□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2003/05/19]            【子 育 て 羅 針 盤】                               (第137号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  愛するものと一緒に暮らすには一つの秘訣がいる。すなわち相手を変えよう としないことだ。                         ・・・・・シャルドンヌ  愛する子どもと一緒に育つには一つの秘訣がある。すなわち相手を育てよう としないことだ。                      ・・・・・H.モリのクマさん ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★ママの?★             『聞き分けがない?』                               (第07号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ママは聞き分けのない子よりも素直な子を好きになります。素直な子は手が 掛からないですし,なにより一心同体であるという安心感があります。素直な 子はいい子です。親の言いつけをよく守り,すくすくと育っているように感じ られます。  反抗期などに,親の意向に逆らい聞き分けないようなときには,何とかして 従わせようと態度を荒げてしまうこともあるでしょう。親としてのプライドを 傷つけられたと感じるようになると,強硬手段に打って出ます。叩いても言う ことを聞かせようとします。虐待に一直線です。  一つの方法は,「いい加減にしないと,どうなっても知らないからね」と, さじを投げることです。聞き分けないことの責任を取らせればいいのです。も ちろん程度問題ですが,じっと見守る体勢を取って放り出してやってください。  聞き分けないということは,子どもが自分なりに判断し決めているというこ とです。ママとは違った判断をしているのです。子どもの判断は未熟であり, 間違っていることでしょう? それでも,子どもは自分で考えています。その ことを大事にしてやって欲しいのです。  親のいうことを何でも素直に聞く子どもよりも,聞き分けのない子どもの方 が将来の育ちが確かなものになります。成長したとき,意志が強く判断力も優 れた青年になるからです。子どもなりの判断が間違っていても,その責任を取 ることで,判断の修正をし自分の決めたことを受け入れる覚悟を身につけるこ とができるからです。素直な子というのは,どちらかといえば自分で考えない 子どもなのです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★親の役割12講★         『バリア張り 外の世界が 荒れ果てる』                             《第11-07講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ■つれづれ・・・  子どもがスケート遊びで道路を駆け抜けていきます。急には止まれないとい う速さで,見ているとヒヤヒヤします。ご近所の方は車を運転するときには, 事情に配慮して徐行していますが,アパート住まいの若い方は一旦停止もなく スッと車を飛び出させるので心配です。  子どもがチョロチョロすると邪魔だという気持ちが一般に支配的になってい ます。子どもたち そこのけそこのけ 車が通る,ということです。車社会と いう暮らしぶりは地域という居住区には馴染みません。車の横暴さをむき出し にされては,傍迷惑です。人の弱さを慈しむ気配りを失ったら,利器は凶器に 成り下がります。  ところで,小学生がガソリンを浴びせられ火をつけられた事件がありました。 自分の死を背負って出歩き,誰でもよかったからお裾分けをしたということの ようです。とんでもないことなのですが,その思慮を失ってしまう人がそばに いるかもしれないと思うとこわいですね。  住宅街であれば少しは人のつながりがあり,少しはお互いを気遣い,もうち ょっと歯止めが働いたはずなのにと思うものです。人のつながりを断っている 住宅街,つながりを拒否する閉じこもり,それは都会化という個人的な安寧の 姿なのでしょうが,一歩外に出たら修羅の世界という危ういものです。  バリアフリーという言葉が時代のキーワードですが,日々の生活パターンが 自宅に閉じこもるようなバリアを張り巡らしています。皆が周りに無関心にな るから,皆の周りが目の届かない闇の世界に荒れ果てます。バリアを張ること で,バリアを張らなければならなくなっているのは自己矛盾です。暮らしのバ リアフリーから始めないと危険の種を蒔いているようなものです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問11-07:お子さんの勇気を認めていますね?】      ・・・・・「勇気を認める」という意味を確かめておきましょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○がんばったね?     幼い頃は怖いもの知らずです。危なっかしくて目が離せません。見て    いるとどうしても制止することが多くなります。子どもはワクワクする    冒険から封じ込められるようになります。臆病になる道に迷い込みます。    勇気という前向きの気持ちを萎えさせるからです。     幼い子どもが怖いと感じることが一つあります。それはママからの離    脱です。ママの姿が見えないと不安になり,怖いという感情を持ちます。    それを我慢できるようにならなければなりません。怖いという気持ちを    抑え込む重し,それが勇気という強さです。我慢することも勇気なので    す。     勇気を発揮するには,かけ声を発することです。負けないぞと叫んだ    り,腹の底からワアッと声を張り上げたり,拳をきつく握りしめたりし    ます。体に力を入れることで,気持ちを鼓舞することができます。相撲    取りが勝負の前に顔面を思いっきり叩く仕草をすることがありますが,    同じことです。     子どもがお留守番するとき,不安で怖い思いをします。それを必死に    我慢します。身も心も張りつめています。ママの顔を見たら泣き出すか    もしれませんね。緊張がいっぺんに解放されて安心するからです。とに    かくそっと抱きしめてやってください。     さすがお兄ちゃんね,お姉ちゃんね,とほめてやることを忘れないで    ください。じっと我慢できた勇気を認めてやるのです。勇気を持たせよ    うとしようとしても,それは無理です。勇気は自分の中からわき出させ    なければならないものです。そこで,勇気を出したときに,その勇気を    認めてやるのです。がんばったね,その一言で子どもは絞り出した勇気    を受け止めてもらえます。     子どもを見守るというのは,子どもががんばった姿を見つけてちゃん    と認めてやるためなのです。できない姿を見つけるのは見張ることにな    ります。がんばりなさいと言うことではなくて,がんばったねと認める    ことが大事なのです。    ・・・《一所懸命な姿を見つけてほめてやるのが,ママの見守りです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○勇気半分?     