□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/04/19]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第185号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■               『逆聞き?』  東京にお住まいのある主婦の方の体験が,パンフレットに載っていました。 結婚間もない頃に,姑と出かけたときのことです。体が丈夫ではなく,その日 も咳をしていました。すると姑が「あなたは体が弱いんだから,大事にしなく ちゃ」と声を掛けてきました。体が弱いという一番のコンプレックスをつかれ て,内心グサリと痛みを感じました。気にしていることを平気で口に出してく るなんて…と嫌な気持ちになったのです。  数日後,実家へ帰ったときに,また咳き込みました。すると母が「もともと 丈夫じゃないんだから,気をつけなさい」と言ってくれました。その一言にハ ッとしてしまいました。姑と母の言葉は全く同じなのに,どうして姑に対して はあんなに不愉快になったんでしょう。同じように気を遣ってくれていたのに, 自分の狭い心が気持ちの壁をつくっていたんだと気がつきました。以来,姑の 一言が胸にチクリとくると,母に言われたなら…と一呼吸おくようになったそ うです。そうして分かったことは,姑の言葉はまったく悪意のないものだとい うことでした。  もちろん物事には逆の場合もあります。大事なことは,いずれにしても気持 ちのよいつきあいは自分の側にあるということです。たとえ姑の言葉が正真正 銘の嫌みであっても,明るく受け止めてしまえば,相手の気持ちを変える可能 性が出てきます。逆に嫌みと受け止めていると,思いやりも嫌みも嫌みになっ てしまいます。どちらが得かは明らかです。人の関係を良くするのも悪くする のも,その決め手は自分の胸にあります。人のせいにする前に,自分の態勢を きちんとした方がいいでしょう。  自分が人に嫌みを言う質だと人の言葉もそう聞こえるものです。姑とは嫌み を言う人という先入観を闇雲に信じてしまうことも邪魔をします。常に自他共 に素直に受け取る努力をしていれば,良い方に動いていくものです。笑顔で受 け止める人には嫌みを言おうとする方がたじろぎます。嫌みは長くは続きませ ん。そうはいっても現実には,嫌みを言って懲りない人はいるものです。世間 を狭くしていますから,やがて寂しさに襲われた挙げ句に悟ることでしょう。  ありがとうございます。親切にされて「有り難い」と言うのですから,ひね て受け止めると皮肉に聞こえます。信じられな〜いという気持ちがベースにあ ります。親切の陰には何かあると勘ぐらなければなりません。相手の親切が善 意か悪意かを見極める必要があるような世間は,うれしくありません。甘い声 を掛けて籠絡する手練手管は,真意をカムフラージュしています。恋の駆け引 きと似ていますね。恋という字は心の字が下にあり,下心ありというわけです。  有り難いことをお互いに交わすことで,社会は成り立っています。その基本 は善意を信じることです。世の中すべてが善意に満ちているという無邪気さは つけ込まれますが,だからといって有邪気というのも暗い人生です。少なくと も自分の回りでは信頼関係が成り立っていると思わなければ,明るく生きるこ とはできません。そこで先ずは八分の善意を信じてみましょう。二分の警戒心 を残しておけば大丈夫です。それは決して人を疑っているということではあり ません。砂糖に少量の塩を隠す方が甘みにコクが出てくるのと同じです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12指南★        【ママは,どうして子どもの不安をあおるの?】                             (質問15-03) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○怖いから!     夫婦喧嘩の最中に,妻が夫に「私だって,毎日家事で夜遅くまで起き    てて大変なんだからね!」と言ったとたん,3歳になる娘が「だって,    ママ昼寝てるジャン!」と仲裁?に入りました。確かに絶妙な仲裁のタ    イミングだったのですが,罪のない娘がその後の数時間,ママにまとも    に口を聞いてもらえなかったのは言うまでもありません。可哀想・・・。    こんな投稿が目に入りました。真実とは往々にして人を傷つけるもので    す。     妊娠中のお腹の大きな友人が遊びに来た時,3歳の娘が喜んでじゃれ    ついていました。ママが「おばちゃんのお腹の中には赤ちゃんがいるか    ら強くぶつかったらダメよ」と注意すると,えっっ!