□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2002/11/04]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第109号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  男は忘れることによって生き,女は記憶を糧として生きる。                      ・・・・・T.S.エリオット  子どもは忘れることによって育ち,母は記憶を楯として育てる。                      ・・・・・H.モリのクマさん ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★ママの?★      『ママはなぜブランドものを持っていないのでしょう?』                               (第41号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  私が新聞を取ってきてパパに渡すと,パパは「ありがとう」と受け取って, 中に挟まっているチラシを抜いて新聞を読み始めます。脇に置かれたチラシは ママが一枚一枚広げて見ています。通信販売のチラシも届けられますが,それ はママ専用です。ときどきパパも見て,ブランドものを勧めていますが,ママ はあまり関心がないようです。ママはケチなのかな?  子どもに「君の友だちの○○ちゃんて,どんな子?」と質問して,その答え で精神の発達を見る調査があります。「○○を持っている子」と答えるのは, 幼稚園ぐらいの子どもに多く,○○はポケモンのゲームやミッキーのぬいぐる みだったりで,友だちを認識する手段がものになっています。逆に言えば,自 分についてもどんなものを持っているかで認識しています。  少し年齢が上がると,「かけっこが速い子」「ピアノが弾ける子」と能力で 相手を認識するようになります。さらに年上になると,「お父さんが先生をし ている子」のように,家族構成によって相手を認識するようになります。さら に成長してくると,「活発な子」といったように,性格によって相手を認識す るようになっていきます。  精神が幼い子どもは,相手や自分を認識する手段としてものを使い,精神が 発達するほど,より抽象的なものを使うというわけです。この傾向は大人にな っても変わりません。ブランドが大好きな人が,どれくらい精神的に成熟して いるか,分かってきます。「ヴィトンのバックを5つ持っています」と自慢す る人は,「ポケモンカードをたくさん持っている」と自慢する幼稚園児と同じ レベルなのです。  ブランドものはいい品物だから,ママにも持たせたいとパパは思っているよ うですが,ブランドが自慢のシンボルに成り上がっているのが,ママにはイヤ なのかもしれません。ママはもっと素敵なものを持っています。それは私!  もしかしたらパパ? ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育てチェック12条★          『口一つ 耳は二つと ママ知らず』                              《第9-05講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ■はじめに  話は変わりますが,皆さん方は今日,この会場に何で来られましたか? 返 事は「歩いて」ですか,「車で」ですか? それとも「講演を聴きに」,「誘 われて」,「役目で」ですか? 何について返事をすればいいのか,迷われた ことでしょう。それとも,さっと返事ができましたか?  私が問いかけた「何で」というのは,何を尋ねているのでしょう? どのよ うな手段でこの会場に来たか,どのような理由でこの会場に来たか,どちらに も受け取ることができますよね。普段の会話では,相手が何を尋ねているのか, 話の流れの中で判断できます。でも,今のように突然問われると,判断できま せんね。  お子さんが帰宅したとき,「今日はどうだった」と言葉をかけていませんか?  お子さんはきっとこう答えるでしょう。「別に」。「何もなかったの」, 「うん」と続きます。このごろ,うちの子は何も話さなくなった,と嘆くこと になります。確かに,子どもは成長してくると,親に対して洗いざらい話すこ とをしなくなります。親に内緒事を持つのは自立しているせいなのですが,そ れだけではない部分もあります。  「今日はどうだった」という親の問が,子どもには何を聞かれているのか分 からないのです。どう返事をすればいいのか分からないから,曖昧に「別に」 としか言えないのです。先ほどの「何で来たか」という問の曖昧さよりも,も っと曖昧さがひどいのです。子どもが話さなくなったのではなくて,話させて いないのです。返事のしようのない問が,子どもを黙らせてしまいます。  ご近所づきあいで,こんな会話が交わされます。出かけようとしていると, 「お出かけですか?」,「ええ,ちょっとそこまで」,「そうですか,いって らっしゃい」。考えれば,何の話かよく分かりませんよね。ご近所の会話はそ れでいいのですが,親子の会話はそれでは困ります。  親子の会話は大切な子育てです。