□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/01/26]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第173号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■           『秘伝10ルート(x)の衰退?』  かつて大学教官になった当時,もちろん授業を担当しますが,真っ先に迷っ たのが採点の報告でした。授業内容については,学生時代に受講した講義ノー トやいくつかの教科書を参照しながら,オリジナルなカリキュラムを組み上げ れば済みました。聴講するときはいい加減で済みましたが,教える立場になる と全てのことが分かっていないと説明できないということを思い知りました。 人に教えることができるようになったとき,学びが自分のものになるという体 験でした。  もっとも,時間配分は実際に授業をしてみながら修正していかなければなり ませんでした。当時は110分講義でしたので,その時間内に一つのテーマが 講義し終えるように小項目を取捨選択する工夫が必要でした。途中で,カリキ ュラムの改正,つまり長時間の講義に学生さんがついてこれなくなったので, 90分授業に短縮されて,内容もかなり削減せざるを得なくなりました。小中 学校の内容削減以前から,大学ではすでに精選?の名の下で割愛がなされてい たのです。  講義が終わると,期末試験をしなければなりません。教えた内容から問題を つくるので解けるはずという思いです。入試のような競争試験ではなくて,講 義を受けた成果が在るかどうかの確認のための問題です。正規分布などは必要 ありません。全員百点でもいいのです。ところが,実際はとても期待通りには いきません。さんざんの成績が突きつけられます。採点した結果は,半分以上 が不合格という状況です。  先輩の教官たちも同じ状況にあったらしく,採点の結果を報告するときに手 直しをしていました。それが秘伝10ルート(x)という算定式です。テキスト メールでは数学記号が使えないので分かりにくい標記ですが,例を挙げて説明 しておきます。採点結果のx=36点を平方根に開くと6点になりますが,そ れに10を乗じて,60点として報告するのです。採点が49点なら報告は7 0点,採点が64点なら80点と報告するということです。100点は100 点になります。こうして,採点結果を高得点に持ち上げるのです。  試験で36点取れば60点と報告されるのでぎりぎり合格となるという仕掛 けです。64点取れば優の評価になります。考えればいい加減かもしれません が,問題の質が高めに設定されているということから生じる方便でした。今で は教官の胸に秘められたこの手管は消えています。学校の外部評価という動き がありますが,そこでは採点された答案の実物が審査の対象項目の一つになる ために,36点で合格であるとは外部に曝すことができなくなってしまったか らです。  不正採点と思われたかもしれません。外部評価によって是正されてよかった のでしょう。しかし,学生さんの力量に会わせた問題作成に,つまり60点以 上取れるように易しくなっていくことが,本当にいいことでしょうか? 大学 のレベルがあります。もちろん格差ということではなくて,大学レベルの学力 というものが低下せざるを得なくなっているのです。それなりに難しい試験, その高い目標が学生さんの目から消えたとき,本当の学力低下が訪れるような 気がします。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12指標★      【お子さんは,にぎやかですか,おとなしいですか?】                             (質問14-04) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○にぎやかな子!     にぎやかな子どもはときには騒がしいと感じます。不作法に騒ぐ子ど    もは,単にしつけがなっていないということです。子どもが無邪気には    しゃいでいる姿はほのぼのとしたものですが,だからといって時と所を    弁えなくてよいということにはなりません。交通機関や施設などの公共    の場所,改まった時などは,おとなしくしていなければなりません。幼    い子どもは弁えるという自己統制ができません。それを野放しにする保    護監督者に責任があります。子どもは分からないのだからという許しは,    他人の側がすることであって,親子の側がそれを持ちだしたらわがまま    になります。     まちの文化祭行事の一環として開催された落語家による講演の席のこ    とです。前の席にケラケラとよく笑う子どもが座っていました。噺家が    しゃべるとよく反応し,それがまた聴衆に受けて笑いを取っていました。    噺家も相手にしながら話を進めていきましたが,しばらくすると,いわ    ゆる大人の笑いの部分でもその子は笑っています。分かるのかなという    思いがみんなに芽生えてきて,それもまた笑いの種になりました。やが    て,その子の笑い声が笑う話でないところでも出ていることに気づくよ    うになりました。噺家の一言ごとに笑っているだけなのです。聴衆の許    しは限度を越えてきて,ついには噺家がその子に会場を出るように詰め    寄りました。やっと母親が連れて出ていきました。     座持ちのよい子どもがいます。その子がいるとその場が明るくなるの    です。ひょうきんな子,面白い子,楽しませてくれる子,いろんな言い    方ができますが,活発な表現のできる子どもです。友だちの間では人気    があるでしょう。人を引きつける魅力があるからです。それは言葉や行    動によるエンタテイメントを提供してもらえるからです。にぎやかな子    どもにすれば,皆に認められるという見返りがあります。子どもにもあ    る見られたい欲求が満たされます。     今時の子どもは,居場所が少なくなっています。極端にいえば,園や    学校という同じ年齢層集団しかありません。そこにいてもいいんだよと    いうお墨付きが与えられなければ,居心地のいいものではありません。    にぎやかにしていれば,友だちとのつながりができます。人が寄ってく    れば,その中にいることができます。こうして自分の居場所を懸命に作    ろうとしています。     大人でもそうでしょうが,にぎやかにしているのは結構辛いところも    あります。人の目を引きつけようとするときに,最も怖いものは飽きら    れるということです。潮が引くように人が離れていくと,そのギャップ    は大きな寂しさ,お呼びでないという白けた仕打ちに曝されます。居場    所を失ったという恐怖感さえ味わうようになります。