□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/06/14]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第193号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『自然な育ち?』  6月10日は,時の記念日でした。時間を大切に使っているでしょうか?  時は金なり。忙しいことがいいこと。暇がなくて,子育てなんかしている暇が ない。親としての時間など無駄な時間だから,子どもなんか要らない。すべて を自分の時間にして,さぞ現代の人は生き甲斐を持っておられることでしょう。 皮肉ですが,皮肉に聞いて貰えないご時世です。何のために忙しくしているの でしょう。ゆとりのある生活がしたいからです。でもちっともゆとりは手に入 りません。切ないですね。  大人が忙しいから,子どもは急かされています。朝は,早く起きなさい,早 く顔を洗って,早く食べないと遅れるわよ,と追い立てられ,夕方は,塾に行 く時間よ,早く寝なさい,と急き立てられます。疲れるばかりです。毎日忙し くしていると,子どもには何も残ることはなくなります。子どもという白紙に いろんなものが書きこまれても,そのインクが乾かないうちに,新しい書き込 みがされていき,かき消されてしまいます。ゆっくりと過ごす時間がなければ, 定着しません。  一人の精薄児がいて,修学旅行に行くことになりました。楽しみにしていた のですが,特急列車に乗っていくと聞いて,「ぼくは特急には乗らん。特急は 好かん」と言います。「どうして?」。「だって,特急は駅を素通りするもん。 駅がかわいそう」。あまりに嫌がるので,その子だけ特別に数時間も前に各駅 停車の鈍行で出発し,目的地で合流しました。駅ごとに「駅さん,こんにちは」, 「さようなら」と挨拶をしていきました。一つひとつのことを自分の心でしっ かりと刻んでいる,それが育ちということを思い出させてくれます。  せっかく「モモ」が時間泥棒から取り戻した時間を,大切にしなければもっ たいないことです。ゆとり教育という言葉が,学力低下の心配に反撃されて, 後ずさりをしています。ゆとりとは学力にあだなすものという認識です。相変 わらず付け焼き刃の学力にしがみつこうとする旧弊が残っています。気楽に取 り組んでいることは,ちょっと練習すればそこそこに上達できます。しかしそ こに必ず壁があります。ある段階で止まります。素人のままであるかどうかの 扉です。その扉はゆとりのある精進に拠ってしか開けることはできません。  例えば,我慢のできない子どもたちは,ゆとりという時間を持てない質なの です。早く,今すぐという時間に追いかけられている生活には,我慢を育てる ことはできません。我慢できないから,根気も持てない,何一つ最後までやり 遂げたことがない,いい加減なところで妥協する,諦めが早い,自信もつかな い,頼るばかりと,何一ついいものには行き着きません。学力とゆとりとは, どちらかを選ぶという問題にはならない,連続したことなのです。  生活にリズムがなければ,味気なくつまらないですね。チクタク動く時計に 支配されるのが現代生活ですが,時計を外した生活,自然の時間を過ごすこと でリフレッシュできます。あれこれをしなければという強拍の連続ではなくて, 適切な弱拍が絡み合って,美しい生活の旋律が流れます。人は機械ではなくて, 自然なのです。春夏秋冬,昼夜というリズムには,動静,緩急といった対立項 が併存しています。ゆとりは自然の要素なのです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12指南★        【ママは,どうして子どもの弱点を暴くの?】                             (質問15-11) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○切り返し!     子どもは不思議な発想をします。ある息子さんが幼稚園に入園する直    前のことです。「幼稚園で足が痒くなったら掻いていいの?」とか,    「寒いから遠足行かなくていい?」などと質問してくる息子に,ママは    不安が募りました。そこで,念を入れようと「お鼻が出たらちゃんと自    分で拭くんだよ」と注意を促したら,「得意じゃないんだよね」と切り    返されました。たとえ得意じゃなくても拭かなくちゃいけないんですが!     子どもにとって得意なこととは,何も考えずにすらりとできること,    身に付いている程度を意味します。大人が思っているような"人に優れて"    というイメージはありません。幼児はし慣れていないことばかりですの    で,三度に一度は失敗することが普通です。子どもは,「ときどき失敗    するけど,それでもいいんだよね」と予防線を張ろうとしています。    「ちゃんと拭けない」と思っているらしいママの嫌みを,ちょっぴり重    たく感じています。     子どもとの会話は時にすれ違いをします。おねしょをしていたことが    バレて,5歳の男の子がお母さんにお説教をされていました。延々と続    くお説教に頭をたれて聞いていましたが,「ちょっと,タカシ君,反省    してるのっ?!」というヒステリックな声に一言,「いやぁ,ちょっと    した出来心ですよ」とのたまわったのです。ものに動じない大らかさで    あればいいのですが,間違えたらと思うと将来が心配になったママでし    た。     子どもは言い訳の仕方について強い関心を持って情報を集めています。    ママとのバトルで何より必要な知識だと身に浸みて実体験しているから    です。テレビなどで「いやぁ,ちょっとした出来心ですよ」というセリ    フを耳にして,これはいけるとダウンロードしていたのでしょう。別に    ママをおちょくっているつもりは全くありません。うまい言い訳,ママ    に通用する言い訳を手に入れたくて,あれこれ試しているうちの一つに    過ぎません。これは効果があると思わせておきますか?     子どもの口は怖いものです。生理用のナプキンを着ける母を目撃して    しまった幼稚園児が,ママは大人になってもオムツがとれないんだと密    かに心を痛めていました。しかし,数日後,母に思いっきり叱られた園    児は,腹いせに幼稚園の友だち,先生,近所のオジサンオバサンに「う    ちのお母さんはまだオムツしてるんだよぉ〜」と言いふらしてやりまし    た。ことの真相を分かる頃にはきっととんでもない思い違いを反省する    ことでしょう。     