□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/06/28]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第195号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『信頼育て?』  教室では,先生が君臨しています。評定権を握っているほうが,どうしても 強い立場になります。親にすれば,子どもを人質に取られているという思いが 出てきます。特に進学が絡んでくると,内申書という書類が先生の手の内にあ り,気になるところです。このような心配は信頼関係がないことから生じます。 師弟関係はもっと温かいものです。子どもによかれと考えることが,先生の使 命なのです。信頼し信頼に応える,その初心を忘れないことがもっとも大事な ことです。  ある若い先生が子どもの思いを知りたいと考えました。そこで,「先生の授 業は分かりやすいですか」,「えこひきせず,みんな同じに接していますか」, 「身だしなみで気付いたことは」,「字は正しいですか」などについて,子ど もたちに評価してもらいました。子どもたちからは,「先生は字が上手です」, 「先生のブローチはきれいです」,「先生は頭がいいです」という答が返って きました。  子どもたちの目は,先生のいいところを感じ取って,悪いところは目に入れ ず,優しさや美しさだけに心を傾けていました。先生は評価されることで評価 している自分を振り返ることができたのですが,それはとても苦いものになり ました。それまでは,子どもたちの至らない部分を探して,ここがダメだと指 摘することが評価することだと思い込んでいました。100点からの減点法だ ったのです。でも,子どもたちの目は逆でした。評価とはよいこと探しだよと 教えられたのです。  信頼するということは,相手のよいところ探しによって実現されます。わる いところを見つけようとするのは不信行為そのものであるということは,ちょ っと考えれば明らかです。評価という行為を使い間違えると,信頼関係を左右 することになります。子どもを評価する立場にある親や先生は,その危険な実 践を自覚しておかなければなりません。それは理想です。現実には,子どもの 悪い部分を正さないといけないことがたくさんある。そういう反論があるはず です。  子どもの至らない部分を放置しておくわけにはいきません。その通りです。 よいところ探しとわるいところ探し,どちらかを選択して他方を捨てるという ことではありません。両方とも必要なのですが,よいこと探しを先にするとい う順序が大事です。自分のよいところをちゃんと見てくれていると思えば,相 手を信頼できます。その信頼する相手からのわるいところ指摘は素直に耳に入 れることができます。先ず信頼関係をつくること,そのことに着目してくださ い。  信頼されていると思えば,もっと信頼を深めようとするでしょう。至らない ところを改めたくなります。よいところをもっと延ばしたいと願います。評価 がよい方向に生かされます。子どもの気持ちを前向きにするには,信頼してい るというメッセージをきちんと伝えなければなりません。それは,いつもよい ところを見ているよというメッセージです。子どもはほめて育てよという言い 方をされますが,その意味は信頼を育てるということなのです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12指南★        【ママは,どうして子どもの心を掴まないの?】                             (質問15-13) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○揺れる心!     台所の壁にダビンチの「モナリザの微笑」のポスターが貼ってありま    した。息子さんは,お父さんから「これはお母さんの若いころの絵なん    だぞぉ」と教えられていました。お父さんのちょっとした茶目っ気でし    た。あるとき,息子さんが学校の教科書にまったく同じ絵を見つけてし    まいました。「どうして母ちゃんが載っているんだぁ!!」と真剣にど    ぎまぎしていました。お父さんのいたずらがばれてしまったのは言うま    でもありません。     ママとしては,いつまでもモナリザであり続けたかったかもしれませ    ん。残念? でも,そんな昔の写真のままでいいわけはありませんね。    今の素敵なママがなによりです。子どもにとって,昔のママはあり得ま    せん。ママだって子どもや若い頃があったはずと分かってはいますが,    それでもママはママなのです。自分が産まれる前のことは,現実ではな    くて,おとぎ話の世界とつながっているような感じです。ママの姿を教    科書に見つけたら,それはとても場違いな登場で驚かされるはずです。     病院でのひとこまです。ある日,通院のために2人の孫を連れてきた    おばあちゃんが,看護婦さんに話しかけました。「おかげさまで下の子    (弟)の病気が治ったのはいいんだけど,兄ちゃんの薬を飲みたがって    困るんだ。この子は薬大好きだから…」。看護婦さんが何と返事をした    らいいのかわからずにいると,そのおばあちゃんが続けて言いました。    「あんまり騒ぐもんだから,"きなこ"出してやったら喜んで飲んでるわ    い」。子育てのベテランはさすがですね。     子どもには薬が何かということは理解できません。なんだか分からな    いけど,とってもすごい魔法の食べ物とでも思っています。だって,お    店にはない特別なもので,とても大事そうに扱われ,誰でも口にするも    のでもなく,選ばれた人だけがちょっとずつしか飲食できないのですか    ら。子どもにとって,一口にも満たない少量しか口にできないものとい    う限定があるからこそ,欲しいという気になります。これぽっちしかな    いとなると,欲しくなるのは人情ですね。     デパートのレストランでソフトクリームが売られていました。母子連    れが売り場の前で話しています。「ソフトは何にする?チョコ?バニラ?    ミックス?」,「う〜ん」。「早くしなさい!何にするの(イライラ)」,    「じゃあ、チョコ!!」。「だめっっ!バニラにしなさい!」。全く選    択の確認になっていません。似たようなことは他にもありますね。「今    日は何が食べたい?」,「ハンバーグ!」。「だめっっ!」。聞かれた    から答えたのに!     子どもがママに対して抱いている不信感は,その場その場で言うこと    が違うということです。ママは気が付いていないでしょうが,かなり移    り気なのです。