□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/05/31]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第191号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■               『節目育ち?』  子どもの世界は,育ちの環境として設けられている制度によって,階段状に なっています。そこに,節目が現れてきて,育ちの年輪が形作られます。幼稚 園の年長さんは威張っていますが,小学1年生になると大人しくなります。小 学6年生はノビノビして大きいのですが,中学1年生になって相対的に小さく なってしまいます。膨らんで縮んでという繰り返しがあり,それが引き締まっ た世代年輪を刻むことになります。  その局面に刺激されて,大事な育ちがあります。人との関係が逆転すると, 怖い,不安といった感情が呼び込まれます。相手が自分をどう評価するか,と いうことを突きつけられます。このとき他人の目が自分の中に生まれますが, この他人の目が新しい環境で通用するかどうかの不安があるのです。この他人 に成り代わる自分,それをこの子育て羅針盤では,もう一人の自分と言い表し てきました。子育ちがこのもう一人の自分の育ちであるという点で,節目の育 ちは重要です。  子どもには小さな節目が一年毎に準備されています。普段はあまり意識され ることはないでしょうが,フッと自分の立場として思い出される場合がありま す。自然体験キャンプに参加した女の子が「怖かった。泣きたくなった。でも, 下級生の前では泣けない,我慢した」と語っています。お姉ちゃんらしさは, 妹分を意識する局面で培われます。子どもなりに育ちはこうあらなければなら ないというモデルが意識され,自分は育っているかという自問が突きつけられ るのです。  園庭で子どもたちが遊んでいます。鉄棒の周りに年少組が立って,年長のお 兄ちゃんのでんぐり返りを見ています。お兄ちゃんは得意になってして見せて います。微笑ましい風景が目に浮かびますね。傍にいた若い先生が「ほら,あ なた達もしてみたら」と声を掛けようとしましたが,園長先生は「黙って,も う少し見させましょう」と制止しました。子どもは子どもたちの中で育つとい う思いからです。  子どもにとって年長の子はとても大きく見えます。さらに,大人と違って自 分たちの世界にいる仲間です。その年長の子が上手にして見せてくれると「ス ゴイ」と感動して,同時に「してみたい,してみよう」と思います。年上とは いえ同じ仲間ができるのを見ると,自分にもできるかもしれない,できそうと 思います。能力の小さな節目を見つけることが育ちにつながります。大人には とうてい及ばないと知っていますから,大人がして見せてもできなくて当然と 思います。  子ども同士の方が,大人が教えるよりも何倍も早く覚えます。教え方が上手 なのではなくて,年長の子が楽しんでいるから,一緒に楽しみながら覚えてい きます。一方で,年長の子はしてみせることで工夫したり,言葉を見つけたり, 優しさを学んでいきます。急かせるのではなくて,「できたよ」とうれしそう にしているときに,「よくできたね」,「がんばったね」と努力を認めてあげ ましょう。間近な節目が切磋琢磨の場面なのです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12指南★        【ママは,どうして子どもの関心を逸らすの?】                             (質問15-09) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○理解不能!     4歳と2歳の姉妹が,ぬいぐるみと病院ごっこをしています。長女が    「あっ,キティちゃんがケガをしてます。血が出てるーっ。早く救急車    を呼んで下さい」と言うのに,次女は「きゅーっ きゅーっ しゃーっ」    と返しています。ママは陰で「いち いち きゅー」とつぶやきながら,    幼い姉妹に119を教えたら,本当に電話をしてしまうかもしれないと    恐れていました。そこで,本当のことはもうしばらくお預けにすること    にしました。「ごめんね」。     生兵法は大けがの元。幼い子どもは正確な知識を間違いなく使いこな    せるとは限りません。使えるようになるまで教えないという選択も大切    です。救急車を呼ぶことが分かっていれば十分です。