と息を呑んで,ひ    どいショックを受けたように目を丸くした娘が「…おばちゃん,赤ちゃ    ん食べたの!?」と聞いてきました。まわりの大人は大爆笑だったそう    です。子どもは恐ろしい思いをしたことでしょう。無邪気で無知な幼子    は,結構怖い思いをしています。     言葉の覚えはじめの頃はポツリポツリと口に出します。ゆっくりと待    ちきれずについついママが急かせます。イライラして「早く言いなさい」    と迫ります。ママにすればどうということのないひと言です。でも,子    どもにすれば頭の上から不機嫌に怒鳴りつけられて,かなりの心理的な    圧迫が加えられます。言葉を思い出しながら発しようと苦吟していると    き,焦りは余計な重しになります。幼い心はオドオドするようになり,    言葉が遅くなったり,ひどいときは吃音に行き着きます。ママは意識し    てゆったりしておかないと,子どもを追いつめてしまいます。     夜寝る前にジュースなどを飲んでいる子どもに,「おねしょするよ」    って言いますね。軽い注意のつもりです。子どもにとって言葉は大人が    感じているよりも直接的です。例えば,子どもは排泄物を表す言葉を何    の躊躇もなく平気で口にすることができます。ごく身近に感じていて,    汚いと突き放してはいないからです。おねしょするという言葉を素直に    受け容れてしまい,暗示が掛かっておねしょするようになります。「ま    たおねしょして」と叱られると,するかもしれないという不安を素直に    体現するようにし向けられます。必ずそうなるということではありませ    んが,気にしすぎるあまりそちらにスイッチが入る場合もよくあるとい    うことです。     子どものためを思って。ママの心配の種は尽きません。いちいち目を    光らせていなければ,どうなるか気が気じゃないと思うのが親心ですね。    どうして子どもっていけない脇道をわざと選ぶように入り込んでいくん    でしょう。信じられない!? 子どもは無限の可能性を持っているので    す。無限とは良くも悪くも一切合切全部です。いけないことをしたら痛    い目に遭う,だからしなくなります。それが叱るしつけであり,許され    ないことに対しては厳しく接することが大事です。しかし,痛い目に遭    うからと子どもを脅かして不安に追い込んでしまうことが日常茶飯事に    なっていませんか?     人を思うがままに動かそうとするとき,手っ取り早いのが脅しです。    嫌がる子どもを渋々でも従わせるには,怖がらせれば簡単です。しかし,    それはしつけという養育上ではとても悪質な手抜きになります。手抜き    工事の修復は高いものに付くというのは常識ですが,子育ての場面でも    同じです。怖いからする,叱られるからする,叩かれるからする,不安    だからする,それは昔は奴隷に対するしつけでした。いちいち監視され    脅されてビクビクと不安な中では,いじけるしかありませんね。          ・・・《ママは優しく,怖いのはお化けに任せましょう》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○ママ好みの?     「ねえ,ママ」。「何か用?」。「別に」。あれもこれも抱えている    ママは,「忙しいんだから,用が無いなら呼ばないで!」って軽くあし    らっています。いっぱいすることがあって時間に追われるようにバタバ    タしているママの姿を遠くから見ていて,子どもは近寄りがたい気持ち    を抱え込んでいます。つまんないな,というかすかな不安を胸の奥に押    し込んでいます。ママは殊更邪険に突き放しているつもりはなくて,成    り行きでそうなっているのでしょうが,子どもに不安を与えています。     「ママ」,その呼びかけが大して力のないことを思い知らされると,    寂しい不安に襲われます。それは用があるのではなく,ただママそのも    のを求めていて,ちょっとでいいから丸ごと私のママになって向き合っ    て欲しいという願いです。グッと抱きしめてくれさえしたら,それだけ    でホッとすることってありますよね。フッと顔を見合わせてにこっとす    るだけでも,人の心は安らぐものです。親子の間には特別に用がなくて    も,気持ちのふれあいを重ねておく必要があります。     双子の姉妹がいます。双子ですから,育ちの出発は同時だと考えるこ    とができます。双子でも姉と妹に立場が分けられます。便宜上のことに    過ぎません。ところが,お姉ちゃんはしっかり者に育ち,妹はおしゃべ    りだが甘えん坊に育っています。