□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/01/12]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第171号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■            『出題者の悩み-続き-?』  前号からの続きです。国立大学の入学試験問題を作成する側の悩みについて 書きました。入学試験は資格試験と考えれば簡単なのですが,定員があるため に競争試験になり,序列をつける必要があります。そうなると,受験生の中間 レベルに合致する問題を課さなければなりません。  できる子とできない子は見えるのですが,ほとんどの子は見えないのです。 いわゆる普通の子のレベルを見切ることが出題者にとって最も大きな課題です。 どうしても難問の方にシフトしてしまう傾向を引き戻すためには思い切りが必 要なのです。経験によって,そこまでやるかという程度まで易しくすることに なります。  その結果です。数千枚の答案紙と共に採点のために一室に缶詰になります。 答案の束は試験室ごとに綴られ,受験番号は見えないように綴じ込まれていま す。答案は必ず二人の採点者により2回採点されます。一回目の採点がたいへ んです。正解だけと比較して○×を点けるのであれば簡単です。  実際はかなり細かな作業になります。部分点をあげるからです。物理ですか ら,ほとんどの解答が数値や式です。式の符号が間違っているだけなら何点と か,係数間違いだけなら何点とか,なるべくすくい上げてやろうという採点を します。いろんなケースが出てきて,その都度採点者全員で協議して確認して いきます。  あれほど易しくしたつもりなのに,答案は見事にばらついていきます。ほと んどの答案が正解ばかりになるのではという危惧は覆されます。よくもこんな 間違いをするものという感想を持たせる答案がたくさんあります。ちょっと考 え直せば分かるだろうにという小さなミスがたくさん出てきます。普通の者に とっての試験対策というのは,できることよりも,ミスをしないことの方が大 事だということを感じます。力を十分に出し切ることができたとき,合格ライ ンに入り込みます。  採点していてホッとするのは,できている答案と全くできていない答案です。 全部○か全部×ですから,あっさりしていて悩むことはありません。普通の答 案が手を取ります。どこまでできているかを逐一フォローしていかなければな らないからです。そしてほとんどがそんな答案なのです。  子どもはほとんどが普通の子どもです。子育ては見えない子どもを相手にし ています。じっくり眺めていないと,どこまでできたかを見定めてやることは できません。正解でないから×。そういう荒っぽい評価をしていたら,ほとん どの子どもは不合格になります。  部分点をあげるという面倒な作業をしてやることは親でなければしてやれな いでしょう。親心とはそういう細やかなおつきあいをすることが苦にならない 心情を言います。親から見れば容易いことをしくじっている子どもたちを温か く見守ってやってください。それはとても忍耐と根気の要ることですが・・・。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12指標★       【お子さんは,活発ですか,それとも内気ですか?】                             (質問14-02) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○活発な子!     人の欲望に段階を付けた人がいます。マズローの欲求5段階説です。    生存の基本的欲望(食欲など),安全欲望(住宅など),所属欲望(家    族など),尊敬欲望(社会的立場など),自己実現欲望(生きがいなど)    です。人は社会で生きていくので,社会の一員であるという自覚を欲し    ます。子どもたちが目立ちたいという欲求を持つのは自然です。     園や学校で活発に過ごしている子どもを見ると,親はうれしいもので    す。動き回る子は自然と目につきます。それは目立つことであり,集団    に溶け込んでいる証でもあるからです。子ども社会の中でしっかりと自    分の立場を作り上げていると思われます。子どもなりの自立している姿    であり,親は安心します。     ところで,活発な子どもは基本的に自分の思うままに行動しています。    見た目は仲良く遊んでいるようでも,周りのものがそれを気持ちの中で    納得して受け容れているかどうかをチェックしておかなければなりませ    ん。○○ちゃんはすごいなという幼い尊敬が付随していればいいのです    が,身体が大きくて強いので自然にのさばっているのであれば気をつけ    た方がいいでしょう。社会性とは,他者から認められることだからです。     自分は周りの人からどのように見られているか? どのように思われ    ているか? 自分を見る「もう一人の自分」がしっかりと育たなければ    なりません。子ども社会の中で自分に何が期待されているかを見極める    のは,もう一人の自分だからです。もう一人の自分が育っていないとき    に,自分のわがままに留まってしまい,存在が傍迷惑になります。     集団生活の基本は,他者と自分の関係を常に意識できることです。活    発な子がリーダーにまで育つかどうかは,この一点に掛かっています。    活発なだけが取り柄では育ちは中途半端です。その先の育ちが期待され    ているはずです。みんなの信頼を背景にした活発さであって欲しいと願    われます。それは周りに活発さを伝染させるということです。自分だけ    ではなく,仲間も一緒にという気持ちの育ちが大切です。     子どもの活発さは得意な場面で発揮されます。