□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/05/17]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第189号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『体験ソフト?』  今の若者たちが幼かった頃,幼稚園ではハリネズミ弁当なるものがありまし た。おにぎりやおかずの一つひとつにプラスティックの楊枝が刺さっているの です。箸がうまく使えなくて,先生に迷惑を掛けてはいけないと考え出された ママの知恵です。箸を使えるようになる折角の訓練の時期なのに,しつけを放 棄してしまいました。なんとなくその場がしのげればいいという逃げが,子ど もたちの大事な能力を枯らしてきました。  箸や鉛筆の使い方など,大したことではない。それよりも英語や算数を幼児 期から学ぶことの方がずっと将来にためになる。そのような知育に片寄った子 育て意識が,育ちのペース配分を誤らせます。知育がいけないということでは ありません。そればっかりになるということが不自然なのです。お勉強に幼い ときから打ち込んだ子どもは,確かに利口な子になりますが,伸びの頭打ちが 早く訪れて,小利口にまとまってしまうようです。疲れてしまったり,天狗に なって脇道に逸れたり,なめてしまうという人の弱さが残っているからです。  体験という土台が小さい上に繰り返し反復という作業で知識を積み込んだに しても,どっしりとした構えにはなりようがありません。最近の学力の低下と いう心配も,土台の貧弱さに原因があります。教える内容量を減らさないと詰 め込めないというのは,土台の手抜きのせいです。ところで,手抜きや手当て という言葉がありますが,人としての能力は二足歩行により前足が自由になり 手になったことから発生していることを思い出すべきでしょう。  犬と猫がケンカをしたら,犬は噛みつこうとします。前足は穴を掘るときに 使う程度です。一方で猫は前足で引っ掻こうとします。木をつかまえて登るこ ともできることから,手に近い使い方ができます。ケンカは猫の勝ちになりま す。手を使うこと,手で作業をする,例えば,運転手や機関手,歌手や話し手, 書き手など,特殊技能を持つ人を手で表してきたように,手=能力であったの です。当然,能力は知能というソフト,脳の働きが付随します。  体験の中で手を使うと,そのプロセスはソフトのインストール作業に相当し, 様々な知能ネットワークが脳内にメモリーされていきます。体験が少ない脳コ ンピューターは,キーボードからたくさんの知識データを打ち込まれたら,処 理が追いつかず反応が遅くなり,終いにはハングアップし,フリーズするのが 関の山です。子ども時代は立ち上げの時期ですから,基本的生活習慣というO Sに,豊かな体験という高機能ソフトをきちんとインストールすべきです。知 識というデータは,その後から打ち込んでも十分間に合います。  幼児期の体験が大事であることを,三つ子の魂百までと言ってきました。今 は知能のベースが幼児期にできると理解されていますが,それは知識ではあり ません。ポケモンキャラクターの名前をたくさん覚えることができても,それ はファイルがメモリーされただけで,決して知能というソフトではないのです。 ソフトは目に見えないところでしか動いていないので,気がつかないのです。 ディスプレイ上に見えるデータに目を奪われていると,中途半端なインストー ルでお茶を濁す羽目になります。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12指南★        【ママは,どうして子どもの力を借りないの?】                             (質問15-07) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○肩代わり!     料理がお好きでないお母さんが,ある日ふと思いついて,4歳になる    息子に料理の味を尋ねてみました。「ウマイのとマズイのが合体したう    まさ」と感想を言われました。食べてみたら本当にその通りで,息子の    表現力に脱帽したということです。食べること,味を見分けることは生    きることに直結しているので,子どもといえどもかなりの程度まで完成    されています。ただ,その感度が今の時代には妙に贅沢で甘やかされす    ぎているのが気がかりです。