□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/09/13]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第206号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■             『心は見えるもの?』  子どもの心が見えない! NHKのスペシャル番組がありました。親からの 心ないひと言が,子どもの気持ちに冷水を浴びせているようです。驚かされた のは,死んでも生き返ることができると思っている子どもが多いということで した。よみがえりというフィクションの定着です。死という実感を持てないこ とは仕方のないこととしても,死ねば無に帰すということを知らないのは困っ たことです。おそらく幸いなことに死という事柄が身近に起こっていないせい でしょう。  「産まなければよかった」。決して言ってはならない言葉です。吐き捨てる ように言ってしまう言葉は,汚い言葉です。言う方ははずみでしょうが,まと もに浴びせかけられた方は,心が凍ります。生存を否定されるのですから,当 然です。大人は,子どもが木石のように心を持っていないと思っているのでし ょうか? 親の心配が伝わらないのは,子どもの心が間違っているとでも感じ るのでしょうか? 子どもには子どもの心があるということを認めていないと, 踏みにじることになります。  子どもはこんな風に育つ,育たなければならない,育てなければならない, という固定したイメージを大人は持ちます。それは本当はそうあったらいいな という期待像に過ぎません。そうでなければならないと考え違いをしているこ とに,早く気がつかないといけません。大人の勘違いが子どもを不幸にしてい ます。大事なポイントだけ押さえておいて,その他の部分はいい加減でいいの です。そこは子ども自身の裁量に任せる,言い換えると育ちの可能性に委ねる のです。  子どもを産む,つくる,育てるといった言い方がボタンの掛け違いになりま す。子どもは親の思い通りにどうにでもできるもの,つくることができると考 えるようになります。子どもは,自分が生きていることを親の言うことを聞か ないという反抗として突き返してきます。親はなんとか言いくるめてしつけを しようとします。子育てを優先します。ところが,子どもは先ず自分のことを 分かって欲しいと願っています。どうして親は押し付けて来るばっかりなんだ ろう?  心が見えない? 心は見えるはずがありません。心を見ようと考えているこ とが間違っていることに気がつくべきです。心は心で触れて分かり合えるもの です。親は口で話しかけて,子どもが思い通りに育っているかどうかだけを見 ているのではないでしょうか? 親心が一段高いところにあって,子どもの心 を見下ろしているのではないでしょうか? もっと子どもの心に心を素直に寄 り添わせようとしてくれたら,どんなに子どもの心は救われることでしょう。  子どもの心は常に開かれています。大人の心が凝り固まっているから,通じ ないのです。心を開くとは,心に空白を用意することです。そうすれば子ども の心が入ってきます。それは必ずしも子どもの言い分を聞き届けるということ ではありません。心を共有することです。つらいけどがんばらなければならな いことがあります。とにかくガンバレと突き放すのではなく,つらいという気 持ちを共有することからはじめましょう。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12条★       【子どもは,自分で触れようとしているんですよ】                             (質問16-11) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○第11条:触感権!  幼子がママにダッコをせがみます。パパが夕餉の後にくつろいでいると,背 中からじゃれついてきます。つかまえて抱きしめると,はしゃぎます。疲れて いるときにまとわりつかれると億劫かもしれませんが,長いことではないので, しばらく付き合ってやりましょう。子どもはママのふくよかな胸の感触,パパ の広い背中の感触を覚えていきます。親との触れ合いを通して,頼れる人はど のような感触を持つ人なのかを記憶していきます。  親子連れで道を歩いているとき,子どもが怖いと感じると手をつなごうとし, 手を握りしめてきます。子どもはその小さな手のひらから,親の勇気を吸い込 んでいきます。大丈夫という言葉かけよりも確実に伝わります。子どもを叱る とき,手をしっかりと握りしめてやります。叱られても嫌われない,それが子 どもにはとても大事なことですが,手をつないでやることで信頼関係が確保で きます。手はつなぐためにあるのです。  お店では,子ども連れのお客さんは歓迎されません。子どもは手当たり次第 に商品に触りまくるからです。子どもがいるお宅では,子どもの手の跡があち こちについています。そういえば,ママもスーパーマーケットで野菜や衣類を 買うときに,手で触っています。いったい何を確かめているのですか? 何が 分かるというのではなく,なんとなく触ってみないと落ち着かないということ でしょう。食物も衣類も身体に触れるものだからです。  手触り,肌触り,舌触りと言います。音は同じですが,目障り,耳障りは意 味も用法も全く違います。目や耳,つまり視聴覚には触れるという機能はあり 得ません。どうしても距離的に離れている,間接的な感覚です。視聴覚だけに 頼ったイメージが仮想であると言われるわけは,触ることができないというこ とです。現実世界の条件は手で触ることができるということです。子どもが何 にでも触りたがるのは,自分の生きている現実の世界を自分の手で理解したい からです。  人が生きる条件は,衣食住ですね。衣は肌に触れます。食は舌から内蔵につ ながっている内壁に触れます。住は衣の補完であり,自然の厳しさから守られ た家族という触れ合いをもたらします。人が生きる上で最も基本的な感覚は触 覚なのです。正座をして足が痺れたら,立てなくなります。もし人が肌の触覚 を失ったら,寝たきりになり身動きできなくなります。もちろん,ものを掴ん だり持ったりすることなどもできません。普段は意識していませんが,触覚が 第一の感覚なのです。  ふれあい。この言葉はとても温かいですね。どうしてなんでしょう? 人の 心のふるさとにつながっているのでしょう。人は寄り添って生きてきました。 そこにはふれあいがあったはずです。