親子が分かり合えるというのはおまけであ って,本当は子どもの育ちに欠かせないものなのです。そのことをこれからお 話ししていきましょう。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問9-05:子どもに話させていますか?】       ・・・・・「話させる」という内容について,説明が必要ですね ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○第5条の意味?     全体の構成である「誰が育つのか,どこで育つのか,いつ育つのか,    何が育つのか,なぜ育つのか,どのように育つのか」という問題設定の    三番目に,話が進んでいきます。「いつ育つのか」という問題です。     「いつ育つか」なんていう問には,答えようがありませんか? 毎日    育っている,としか言えませんね。気がついたらいつの間にか大きくな    って,というのが実感でしょう。でも,こんなことを思ったことはあり    ませんか? 「図体ばかり大きくなっても,まだ子どもなんだから」。    身体は食べさせておけば大きく育ちます。まだ子どもと言うときの子ど    も,その子はこれまでお話ししてきた,もう一人の子どものことです。     朝夕の食事に気配りすることが大切であることは,皆さんは十分に理    解しておられるはずです。健康な子どもに育って欲しいからですね。と    ころで,子育てとはもう一人の子どもの育ちを促すことですよとお話し    しておきました。もう一人の子どもがいつ育っているのか,それを知ら    なければ,子育てはできません。     幼いのに,おませな子どもがいます。もう一人の子どもがおませなの    です。そのように子育てしているからです。いつの間に,そんな風に育    っているのでしょう。いつ育つかという問に答えておかなければ,もう    一人の子どもは勝手に育っていると思ってしまうことでしょう。よい方    に育ってくれればいいのですが,そうではないときには「そんな子に育    てた覚えはない」という親としての後悔が待っています。     本当は普通に暮らしていれば,いつ育つかなどということは気にしな    くていいことです。しかし,時代の変化のせいで知らないうちに子育て    の手抜きをしている現状では,これだけは欠かせないということを意識    しておかなければならなくなっています。大自然の中では種は勝手に芽    を出しすくすくと育っていきますが,都会では手間暇を掛けてやらない    と育たないという状況と同じなのです。     もう一人の子どもがいつの間にか育っているということのないように    するには,どうすればいいのでしょうか? 第5条の扉を開くことにし    ましょう。        ・・・《もう一人の子どもも養分を摂取したときに育ちます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○言葉?     どちらかといえば,女性の方がおしゃべりであるというのが古来の通    説です。なぜなのかということを考えた哲人がいて,答えを見つけてい    ます。女性がおしゃべりであるのはやはり訳がありました。それは,女    性はやがて母親となり,そのときに子どもに言葉を教える先生にならな    ければならないからということなのです。     そういえば,言葉のことを母国語と言いますね。言葉は母の言葉だっ    たのです。もう一人の子どもが第二の誕生をすると言っておきました。    母親からすれば,第二の出産ですが,そのときに第二の母乳が必要にな    ります。それが母の言葉なのです。もう一人の子どもは言葉を糧として    育ちます。     聖書に「はじめに言葉ありき」と記されているのも,人になるのは言    葉を持ったときだと考えられていたからです。言霊という言葉もありま    す。言葉には聖なる力が宿っているという意味です。霊という抽象的な    存在を実感していた人たちは,自分の中に宿るもう一人の自分を霊魂と    言い表していたのです。言葉はもう一人の自分を育てていると弁えてい    たようです。     人となりは言葉に現れます。そのことを直感しているから,人は言葉    遣いに敏感になります。しつけのできていない子どもはどんな子どもか    という問に対して,多くの親が言葉遣いの悪い子をあげます。もう一人    の子どもの育ちの良し悪しは,どんな言葉を取り入れているかによって    見積もられているのです。さらに,子どもの言葉が汚いなら,その親の    言葉が汚いと思われます。この直感は子育てをするときにとても大事で    す。     いつ育つのか? その答えは,もう一人の子どもが言葉を覚えたとき    に育つということです。子どもの育ちに栄養のあるものを食べさせる気    配りと同じ以上に,もう一人の子どもの育ちには豊かな言葉が与えられ    なければならないのです。粗末な言葉を食していたら,もう一人の子ど    もは貧相な育ちを強いられます。     優しい子どもに育って欲しいのなら,優しい言葉を与えなければなり    ません。優しく育てれば優しい言葉を使うようになるというのは,育ち    とは逆なのです。はじめに言葉ありきなのです。