子どものことを「今啼いた烏がもう笑った」なんて言う    ことがありますが,「今笑ったママがもう怒った」と子どもに思われて    はいませんか? 何にする?と尋ねているときは白紙の状態であったは    ずですが,返事が戻ってきた途端に,あれこれ考えて豹変します。そん    なママの心の動きは,素直な子どもには思いも及ばないことです。   ・・・《子どもの心がつかめないのは,親の心が揺れているからかも?》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○男ありけり?     ある日たまたま,お父さんが小学四年生になる娘さんの作文を見まし    た。「母さんや,お父さんがいてくれるから」とか,「母さんや,お父    さんが働いてくれるから」などと書いてあります。よく考えると,すべ    ての箇所でお母さんが先になっています。お父さんは少し気になったけ    れども,何も言わずいました。ところがその後,とうとう「お母さんら    が働いているから色んな物買える」って,小さい弟に娘さんが説明して    いるのを耳にしてしまいました。お父さんという言葉は出てこず,「ら」    で片づけられたのです。お父さんはさみしい!     お父さんは何処にいるんでしょう? いてもいなくてもいい人ならま    だしも,いない方がいい人に落ちぶれたらたいへんです。お父さんとい    う言葉が聞こえなくなるにつれて,お父さんの存在感が薄れていきます。    言葉は気持ちを表すだけではなく,気持ちを産み出します。家庭からお    父さんを追い出すのは簡単です。お父さんという言葉を追放すればいい    のです。そうならないためには,お父さんがそこにいなくても,お父さ    んという言葉を口に出すようにすればいいのです。今頃,お父さんはど    うしているかな?     家族4人で夕食を食べている時のことです。息子さんが何を思ったの    か,「お姉ちゃんって目が細いねー。一体誰に似たの?」と言いました。    お母さんが目の前に座っているお父さんをふっと見ると,黙々とご飯を    食べつつ思いっきり目を見開いていました。誰に似ているといった答が    ないまま,お互いを見交わす無言の間,お父さんは刺すような視線を感    じながら,話題が逸れるのをひたすら待ち続けています。     目が細かったら悪いか? そんな声が出せたらいいのですが,それが    できない虐げられたお父さんの地位は悲しいですね。目が大きい方がい    いという見かけに関する評価に対して,そんな物差しは限られた世間で    しか通用しないという別の評価を持ち込むのが,父親の出番のはずです。    でも,違った価値観を持ち込むとシカトされてしまうという恐れが蔓延    っています。単一の価値しか認めない世界になれば,ほとんどの人が規    格外にはね除けられ,自縄自縛の状態になるはずです。怖いことです?     上に女の子2人,下に男の子1人の子どもを持つご家族があります。    一番下の3歳の男の子がお姉ちゃんと一緒に遊ぶので,いつもままごと    ばかりです。そこで,両親が「男の子らしい遊びを」と願って,怪獣の    人形と電車の模型を買って渡しました。ところが,男の子は「かいじゅ    うと〜でんしゃが〜けっこんしました〜♪」とあどけなく遊んでいます。    両親の悩みは一向に解消されません。     男の子らしい遊び? それに対して,女の子らしい遊び。そんな考え    方は男女差別というファイアウォールで阻止されます。立て前ではそう    なっています。本音もそうでなければならないという風圧が働いていま    す。でも,男女概念を封じ込めるという風に人の価値観を単一化するこ    とには,不安を感じるのが普通です。価値観は二つの対立項が両立して    こそ,バランスが保たれるものです。特に強調しておきたいことは,父    親が体現している男らしさの中にあった,勇気と卑怯という対立項が跡    形もなく拭い去られたことです。人の行動にメリハリをつける重要な資    質なのです。お父さんの出番を失すると,子どもは気持ちの芯を持てな    くなります。ガンバレ,男たち!        ・・・《父親の出番は子育ちにとって必須の要件なんですよ》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子どもの心は芯が育つまで浮遊していると心得て下さい。》 ※産まれたばかりの赤ちゃんを抱くとき,グニャグニャして力を込めるのがこ わいですね。首が据わるようになると,胸にグッと引き寄せることができます。 身体の芯ができると,しっかりしてきます。心も同じです。フワフワしている 子どもの心を,親はガチッと締め付けたくなりますが,それでは苦しくなりま す。かといって,手放していると,とんでも無いところに彷徨うようになりま す。  両親の左右の手を合わせて,水をすくうような器の形にします。澄んだ水を 汲み上げるように子どもの心を支えてやります。握りしめるのではなく,覆い 隠すのでもなく,脇支えをしっかりしてこぼれないように,自由な上空に向け て開いておきます。心は真っ直ぐに上昇していくはずです。両親の意気が合わ ず,支える手のひらが緩んでしまうと,指の間からスルッと滑り落ちていきま す。大事な心を壊さないようにお願いします。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  今号で第15版が完結します。この版では具体的な事例を示しコメントを加 えるというスタイルをとりました。多少は目先が変わったのではないでしょう か。因みに,登場したさまざまなエピソードは,「まぐまぐVOW」からの引 用です。文脈に合わせて修正をさせて頂きました。おことわりと謝辞を申し上 げておきます。  次号から始まる第16版は,4年間の締めに当たります。とはいえ,終点を 持たない羅針盤はクルクルと回り続けるだけです。12話が色合いを変えなが ら,同じ内容を繰り返しています。大事なことは不滅なので,これでいいのだ と割り切っていますが,16版ともなると味付けの工夫も苦労するようになっ てきます。迷ったときは初心に帰るということで,「子育ち12条」として, 各条の意味合いを再確認しようと考えています。今後ともご購読をよろしくお 願いいたします。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【子どもは,自分で決めようとしているんですよ!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・   ・・・・・・「バックナンバー」もご覧になれます。・・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○