親を含めて周りからの接し方が,姉と    妹という育ちを与えていったからです。子どもは人の関わりの中で,居    心地のよい形に自分を育てていきます。自分に期待されていることが何    かを見極め,それを受け容れていけば自分の居場所が獲得できるからで    す。     こんな子であって欲しいという願いが日頃の関わりを通してやんわり    と突きつけられます。乱暴に言えば,しつけは型にはめこむことです。    子どもは周りで用意された型に合わせないと居心地が悪くなります。自    分は望まれていると感じるためには,型にはまらなければなりません。    ところが,その型が子どもの実際の大きさに合わないことが多いのです。    親が与える型はいつも大きすぎるのです。大きめの洋服を着せようとす    るのです。それをどうしてぴったりと似合わないのかと責められても,    子どもにはどうしようもありません。でも,子どもは自分がいけないの    だと思っています。     逆の場合もあります。子どもに全く型を与えないのです。何をしても    ほったらかしにされて,どうなればいいのか分からずに彷徨うようにな    ります。どうすればいいのかという不安を親にぶつけるようになります。    親は逆らう子どもとしか見てくれません。余計にコミュニケーションが    疎遠になっていきます。食べさせておけばいいという扱いを受けるよう    になります。どう育てばいいのか教えてもらえないとき,子どもの毎日    は不安です。その不安を消すには享楽的な世界に浸るしかありません。     初めての子育ての時には,親は不安です。その不安が焦りに変われば,    子どもは追いつめられます。親の不安が逃げになれば,子どもは彷徨う    不安に追い込まれます。いずれにしても,子どもの抱える不安は,親の    不安を肩代わりさせられているのです。先ずは親同士のつながり,それ    も養育経験者を交えたネットワークを持つようにしてください。インタ    ーネットのつながりでもいくらかの助けにはなりますが,身近なつなが    りの方がベターです。そして近所の子どもたちを観察することです。     ・・・《家族が抱える不安は,子どもの上に覆い被さっていきます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《不安の中におかれた子どもは育ちができないと心得て下さい。》 ※自分が不安を抱えているかどうか,それは時として無意識のレベルにまで抑 え込まれているので自覚できません。一つの自己診断をしてみましょう。家族 の誰に対しても笑顔で話すことができますか? 子どもに向き合うときには笑 顔でない,あるいは上の子に対しては笑顔ではない,もしもそんなことがあっ たら,不安を抱えているということです。それを子どものせいにしているよう なら,かなり進行しています。早めに考え直しをした方がよいでしょう。  子どものしくじりを笑えるようなら大丈夫です。呆れることがあるかもしれ ませんが,そのママのゆとりを持った気持ちが大切です。ゆとりが子どもに安 心を与えるからです。このマガジンを読んでくださっている方は,すでに余裕 を持って頂いているので安心ですが,そういう落とし穴があることを知ってお けば,より一層安心して子育てができるでしょう。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  子ども会育成会主催によるパネルディスカッションのコーディネーターを依 頼されました。テーマは「私たちの子どもたち」です。私の子どもではなく, という意味をアピールしています。核家族の子育ては私の子どもという子育て になっていますが,子どもにとってはかなり変則的な育ちの環境なのです。社 会で育たなければ社会性は身に付かないという自明な条件が満たされていない からです。  本を読んだだけでは分からないことがたくさんあります。人の痛みを分かる といっても,感動的な話しか知らなければ,それは知識でしかありません。小 さな痛みを与えたり受けたりする体験があればこそ,実感に裏打ちされたもの になります。そのような育ちは子どもたちの中にしかありません。与えられた 環境ではなくて,自分たちが作り出した環境が大事なのです。小さな子ども世 界を作るには,子どもたちの自主的なつながりを見守る大人たちが傍にいなけ ればなりません。どこまで訴えることができるか分かりませんが,頑張ってみ るつもりです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,【ママは,どうして子どもの世話が面倒なの?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○