は家がつぶれるという故事はその結果なのです。苦労した親は苦労を否    定することで自分の一生を自分で否定する暴挙に走っています。     いい人生だったと自分で思わなければ誰が思ってくれるでしょう。自    分を肯定するためには持っている力を存分に使ったあとの充実感が必要    です。たとえそれが結果を出せず達成感ではなかったとしても,とても    魅力的です。       ・・・苦労をいとわない大らかさが,人としての魅力なのです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○実力?     最近の子どもは知ることに長けています。親が知らないことを知って    いることもあります。それが時として,思い上がりになる場合がありま    す。実世界のことはまだまだ未体験なので,知らないことがあることに    気がつかないためです。井の中の蛙です。     自転車のタイヤがパンクします。パパがチューブを引き出して空気を    入れ水に浸けてみます。ブクブクと泡が出てきます。空気の漏れている    ところが目に見えます。そばで見ている子どもは目を見張ります。小さ    なゴム板をゴム糊で接着すれば,パンクは繕えます。「パパすごい!」    と見直されます。     ママが調理をしているそばで子どもが見ています。大根をおろさせて    みます。子どもはすぐに疲れます。ちょっと包丁使いをさせてみます。    漬け物が同じ厚さに切れません。ママのしていることがどれほど自分に    は難しいことか思い知ります。見て知っているだけではできないという    ことが分かり,「ママすごい」と感心します。     生活に根ざした知識と技能があるということ,それこそが生きていく    上で不可欠の実力であることを親が示しましょう。親しかそれを教えら    れないのです。普段の生活の中に潜む技にこそ魅力を感じさせるような    後ろ姿を見せてやって下さい。             ・・・生活者としての魅力は親が見せるものです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○地域からの信頼?     社会生活を営む上で最も大切だと考えられていることは信頼です。誰    も自分に危害を加えないという信頼をベースとして,何かあったら助け    てくれるという信頼に期待を掛けて暮らしています。一方で,自分が誰    にも信頼されなくなったらと想像すると,生きることができなくなりま    す。     お金を借りるとき,持ち家であるかどうか,どこに何年勤めているか,    保証人がいるかどうか,いろんな要件が必要です。信頼してもらうとい    うことは大変なことなのです。これらのことはすべて,当人が地域,勤    務先,肉親等といった周りの人との確かなつながりを持っているかどう    かという確認です。そこで都会でぽつんと暮らしている人はなかなか信    用してもらえないことになります。     隣近所とお付き合いのない状態にいると,人から信頼を受けなくなる    ばかりではなくて,人を信頼しなくなります。周りの人を避けるように    なり,場合によっては犯罪の標的として見たり見られたりするような恐    れも出てきます。近頃頻発している金目当てや下着目当てのような悪意    の対象にされて,不幸にも子どもが犠牲になったりします。     無防備な信用は危険ですが,まず信頼しようとすることから人との関    係ははじまります。その親による信頼ネットワークを子どもの回りに作    っておいてやらないと,子どもの環境は育ちにとって不適切なものにな    ります。隣人と仲良くなっていると,子どものピアノの音に怒鳴り込ま    れることもないでしょうし,さらに会ったとき「○○ちゃん,最近ピア    ノが上手になったね」と励ましてもらえます。好意は信頼から溢れてく    るものです。          ・・・子どもの味方を増やすのも,親としての魅力です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○わけあり?     「おもちゃは片づけなさいと言ったでしょ」。子どもはママに言われ    て仕方なさそうにおもちゃを片づけています。同じようなことはたくさ    んありますよね。片づけるという言葉の意味は分かっているのですが,    なぜ片づけなければならないのかというわけが分かっていません。子ど    もだからでしょうか?     人の集まる場所には,「喫煙は灰皿のあるところで」と掲示されてい    ます。ところが設置してある灰皿を勝手に移動させたり,灰皿を持ち込    んだりする大人がいます。ルールを自分流に曲げてしまうのは,わけを    矮小化して自分の都合に合わせようとしているからです。矮小化すると    は,ルールが不特定の皆のためのものであることから,不特定であるが    ために無視しても構わないだろうと考えることです。大人もわけが分か    っていません。このような日常的なルール破りは,つかまらなければい    い,叱られなければいい,自分だけではないという屁理屈など,とんで    もない脇道に迷い込みます。     狭い家の中ではおもちゃを片づけないと,つまづいて怪我したり,踏    みつけて壊したり,邪魔になったりします。「みんなの迷惑」になると    いうことが分かる年齢であればきちんと教えてやります。そのわけがま    だ理解できない幼い子どもには,遊びの延長として片づけさせます。    「さあ,おもちゃさんもお家に帰してあげようね」。自分の都合を持ち    出さないように,皆のためとか,おもちゃのためといった「わけ」をし    つけることが大事です。         ・・・わけを弁えていることは,社会人としての魅力です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《魅力とは,自分をまわりとのつながりの中に生かそうとする意志です。》 ※宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を知っていますね。賢治は雨にも風にも負けな かった強い人だったと思ってはいませんか? あの詩の最後は「ソウイウモノ ニ ワタシハナリタイ」と結ばれています。負けた人なのです。でも,ナリタ イという思いを失わないで生きようとするところに,読者は魅力を感じて惹か れています。未完成であることは決して恥じることなどではありません。子ド モニモマケズ パパニモマケズ ヨクハナク ケッシテイカラズ イツモシズ カニ ワラッテイル・・・ソウイウママニ ワタシハナリタイ!?  【質問4-08:あなたは,お子さんに魅力を示していますか?】    ●答は?・・・どちらかと言えば,「イエス」ですよね!? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第47号は,いかがでしたか?  この章は少しばかり重たいテーマを扱いました。育ちのモデルとして大人の 生き方に触れざるを得ないからです。人それぞれですから,あまり深刻に受け 止めないでください。お話ししておきたかったことは,親が自分に厳しく人と の関係には気配りしてみせることが,子どもに人生を送る上で大切なものを手 渡すことになるということです。それができている親は魅力的だと思っていま す。ワンポイントでもできたら・・・。       ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■        子育て羅針盤編:『子どもの権利12条』          第1条 安心して生きる権利           第2章 存在が歓迎される権利          第3章 正しい言葉を話す権利          第4章 共感が保証される権利          第5章 自分が決定する権利           第6章 人格が信頼される権利          第7章 能力を発揮する権利           第8章 価値が伝授される権利       ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページ・・・「徒然窓」=      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   には,マガジンの「バックナンバー」,〜「掲示板」や登録・解除欄,      コラム「パパな毎日」,「子育ち12章(Ver.1,2,3)」,     「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,      組織活動の指導者用テキスト〜    を掲載しています。   是非訪ねてみて下さい。  ●PTAや家庭教育学級などでの講演のご依頼も承ります。   メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールは上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠は福岡市近郊です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問4-09:お子さんは,ママの胸で涙を流していますか?】 について考えます。お楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先から解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○