□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/03/01]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第178号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■               『通学合宿?』  通学合宿という育成活動をご存じですか? 福岡県庄内町が発祥の地で,西 の方から列島を北上している活動で,文部科学省でも紹介をしているものです。 地域での育成活動として,学校週五日制の実施を期に地域二日制活動プログラ ムに取り入れられています。庄内町には全国から関係者が視察に訪れているそ うです。この活動を始めた方とは県の家庭教育事業に関わったときにご一緒に 活動をしたことがあり,通学合宿のことは聞き知ってはいたのですが,先日改 めて講演としてその全体像を聞く機会がありました。少しばかり概要を聞き書 きとしてお伝えしておきましょう。  通学合宿とは,小学生4〜6年生を中心として,1週間程度,公民館等の公 的施設で共同生活をしながら,そこから直接通学するというものです。もちろ ん暮らしのことをすべて自分たちの手で行います。例えば食事の用意は,献立 を決めて買い物をし調理して食べて後片づけまでを共同作業します。付き添っ ているボランティアは相談に乗るだけで,手出しはせず,泊まり込みながら見 守るだけです。庄内町では合宿用の立派な施設があるのですが,多くの公的施 設では風呂がないために,ほとんどが地域の家にもらい風呂をしています。特 にお年寄りの家に協力をいただいて,孫が帰ってきたようだと歓迎される効果 も得られています。  参加費用は数千円の個人負担で,行政等からの補助も受けて実施されていま す。子どもの食事代はいくらか出さないと親として落ち着かないということの ようです。寝具はリースで揃えています。庄内町では専用の施設なので,畑作 業や動物の世話などもプログラムに入っていますが,普通はそこまではやって いません。ところで,活動の広がりと共に通学合宿の基本的な目的が少し変わ ってしまっているという指摘がありました。  例えば,献立などに子どもの希望を入れてしまうことです。ハンバーグが食 べたいといった希望への迎合があります。合宿はあくまでも「普段の暮らしを 自分たちの手でする」ということに意味があるのです。お出かけして非日常を 体験することではないのです。つまり特別なイベントにしてはいけないという ことです。参加を募る上で方便としてイベント的なプログラムをはめ込むこと も必要ではありますが,それはあくまでも主たる目的ではないということを忘 れないことです。  庄内町では,専用の施設の他,年間1000万円の費用が掛けられています。 普通では同じようにできませんので,それぞれの地域の事情に合った形で予算 も10万円ほどで実施されています。では,通学合宿をすることで何が見える かということですが,「子どもはやったことがないことはできない」,「今の 子どもは消費体験だけしかなく,生産体験が皆無である」,「してみることで, してもらうことに心からありがとうと言える」,「子どもが自力でするときは 時間が掛かるもの」といったことがあり,家庭における親の子育てが失ってい ることを補えるのです。  かわいい子には旅をさせよという故事がありますが,その言葉を知っている だけでは分かっているとは言えません。体験の裏打ちがあって,言葉は本当の 力を発揮します。やってみなければ分からないということです。現代版の子ど もに旅を与える企画,それが通学合宿です。皆さんの地域でも是非取り組んで ください。誰かがしてくれることを待っていては,子どもは貴重な機会を失い ます。子どもは今を精一杯生きてこそきちんと育っていきます。庄内町の通学 合宿については,以下のホームページをご覧になってください。  http://www.town.shonai.fukuoka.jp/hp/SEIKATSU/main.html  ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12指標★      【お子さんは,やんちゃですか,それとも弱虫ですか?】                             (質問14-09) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○やんちゃな子!     やんちゃを辞書で引くと,子どもがだだをこねることとあり,次にい    たずらとあります。親の言うことを素直に聞かないということですが,    どちらかというと制止を振り切ってやってはいけないことをする場合で    す。もっとも,中には親が勝手にいけないと決めつけていることもあり    ます。高いところから飛び降りるのは,親は心配で禁止しますが,やん    ちゃな子はあっさりとやってしまいますね。     だだをこねられると往生しますが,少しぐらいのいたずらであれば目    こぼしするようにしていないと,振り回されて疲れてしまいます。過ぎ    たときは,「コラッ」という父親の一喝を浴びせておくだけでいいでし    ょう。ぐずぐず言わないことです。ところで,男の子であればやんちゃ    を卒業すると腕白になりますが,女の子の場合はいつまでもやんちゃな    娘さんのままです。腕白娘とは言いませんが,この頃の娘さんには使っ    てもいいかも?     家ではそうでもないのに,外に出て人目があったりすると,途端にや    んちゃになることがあります。すごいだろうといった得意げな態度を誇    示しようとします。もしも誰かに「よくできたね,すごいね」などと感    心されると,図に乗っていきます。やりすぎて転んでべそをかきたいの    ですが,ここで泣いてはプライドが許さないと,口をへの字に曲げて渋    い顔で収めようとします。「いい加減にしないからよ」。     大人は子どものしたことだからと大目に見る場合があります。子ども    の側から言えば,やんちゃなことをしたときです。静かにしているべき    時にママに話しかけたりするように,こうあるべきという基準からはみ    出してしまいます。一度や二度は許されますし,許してやらなければな    りません。仏の顔も三度ですから,三度はダメです。もしも,やんちゃ    を先回りして封じ込めようとすると,子どもを安全圏に閉じこめて,大    事な体験を奪うことになります。     やんちゃをしても,これ以上はしてはいけないという自制がかけられ    るように育てなければなりません。そのためには,ここまではいいとい    う限界を教えておく必要があります。静かな場所柄の中でママにお話し    するときには,小さな声で少しだけなら,ということです。