□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2003/08/11]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第149号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□  我々は,行いによって友人を作るよりも,言葉によって敵を作ることの方が 多い。                     ・・・・・チャートン・コリンズ  親は,世話によって信頼関係を作るよりも,言葉によって敵意を作ることの 方が多い。  世話は一応しておけば足りるが,言葉はいい加減にすると逆効果を生むから である。                      ・・・・・H.モリのクマさん ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★ママの?★              『アレロパシー?』                               (第06号) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  生物の進化は適者生存,自然淘汰によって進んできたという西洋的な説があ ります。一方で,棲み分けによるという和風の説があります。生物の多様な進 化を納得するために選び出された理由です。何が起こったのかということを人 は説明したいのです。  生物には動物と植物があります。動物には弱肉強食という生き方の特徴があ ります。植物にも蔓延るという土地の占有現象が起こります。外来種が在来種 を駆逐することは珍しくありません。植物は動物のように食べてしまうという 行為は不可能ですが,例えば,つる植物は他の植物を締め付けて生育を阻害し ています。  植物の中には,もっと積極的に他の植物に危害を及ぼす化学成分を分泌する ものがあります。このような現象をアレロパシーと呼びます。クルミはユグロ ンという物質を葉から出し,雨で木の下に流れ落ちると,下草を枯らしてしま います。サクラもクマリンという桜餅の香りの元になる物質を出し,クローバ ーのような双子葉草木の生育を阻害します。  帰化植物であるセイタカアワダチソウやヒメジョオンの根からはシス・デヒ ドロ・マトリカリア・エステルという物質が分泌され,他の植物の生育を阻害 しています。そのほかにも自らの生育と競合する植物を寄せ付けない,生育で きないようにする化学物質を分泌する例が知られています。  農家の方が経験的に知っていたことのわけがだんだんと解明されていますが, 生きるということの営みは奥深いのですね。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★ボクの育ち12章★          『寂しさを 伝える言葉 伝わらず』                             《第12-06講》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ■つれづれ・・・  ある社会教育関係の会議で司会をしていたときです。学校週五日制,つまり 地域・家庭二日制への取り組みとして公民館で行われる活動に,父親の参加が ないという嘆きが語られました。父親とすれば,顔を出していると熱心だと見 なされ,役員にさせられることをおそれているからというのです。このことは PTAにおける母親のおそれとも重なっています。  どうして役員になることを忌避するのでしょう。それが面倒だからといった 程度の怠け心であるならまだ救われます。ところが,最近,役員なんてくだら ないことはする必要はないとうそぶくような手合いが現れてきました。ごりご りの自分勝手さを臆面もなく押し通すことが自分の生き方と宣言してくるので, 二の句が継げず,あきれてしまったという役員の声も聞かれます。  固い殻に閉じこっていないと不安なのでしょう。自分のことしか考えられな い余裕のなさが,自分の世界を窮屈にしていきます。殻から抜け出してみれば, 本当はもっと楽に生きられるはずです。人のぬくもりを知らずに育ってしまっ たのかもしれません。  役員になるのは何か下心があるはず,そうでなければあんな引き合わないこ とをするはずがない,そう勘ぐってみているから,自分が役員になったときに 人からそう思われると思いこんでおそれてしまいます。人の噂に熱心な人は, 裏返せば自分が噂になることをおそれるのと同じなのです。人は自分の思いを 鏡に映して見てしまいがちです。  人のぬくもりは,実は自分の中にあるぬくもりに気がつくことです。喜んで くれてよかった,そういう自分を見つけられたら,人のぬくもりを信じること ができるはずです。確かに人には望ましくない感情があります。でも,それだ けではなく,望ましい感情もあります。その部分でつながりあえるのです。役 員を忌避する気持ちがあるならそれはそのままでいいから,役員の苦労にちょ っとだけありがとうと思うようにしてみることです。違った世界が開けてくる はずです。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  【質問12-06:ママ,あのね。ママはワタシに言葉を教えてる?】     ・・・・・「言葉を教えてる」という意味を分かってあげましょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○行動語?     