乱暴な言葉遣いをして    いるから,乱暴になっていきます。この順序を間違えないでくださいね。     美しい言葉を使えることは,最も基本的なおしゃれであり,身だしな    みなのです。嫁ぐ娘に,「あなたには何も物は持たせられないけど,美    しい言葉だけはしっかりと持たせてあげたからね」,そう言って送り出    すフランスの母親がいます。母から母へ伝える財産,大事にしてくださ    い。           ・・・《第二の誕生には言葉という母乳が不可欠です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○口移し?     赤ん坊はお母さんのオッパイを口にくわえて母乳を吸い出します。も    う一人の子どもはお母さんの口から出てくる言葉を目と耳で聞きだして    いきます。もう一人の子どもは音を聞き分けると同時に,その発声の口    型を見分けようとします。お話ししているママの口元をじっと見ること    がありますね。     言葉を与えるとき,赤ちゃん言葉は禁物です。幼い口まねは実は発声    の仕方が未熟な段階であるに過ぎません。きちんとマネをしようとして    いるのですから,正確な手本を与えておかないと,未熟なままに据え置    かれてしまいます。語りかけはきちんとした言葉であるように気をつけ    てください。もう一人の子どもが耳から聞き取った言葉を,自分の口に    言わせようとしています。それが子育ちです。     念を押しておきますが,親がもう一人の子どもを育てるのが子育て,    もう一人の子どもが自分を育てるのが子育ちでしたね。親の言葉を口移    しに聞き覚えたもう一人の子どもが,その言葉を自分の口に移している    のです。言葉は二段構えで身につけていきます。     言葉が遅いという親の心配があります。一つは親の言葉を聞き取って    いないために言葉を覚えていないこと,もう一つは言葉は知っているが    発声の仕方が育っていないことが考えられます。どちらなのかをきちん    と見極めて適切に対処することが大切です。     言葉にも離乳食があります。いつまでも母乳というわけにはいきませ    ん。ママは子どもと密接に関わっているうちに,子どもの言いたいこと    を察することができるようになります。離乳するためには子どもからオ    ッパイを取り上げますが,同じように子どもの言葉をゆっくりと聞き取    るために,ママは少し離れることが必要になります。ある程度の言葉を    使えるようになってきたら,ママは分かっていても,子どもが口でちゃ    んと言えるまで待つのです。     察しのよいママは子どもが自己表現する前に分かってしまって,言葉    を待たずに対処しがちです。でも,それでは言葉を使うチャンスを狭め    てしまい,言葉の訓練ができません。もちろんゆっくりと焦らずに,徐    々にし向けていくことは言うまでもありません。子どもに話させる,そ    れが言葉の離乳食に相当します。自分で咀嚼できる言葉という意味です。     トイレトレーニングがあります。おむつを外すと,何度か粗相をしま    す。どうして早く言えないの,とママは焦ることがあるかもしれません。    ママが口移しに言葉を教えていないからです。それでは,どんな風に言    葉を教えたらいいのでしょうか? 次に考えてみましょう。    ・・・《話して聞かせ,次に話させて聞く,それが言葉のしつけです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○そのまま?     子どもは口まねが上手ですね。ママの言い方をそっくり再現できます。    それにはそれなりのわけがあります。もう一人の子どもは単純にママの    口まねで言葉を取り込んでいるのです。そこに,しつけの勘所がありま    す。もう一人の子どもがそのまま使える言葉を教えるというしつけ方で    す。この簡単なしつけが忘れられてしまっています。言葉はもう一人の    子どものものということを見過ごしているからです。     おしめが濡れてもじもじしている子どもに,「おしっこ出た?」とマ    マが言うので,「おしっこ出た」とオウム替えしに言葉を覚えます。お    しめを外しても,「おしっこ出た」と下着を濡らして言ってきます。    「どうして早く言わないの」と言っても,その言い方を教えられていな    ければ無理です。何かしら兆候を見せたときに,「おしっこ出そう?」    と言葉を教えると,「おしっこ出そう」と言うことができます。それか    らトイレに連れて行きましょう。     「ママ,お菓子食べていい」。「だめ,もうすぐゴハンだから」。マ    マに禁止されます。「イヤだ,今食べたい」と言い出すかもしれません    ね。「お菓子食べていい」,「お腹空いたのね」,「うん」,「ママも    お腹空いてるのよ,もうすぐゴハンができるから我慢しようね」。もう    一人の子どもは自分がお腹が空いているということを確認できて,ママ    も同じだと知り,ちょっと自分を我慢させようという風に導かれます。     「ダメ」という拒否はママ対子どもの言葉であり,「お腹が空いたの    ね」という言葉はもう一人の子どもが言う言葉になっています。