□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/05/24]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第190号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■           『ロード オブ アダルト?』  家庭をまとめるのは母親,家庭を前向きに動かすのが父親,といわれること があります。あくまでも二つの役割があるということであり,どちらが担当す るかは例示に過ぎません。一人二役でも構わないのですが,それぞれが役割を 持つことで,共育パターンができあがるという効用もあります。父親の養育へ の参画を促す方便としても使えるはずです。そこで,父親の役割が弱いと子ど もの育ちがどうなるか,若者に見られる姿からいくつかのポイントをあげてお きましょう。  子どもっぽさがいつまでも抜けずに,純粋に打ち込もうとします。ものごと を主観的に見て,わがままで,社会性に乏しい振る舞いが目につきます。子ど もはわがままな状態から出発するので,抑制というしつけが必要ですが,同時 に誘導してやることも忘れてはなりません。ダメと押さえつけるだけではなく, こうしたらと皆と仲良く遊べるよと導くのです。ただ我慢するだけではなく, そうした方がもっと大きなうれしいことにつながるという客観的な見方を教え てやりましょう。  将来のことを考えるときに,「〜をやりたい」と口にしますが,「〜で食べ ていく」とは言いません。どうやって生きていくのか,いわゆる生計という視 点が全くありません。親が子どもより早く死んでいなくなると話すと,目を丸 くする若者が増えてます。いつまでも親にぶら下がっていられると思っていま す。稼ぐということがどういうことか,子どもにしっかりと見せるのは父親の 役割です。言って聞かせてもだめです。見せることです。父を嫌うのは,父の 生き方が見えないからです。  願望だけがフワフワと膨らんでいるために,欲望が止めどなく広がり,一方 で不満が過大に溜まっていきます。自分には何ができるかを自覚し,やれるこ とからはじめていこうという現実的なチャレンジがありません。社会が悪い, 親が分かってくれずに何もしてくれない,人のせいにして逃げています。コツ コツとやり続けることの強さ,例えば歩き続ければこんな遠くまで来られたと いう自分の力を知っていません。すぐそこまでも車でスッといける暮らしでは, 自分のすごさは見えませんね。  簡単には手に入らない願望に先走っているために,目の前にある決断を避け ようとしています。何かを決めると願望から遠ざかるような恐れを感じて,決 められずウジウジすることもあります。例えば,何のために学校に行っている のか,無駄足ではないのか,意味ないじゃんとか,入口が見えていません。願 望とは向こうからやって来るものではなく,自分から近づいていくものです。 そのためには,たくさんの決断をして扉を一つひとつ開けていくプロセスを, 父親が教えるべきです。  大人にもなれず,大人になろうともしない若者たち。言い換えると,社会に 参画しようとしていない,社会とはどういうものか分かっていない若者たち。 見て知っているから分かっていると思い違いをしている若者たち。先輩である 社会人としての大人が,後輩である子どもを信頼して鍛えることを怠ってきた せいです。今時の若者はという言葉は,実は養育を母親に押し付け学校に放り 出してきた自分の見込み違いに向けられるはずのものです。子どもが育てない 社会なんて,寂れるだけです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12指南★       【ママは,どうして子どもの選択を却下するの?】                             (質問15-08) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○それを言っちゃあ!     子どもは自分勝手な自然児です。ママは常日頃より息子さんに,「ア    メはムシ歯になるから食べちゃダメ!」と教えていました。ところが,    どうやら祖母にもらっているようです。ある日ポケットにアメ玉の包装    紙を発見! 「アメはムシ歯になるって言ってるでしょ!」と怒ると,    「そうだよね! いけないんだよね! 今度バアちゃんによ〜く言って    おくからね! バアちゃんは年寄りだからすぐ忘れちゃうんだよね!!」    と慌てて弁解をしていました。     ママにすれば,「一番悪いのはおまえぢゃ」と言いたいところです。    