洗濯物を畳んでいたママが,「お風呂の湯加減をみてきて」って言っ    たので,お風呂場に行って湯船の蓋を開けました。白い煙がブワッとわ    き上がってきてビックリしました。ママの所に引き返して,「白い煙が    いっぱい見えたわよ」って告げました。「それは湯気でしょ。湯加減は    どうだったの?」。     「湯加減?」。「そう」。「どうやって?」。「そんなことも知らな    かったの! お湯に手を浸けてみるのよ」。「手を?」。「そう」。    「それで?」。「それでって,まだ分からないの。熱いかぬるいか分か    るでしょ」。「そうか。でもママは見るって言ったよ。手で見えるの?」。    「何をバカなことを言ってるの。手で見えるわけないじゃない!」。    「?」。     「アツッ」。「ママ,お湯は熱かったわよ」。「そう,ありがとう。    パパにお風呂沸きましたって言ってね」。パパがお風呂に入りました。    「ぬるいぞ」と言いながら,追い炊きをしています。その声を聞いたマ    マがワタシに,「湯加減をみる前に,お湯をよく混ぜたの?」って聞く    ので,「ウウン」と首を横に振りました。「お風呂のお湯はよくかき混    ぜないと,下の方が冷たいのよ!」。「?」。     あのね,ママ。ワタシは何をするにも失敗ばかりでいっぺんでは済ま    ないけれど,一度ゆっくりと経験したら分かるようになるの。「湯加減    をみる」ということがどういうことか今度はしっかり分かったからね。    でも,ママの教え方はいつも叱っているようで嫌なの。普通に言ってく    れたらもっと聞きたくなるんだけど。     ママはワタシに用事を頼んでも一回で済まないから面倒かもしれない    ね。でも,一度だけの面倒でいいからみてくれないと,ワタシは何も知    らないままで放っておかれることになるから,お願いね。行動を表す言    葉は,具体的にどうすればいいのかを一緒に覚えないと役に立たないん    だから。   ・・・《具体的な行動を言葉に結びつけて教えるには手間がかかります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○似ている?     公園で弟と遊んでいたときです。弟が「笑ってる」と言いながら,指    を差しています。その先にはパンジーの花が咲いていました。そう言わ    れればワタシにも花びらの模様が笑っているように見えてきました。    「本当ね,笑っているみたいね」って,弟に話しかけていました。     お家に帰ってから,弟がママに話しています。「公園のお花が笑って    いたよ」。ママは「?,花が笑うわけないでしょ」。大人ってどうして    正しいことばかり教えようとするんでしょう。言葉の発達を無視しすぎ    ます。言葉を身につけるには順を追っていかなければなりません。     幼い弟が使える言葉はまだ意味が明瞭ではありません。弟が言った    「笑ってる」を,ワタシは「笑っているようね」と言い換えました。弟    は笑うという言葉を笑顔の形として覚え使っています。弟にすれば,正    しいのです。ワタシは笑うのは人の表情に限るという意味を知っていま    す。花びらの模様の形は確かに笑顔だけれど人ではないので,笑ってい    るように見える,似ていると言うしかありません。     幼い弟は知っている言葉の助けを受けて,まわりを分かっていきます。    赤い世界を「夕焼け」で覚え知った弟は,他の赤く見えるものすべてを    「夕焼け」と言っています。「夕焼けみたいね」と言えるようになるた    めには,ワタシのように夕焼けが何を指すのか正確に覚えなければなり    ません。     あのね,ママ。ワタシが動物園ではじめて虎を見たとき,一瞬「大き    な猫」に見えたけど,猫じゃないから「猫みたい」と言葉を出したこと    があるでしょ。そして虎という言葉をちゃんと覚えられたの。○○みた    い,○○のよう,その類推を通り抜けることで言葉の意味がはっきりし    てくるような気がするけど,違ってる,ママ。   ・・・《言葉を理解するには,似ている部分を手がかりにすることです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○見えないもの?     暑い夏の外出から帰ってきて,ママに言われて窓を開けました。風が    吹き込んできます。「ワー,涼しい」。「生き返るようね」。街中のア    スファルト道路で吹き付けてきた風はムッとする暑さでした。ワタシは    いろんな風を感じて,面白いなと思いました。     軒下に吊してある風鈴がリーンリンと心地よい音色を聞かせてくれま    す。木の枝がさわさわと揺れているのが見えます。風がものを動かして    います。この前やってきた台風は,ワタシよりも強い力でいろんなもの    を吹き飛ばしていました。風にすごい力があることを知って,驚きまし    た。     風って見えないから,こわいときがあります。夜に閉め切った窓ごし    に外を見ていると,誰もいないのに木がざわざわと動くからです。ヒュ    ーッという音が聞こえてくると一層気味が悪くなります。ちょっと窓を    開けると,風を感じるから,風のせいだと分かって安心します。     あのね,ママ。風って見えないけれどあるんだよね。手で捕まえるこ    とはできないけれど,ワタシが感じることができるのって不思議。