子ども    の立場になって言葉掛けをするというのは,こういうことです。ママの    言葉がそっくりそのまま,もう一人の子どもに移っています。もう一人    の子どもは自分に対して言い聞かせる言葉遣いを手に入れることができ    たことになります。我慢させられるのではなくて,我慢するという導き    ができます。     「廊下を走ってはいけません」という否定形の言葉が直に子どもに向    けられます。もう一人の子どもの出番が奪われています。だから,子ど    もは言うことを聞きません。「廊下を走らないようにしよう」という肯    定形に変えてみると,それはもう一人の子どもに言葉をかけていること    になります。走るか走らないかを決めているのはもう一人の子どもです    から,走らないようにしようとそのままもう一人の子どもの言葉になり    ます。     学校でも地域でも,子どもに掛けられる言葉は直接的です。ああしろ    こうしろと言う指図が多いでしょう。もう一人の子どもがしっかり育つ    までは,ママの言葉が頼りです。子育てをよろしくお願いしておきます    ね。もう一人の子どもが話せるようにしつけてください。         ・・・《ママの言葉はもう一人の子どもの言葉になります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○言葉の向き?     インスタント食品ばかりでは健康によくありませんが,もう一人の子    どもの糧である言葉はどうでしょうか? 子どもたちはテレビから流れ    出るインスタント的言葉を取り込んでいます。語彙の良し悪しもさるこ    とながら,言葉の使い方に偏食の弊害が現れています。また,日常の大    人の言葉遣いも子どもには必ずしもいいものではありません。どういう    ことが心配なのでしょうか?     夕餉の後,ママは後片付けをしています。パパはテレビを見ながら,    「お〜い,お茶」と言います。普段であれば「ハーイ」と答えているの    ですが,その日はちょっと違っていました。「お茶がどうかしましたか」    という返事です。和やかな雰囲気ではありません。     他に何か原因があるのかもしれませんが,「おーい,お茶」という物    言いも気に障っているようです。「お茶」という言葉はその辺に放り出    されている捨てぜりふなのです。聞こうと思うと,放り出されたお茶と    いう言葉をわざわざ拾いに行かなければなりません。そんな失礼な物言    いはありませんよね。それがカンに障るのです。     テレビの言葉も同じです。アナウンサーが「おはようございます」と    挨拶をしても,だれも返礼はせずに無視していますよね。勝手に言って    いるだけ,お茶の間に言葉が捨てられているのです。拾いたければどう    ぞという物言いです。子どもはテレビの前で,言葉とはその辺に放り出    すものと覚えていきます。こうして言葉は聞かせるものだということを    知らないままに育っていきます。     「ママ,後でいいから,お茶を一杯入れてくれないか」,せめてこう    いう物言いが最低限のルールでしょう。つまり,だれに向けているかを    はっきりさせ,相手の都合に気配りし,こちらの願いを伝えることです。    言葉遣いとは,だれに向けて言うのか,だれに聞いて欲しいのかという    ことをはっきりさせることです。言葉遣いを注意するとき,「だれに向    かって言っているんだ」と言うのは,このことです。だれに向けて話す    かと気を遣えば,自然に敬語が出てきます。捨てぜりふは飾る必要はな    いでしょう。     腕白息子が帰って来るなり「お腹空いた」と言っています。その言葉    にママは「冷蔵庫にケーキが入っているから食べなさい」と応対します。    それは言葉のしつけにはなりません。「お腹空いた」という言い方は誰    に向けてもいない捨てぜりふです。ママは勝手に言わせておけばいいの    です。捨てぜりふで用が足りると思わせたら,社会に出て子どもが困り    ます。「ママ,お腹が空いているんだけど,何か食べるものがあったら    ちょうだい」。子どもにちゃんと話させる癖をつけること,それを聞き    届けることがしつけです。ところで,「ちゃんと」とはどういうことで    しょうか? もう少し紐解いておきましょう。       ・・・《捨てぜりふは意思をちゃんと伝えることができません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○文章化?     言葉には向きが必要だと言いました。そのためには,言葉をつないで    いかなければなりません。取りあえず,文章化することから始まります。    片言が文章につながり,いくつかの文章を順序よく並べ,小さな話に組    み上げるのです。話すというのは,話になっていなければなりません。    お話にならない,それは文脈が整っていないことを指します。     普段から文章のやりとりに慣れていないと,人の話を理解できなくな    ります。例えば,学校で先生は話をします。単語的な表現しか聞き取れ    ないと,やがて先生が何を言っているのか分からないということになり    ます。     「どうして勉強しなければならないのですか?」。