□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2001/10/01]            【子 育 て 羅 針 盤】                               (第52号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  9月から10月にかけての期間は,講演をしに出かける機会が増えます。ど の団体も秋が学びの季節と考えているようです。一度講演を聴いて下さった方 が別の組織で講師として推薦をして下さることが重なっています。大変光栄な ことであり,人のご縁ということをつくづく感じさせられています。同時に, 一人の人がいろんな団体や組織につながりを持っていることをあらためて気付 かされています。ネットワークとは本当に人の輪なのですね。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育てtips★             『母親の娘自慢』                               (第38号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  「娘の婿は,申し分のない婿でしてね,娘を朝おそくまで寝かせておいてく れますし,美容院には毎日欠かさず行かせた上に,料理までさせようとしませ んの。毎晩レストランに行こうというのですよ」  「それはそれは」と隣のおくさんがいいます。 「ところで,あなたの息子さんはどんな女の方とごいっしょですの?」  たちまち母親のぼやきがはじまります。  「息子の嫁は,怠けものでしてね。朝おそくまで起きようとしませんし,毎 日美容院へ出かけるわ,その上料理をしようという気もないのですよ。だから, 息子は三度三度外食しなければなりませんの」          ・・・「ジョ−クの楽しみ」:松田 道弘著:ちくま文庫 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12講★         『ママの手が 子どもの涙 星にする』                              《第5-01講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ■はじめに  この『子育ち12講』は毎週1講ずつの12回の連載から構成されます。  ママには各講の冒頭に問いかけられている一つの質問に答えて頂きます。  もちろんその質問の意味はいろんな局面の例を挙げながら説明をします。  もしお答えが「イエス」であるような局面があれば,質問はクリアです。  もちろん,提示されるすべての例で「イエス」である必要はありません。  この場合はイエスであると思えたら,その週の質問は合格と見なせます。  12週の12質問すべてにイエスなら,親として自信を持ってください。  ある回の質問に「ノー」と答えられても,自信を失わないでくださいね。  気が付いたときから,ママが気配りをはじめていただければいいのです。  子育ての自信を失わせている不安は,全体が見えていないから生じます。  欠けた部分が何かが分かれば,恐くはなくなり,自信を持てるでしょう。  そのお手伝いをするのが,マガジンを発行しているクマさんの願いです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問5-01:あなたのお子さんには,自分の居場所がありますか?】     ・・・・・・・「居場所」という意味について,説明が必要ですね! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ●何処で育つのでしょうか?     この『子育ち12講』は6つの課題がベースにあります。子どもが育    つということを落ちがないように理解するためには,5W1Hの設問を    想定しなければなりません。逆に言えば,この基本的な5W1H以外の    課題は二次的なものになります。ママの得意な化粧にたとえれば,基礎    化粧さえしっかりしておけば大丈夫ということです。     今週は「子どもは何処で育っているのか?」という課題を考えること    にします。何処で育つって?,家庭であり,地域であり,学校じゃない    の? 確かに場所としてはその通りですが,ママに理解して頂きたいこ    とは少しばかり違います。子どもが育ちの根を張っているトコロの正体    を明らかにしたいと思っているのです。     「子どもの居場所」という言葉を聞かれたことがおありでしょう。居    場所とはいったいどんなトコロなのか? ママはそのトコロをどう用意    してやり,どう関わっていけばいいのか? 毎日の生活の中でただ子ど    もの世話をしている積もりのままでいいのでしょうか?     もっと直截に言えば,「子どもの心は何処で育っているのか」という    課題です。気持ちや心根,精神といった無形のものが育っているトコロ    を知らなければ,心豊かな子どもを育てることはできません。居場所を    ご一緒に探してみましょう!            ・・・子どもは居場所があればすくすくと育ちます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○子ども部屋?     子ども部屋を用意してやっているご家庭も多いでしょう。夕食がてら    見ていたテレビ番組も終わると,「いつまでテレビを見ているの!」と    追い払われます。行き先は子ども部屋です。静かな部屋の窓際にある机    に向かって,子どもはおとなしく勉強をしているはずです。     ところで,もしもパパが会社で騒然として活気のある所から離れた窓    際に座わらされているとしたら,ばりばりと仕事をしようという気にな    るでしょうか? 答えは「ノー」ですよね。窓際の子どもも同じです。    子ども部屋とは本来「寝室」です。勉強する仕事場(?)ではありませ    ん。     静かな子ども部屋は子どもを隔離された気にさせます。