□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/08/02]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第200号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■             『きちんと伝える?』  かつてPTA会長を務めた小学校で夏休み最初の行事として,少年少女スポ ーツ大会が開催されました。PTA主催の地区対抗ドッチボール大会です。低 学年と高学年に分かれてそれぞれ優勝を競います。大会までは地区毎に親たち の世話を受けながら練習をしてきます。6年生が各地区の子どもたちをそれと なくまとめていきます。小学生ですから男女混成のチームです。開校以来PT Aが支えてきた伝統行事です。  来賓として開会式に臨み,試合前の準備体操になりました。かなり陽もあが っていたのでグラウンドの暑さがあったせいでしょうか,子どもたちの体操は グニャグニャです。手を伸ばすところでも,肘が曲がって指はダラッとしてい ます。指先に力が入っていません。このときに限らず,前々から気になってい たことなのですが,よくなっていません。そのときは号令を掛けているのが若 い先生でしたので期待していたのですがダメでした。  シャキッとするときはシャキッとする。そんな緊張感をスッと出せるように なっていないと,いざというときに間に合いません。子どもたちに今は緊張す るときという気持ちの切り替えを示してやらなければなりません。キリッとし た号令がないから,メリハリがつかないのです。い〜ち,に〜,さ〜ん,し〜。 リズムが壊れます。イチッ,ニッ,サン,シッ。子どもたちはリズムに乗るの が上手なはずです。それをきちんと伝えなければ力を引き出してやれません。  試合の方はさすがに気持ちが入っていました。高学年はガッチリとボールを 受けて,たくましさが見られました。低学年の子も上手に玉を操っていて感心 しましたが,力不足で外野までボールを投げることができずに,相手に取られ てしまい,仲間を内野に呼び戻すことができていませんでした。ボールに背を 向けるので球筋を読めずに避けられないという場面もありました。おそらく集 団の練習だけして,個別にボールを避ける練習をしていなかったのでしょう。 どう対処するかを一人ひとりにきちんと指導してやらなければなりません。  試合の審判や線審はもちろん父親たちが主体です。PTAと掛けて,破れた ブラジャーと解く。その心はときどき父(乳)が覗きます。PTAといえば, 母親が中心と思われていますが,父親の出番さえ作れば,父親は参画するもの です。スポーツ大会は格好の父親向けイベントでもあります。普段はあまり活 躍する姿を見せることのできない父親たちがテキパキと試合運びをしてみせる のは,子どもたちにはとても頼もしく見えるはずです。あなたの出番ですよと きちんと伝えることが大切です。  地区対抗戦ですから,子どもたちも親たちも地区毎にまとまります。試合を することでわが地域という気持ちが湧いてきて結束が生まれます。高学年と低 学年がお互いの試合を応援する場面も生まれて,縦のつながりも感じてくれま す。もちろん地区毎に一週間以上の練習期間を持っているので,その間の共同 時間にも意味があります。一つのことに向かって親も子も皆で取り組むという 経験です。スポーツ大会に過ぎませんが,地域の子という気持ちをきちんと伝 える大切なイベントなのです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12条★       【子どもは,自分で伝えようとしているんですよ】                             (質問16-05) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○第5条:表現権!  庭に草が生えてきます。雑草だと抜きます。ところが,名前を知っている草 はなんとなく抜きにくいものです。雑踏の中でちょっと肩が触れあうとにらみ 合います。ところが見知っている間柄であれば会釈で済みます。名前を知らな いから雑草や雑踏という無関係なものとして排除しているのです。雑草という 草がないのと同じように,雑踏という人の集団もありません。人にとって最も 大事な言葉である名前,それは人との関わりの出発点です。  パパ,ママ。子どもがはじめて覚える言葉です。それによって,自分とのつ ながりを確かなものと意識できるからです。その上で,次には自分の名前を覚 えます。本来名前は人から呼ばれるためのものであり,人に自分を認めてもら うためのものです。しかしながら,子どもの育ちを考えるときには,もう一人 の子どもが自分とのつながりを見定めるために欠くことのできない言葉になる のです。自分を表現するのはもう一人の自分だからです。名前が言えると独り 言が言えるようになります。  言葉は第一人称という定義からも感じ取れるように,「私」が始まりです。 日本語は主語を省きますが,「眠い」と言えば私が眠いのであり,「ひもじい」 と言えば私が空腹だということです。私を表現したいから言葉を覚えていきま す。同時に,私と関わる周りの世界が広がっていくにつれて他者や他のものを 表す言葉を必要としていきます。コミュニケーションは関わりの中での自己表 現です。  ところで,人の前できちんと考えや気持ちを語ろうとすると難しいものです。 緊張するということのほかに,上手く表現できないということがあります。そ こで,言葉をたくさん使って話す,つまり説明をしなければなりません。小説 は一つのテーマを一冊の本になるほどの言葉で説明しています。ひと言では言 えないということです。子どもの気持ちがよく分からないという声が大きくな っています。それは子どもたちの話す言葉が単語化して,ブツブツに途切れて いるからです。  このように子どもが語らなくなった背景には,大人の側の早呑み込みがあり ます。一を聞いて十を知るのように,子どもが何か一言言えば,もう分かった と受けてしまい,続く言葉を遮ってきたからです。つまり,忙しいからと,子 どもに最後まで話させる訓練をさせてこなかったためです。試しにちょっと分 からない振りをしてみると,子どもは分かってもらおうとあれこれ説明をして くれます。表現をしてちゃんと分かってもらえばうれしいからです。その繰り 返しが自己表現を上達させます。  紅いリンゴ。