子どもの時代には    誰しもその疑問を持つはずです。あなたのお父さんやお母さんは勉強し    ていますか? 勉強なんかしていませんね。子どもの時にいっぱい勉強    したからです。大人になったら勉強しないから,今のうちにするのです。    という説得もあります。でも,それでは解答にはなっていません。     勉強というのは,頭の中に知恵の作業場を構築する工事です。お家に    は台所があります。食事を作る作業場ですね。お刺身を作ろうとすると    まな板と包丁が必要です。できた料理を盛りつけるお皿が必要です。い    ろんな料理を作ってみると,それぞれに必要な道具が揃っていきますね。    こうして台所ができていくと,その後はどんな料理でも作ることができ    ます。同じように,いろんな勉強をすることで,頭の中に知恵の台所を    作ることができます。勉強しなかったら,台所がないお家と同じで,自    分で知恵を作り出すことができなくなります。     勉強の話をしましたが,勉強の基本は言葉です。言葉の世界で言えば,    いろんな言葉のつながりパターンを身につけると,状況に相応しい言葉    遣いをすることができます。いつか同じ場面を経験したことがある,そ    れが知恵の根っこなのです。幼いときに自転車に乗る経験を済ませてい    ると,途中にブランクがあっても,すぐ乗れるようになりますね。お話    をたくさん覚えて,そのお話のパターンをきちんと整理して積み上げて    いくことが,最も基本的な勉強であるのです。話は知恵の構造と同じだ    からです。     文章化できる,ちゃんとお話ができる,それがもう一人の子どもの成    長の姿です。言葉を糧に,知恵という肉体構造が太っていると考えてみ    てください。もう一人の子どもは言葉という知恵によって構成されてい    るのです。構造化した言葉,それが文章ですね。     言葉を覚えたとき,もう一人の子どもが育っているということがイメ    ージしていただけたでしょうか? ひとまず,ここで話を終えて,続き    は次の第6条で考えることにしましょう。        ・・・《おしゃべりは無構造ですから,お話にはなりません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《話させるとは,もう一人の子どもの成長の確認です。》 ※子どもが親と話していて嫌がることの一つは,親の一人合点です。この子は こんな子という親の思いこみも同じ結果につながります。子どもの願いは最後 まで話を聞いて欲しいということです。特にママにその傾向が強いようです。  何せママは赤ちゃんの頃からのつきあいで赤ちゃんのことをよく察する力を 獲得しています。その自信が子どもの成長につれて過信になっていきます。子 どもは親の知らない部分を育てていきます。なのに親はすべてを知っていると 思っていますから,早とちりというすれ違いをするようになります。子どもに 最後まで話させるように意識しておいてくださいね。  【質問9-05:子どもに話させていますか?】    ●答は?・・・どちらかと言えば,「イエス」ですよね!? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第109号は,いかがでしたか?  福岡の地もめっきり冷え込んで参りました。クマさんは寒くなると冬眠の本 能が目覚めてきて,朝の起床が辛くなっています。これからもっと寒くなると 思えば思うほど,思いやられます。  11月には講演が3件入っています。久しぶりに子育てを離れた講演が2件 ありますので,少しばかり新鮮な気分を味わうことになるでしょう。かねてよ り,大人育ちの話(?)にまとめてホームページにアップロードしようと思っ ている講演ネタですが,未だに暇を見つけられません。きっかけになるとよい のですが・・・。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページは ・・・「徒然窓」=      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   です。「子育て羅針盤」の「バックナンバー」,〜「掲示板」,     週刊「今週のコラム」,「子育ち12章(Ver.1,2,3,4,5,6,7)」,     「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,     社会教育・ボランティア組織活動の指導者用テキスト〜    などを掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●大小問わずPTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   関心をお持ちの方は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールをお知りになりたい方は上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問9-06:子どもに意味が伝わっていますか?】 について考えます。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○