イヌがいると遠回りをします。牙を持った長い口が怖いのは本能です。    イヌが持っている獣性,言葉の通じない相手への警戒心がわき上がって    くるからです。危険を察知する感性です。それを確かなものとして認知    するのが体験です。たった一度だけ,イヌに寄りかかられて押し倒され    た恐怖の体験,それが身体に染みこみます。     怖くないと言って聞かせても,それは無理です。身体の恐怖はおいそ    れとは理性で消せるはずもありません。一つの救いは,人が忘れる力を    持っていることです。完全にぬぐい去ることはできなくても,薄れさせ    ることはできます。トラウマは傷跡として残りますが,痛みはかなりの    程度薄れるのと同じです。     さらに怖い体験を上書きする積極的な対応が望まれます。身体が感じ    る恐怖をうち消す体験を重ねるのです。イヌに慣れさせるということで    す。触ってみればいいのです。そのときに勇気が必要です。だからとい    って,触ってみなさいというだけではうまくいかないでしょう。少々の    勇気では間に合わないからです。     ママがイヌに触ってみせるのです。陰から一緒に触らせます。それだ    ったら半分の勇気で済みます。勇気のお手伝いをしてやるのです。ちょ    っとだけならやれるかな,という小さな勇気を引き出してやりましょう。    徐々に慣れさせる,それはちょっとずつ勇気を出していくことです。     自転車の練習で,パパが後ろから支えてやれば,怖いという思いに半    分の勇気で対抗できます。手をかけるとは,勇気のお裾分けをしてやる    ことです。勇気の分割払いをすれば楽ですよね。どんなによいと思われ    る体験でも丸投げすれば,子どもは受け止めきれません。小出しに刻ん    でやる,嫌いなものを食べさせるやり方と同じ手が使えることを知って    おいてください。    ・・・《勇気のようなとらえどころのないものも分割で手に入ります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○優先順位?     子育ちの特徴は自分を外に向けて発揮することです。外に出さずに閉    じこもるのは育ちに逆行することになります。外で遊びなさいという要    請は,育ちの基本的なパターンに合致しているからです。内に籠もると    文字通りに開花できないのです。ゲームの不健全性は,手の動きが外部    のゲーム機に伝わりますが,結果が画面を通して自分に跳ね返ってくる    という閉じた行為だからです。単なる自慰行為と見なすことができます。     能力を発揮するのは,外に向かってオープンな行為でなければなりま    せん。自分とは違った外部に,自分の作用を及ぼす力が能力です。それ    ができない状態を内気であるとか臆病とか呼んでいます。用心深いとい    う場合もありますが,度を超すと育ちのブレーキになります。     勇気を出して自己表現しなさい,ママの声はいつもそう言っています。    積極的であってほしいという願いです。そこでちょっと,子どもの立場    を弁護しておきましょう。子どもが臆病になっているとき,しくじるこ    とを恐れています。だめだっらどうしようという不安です。     思い切ってやりなさい,ママの声が背中を押してくれても,踏み切れ    ません。物心ついたときからちゃんとしなさいといわれてきました。ち    ゃんとできないと叱られます。よけいなことはしないで,咎められます。    やる以上はちゃんとできないといけないのです。だから,できないこと    を恐れるのです。     やってみようという勇気を出しても,ちゃんとやろうという重しがの    しかかってしまいます。ちゃんとしようとすることが,せっかくの勇気    の足を引っ張ります。だから,足踏みするのです。やってみることが大    事であると優先順位を明確にしてやってください。結果は二の次だとい    うことです。     勇気を出したことを,がんばったねと認めてやります。そのうちにで    きるようになる,育ちとはどれほど無駄を重ねたかによって見積もるこ    とができるものです。できないことをやろうとすることが勇気の働き場    所なのです。結果は後からついてくるものと,楽しみにしておけばいい    のです。   ・・・《しようという気持ちを勇気の発露と認めて優先させることです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《勇気を認めるとは,子どもの育ちの後押しをすることです。》 ※勇気ある行動として称えられることがいろいろとあります。自分のことのた めに勇気を出しても,人はそれを勇気とはいいません。しかし,人は自分のこ とのために勇気を出すことができなければ,人のために勇気を出す訓練ができ ません。勇気を出したことがなければ,出るはずがありません。  子どもの育ちは,勇気を発揮することの連続です。すべてのことが初体験で すから,勇気がなければ育ちができません。新しいことをやったときに,その 勇気を認めてやることが,育ちを認めてやることと重なるのです。  【質問11-07:お子さんの勇気を認めていますね?】    ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第137号は,いかがでしたか?  ごく日常の子育てを「勇気」という視点で描きなおして見るということにな りました。ことさら勇気といった難しいものを育てようと心がけなくても,普 段の子育てをしていればいいのです。そこに勇気の育てもあるということを分 かっていただきたかったのです。  講義に出向いた出張先のホテルで書き上げた草稿なので,少し調子が変わっ ているかもしれません。場所が変わると,思考も影響を受けるようです。結果 がよかったかどうかは分かりませんが・・・。今週末は仲間たちと天草方面へ 旅行です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページは ・・・「徒然窓」=      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/   です。「子育て羅針盤」の「バックナンバー」,〜「掲示板」,     週刊「今週のコラム」,「子育ち12章(Ver.1〜9)」,     「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,     社会教育・ボランティア組織活動の指導者用テキスト〜    などを掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●大小問わずPTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   関心をお持ちの方は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールをお知りになりたい方は上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問11-08:お子さんの卑怯を抑えていますね?】 について考えます。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○