その範囲で    あれば,大目に見てもらえるからです。ゆとり教育という言葉がありま    すが,ゆとりしつけもあるはずです。     ソファーの上を跳んだり跳ねたり,子どもはじっとしてはいられない    のです。ソファーは座るものというルールを無視するから,やんちゃな    行動とみなされます。しかし家庭では少しルールをゆるめて,飛びマッ    ト代わりとして利用することも可能です。そのときに,パパがいるとき    はそれはダメといった禁止を教えておいた方がいいでしょう。そう教え    ることで,本当はいけないことだということをしつけることができるか    らです。パパの前,それは社会生活のルールが生きている場なのです。    そのしつけがないから,よその家に行ってもソファーを跳んで回ること    になります。      ・・・《やんちゃな経験をするから,程があることに気づきます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○弱虫な子?     生来,人は弱虫です。赤ちゃんは弱虫の極みです。心身の育ちをする    ことで,弱さを克服していきます。弱虫でなくなっていくプロセスが育    ちであると言うことができます。大人から見れば子どもは弱虫で当たり    前です。弱いから少しでも弱くなくなればうれしいのであり,それが育    ちへの意欲に転化していきます。弱いことがいけないことと断じること    は無茶だと知っておいてください。弱いことを認めることから,育ちは    始まるのです。     もう一人の子ども,つまり自分が自分の弱さを否定したり無視したり    すれば,それはうぬぼれになります。一方,弱さに閉じこもったり逃げ    込んだりしたら,それは甘えです。今日は弱くていいんだと自分の弱さ    を認めた上で,明日には弱さを克服できるという希望が持てるとき,子    どもは生き生きと育っていくことができます。幼い子どもには希望とい    っても実感はありませんが,日々をできる範囲で精一杯生きていきさえ    すれば充分です。     子どもは日々いろんな初体験をし続けます。したことがないことはで    きませんし,どうすればいいのかも見当がつきません。本能的に育って    いる幼児期にはそんなことはないのですが,複雑な社会生活に関わるよ    うになってくると,どうしても不安に身構え手出し足出しを躊躇するよ    うになっていきます。自分の思い通りにやっていいというわけにはいか    ないからです。友だち遊び,環境にあるモノなど,相手に合わせて行動    を選択しなければならなくなります。     お盆に載せたコップなどを運ぶとき,ただ手で支えればいいというわ    けではありません。お盆が傾けば落としてしまいます。よそ見をすると,    中味をこぼしてしまいます。そんな日常体験の失敗を親が咎めてばかり    いると,できないことがいけないこと,できない自分はダメな奴と思い    込まされ,手を出すのが恐くなります。その恐れが他のことにまで感染    して,弱虫になっていきます。     弱虫に据え置かれている子どもに必要なことは,励ましです。励まし    の最も大事なポイントは,昔には言われていたドンマイ,つまり Don't     mind,気にしなくていいということです。何を? それは失敗しても    大丈夫,気にするなということです。ママがついてる,パパがついてる,    後のことは心配しなくていい,というメッセージです。「こぼしちゃっ    て,どうするの?」。咎めるよりも,「拭けば元通り,大丈夫よ。もう    一回やってごらん」。     子どもはちゃんと,きちんとできるはずがありません。できなくて当    たり前です。そう思っていたら,できたときにはほめてやれますよね。    「よくできたね」。その言葉で,子どもは昨日までの自分とは違う,今    日の自分はできることが増えた,と実感することができます。達成感が    育ちの意欲ですが,それは弱い自分を知っているから湧いてくるもので    す。誰でも弱虫です。おそらくママだって,弱虫でしょう。弱いから支    え合おうとして,家族が生まれます。一緒に育ちませんか?   ・・・《弱虫な自分をしっかり見届けていると,育ちの喜びがあります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《やんちゃか,弱虫かは,能力発揮が多めか少なめかの違いだけです。》 ※弱虫ヤーイ。友だちにからかわれたとき,めげる子とめげない子がいます。 どこが違うのでしょう? 親にしっかり認めてもらっている子はめげません。 ボクは,ワタシは弱虫なんかじゃないと思いたくても,親がそのことを裏打ち しておいてあげないと,自信を持って言い切ることができません。パパやママ が後から大丈夫と見守ってくれていると思えば,落ち込まなくて済みます。自 分を信じてくれている人がいる,それほど勇気づけられるものはありません。 大好きな親であればなおさらです。  今やんちゃであったり弱虫であったりしても,いつまでも同じままではあり ません。育つうちにあっちに行ったりこっちに行ったり振れるものです。育ち とは今日と明日は違ってくるものということを忘れないでください。今こうだ から心配だという悩みを伺うことが多いのですが,ほとんどが一時のことです。 長い目で見るようにすれば少々の振れは大したことではありません。子どもが 育っているのであって,親が育てているのではありません。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ☆予告☆  次号では,【お子さんは,楽観的ですか,それとも悲観的ですか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ★編集後記★  最近,子どもたちをねらう不届きな所業が報道されるようになりました。子 どもに対する八つ当たりですが,大人の未熟さが家庭内で子どもに向かえば虐 待,家庭外であれば犯行となります。子どもは思い通りにならないペットでも なく恨みを引き受ける藁人形でもありません。できちゃった子ども,世話の焼 ける子ども,うるさい子ども,邪魔な子ども,子どもなんか要らない,大人た ちから総スカンをくっているようです。  電車に女性専用車両ができましたが,同じように,日本列島を区分けして, 子どもを好きな地域と子どものいない地域を作らなければならなくなりそうで す。子どものいない地域では,年金も存在しないでしょうし,数十年もすれば 誰もいなくなり,廃墟が出現するはずです。ブラックな夢想ですが。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○