子どもの関心に全    部きちんと応える必要はありません。年齢に相応しい対応をすればいい    でしょう。子どもは遊びと実生活を区別しようとはしません。遊びの世    界にいる子どもは,現実をディフォルメしているので,細かいところは    不正確でもいいでしょう。気にすることはありません。     3歳くらいの女の子が,ママに叱られています。ママはどうやら本気    です。「きちんとママにお話できるようになるまで,トイレに入ってな    さい!」と言われて,トイレに押しこまれてしまいました。数分の後,    トイレから出てきました。「きちんとママに話せる?」と聞かれた女の    子は大きくうなずき,「あのね,あるところに蛙の親子がいてね・・・」。    ママはビックリしましたが,やがて気がつきました。女の子は必死にな    ってママにしてあげる「お話」を考えてきたのです。     賢明なママはもう事態をすっかりお分かりですね。ママはどうしてこ    んなオイタをしたのか説明しなさいと言うつもりでした。しかし,説明    という言葉は幼子には通じません。そこで「お話をしなさい」と分かる    ように言い換えました。ところが,幼子の知っている「お話をする」と    いう言葉は,文字通りにお話をすることでしかありません。伝えたつも    りが伝わっていなかったのです。子どもの関心事は,オイタの言い訳な    どではなくて,ママにお話ができるうれしさなのです。     まだ「す」と「し」がちゃんと発音できない2歳の女の子がいます。    毎晩ママが読み聞かせている童話を得意げにマネて,「むかしむかしあ    るところに,おじいさんとおばあさんがしんでいましたー。おーしまい」    と言って明るく喜んでいます。その後に「さ行」の猛特訓を受けている    理由までは理解していません。「住んでいます」が「死んでいます」で    は,意味が大違いです。間違いにも程というものがあり,ママの慌てぶ    りは分かりますね。     ひらがなだけでかかれたぶんしょうはとてもよみづらくはありません    か。かんじをしらないようじのことばのせかいはこのようなせかいなの    です。すんでいますとしんでいますのあいだにはそれほどおおきなちが    いはかんじられません。ましてやしんでいるということばがなんのこと    かわからないのですからいっこうにきになりません。むかしばなしのえ    ほんをいめーじしながらことばをかさねることにかんしんをもっている    のにままはかんけいないことをさせようとしているとおもうでしょうね。    でもはなすばあいはひらがなのおとをはっするだけなのでいっそうせい    かくなはつおんがひつようになります。おつかれさま。      ・・・《子どもは自分の知っている世界にしか関心は向きません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○子どもらしい関心?     お父さんが散髪を終えて家に帰っってきました。3歳の息子がパパの    頭を見て「お父さん,散髪してきたん? 飴ちゃんもらえた?」と聞い    てきました。もらえなかったと答えると,「お父さん,あかんたれやな    ぁ…」と言われてしまいました。息子が行っている散髪屋は,かしこく    散髪ができたら飴ちゃんをくれるみたいです。お父さんはちょっぴり残    念な気分にさせられていました。あなただったら,そんな息子の関心に    どんな言葉をつないでやりますか?     あめ玉に釣られちゃって,お前さんはしっかり子どもなんだよ。でも,    笑えませんね。ママだってポイントが付くからってご贔屓のお店があり    ますから。モノは違っていてもご褒美に釣られるのは,大人も子どもも    大して変わりありません。チリも積もればの言葉通りに,おやつ代が節    約できて結構です。せこいと思うかしっかりしていると見るか,どちら    でも構わなければ,身につまされるときは苦笑いをしておくことです。    お父さんは飴ちゃんなんか欲しくはない,と威張っても詮無いことです。     ママが1歳半の息子を連れて外に出ていたとき,近所の人にキャンデ    ィをもらいました。ママはしつけの機会と思って「こういう時は何て言    うの?」と聞きました。息子は手を差し出して「もう1個!」。「!!」。    ママはそんなこと教えた覚えはありません,と呆れるやら恥ずかしいや    ら,ひどい目に遭わされました。自分の思いに正直な子ですが,お付き    合いという面では今後のしつけ甲斐がありますね。