そう    いえば,音も見えないけれど,人の口とかテレビとか,音の出てくると    ころが見えるから,ちょっと違っているわね。風ってどこから吹いてく    るのか分かんない。ママ,どこから?     見えないものを実感することに慣れてくるといいことがあるみたい。    先生が思いやりという言葉を教えてくれたけれど,思いやりって見えな    いから難しいと思っていたの。でも,風は見えなくてもあることは感じ    ることができるように,いろんな思いやりがあるような気がしてきちゃ    った。これでいいのよね,ママ。    ・・・《抽象的な言葉にステップアップするには補助が要りようです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《言葉を教えてるとは,具体的な意味をつかまえさせることです。》 ※言葉は物事を区別し限定して表現するものです。水が貯まっている場所を水 たまり,池,湖,海と言い表します。子どもは例えば池という言葉を身近です から最初に覚えます。海を見たら大きな池と理解します。「違うでしょ」と否 定するのではなくて,「大きな池を海っていうのよ」と後押ししてくださいね。  ママは言葉の先生ですから,子どもとじっくりお話ししてください。そのと き,子どもの言葉を「そうね」と受け止めて,必要があれば追加してやってく ださい。周りの世界をママが実況中継するようなつもりで聞かせてやると,言 葉が豊かになるでしょう。  【質問12-06:ママ,あのね。ママはワタシに言葉を教えてる?】    ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  お届けした「子育て羅針盤」第149号は,いかがでしたか?  今週はお盆休みですね。お子さんがいるとそれぞれにお忙しいことと思いま す。楽しいお休みになるといいですね。里帰りされているご家族もあるでしょ う。おじいちゃんおばあちゃんと孫の得難いチャンスです。しっかりといい思 い出を残してあげてください。  ところで,子育て羅針盤はお盆休みをしません。クマさんもお盆行事を予定 していますが,在宅で過ごしますので時間はとれます。パソコンの前から留守 をされている方も18日にはお帰りでしょう。楽しい出来事があったら,クマ さんまでメールでお裾分け下さい。待っています。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ※ご案内※  ●モリのクマさんのホームページは ・・・「徒然窓」=      http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear   です。「子育て羅針盤」の「バックナンバー」,〜「掲示板」,     週刊「今週のコラム」,「子育ち12章(Ver.1〜10)」,     「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,     社会教育・ボランティア組織活動の指導者用テキスト〜    などを掲載しています。 ・・・是非訪ねてみて下さい。・・・  ●大小問わずPTAや家庭教育学級などでの《講演》のご依頼も承ります。   関心をお持ちの方は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。   プロフィールをお知りになりたい方は上記のHPを参照してください。   なお,クマさんの本拠地は福岡市近郊です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,  【質問12-07:ママ,あのね。ママはボクの得意を分かってる?】 について考えます。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午 〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに) ○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp  ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行うこと  はできません。事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 〇配信の協力を頂いている発行支援システム  ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/    登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm  ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/    登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/  ◆読者と発行者を結ぶ架け橋『Pubzine』= http://www.pubzine.com/    登録・解除= http://www.pubzine.com/detail.asp?id=9104  ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/    登録・解除= http://melten.com/m/2166.html  ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○