孤独に追い込    まれ落ち着きません。やがてラジオをねだります。人の声がほしいので    す。幼年から児童の間の子どもにとって,子ども部屋は必ずしも居場所    になるとは限らないのです。青年期になれば孤独の場という別の居場所    も必要になるので,自分だけの部屋を求めるはずです。     子どもを含めた家族が活動する所はファミリールームです。それぞれ    の声を聞き気配を感じながら落ち着きを得て,さらに皆がしている仕事    を横目に入れることで活気が生まれ,自分の仕事に励むことができます。    後片づけをしたあとの食卓で勉強というスタイルも案外捨てたものでは    ありません。      ・・・居場所とは,家族の中に場所を持っているという意味です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○お前たちのため?     父親不在を責められて,パパはつい「お前たちのために苦労している    のに!」と言ってしまいます。子どもが中学生程度ですと「別に頼んで    いない」と跳ね返されて,さらに「何だその言いぐさは」とエスカレー    トしていきます。いわゆる売り言葉に買い言葉になります。パパの切な    い気持ちも分かりますが,やはりそれを言ったらおしまいなのです。     言われた子どもの立場になってみます。自分が居るばっかりに父親が    苦労している,自分は父親にとってお荷物で,居ない方がいいんだと直    感します。自分の存在が否定されるわけですから,不安でたまりません。    素直に聞き入れることはできません。そこでせめて「頼んではいない」    と言うことでお荷物になることを辞退しようとしているのです。     最近の子どもは親の苦労を分かろうとしていないという声も聞こえま    す。仕事の苦労は別にして,親の苦労など子どもに分からせようとする    ことは無駄です。親の苦労は親にならなければ分かりようがないからで    す。子どもは自分が苦労の種などとは思いもよりません。ですから,そ    れを言った途端に,子どもは親が信じられなくなります。     子どものためにと自分の励みにするのならば,その気持ちが親心でし    ょう。苦労を背負い込んだという気の持ちようは,親であることの喜び    を失っていることになります。子どもにとってうれしいのは,自分の存    在を親が喜んでいてくれることなのです。    ・・・父親が子どもとのつながりに見せる喜びが子どもの居場所です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○やっと手が離れた?     母親らしさにクタクタに疲れた頃,天の采配か,わが子が入園・入学    を迎えます。ママはつい「やっと子離れできた」とほっとします。子ど    もが留守の間に,それまで我慢してきた自分のしたいことができるので    当然ですね。ママの気持ちも分かりますが,やはり子どもには感づかれ    たくないですね。     子どもは新しい環境に向けて不安がいっぱいです。それなのに朝出か    けるときに母親がほっとしていると気付いたら,余計に不安になります。    帰ることを願われていないのですから,何となく追放されているような    気持ちになります。     大好きなママが自分の帰りを心待ちにしてくれていると思えるから,    子どもはがんばって登園・登校できるのです。自分がいないときママが    どこかに出ていくと思うと子どもは不安になり,家を出ていこうとしま    せん。登校を渋るようにもなります。ママはいつでもそばにいると信じ    られたら,子どもは安心して出かけます。     家にいなければならないということではありません。行き先が分かっ    ていてすぐに飛んできてくれると信じられたら,それでいいのです。マ    マが勤めているような場合には,休みの日にでも一度ママの会社に連れ    て行って,「ここにいるからね」と見せてやって下さい。ママがいる所    の具体的なイメージがありさえすれば,子どもは安心できるからです。    ・・・母親とのつながりを信じられたら,子どもは前向きに育ちます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○つらかったね!     何気なくカーラジオで視聴者からの悩みの相談を受ける番組を聞いて    いたときです。娘さんが相談をしていました。「どうしたの?」と問わ    れるままに,それまでの経緯を話しはじめました。その娘さんは父親に    どういう訳か分からないまま疎まれ続けているそうです。居間で顔を会    わせると露骨に嫌な顔をされました。やがて娘さんは拒食症に罹って,    病院に診察を受けに行きました。検査をしても格別悪いところはないと    いうことで,薬をもらって帰りました。いっこうに改善しないので,娘    さんは相談をしてきたのです。     すっかり聞き終わった後で,相談を受けていたお医者さんが「つらか    ったね」と言うと,娘さんは泣きだしました。検査や薬ではなくて,そ    の言葉がほしかったというのです。ありのままをしっかりと受け止めて    くれれば,そこに救いの始まりがあります。ラジオ番組に匿名で相談を    し,会ったこともない先生であっても,自分の今の気持ちを受け止めて    くれる人に出会えたことはうれしいことなのです。     人は人とのつながりを持てない,自分の気持ちを分かってもらえない    と辛くなります。そのことが居場所がないということです。孤独になれ    ば不安な気持ちになり,心の扉を閉め切って守りに入ります。守りにエ    ネルギーを使い果たして,育つどころではなくなります。閉じこもって    いる間は,育ちが停止します。     子どもの場合には,分かってもらえない寂しさを自覚できないことが    あります。何となく不安だと思うだけで,それがなぜなのかという所ま    で思いが及びません。イライラしたり,落ち着かなくなったり,ふさぎ    込んだりするだけです。