そこで,先ず子どもを味見番に採用します。     相対的に甘くて柔らかい食事にずれている今風の嗜好は,一生の健康    のためには矯正した方がいいのですが,そのためにはママの味見,うま    いという味覚を商業的味付けから離していくように心掛けてほしいので    す。子どもに味見を頼みます。ウマイのとマズイのが合体したうまさ,    そのまずくはないというレベルを維持しながら,少しずつ今風のウマイ    から外していくようにします。味の感覚は慣れるという習性があるので,    望ましい美味さに矯正できます。お袋の味の復権です。     冬のある朝,冷えるのでガスヒーターを点けようとスイッチを入れた    が入りません。「コンセントは入ってるし,ガス栓も外れてないし・・    ・」とママが焦っていたとき,5歳になる息子さんがやって来て,無造    作にチャイルドロックを外してくれました。慣れない機能は使うもんじ    ゃないと,ママはちょっぴり反省です。家庭にある便利な製品類のスイ    ッチは,大人にはやっかいな代物です。頻繁に使うスイッチ以外は,何    がどうなるかほとんど理解していないことでしょう。     機械類が苦手なママもいらっしゃるでしょう。子ども,特に男の子は    機械類が好きです。スイッチがどんな機能を引き出すか,ほんの数回の    試行,あるいはパパが扱っているのを傍で眺めているだけでも,理解し    てしまいます。その物覚えの良さを利用してください。子どもに頼るの    です。子どもは喜んで力を貸してくれます。「ママはダメだなあ」なん    て得意げにやってくれます。頼りにされること,それは自分の能力に自    信を抱かせることになります。ママも楽になり,一挙両得です。     こんなしつけは,案外とやられているのではないでしょうか? ある    ご家庭で,子どもの浪費を防ぐ意味で,「うちは貧乏だからお金がない    んだよ」と教えています。ある日,一緒に買い物に行ったときのことで    す。4歳の息子さんが「ママ〜あれ買って」と言ったとき,7歳の娘さ    んがすかさず「うちは貧乏だから買えないんよ!」と叫びました。目の    前の店員さんも,その場の空気も凍ってしまいました。ママは穴があっ    たら入りたかったそうです。     日頃からママの言って聞かせていることが,見事に子どもにしつけと    して実現しています。貧乏とは思い通りにモノが買えないということだ    と,ちゃんと分かっています。お姉ちゃんも,その言葉を自分に向けて    つぶやき,たくさん我慢してきたことでしょう。お姉ちゃんは弟に対し    ては,ママ代わりを務めるものです。その言動はママの生き写しです。    しつけを手伝ってもらったら,ママも楽になるでしょう。でも,貧乏と    大声で叫ばれるのは,ちょっぴり恥ずかしいかも? 大して気にせず明    るく言い切ってしまえば,案外と開き直れるものですよ。無理は言いま    せんが?   ・・・《子どもが役に立てることは,けっこういろいろとあるものです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○教わる?     ある日曜日の昼下がりです。買い物に出ようと思い立ったのですが,    そのときママはスッピンでした。小学校5年生の娘さんに,「お母さん    スッピンなんだけど,このまま出かけていいかな?」と聞いてみました。    娘さんはママの顔を一瞥し,「お母さんの顔を見つめる人なんかいない    から,いいんじゃない」という返事でした。そのとき以来,ママはスッ    ピンのまま平気で外出するようになったということです。どうなんでし    ょうね。     身だしなみについては,母と娘というペアは関心を共有できるのでし    ょう。オシャレについては,人目よりもご本人がよろしいと思えばいい    んではないでしょうか,としか言えません。ところで,無化粧という選    択もあり得ますし,若いママには素肌の美はとても似合うと思いますが?    「誰も見ていない」という娘さんのコメントは,ママへのちょっとした    意地悪かも? 若い自分は見られているが,ママはもう見てもらえない    と挑戦しています。若さの自惚れを仲良く共有してください。     中学2年生の息子に向かって,ママがぽつりと「今,お金が無くて…」    と言ったことがあります。