□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2003/06/30]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第143号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  「よし,朝だ」というのも,「あーあ,朝か」というのも,あなたの考え方 次第だ。                      ・・・・・ウエイン・ダイアー  「よし,我が子」というのも,「あーあ,我が子」というのも,あなたの考 え方次第です。                      ・・・・・H.モリのクマさん ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★ママの?★            『園に行きたがらない?』                               (第13号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  今までママと一緒の生活をしてきたのに,今日からは園に出かけるという段 になって,行きたがらないことがあります。考えるまでもなく,生活の一大変 化ですから,渋るのは当然です。園がどんな場所か分からないから,不安が膨 らみます。まだ自分で何でもできるわけではなく手助けが必要なのに,それが 提供してもらえるかも分かりません。分からないことだらけなら,怖いと思い ます。  それでも,ママの勧めもあって,初めのうちは,物珍しさにつられて,お出 かけの気分で園に行きます。ママは一安心ですが,しばらくしてまたもや,行 きたくないということがあります。今まで行っていたのに,どうしてとママは 思います。園では家にいるときのようにわがままが通りません。珍しさにも慣 れてくると,窮屈さが気になってくるのです。  園での楽しかったことを思い出させ,楽しみを見つけてやって,気持ちを弾 ませるようにしてやればいいでしょう。ママが帰りを楽しみに待っていると伝 えることも支えになります。帰ってきて何か不満を訴えたときには,我慢した ことをほめて抱きしめてやればいいでしょう。何でも良い方に導いてください。  子どもは順応性が強いので,しばらく応援してやれば,大丈夫です。過ぎて しまえば,あれは何だったのということが多いものです。いじめられたのでは とか,あまり性急に思い過ごしをしないで,園の先生としっかり情報交換をし た方がよいでしょう。  気をつけるのは,子どもの言うなりにならないようにすることです。鵜呑み すると,子どもが持っている自分の都合のいいように話す知恵を見くびること になります。子どもを信用しないというのではなく,子どもをまっすぐに見て やるということです。もちろん,小さな嘘であっても叱らないで,導くことで す。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★親の役割12講★         『今日もまた 何を持ち込む この子たち』                             《第11-13講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ■つれづれ・・・  手を使うことで覚えなさいといわれてきました。字を覚えるには,何度も書 きます。計算をするには紙に数字を書きます。いちいち紙に書き出さなくても, 頭の中で覚えたり計算したりできます。でも,それは慣れてきたときです。最 初はやはり書いた方が覚えが早いのです。どうしてでしょう?  手の動きは工事作業です。設計図は見て分かりますが,図面だけでは何も形 ができません。図面に沿って一つ一つの工程を手作業をして,構築物ができあ がります。手で作業することを通して,脳の神経配線工事が行われるのです。 作業を終えた後には,機能を備えた神経回路が残されます。それが記憶なので す。  漢字を読めても書けないということは誰にでもありますね。それは手作業を 疎かにしたからです。犬の絵を描くときも,イメージ通りに描けませんね。そ れも手作業をしていないからです。手作業の最も大事な効用とは,一つ一つ順 を追って組み立て作業をするということです。漢字であれば,細部の線を筆順 に沿って一本残らず組み合わせます。なぞることで,部品の全部を確認するか ら,再現できるのです。  見たものはイメージで認知します。しかし,イメージは細部のチェックを省 略しています。記憶して再現するには,もれなく細部を記憶の倉庫から引き出 さなければなりません。手作業がその細部を解体し記憶に収納し再現するプロ セスにあたるのです。  視聴覚に片寄った学習は,脳の記憶回路の構築が手つかずに残されます。見 て分かっても,自分で作りだすことはできない,受け身の才能しか持たない育 ちを強いられています。知っていてもできない,そんな育ちが進んでいること を危惧して,体験学習という地味な手作業による学びが勧められているのです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問11-13:お子さんの存在を認めていますね?】      ・・・・・「存在を認める」という意味を確かめておきましょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○いないいないバア?     子どもがある日突然消えてしまいます。子どもがいなくなった家は,    妙に広くて静かで落ち着きません。いつもだったらああしていたこうし    ていたのにと思い出されて,気持ちにぽっかりと穴が空きます。日頃願    っていた,面倒な世話がなくなって清々したとは思えません。明後日に    は帰ってきます・・・。     子どもが急病で入院します。苦しそうにしている側で,親は何もして    やれません。ただ祈るばかりです。生きていてくれるだけでいいから,    どうぞ神様仏様,この子を助けてやってください。子どもがどんな子ど    もであれ,生きて側にいてくれるだけでいい,その思いが親心の原点で    す。もしかしたら,それを親に思い出させるために,神様はときどき子    どもを病気にするのかもしれません。     できちゃった結婚という,望まれて生まれてきたわけではないにして    も,子どもは愛くるしい無邪気な笑顔を向けることで,親として改心さ    せます。命をこの子に授けたという喜びを感じるとき,出会いを感謝し    ているはずです。母体保護のために,人の赤ちゃんは他の動物と違って    かなり早産です。育ちの期間をママの懐に残しています。そのことが親    を育てる期間でもあるというのは,自然の絶妙な采配です。     子どもがいなかったら,たくさんの余計な経験はせずに済みます。自    分だけの時間がたくさん持てます。好きなことが自由にできるでしょう。    子どもは不自由さを押しつけてきますし,苦労も背負わせてくれます。    あなたなんか産まなければよかった,そう口走ってしまうほど追いつめ    られる場合もあるでしょう。そんな危機を何とか乗り越えて,この子を    育て上げてくれると,神様は信頼して子どもを預けてくれています。     人は男であり女として生まれてきます。それは人を産み産ませるとい    う機能を授けられているということです。人は子どもを育てる定めを負    っており,人であるためには子どもを産み育てるというプログラムが発    現しなければなりません。我が子として子どもの存在を自然に受け入れ    る本能,それがママの人間性の根源なのです。         ・・・《無心に子どもを産み育てることが人の本性でした》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○実像?     子どもの頃に抱いていた大人のイメージがあります。何となく憧れて    いたお兄ちゃんやお姉ちゃんがいます。ところで,自分が同じ年齢にな    ったとき,イメージしていた憧れと自分を比べたとき,そこに至らない    自分を見つけてしまいます。努力が足りないという反省があるにしても,    買いかぶりすぎていた所もあります。     自分が親になったとき,親を見て描いていた親という存在へのイメー    ジとは,自分が重ならないと実感します。イメージはあくまでも理想化    された姿だからです。自分は親として100点満点ではありません。    60点程度かもしれません。それでも,やはり親であり,親をしていま    す。実像はそういうものでしょう。     「ふつつかが ふつつか育て 嫁にやり」という投稿川柳がありまし    た。当事者には苦い笑いになりますが,そうであるしかないのが現実で    す。それでいいと認めざるを得ません。60点の親が65点の親になろ    うとする努力,それは長い道のりでしょうが道中にこそ意味があります。    人は前向きであるとき,大きく頼もしく見えるものです。後ろ向きな人    が小さく頼りなげに見えるのは,目一杯というゆとりのなさを感じるか    らです。     堂々とした態度,それは100点の自信からもたらされるものではあ    りません。60点の自信の上に,完全ではなくても何とかやれるという    ゆとりがあることです。そこそこまでできればいいという気持ちが,実    力を引き出して,結果的によい効果を招きます。緊張してかたくなるの    は,100点でなければいけないというストレスを引き寄せるからです。     子どもに対して,こんな子どもであって欲しいという期待を持つこと    は必要ですが,それが100%達成されなければならないと絶対化した    ら,おそらく子どもを押しつぶします。大人でさえ60点なのですから,    子どもも60点でいいのです。60点の子どもを前向きに育てるだけ,    そう考えたら子どもの存在をプラスに認めることができるはずです。    100点を持ってこない子は私の子どもではありません,そう思うとき    は幻の子どもに振り回されているときです。    ・・・《ちょっとだけ自分を越えてくれさえすればいいとしましょう》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○情合い?     ペットを飼う人が増えてきました。そして捨てられるペットが増えて    います。ペットは癒しになるという思いこみが蔓延しています。ペット    による癒しとは所詮は疑似体験に過ぎません。だからこそ,飽きてきた    り,都合が悪くなるとあっさりと切り捨てられるのです。