「つらかったね」の言葉で,自分の不安は周り    の人に分かってもらえなかったことだと見えてきたのです。不安の原因    が分かりさえすれば,解決に向けて大きな一歩が踏み出せます。        ・・・誰かに分かってもらえたら,子どもは伸びていきます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○お母さん!     いじめで自殺した男子中学生は,「家の人へ」という書き出しで遺書    を書き残しました。子どもにとって最後の居場所(逃げ場所)はやはり    母親の懐でしょう。パパとすればさみしいのですが,負けても悔いは無    いでしょう。どうして自殺した子は,「お母さん!」と書かなかったの    でしょうか?     ここ一番という相談をするときは,大人でも迷います。ましてや子ど    もは,思い切って「お母さん」と呼びかけても,次を言い出すのに逡巡    します。そのとき,ママが焦らずにゆっくりと迎え入れてくれなければ,    「もういい」とチャンスを失っていきます。たった一度の大切な「お母    さん」を聞き逃したら,子どもの命綱を切ってしまうことになります。    ママにとって子どもが言う「お母さん」は,目に入らぬ印籠です。恐れ    入って聞いてやってください。     ママは子どものことを何でも知っていると思いこんでいます。そこで,    「お母さん」と呼ばれたときに,だいたいの察しがついているので,つ    いいい加減な受け答えをしてしまいます。四六時中そばにいる幼児の頃    ならそれも間違いないでしょう。でも,子どもはママの知らない育ちを    していくものです。ママの知らない子どもがいるのです。「うちの子に    限って!」と驚かされるケースが出てくることになります。     いま目の前にいるわが子を見て聞いてやって下さい。昨日までママが    見ていたと思っていた子どもと違う子どもが見えるかもしれません。マ    マはわが子であっても知らないことがあるかもしれないと謙虚な対応を    忘れないようにして下さい。その優しさがあれば,子どもを救えます。          ・・・ママの懐は子どもの心にとって究極の居場所です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《居場所とは,パパ・ママと心がつながっているという安心です。》 ※母の懐とは優しく包み込んでくれる所というイメージがあります。心が傷つ いたとき,「どうして傷ついたの?」と怖い顔でわけを問いただされることな どなく,ただ笑顔で黙って抱きしめてくれるだけですが,それで傷は十分に癒 されます。まず傷を治さねば次のステップには進めません。「いつでも飛び込 んでおいで」,そんなメッセージを送り続けてやって下さい。  【質問5-01:あなたのお子さんには,自分の居場所がありますか?】    ●答は?・・・どちらかと言えば,「イエス」ですよね!? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第52号は,いかがでしたか?  この号から「子育ち12講」をはじめました。最初からご購読頂いている方 はお気づきのように,第1号にかなりの上書きを加えてリサイクルをしていま す。第5版は「子育て羅針盤」の原点に返って,新しい1年を開いていく積も りでお届けいたします。同時に12という数字の意味を各号毎に説明してまい ります。  下に掲げている「子どもの権利12条」は,前号までの第4版で積み上げて きたものです。子どもが育つために必要十分な権利を提示しました。このマガ ジンはそれらを各号で一つずつ解き明かすというスタイルで版を重ねて来まし たし,今後も同様にお届けいたします。ドウゾお楽しみに・・・。       ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■        子育て羅針盤編:『子どもの権利12条』         第1条 安心して生きる権利(WHERE)         第2条 存在が歓迎される権利         第3条 正しい言葉を話す権利(WHEN)         第4条 共感が保証される権利         第5条 自分が決定する権利(WHO)         第6条 人格が信頼される権利         第7条 能力を発揮する権利(WHAT)         第8条 価値が伝授される権利         第9条 弱点を慈しむ権利(WHY)         第10条 将来が尊重される権利         第11条 失敗から学ぶ権利(HOW)         第12条 機会が供与される権利       ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■    (この「子どもの権利12条」は今号限りで掲載を終了します) ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページ・・・「徒然窓」=      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   には,マガジンの「バックナンバー」,〜「掲示板」,      週刊コラム「パパな毎日」,「子育ち12章(Ver.1,2,3)」,     「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,      組織活動の指導者用テキスト〜    を掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●PTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールは上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問5-02:あなたは,お子さんとの信頼関係がありますか?】 について考えます。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○