子どもは自分が悪いことは重々分かっています。分かっているから,お    ばあちゃんのせいにして逃れようとしています。素直に認めないことで,    悪いことの上塗りしています。子ども時代には一度の軽い悪さは許され    ます。肝心なことは,悪かったと認めて反省することです。反省できる    ことが健全さの条件です。言い逃れをすると,その先には反省がなくて,    戻れなくなります。人のせいにする卑怯さは,断固正しましょう。     ママをとっても大好きな3歳の娘さんがいます。それに引き替え,パ    パが寄ってきても「パパ嫌い,ママ好き」というので,パパはへこんで    います。ところが,ある日自分から寄ってきてパパにキスをしてくれま    した。パパがすごく喜んでいると,「これでいいでしょ。アレとって」    と高いところにあるおもちゃを指差しました。自分のキスの価値を知っ    ているのでしょうか・・・。驚かされたパパがおられました。誰のおし    こみなのか,強かな娘さんです。     手玉に取られていることが分かっていても,娘の言うことであれば喜    んでしてあげるのが,パパの優しさであり,弱点です。やがて,パパは    ご機嫌を取り結ぶためにママに内緒で無理をするようになります。一方,    娘は,ちょっと甘い態度を見せれば,パパなんてイチコロという手管を    身につけていきます。パパ限定にしておけばいいのですが,ついついよ    そのおじさんにまで仕掛けていくようになり,深い淵へと身を滅ぼして    いきます。たいがいにしてくださいね,母娘でパパをいたぶるのは?     4歳になる娘さんが公園でお友達と砂遊びをして,お団子とか食べ物    を作って遊んでいました。傍でニコニコと見守っていたママが,お友達    に「これなあに?」って聞くと,それぞれに「カレーライス」とか,    「ハンバーグ!」と答えてくれるのに,ママの娘さんは「砂っ!」。確    かに砂には違いはないのですが,どうにも複雑な思いのママでした。よ    く言えば真面目で正直な娘さんですが,遊びの世界に浸れない真っ直ぐ    さが気になりますね。     友だち遊びの基本は,世界を共有すること,その場の雰囲気を共同制    作することです。雰囲気を壊す言動は,仲間はずれの元になります。マ    マの心配は,まさにそのことです。娘さんが「砂」と答えざるを得なか    った背景があるかもしれません。友だちがママに楽しげに答えているの    を耳にして反発したくなったり,ママには冗談は通じないと思っていた    り,ママとの現実の関係のあり方も考慮されるべきです。単純には,カ    レー,ハンバーグと言われてしまって,他に思いつかなかったせいかも    しれません。お子さんの好きな「ケーキかな」って,言い換えてやる手    もあります。さりげなく誘ってやってください。    ・・・《子どもはつい弾みで道を逸れていきますので,ママはご用心》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○余計なこと?     スーパーでの風景です。小さい男の子が「ママーこれ買って」と騒い    でいました。母親らしい人が「あかん,ゆうとるやろー。そんな金ない」    と叱ったため,「これが食べたいんだぁー」と泣き叫んでいました。ど    うせお菓子かなんかだろうと思ってその子の手を見てみると,『かつお    のたたき』(半額シールつき)でした。子どもにしてはしぶい選択です。    しかもちゃんと家計を考えているみたいだと思いつつ,ちらっとその母    親の持つカゴを見てみると,大量のお酒と肉類が入っていました。その    場にいた人はみんな,「買ったれよ」と思ったに違いありません。     端からとやかく言えば,余計なお世話です。何にも分からない癖して,    要らぬお節介です。だから,皆は思うだけで見て見ぬ振りをしてくれま    す。昔はその要らぬ口出しがご近所から入っていましたから,親子の権    力差が縮小できていました。自分は嗜好品を手にしながら,子どもには    与えない,普通なら理不尽です。自分の身勝手さは気がつかないもので    す。ほどほどにしておくためには,傍目からどう見えるか,少しだけ自    己チェックしてみることです。ちょっとだけですよ。     お母さんが小学校に入学したばかりの長男と算数のお勉強をしていま    した。『問題:75円あります。3円つかうといくらのこりますか?』    と読んでいく途中で,いきなり息子が母親に質問です。「ねえ,おかあ    さん,3円で何が買えるの?」。