それが怖いから,    にぎやかさは次第にエスカレートしていきます。例えば,先生がいけな    いと禁止していることにまで踏み込まざるを得なくなる場合もあります。     にぎやかな子どもが時としてお調子者に転身するのは,それなりの言    うに言われぬわけがあります。子どもがちょっと羽目を外したとき,お    もしろいといって囃し立てることがあるでしょう。皆が喜ぶことは良い    ことだという錯覚に陥り,調子に乗りすぎます。「いい加減にしなさい」    という水を浴びせられることになります。子どもにすれば,最初はあん    なに喜んでいたのにと,わけが分からなくなることでしょう。気をつけ    てくださいね。  ・・・《にぎやかな子は,わがままか,寂しがり屋であることがあります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○おとなしい子?     きちんとした場所に母子連れで出かけて,おとなしくしている良い子    がいます。走り回っている騒がしい子をちらっと見ながら,ママを見上    げます。ママはいけませんという目でかすかに首を横に振ります。あの    子はいいのにどうしていけないの,そう言いたげです。子どもにとって    おとなしくしていることはかなりの我慢です。その頑張りをきちんと認    めてやってください。騒ぐ子は注意という構われ方をされますが,おと    なしい子は当たり前として放置されます。懸命におとなしくしているの    に,つまんないですね。     お子さんは30分間程度じっと座っていることができていますか。園    の送迎バスでは,おとなしく座っていないと危険です。入学式の時に様    子を見ていると,隣の子どもと突きあったり,足をバタバタと動かした    りして,おとなしく座っていることのできない子どもが増えてきました。    子どもが「おとなしくしていなさい」と言われるときは,そのほとんど    がじっとしていることですね。同じ態勢を保つことができることです。    もちろん気をつけ状態というわけではありませんが。     おとなしくさせるしつけは,普段からゆっくり進めてください。15    分間,30分間,45分間と延ばしていくようにします。そのとき,は    じめはママもつきあってください。ママがウロウロしていながら,子ど    もにだけじっとしていなさいでは無理です。ママと一緒に過ごせるとい    うご褒美があると,子どもはしつけと感じずに受け容れやすくなるでし    ょう。もちろん,何もせずに顔を見合わせているわけにはいきませんの    で,本を読み聞かせるとか,歌を歌うとか,お絵かきをするとか,おと    なしくすることのできる手だても講じます。     忙しいママは,子どもが家の中でチョロチョロされるとうるさいので,    ついテレビを見せて釘付け状態にしておくことがあるかもしれません。    確かにその効果はあるでしょうが,知能のしつけという面ではマイナス    です。テレビとの関わりはとても冷淡なものだからです。ちょっと意外    なことのように感じられるかもしれませんが,テレビは自分勝手に動い    ています。子どもが反応しようとしても,一切受け付けてくれません。    テレビを視聴するというのは,とても寂しいことなのです。     子どもは自己防衛として,傍観者に徹しようとします。もちろん雑多    な知識は吸い込まれていきますが,関わりは断つのです。視聴時間の長    い子は,親と視線を合わせなくなったり,発達上に現れるはずの指さし    行動をしなくなるという指摘が最近ありました。育ちとは環境との関わ    りを通して可能になるのに,関わりをしなくなったらと思うと怖いです    ね。おとなしくしているように見えて,実は関わりを持てなくなってき    たようです。     人付き合いができなくて,仕方なくおとなしくしている子もいます。    つきあいとは関わり合いですから,豊かな関わり体験がなくては身に付    きません。親だけではなくて,近所の子どもや大人とのさまざまな関わ    りを持たせれば,自然に慣れていくものです。特によその大人と心を開    いた関わりをしておくと,園や学校の先生という大人との内容のある関    わりが苦にならなくなります。先生の言葉を素直に受け止められたら,    お勉強は必ずものになります。      ・・・《おとなしい子は,冷めていないかよく見極めることです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《にぎやかか,おとなしいかは,舞台裏はそんなに単純ではないのです。》 ※見たままの人はいません。大人であればある程度は装うということもお互い に勘定に入れています。子どもは純真で素直のはずですから,見たまんまだと 大人は思います。確かに幼児では意識して見た目を装うということはしません が,もう一人の子どもが目覚めてくると,自己保身機能が現れてきて,見た目 を装うことができるようになります。うちの子に限って,という言葉が現実の ものになります。  日頃おとなしい子がどうして,という意外な面を現すことがあります。あん なににぎやかな子がどうして,と悲しい局面もあります。見た目の子どもでは なくて,もう一人の子どもをじっくりと見ておく必要があります。どうすれば いいのでしょう。子どものそばにいるときは,指図などは止めて,寄り添うつ もりでたっぷりと安心感を与えることです。子どもはきっと裸の自分を投げか けてくれます。いい子かどうかは後回しにして,先ずはしっかりと受け止めて やってください。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ☆予告☆  次号では,【お子さんは,おしゃべりですか,それとも無口ですか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ★編集後記★  初めての場所に行くと,西も東も分からなくなります。都会の地下街に入る と方向感覚がなくなり,とんでもないところに出てしまうことがあります。女 性は方向に弱いといわれていますが,どうですか? 運転していて道を間違え たとき,バックをせずにぐるっと回って戻ってくることができますか? 二三 回右左折をすると,どっちに走っているのか分からなくなりませんか? 最近 はカーナビがあるのでそんな苦労をしなくて済むようになったようですが,ま だ未装着です。  初めての子育ては,迷うことばかりです。子育てのナビゲーションがあれば いいですね。実は,この子育て羅針盤の目的はそこにあります。ところで,も っと見やすくなければ使ってもらえませんね。どうしたらいいのでしょう。ア イデアがあれば,是非教えてください。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○