当分の間は,笑って    誤魔化すしかありません。     今一番関心のあること,それは目の前にあるキャンディですよね。マ    マが言った「こういう時は」という言葉は,今このときに持っている自    分の関心によると,という意味に受け取られてしまいました。ママは近    所の人と子どもの今の関係を言うつもりでしたが,場の雰囲気などは読    めるはずもありません。1歳半ではまだ自分と人との関係を見て取れる    「もう一人の自分」は誕生していません。もう一個! それはごく自然    であり,親のしつけができていないなどと思われることはありません。     5歳の息子が数日前に頭にちょっとした怪我をしてしまいました。怪    我も癒えてきたので,頭を洗ってやることにして,シャンプーをしよう    としたときです。息子は怪我の痕が気になると見えて,「おかあさん,    どうなってる?」と聞いてきました。「もう,かさぶたになっているか    ら,だいじょうぶだよ」と安心させたつもりだったのですが,息子は    「かさぶたって,ブタなの?」と思いもかけぬ展開になりました。子ど    もって,わけの分からないことを言うものです。     かさぶた=傘を被ったブタ? どんな妖怪なんでしょう? 頭がブタ    になっていると想像したら,怖いですね。子どもの連想はとんでもなく    飛躍しているようでいて,実はとても単純です。ぶた,だから,ブタ,    なのです。かさ=傘,ぶた=ブタ,知っている言葉をつなげば,当然の    帰結です。それ以外にありません。怪我の痕に関心を抱いたのは初体験    でしょう。そのときでなければ出会うこともない言葉なので,意味が伝    わらなくても仕方ありません。痛い体験も含めて,子どもの言葉は体験    とつながって増えていきます。大笑いしてバカ扱いは控えてくださいね。   ・・・《知らないことがあってもいい,これから知る楽しみになります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子どもの関心は無知で奔放で無礼ですが,純真だと心得て下さい。》 ※見るもの聞くものはじめてで,物珍しいのが子ども時代です。情報化の中で, 見聞する機会に恵まれている子どもたちは,いろんなことに関心を持たされる ようになっています。簡潔に言えば,移り気になっています。あれもこれもと 目移りして,結局どれが自分の関心事なのか分からなくなっていきます。彷徨 っている気分が昂じてくるままに放っておかれると,落ち着きを失い,自分を 見失い,自分を嫌になり,寄る辺のない不安に苛まれ,終いには感覚的刺激を 求めるようになります。  関心を持つことはいいことですが,じっくりとつきあえるようなゆとりのあ る時間を持たせることが大事です。テレビをつけっぱなしなどというのは,望 ましいことではありません。自分の関心ではなくてテレビ局の関心を押し付け られるからで,子どもには抵抗力がないために放置すると危険です。子ども自 身の体験に基づく関心を,一歩一歩先に進めることができるように大事に見守 ってやってください。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  ある委員会の会長職を務めていますが,会長はあいさつが義務化されていま す。紋切り型のあいさつは聞きたくないですし,話したくもありません。神妙 に聞いてくれても,全く覚えていてもらえないことは,自らの体験からも明ら かです。そこで,ちょっとしたへえ〜話をしています。言葉に関する蘊蓄が多 いのですが,何気なく使っていても,意味不明の言葉が結構あります。手みや げ代わりにお話ししていますが,結構ご期待を頂いているようです。  今月の会議では,こんなお話しをしてきました。花札で遊んだことがあるで しょう。役である猪鹿蝶。紅葉の木の下にいる鹿の絵札があります。その鹿は, 首を横に向けて描かれていますが,それがまるでそっぽを向いているように見 えます。表情も心なしか意地悪そうです。そこで,鹿の頭に注目して,鹿頭= シカトという言葉が生まれました。意地悪をするときに,皆でそっぽを向くこ とと重ねて,シカトすると言われるようになりました。本日もよろしくお願い いたします,と挨拶終わりです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【ママは,どうして子どもの感動を茶化すの?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○