「今はそんな余計なことは考えなくて    いいの」って言おうとして,いったい何が買えるだろうと一緒に悩んで    しまうママでした。こんな計算を練習して何の役に立つのと問いつめら    れたら,何と答えたらいいのでしょう。     お勉強とは現実を総合して作り上げた虚構の世界です。(75−3)    という計算は現実世界で起こり得ます。数字だけの計算ではあまりに抽    象的で一年生には取っつきにくいので,現実味を帯びさせるために,暮    らしの世界で出会う「円」というお金の計算に脚色してあります。もっ    とも,このケースではあまりよい脚色ではありませんね。具体性を持た    せるなら,一年生の暮らしを見極めた問題にすべきであるというのが正    論でしょう。そんなときは(75−3)人と変えてみませんか?     小学1年生の男児が,夏休みの宿題である「夏休み中の日記」を,初    日の一日で全て書き上げ大得意になっていました。そこまでは,やった    ことのある人もいるでしょう。ところが,その子はその偉業?をどうし    ても自慢したかったらしく,最後の日付の日記に「これらの日記は,○    月×日にいっきに書きました」というコメントを入れたのです。担任の    先生から叱られたのはいうまでもありません。馬脚を現してしまいまし    たが,ご愛敬ですね。     蛇足のひと言。それですべてがご破算になります。しかし,結局はそ    れでよかったということがあります。嘘がばれてしまって,深みに嵌ら    なくて済むからです。ずるをしたらそれを威張ってみたくなり終いには    ばれてしまうという人の弱さを思い知ったことでしょう。余計なひと言    は自分を救う学びになります。悪知恵には尻尾があって,それをいずれ    は自分で踏むことになっています。子どもの嘘は見え見えなので,とき    どきは見逃しても,ここ一番のときには尻尾を引っ張ってやりましょう。     ・・・《子どもの思考回路は単純で,大人のものとは少し違います》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子どもの選択は,混乱しているようで半分はまともと心得て下さい。》 ※生きるプロセスは,選択することの連続です。いつ生まれるか,いつ死ぬか は神様の選ぶことですが,どう生きるかは人が選びます。今日のおかずは何か, それはママが選びます。思いついたままに選ぶこともあれば,あれこれ損得を 考慮して選び抜くこともあります。選ぶには好みや損得,善悪や正誤,美醜と いった価値尺度に拠ります。子どもの尺度はまだ完全ではないので,いろんな 選び間違いをしますが,それは仕方がありません。軌道修正をするには,選ん でみなければ始まりません。  親の役割は,子どもの選択間違いを見届けたら,もう一つの選択肢を教えて やることです。子どもは,これしかないと思い込むところがあり,選んでいる という自覚がありません。こんな選択もできると教えれば,世界の理解が広が ります。物事が分かるというのは,選択肢を増やすことでもあるのです。しか しながら,当然選択には迷いが伴います。迷うことで,メリットを見極めよう として,いろんな価値観を探すことができます。子どものうちは迷いも学びの 一環なので,つきあってください。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  月初めに茂った庭木をばっさりと丸裸状態に切りそろえましたが,その直後 は視界が急に広がって空間が広くなった感じがしたものです。急な変化は目に つきますが,しばらくすると慣れてきて,いまでは何も感じなくなっています。 木の生長の緩やかさは,人の感覚をすり抜けるので,いつの間にか茂ったとい うことが起こります。子どもたちの成長も同じで,身近な大人ほど気がつきま せん。少し離れてわが子を見てくれる人がいるといいのですが,難しくなって いますね。  4月の末に発表された統計数理研究所による国民性調査では,「心の豊かさ」 は25%に低下していました。「生活水準」も50%と最低です。厳しい生活 現状に引きずられて心まで貧しくなっている傾向は,子どもたちの養育により 一層の奮起が必要になります。頑張りどころです。時代の流れに飲み込まれて しまわないように,しっかりした生き方の指針をご夫婦で確認してくださいね。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【ママは,どうして子どもの関心を逸らすの?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○