紅いという言葉を使わずに表現してみて下さい。○○ちゃんの ほっぺみたいなリンゴ。パパの背中で見た夕日色のリンゴ・・・。多分,子ど もの方が詩的でユニークな表現をして見せてくれるはずです。言葉の豊かさは もう一人の子どもの栄養であり,平たくいえば心の豊かさに通じています。子 どもの感性を萎ませることなく伸ばすためには,言葉の教科書である本を読む ことです。共感する言葉を見つけたらすんなりと吸収して,自分の表現力を高 めていきます。     ・・・《生きる力として確保すべきものは,第三に表現する力です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○分かるために?  赤ちゃんの泣き声には意味があります。子どもの表情には気持ちが現れてい ます。言葉を覚える前から,何かを訴えようとします。幼児が犬を指差してウ ーと言えば,ママは「イヌ」とゆっくり言い聞かせます。それが目の前にいる 動物の名前だと説明しなくても,分かってしまう子どもの能力はすごいもので す。いろんなものにそれぞれ名前がある,区別できるということを直感できる から,人は言葉社会を創り出すことができました。  ところで,子どもの言葉に対する親の関心は,乳幼児期にピークとなり,そ の後は急速に減退していきます。言葉を覚えはじめる頃はひと言毎に成長の証 として関心を向けます。あっという間にしゃべるようになると一転して「少し は黙っていなさい」,話さなくなると「うちの子は何も話さない」といった嘆 きに収まっていきます。泣き声だけだったのが言葉になったのですから,もう 何でも話せるようになったと早とちりをしても仕方がありません。  確かにものやことの言葉はすぐに覚えますが,いわゆるコミュニケーション に必要な言葉はそう簡単に会得はできません。子どもの覚える言葉は直裁で分 かりやすいのですが,それだけに乱暴でもあります。微妙な言い回しや気持ち の柔らかさを表現するまでにはこなれていないのです。簡単に「死ね」などと 言います。言葉の仕上げを家庭で母親がじっくりとしつけてやらなければなり ません。美しい言葉は母親譲りで伝わるものであり,決してテレビ譲りではな いのです。  最近様子がちょっとおかしいなと感じたりしたことがありますか? 子ども の関わる事件が起こると,後になって必ずそういう話が出てきます。子どもは いつもそれなりのメッセージを発信していたということです。大人の側は必ず 言います。「何かあったらいつでも言ってきなさい」。言ってこない限り,そ こには何もなかったということです。直接面と向かって言葉でちゃんと語るこ とが本筋です。そのように育てなければなりませんが,発達途上であることを 忘れてはなりません。  言わなければ分からない。その言葉は親として言ってはいけない言葉です。 それを言ったときは,言わない子どものせいにして逃げようとしているからで す。分かってやる,その覚悟を持っていることが親の役割です。だからといっ て,無理矢理問いつめることを勧めているのではありません。素直な目で毎日 見守っていれば子どもが何を言おうとしているのか聞こえてきます。子どもだ けを見ているのではなく,子どもの背景も含めて見定めるようにしましょう。  講釈は要らない,どうすればいいの? そうですね。子どもさんの友だちを 知っているだけではなくて,ときどき会話をしていますか? その親と話して いますか? 園や学校での子どもさんの様子を知ろうと努力していますか?  父と母の目で見ている子どもさんの姿を重ねるために語り合っていますか?  子どもがいろんな場面で発する表現を良い悪いという評価の目で即断するので はなくて,立ち止まって「どうしてこんなことをするんだろう」と意味を見よ うとしていますか?   ・・・《分かろうという心を向けなければ,子どもの声は聞こえません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子どもの育ちは言葉を糧にしていると心掛けて下さい。》 ※ネットの世界の言葉が子育ての上で何やかやと論じられています。共通した 論点は「言葉の一人歩き」です。匿名であることから,既に発信した時点で人 とのつながりは断たれています。コミュニケーションに欠かせない要件は,内 容もさることながら,「誰が」言ったかということです。言葉の意味は話者に よって変幻するものだからです。あなたには言われたくないといった経験があ るはずです。あいつが言ったから許せない,トラブルの原因は多くはそこにあ ります。  どこの誰とも分からない者からの言葉は,警戒すべきです。いわゆる真意は 言葉からは読み取れないからです。同時に,発する方も目立たなくては埋もれ てしまうということを恐れて,言葉に濃いめの装いを施そうとします。普通の 気持ちで受け取ると,そのどぎつさに不快感や悪寒を感じるはずです。けばけ ばしさはどこかにねじれた意図を隠しているという馬脚です。人から隔離され やすいネット世界は,コミュニケーションツールとしては発達途上です。子ど もの野放図なアクセスは,まだ危ないのが現状です。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  200号という節目の号です。数字がきりがいいということ以外に何の意味 もありませんが,習い性なのでしょうか,節目と思いたいものです。毎週一つ ずつ書いてきて,数回の休みを取ったのですが,ほぼ連続して200週間の時 間を費やしてきたことになります。以前から書きためていたものではなく,す べて書き下ろしですから,かなりの時間を掛けてきたことになります。我なが ら暇な人だなと感心しています。  一文の得にもならないことに熱中しているクマさんを,横目で見ているクマ 子さんが呆れています。少しはこっちを見てという密かなメッセージかなと背 中で感じながら,せっせとキーボードに向かっています。もっとも,同時にボ ランティア役職上の文書を執筆したり,ホームページの更新もしているので, こればっかりでもありません。メルマガ読んでいますとか,HP見ていますと いう声だけに励まされて,続けています。200号の覚悟は,気張らずにボチ ボチいこうと思っています。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【子どもは,自分を分かろうとしているんですよ!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○