ペット好きな    方には申し訳ありませんが,本質的に情けを掛けるべき相手としては,    ペットは不適当です。     自分の思い通りになる対象としてペットを飼うという気持ちがどこか    にあるかぎり,きわめて自己満足になります。小さい頃は自分の都合通    りに扱えていますが,成長すると手に余るようになります。やがて処分    したり放置したりします。ペットが可愛いなら,そんな情けのないこと    はできないはずです。とどのつまり,自分だけが可愛いのです。     子どもは親の思い通りになりません。かわいげがなくなるのです。と    きには憎たらしくなります。手が掛かるという程度では済みません。親    の生活を振り回してくれます。それほど親の懐に食い込んでくるのが子    どもという存在です。ペットという愛玩物ではなくて,共に生きている    分身なのです。情の深さは段違いなはずです。     いいとこ取りだけをする愛玩物では,情は絡めません。情というのは    一方的に押しつけるものではなく,通い合うものです。良くも悪くも通    わせざるを得ない場合もあります。その通い合いから二つの情が溶け合    って新しい情が作られていきます。そこには喜びも悲しみも織り混ざっ    ています。情とは嬉しくもあり切なくもあるものです。     親子の情は,子を思う情と親を思う情によって紡ぎ出されます。子ど    もの存在をかけがえのないものと信じられるようになるためには,深い    情の通い合いがなければなりません。それは考えようによってはかなり    面倒なことです。でもそれを厭わない大らかさをママは持っています。    何しろはじめから身二つの我が子なんですから。  ・・・《あれこれあるからこそ,お互いにとっての存在感がわいてきます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《存在を認めるとは,お互いにぎりぎりの深みにまで絡むことです。》 ※ママはこれまで本気になったことが幾度かあったことでしょう。そのとき形 振り構う暇はなかったでしょう。形振り構っているときは本気ではないという ことです。子育ては生活のついでにできることではありません。ときにはここ 一番という大事なときがあります。子どもは本気で向き合うにたる存在だから です。  ごく当たり前に子どもとつきあっていますが,それは人と人が結びつく最も 原理的な形です。だからこそ,親になった人は,人とのつきあい方が温かなの です。ママの心が少しずつ子育てによってほぐされているはずです。ちょっぴ り痛みがあるかもしれませんが,我慢できますよね。  【質問11-13:お子さんの存在を認めていますね?】    ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第143号は,いかがでしたか?  この号で第11版は終了します。親の役割として,子どもが親に突きつけて くるよい面と悪い面をどのように受け止めたらいいのかを考えてきました。そ れぞれの局面でお伝えしたかったことは,一言でいえばどっしりと受け止める 度量です。認めることも抑えることも,ママは逃げずにまっすぐに懐に抱え込 んでやればいいのです。  次号からは,第12版として装いを改めてお届けします。12章というテー マ形式は基本ですので踏襲しますが,語り口を変えてみることにします。題し て「ボクの育ち12章」です。少しはお説教臭さが拭えるかもしれないと思っ ています。「ママの?」欄のテーマも理科系の内容に変えてみます。理科離れ を先ずママから改めていただければと願うからです。いずれにしろ,どうぞお 楽しみに。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページは ・・・「徒然窓」=      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear   です。「子育て羅針盤」の「バックナンバー」,〜「掲示板」,     週刊「今週のコラム」,「子育ち12章(Ver.1〜10)」,     「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,     社会教育・ボランティア組織活動の指導者用テキスト〜    などを掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●大小問わずPTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   関心をお持ちの方は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールをお知りになりたい方は上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問12-01:ママ,あのね。ママはボクのこと見えてる?】 について考えます。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行うこと  はできません。事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○