ふれあうことが生きることの証でした。 今の子どもたちが求めているものは,人の温もりです。人付き合いが苦手とい う現状は,触れ合いによる信頼感が満たされていないからです。いつも傍にい て抱きしめてくれるという触れ合いは,もう望めないのでしょうか?       ・・・《生きる力として確保すべきものは,第六に触覚力です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○触れるために?  食事の際,熱いものが苦手な方は「猫舌で」と言います。猫に熱いものを食 べさせようとすると,猫は苦労しています。どうして猫は猫舌なのでしょう? 当たり前のことを不思議がるというのもおかしなものです。動物はエサを温め ることはしません。自然のままで食べるのですから。煮たり焼いたりする調理 は,人だけがする食料摂取法です。それでも熱いものは熱いと感じないと,火 傷をします。子どもに熱い食事を食べさせるとき,ママは冷まして唇で温度を 確かめますね。  触れると何が分かるのでしょうか? 簡単に言えば,堅い,柔らかい,熱い, 冷たいなどです。人が生きているところは,熱くもなく冷たくもない,ちょう どいいところです。触れて格別に何も感じない,そんなところが安心して生き るに相応しいところです。環境は平穏無事が一番なのです。舌の触感は特別で, 味覚になっています。食物の良し悪しとバランスを判別する機能を持っていま す。もちろん健康に生きるためです。  尖ったものは痛いですね。トゲが刺さる経験をすることで,尖ったものを見 ると怖いという警戒心が起こります。炎に近づくと,熱いという触覚が危険を 察知して身を引きます。自分の身を守る本能が反射的に呼び覚まされるように なります。転んで膝小僧をすりむくと痛いですね。人は傷つくと痛みを感じま す。痛みを経験するからこそ生きていることの実感があるのかもしれません。 自然に触れるということが勧められますが,自然の厳しさという痛みから生き る意志を引き出すためです。  どんなときに生きていると感じますか? 夕食時にキュッと一杯が胃の腑に 触れるとき,入浴時にまろやかなお湯が肌に触れるとき,仕事時に結果の手応 えを握りしめるとき,幼子をぎゅっと抱きしめるとき,愛する人と抱擁のとき, いずれもそこには触れるという条件が成立しています。生き甲斐というとらえ どころのないものがありますが,それを手にするのは生きているという実感が あってこそです。触れ合いを疎かにしている限り,見つからないのです。  野球はテレビで見るよりも球場で観戦するほうが,演劇はテレビで見るより も舞台を観劇するほうが,演奏はCDで聞くよりも生の肉声で鑑賞するほうが, 食事は食堂で味わうよりもママの手づくりのほうが,良いに決まっています。 映像や文章で知り得たとしても,現実のものとは程遠いものですね。触れてい ないからです。暮らしや子育てを触れるというポイントから見つめ直してみま せんか? いろんなことが見えてくるはずです。  できるというのは手ですることです。どんなにいいことを考えて口で言えて も,自分の手で実際にできなければ意味がありません。分かっているけれども できないことがありますね。その壁を乗り越えることが育ちです。ママがいく ら口を酸っぱく言っても,子どもはなかなかできません。そこには大小の壁が あることを知っておいてください。そうしないとママだけではなく子どもにも 焦りが出てしまいます。手で触れるという実現化プロセスを重ねる時間と体験 が必要なのです。    ・・・《触れることはあまりに大事すぎるから,意識されないのです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子どもの育ちは触れる力を養うことと心掛けて下さい。》 ※子どもたちは小動物に触るのが好きです。フワフワした毛触りを記憶してい きます。今では大の大人もペットに癒しを求めています。懐いてくれる動物を 友だちと思っています。人との触れ合いが疲れるという子どもたちが現れてき たのは,どういうことでしょう。自立という目標に向けた無理な飛び出しのた めに,早すぎる突き放しがあだになっています。たっぷりと触れ合っていない と,触れ合いのノウハウを体得できないからです。  人が身体を触れ合う競技に柔道やレスリングなどの格闘技があります。そこ にはしてはいけない禁止技が設定され,ルールに従うという約束があります。 日常の触れ合いでも同じです。例えば,逆鱗に触れるということがあります。 竜のあごの下にある逆向きの鱗に触ると,竜が激高するという故事です。弱点 を責め立てる卑怯なことはフェアプレイに反します。手当たり次第に触りまく るというのは,いけないことです。セクハラやイジメに通じます。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  北國新聞に「ペットと一緒に水虫輸入 顔、手に感染、県内で新種確認」と いう記事が載っています。「ペット用に輸入された小動物が感染源とみられる 顔や手の「水虫」(白癬(はくせん))が石川県など全国に広がっていること が、金沢医科大皮膚科の望月隆助教授の調査で明らかになった。数年前まで国 内での報告例がなかった新種の白癬菌で、ペットに手で触れたりほおずりする ことなどで感染する。ペットブームに乗ってさまざまな小動物が輸入される中、 被害が拡大を続ける恐れがあり、望月助教授はペットに触れた後の手洗いの徹 底などを呼び掛けている。感染が広がっているのは「アルスロデルマ・ベンハ ミエ」という白癬菌の一種で,感染力はそれほど強くなく、人から人へはほと んど感染しない。手に傷がある時はペットに触れないなど動物と上手に付き合 ってほしい」とのことです。  地震やら台風やら,日本列島の自然は厳しい側面を持っていることを思い知 らされました。被害に遭われた方々にはお見舞いを申し上げます。台風16号 と18号が頭上を吹き抜けていきました。ゴォーという風音と振動の中でなす すべもなく通り過ぎるのを祈るばかりでしたが,幸い雨樋の一部が破損しただ けでした。台風一過,涼しさがすぐそこにやってきました。前号で暑さによる 疲れを愚痴ってしまい,早速温かい激励のメールを頂きありがとうございまし た。もう大丈夫です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【子どもは,自分を高めようとしているんですよ!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○