ママは子どもの弱点を知り尽くしています。子どもの反撃など意に介    せずというか,露程も思っていないことでしょう。ところがどっこい,    ママの身近でチョロチョロしている子どもの目には,飾らないママの素    っ裸が映っています。もちろん大好きなママですから意地悪な目ではあ    りません。でも,ママが気分に任せて子どもの弱点を突いていくと,反    発心が惹起されて,とんでもないしっぺ返しを食らう羽目になります。    幸か不幸か,ママは気が付いていないのですが・・・。        ・・・《弱点を攻められると,子どもの切り返しも多様です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○わけあり?     子どもは生半可な知識を仕入れてくるものです。どこで聞いてきたの    やら6歳の息子さんに「お母さん,ブス専って何?」ときかれました。    「不細工な女の人が好きな男の人のことだよ」。「あ〜! お父さんみ    たいな人のことだね!」。・・・数秒間凍りついた後,ママが穏やかに    「そんなにお母さん不細工?」とたずねたら,息子は慌てて真っ青にな    って必死に横に首を振り続けてくれました。口を利かないところがお利    口さんでした。     子どもは知らないことに出会うと,尋ねてきます。ママは意味を解説    してやります。子どもはそこでもう一歩確認しようとします。その際に    使う手は,身近な例に準えようとします。すんなりと納得できるからで    す。よいことであればいいのですが,望ましくないことであると,差し    障りが生じてしまいます。子どもは単に分かりたいという純粋な思いな    のですが,引き合いに出された方は困ったことになります。でも,それ    は悪気はないのですから,笑って見過ごしてやってくださいね。     お父さんは母と子の会話を斜めに聞いています。息子さんがお菓子を    ねだっていましたが,ママは「お菓子はもうないの。『ない袖は振れな    い』のよ」と言い聞かせていました。その直後です。パパの頭に「ない    胸は揺れない」という言葉が浮かびましたが,3秒間の葛藤の末,胸の    内に秘めることにしました。多分,正解だったでしょう。言わなければ    分からないんですから・・・?     ママは子どもと真剣に向き合っているというのに,パパはいったい何    を考えているんでしょう。人の気も知らないで! でも,それでいいの    です。パパは母子のやりとりを密かに楽しみながら,ママと子どもを同    時に視野に入れています。どちらかといえば,子どもと同じサイドにい    るようです。このあたりがもう一人の子どもといわれる夫の甘えかもし    れません。それでも,全く無関心ではないのですから,いいと思ってく    ださいね。     子どもの無邪気さは,大人には痛みになる場合があります。特に母と    娘のペアではきつくなります。ある日,カーディガンを着て5歳の娘さ    んと外出中のことです。突然「お母さん,何でボタンしないの?」とカ    ーディガンのボタンを触りながら聞いてきました。答えようとしたママ    の言葉より先に「太ってるから?」と娘さんからの追い打ちです。素朴    な疑問を口にしただけと信じたいのですが,娘の言葉であるだけにその    笑顔が悪魔に見えてしまった瞬間でした。     ちゃんと洋服を着るというのは,ボタンをきちんと留めることです。    そのようにしつけられている子どもの目には,ボタンを留めないママの    着こなしが奇妙に見えたのでしょう。どうしてかな?という素直な疑問    だったのですが,子どもなりにママのことを思いやったとき,ママが常    々お腹のふくらみ具合を気にしているのを思い出し,つい確かめてみた    くなりました。ボタンを留めないといういけないことをママがするはず    がない,何か理由があるはずとママを庇っているのです。子どもには太    っていることがわるいこととは思えないので,悪気はありません。  ・・・《子どもの事情は,時として大人には不都合になることもあります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子どもの弱点は親も痛みを分かち合って克服されると心得て下さい。》 ※親は君臨して子どもの弱点を容赦なく暴きます。子どものためという大義名 分がありますが,言われる方は愉快ではありません。それでもやはり,子ども はママが正しいと信じたいと思います。そこで,自分が言われていることをマ マはちゃんとできているかを見届けようとします。親を検証していると言うこ ともできます。子どもの目は真剣です。  幼いうちは親に直接返ってくることはありませんが,大きくなってくるとか なり強い反発となってきます。視野が広がってくることもあり,自分の親をよ その親と比べてみるようになります。親が友だちと自分を比較することへのお 返しです。子どもは親を見習って育っていきます。一緒に育っていくというの はそういうことでもあるのです。気をつけてくださいね。子どもに言ったこと は,自分にも言っていることになりますから。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  子育て羅針盤の第15版も残すところあと2号になりました。この版では, 子どもが見せてくれるさまざまな事例を織り込みながら,子どもの弁護士とし て,そこに見える意味を探そうとしてきました。目を通して皆様も感じられた ように,必ずしも完全な把握ではありません。それでも,親の側,大人の側の 思いこみが絶対ではないというニュアンスをお伝えできたのではないかと思い ます。  この間,「子連れdeCHACHACHA」という情報誌を発行している方の 講演を聞きました。謝辞の役を受けていましたので,「子どもの居場所をつく るという運動が文科省の肝いりで進められていますが,実のところは母親の居 場所づくりが優先されるべきだと教えて頂きました」という趣旨の感謝の言葉 を述べました。母親の置かれている状況がとても辛いものであるという内容で あったからです。このマガジンが疲れたママの休息の椅子になってくれたらい いなと願っています。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆     次号では,【ママは,どうして子どもの冒険を遮るの?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○