走るのが速い子,力が    強い子,話が上手な子,ゲームの得意な子,計算の正確な子,絵のうま    い子,いろんな子どもがいるはずです。もう一人の自分が他者の得意を    お互いに認め合えたら,素晴らしい仲間集団ができあがります。自分だ    けではなく,自分たちという気持ちを育てるようにし向けることが社会    性の育成です。     ・・・《活発な子は皆と協力できるようになることが次の課題です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○内気な子?     家にいるときはのびのびしているのに,外に出るとおとなしくしてい    る子どもがいます。いわゆる,内弁慶な子どもです。親にすれば友だち    遊びができないことが心配になります。つい勇気づけるつもりで「一緒    に遊んできなさい」と背中を押してやりたくなります。でも実はまだ機    が熟していないのです。     子どもはいろんなその子なりの理由を抱えています。それを見つけて    ほぐしてやることが先です。少子化の中で育った子どもは,友だち遊び    の楽しさを知りません。きょうだいが多いと皆で遊ぶことに慣れていま    すから,その延長上にある友だち遊びにもたやすく入り込めます。外で    遊んでいる子どもたちを見ると,きょうだいのつながりが核になって輪    が広がっています。今の子はそれだけ前準備をする場が失われているの    です。少しずつ外への階段を登らせましょう。     家の中で一人遊びに慣れている子が増えてきました。親が相手をして    いるから,一人ではないと思われるかもしれませんが,子どもは一人で    す。同じくらいの子どもは大人とは遊びの感性が全く違います。大人は    遊ばせてやるという態度になるからです。ときには指導という余計なも    のまで持ち込まれます。子どもにすれば純粋に遊んでいるのではありま    せん。     家の中の相手である親は自分に合わせてくれますが,外にいる友だち    はそんな気遣いがあるとは思えません。不安になり,怖じ気が出て当然    です。そばにいてじっと友だちを観察する時間を十分に与えてやってく    ださい。見ていることで自分も一緒に遊んでいる気になって,シミュレ    ーションすることができます。待つ身の親にとっては長い無駄な時間に    思えるかもしれませんが,子どもは案外と早く立ち上がりをするもので    す。もちろん幼いときの方が時間は短いということです。     知らない子に警戒心を持つのは普通です。親同士が仲良く語り合うこ    とで,親が大丈夫という保証を与えることも必要です。ママが見ている    からという自分への後押しと同時に,ママが信頼している相手だという    確認があれば,警戒心は薄れるはずです。親の保護活動とは我が子の世    話をすることではなくて,我が子の環境の方に手配りをすることです。     また,もう一人の自分が早熟で,自意識過敏になっている場合もあり    ます。相手が自分を気に入ってくれるかどうかに関心が集中して,その    結果を見届けることが怖くて内気な態度に閉じこもってしまいます。ど    うすれば相手に認めてもらえるか,そのことばかりを考えると先に進め    なくなります。人の思惑を大して気にしなくてもいいという自意識への    消火活動が必要になります。まず,親が「あなたのことを大好きだから」    という強いメッセージを伝えることです。たとえ人には好かれなくても,    親に好かれていると思えば,かなり楽な気持ちになります。     ・・・《内気な子は助走期間がちょっと長めになっているだけです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《活発か,内気かは,それぞれ育ちのステップが違っているだけです。》 ※育ちのペースには早い遅いがつきものです。要は二十歳までに一通りの育ち をすればいいのですから,焦ることはありません。それは頭では分かっている けど,目の前の今の育ちが後々影響してくるのではという心配も出てきます。 だからといって,我が子に必要な育ちをよその子のペースに合わせるために疎 かにしては元も子もありません。  子どもを育てるためにそれぞれの親が付きっきりになっているのは,子ども の育ちがまとめて面倒を見られるものではないという証拠です。一人一人の育 ちは違うからこそ,常にその子を見ている親という存在が必要になるのです。 蛇足ですが,内気な人ばかり集めたら,そこには活発な人が現れてきます。相 対的な姿でしかないということも知っておいてください。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ☆予告☆  次号では,【お子さんは,しっかりしてますか,甘えん坊ですか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ★編集後記★  連れ合いが今日着ている服装を思い出そうとしましたが,覚えていないよう です。見ているはずなのですが。これでは夫の資格はありませんね。もっとも, 着るものには自分のものでも全く頓着しない性分なので,関心がないからとい う言い訳をしておきましょう。大切に愛しているのは中味の方です。  ところで,近所に2階建ての連結アパートが数棟あります。箒とぞうきんを 持った男性が通常の清掃作業をしています。居住者でなく,委託を受けた業者 のようです。自分の住んでいる家屋と周辺を業者任せにしているシステムとは, ワークシェアリングとはいえ,割り切れない感じをしています。自分のことは 自分でするという範囲が狭くなっている風潮は,生活の閉じこもりに見えて教 育上の示しがつかなくなっているようです。考えすぎでしょうか。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○