即座に「お母さんが無駄使いをするからだ」    と返ってきました。「例えば?」と尋ねてみると,「毎日のビールがム    ダだ」とおっしゃいます。そこで「何を言う! あれはお母さんの疲れ    を癒す唯一の楽しみじゃない!!」と反論してみました。すると「ちっ    ぽけな楽しみだねぇ〜」と冷たく言われてしまいました! そう言い切    られると,確かにと思ってしまうとは?     いつまでも子どもだと思っていたら,フイッと大人の痛いポイントを    さりげなく突いてくるようになります。子どもはあらゆる面で未熟な子    どもではありません。ある部分では大人を凌ぐこともあります。思いや    りなど,大人も顔負けすることがあるでしょう。育ちは凸凹していると    考えておいてください。特に生き方について,大人の夢や志などから見    習おうとする時期には,かなり厳しい目を向けてきます。子どもに見ら    れている大人,しっかりしなくては恥ずかしいですよ。     休みの日にパパが,4歳の娘に「大きくなったら何になりたい?」と    尋ねました。「ネコちゃん!」と嬉しそうに答える娘にちょっと頭がク    ラクラしましたが,気を取り直して,2歳の息子に「あんたは?」と聞    いてみました。「ボクはねぇ,大人にはならないの。ずっと子どものま    までいて,お母さんにお小遣いをもらって,一生遊んで暮らすの」。や    っとしゃべれるようになったばかりで,そんな人生設計するか,と先行    きの重たさを思い知らされたそうです。     大人になりたくない子どもたち,遊んで暮らせることを願う子どもた    ち。増えてきました。苦労して手に入れるからこそ喜びがあるというこ    とを教えられていないのですが,かなりの程度は時代の特徴です。豊か    さは遊んで暮らせることであり,子どもを何の苦労もない世界に追い込    んで育てています。子どもは社会の試験紙です。自分の身をもって,社    会や家庭の有り様を訴えてきます。これでいいんですよねと,人生設計    の確認申請をしようとしています。許可できますか,それとも変更です    か?  ・・・《子どもは,親が見過ごしている身近なことを気づかせてくれます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子どもは足手まといになるだけではないと心得て下さい。》 ※負うた子に教えられ。とっても古い,カビの匂いすらする言葉です。負うた という言い方が分かりにくいですか? 蛇足ながら,背負ったという意味です。 おんぶするような幼い子どもからも,背負う大人が指針を教えられることがあ るという意味です。本質とは意外と簡単なものです。大人は理屈で脚色するか らかえって分かりにくくなりますが,ひと言で言えるのです。  子どもの単純な行動や言葉は,その背景にある大事な価値観によります。そ れを目利きできる大人になる,それが親になるということです。大人とは子ど もに教える人ではありません。子どもの中にあるよい価値観を見抜き,共に学 ぶ姿勢を持てる人です。子どもを育てることで学びがあるから,親という称号 を名乗ることができるのです。謙虚さという古い言葉もあります。子どもの生 きる力を,学んでみませんか? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  この日曜日は資源ゴミの回収日でした。古新聞などの回収益金自体はわずか ですが,10倍以上の奨励金が貰えますので,子ども会やPTAが利用してい ます。数万円の回収で数十万円になります。子どもはもう巣立っているのです が,回覧でお知らせがあるので,古新聞や古雑誌などを提供しています。朝8 時までに家の前の道沿いに出しておけば,子どもたちが回収していきます。  アルミ缶の方は,いろんなボランティア団体が活動資金調達のために回収し ています。缶のプルトップだけを集めて,車椅子を寄付しようという活動もあ るようです。行政からの補助が削減される中で,ボランティア活動を縮小しよ うという声も聴かれます。でも,資金を自ら捻出する道を持たない活動は,や はり自立しているとは言えないと思いますが,いかがでしょうか? ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,【ママは,どうして子どもの選択を却下するの?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○