□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/12/06]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第218号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『親子の信頼?』  若者が両親の命を奪うというおぞましい事件が続けて起こりました。いずれ も両親との関係が壊れていたということのようです。長い子育てが終わったと ころで,仕上げは突然に幕を下ろしました。そんな結末を予想することはでき なかったはずです。よかれと願ってきたはずなのに,ちょっとした部分,でも とても大事な部分がバグっていたようです。人は強いようで弱いものです。小 さなトゲが刺さっただけで,平常ではいられなくなります。  事件の詳細は分かりませんので,一般的な話をします。いい年をして学びも 働きもせずブラブラしている,ニートと呼ばれる子どもを身近にすると,先行 きを心配するのは親なら当たり前です。その心配を子どもにもろに向けてしま うことは,よくありません。親の心配は胸に秘めておくべきです。親が心配と いうストレスをじっと抱え込む忍耐力を持てないと,子どもを責め立てること になり,子どもは追いつめられていきます。子どもは親の心配まで背負わされ て身動きできなくなります。  そんなことではこれから先どうするの? はっきりしなさい。顔を合わせれ ばそんな言葉を浴び去られながら,「できるならとっくにしている,言うだけ なら簡単だよな」とつぶやいているかもしれません。窮鼠猫を噛むの言葉通り に,限界を超えると歯止めが外れて暴発します。大人しいという見た目は,嵐 の前の静けさでしかありません。我慢できている分,出口のない鬱憤の溜まり は増えていきます。言われても聞き流す様子ではぐらかしているから,余計に きつく責められます。  子どもは自分を守るために,親のするように,終いには自分のストレスを直 接に投げ返してきます。お互いに八つ当たりの応酬になり,事態は悪い方に転 がっていきます。厳格に対して反発する活力としての憎悪,慈愛に対して苦衷 をはき出そうとする暴力,批判に対して拒否せざるを得ない対立を生み出しま す。励ましのつもりで言われていたとしても,言われるほうは憎まれていると 受け取ってしまいます。親子だからというだけで信頼関係は結ばれないのです。  責めることで育ちを促そうという焦りがあるのではないでしょうか? 責め るというのは,指導者のやり方です。親が指導者になっているという傾向は, かなり以前から見えていましたが,その指導の成果が悪い面で表面化してきた のではないかと感じています。親は子どもの心配をするものですが,それでも 見守り信じようと努力し続けているときに親になります。信じようとしてくれ る親であれば,その信頼に応えようとする前向きな気持ちが子どものやる気や 勇気を引き出します。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12章★     【お子さんから,約束をさせられることがありませんか?】                             (質問17-10) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○未来  指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ます。指切った。「ママ,げんまんって 何のこと?」。「?!!」。拳万と書いて,拳固で万回殴られてもしようがな いということです。約束とは痛い目に遭うという歯止めがないと守れないもの のようですね。固いちぎりは血判を押していましたが,契約は朱肉の印鑑捺印 です。ちょっと大きな買い物はローンや分割払いです。約束を違えるとたいへ んです。  約束は未来の時間を予約することです。将来の可能性を切り売りするような ものです。先約がなかったらよかったのにという場合も起こりえます。今の生 活が将来を担保にしていると,将来はそれだけ目減りしていることになります。 慌てて損したという後悔もまた誰にでもつきものです。先のことは不確かであ るというデメリットがある中で,約束はきちんと守らないと人との関係までも が壊れてしまいます。  子どもと休みの日の予定を約束します。あいにくの雨模様で,キャンセルと なります。予め雨天中止という条件を付けておけばいいのですが,そうでない ときは改めて約束の再確認が必要になります。雨が降っているからという事態 を認めるかどうかです。雨はどうすることもできませんので,約束のほうをど うするかです。あきらめて中止にするか,雨天決行にするか,延期にするか, それとも予定内容の変更をするかです。子どもは約束の難しさを学んでいきま す。  もういくつ寝るとクリスマス? 将来の楽しみを約束しているとき,子ども は将来という時間を意識できるようになります。時の流れを意識化できること が知恵の土台になります。今これをすると次にはこうなるだろう,その基本的 な因果関係は時間の上に成り立つからです。希望や夢という大切な概念も明日 に向かうものです。人類が考える力を身につけたのは,明日という時間を獲得 したからです。犬や猫は今しか生きていません。明日を考える動物はいないの です。  約束は未来を具体的にイメージさせるマークになります。確かな未来なので す。時間の上で生きるときに人は人生を考え,希望という幸せを手に入れるこ とができるようになります。人は知恵を獲得し,未来を見る力を持っているか ら,生きる喜びを創り出すことができるのです。子どもは子どもなりに明日に つながる時間を生きているという実感を持たなければなりません。明日に向か って道が拓けているということが,辛いときの突破口になるからです。 ・・・《約束という確かな未来を与えると,子どもは生きる喜びを知ります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○期待と不安  人はなぜ学ばなければならないのでしょう? 子どもはどうして学校に行か なければならないのだろうと思っています。かつては,義務教育という言葉に 頼って強制している親もいました。義務というのは実は親に対する意味を持っ ています。子どもの学ぶ権利を尊重して,子どもを就学させる義務を親が負っ ているのです。ですから,登校拒否改め不登校は,子どもが権利を行使しない という点で許されることになります。決して,強制的に登校させる権利を親が 持っているのではありません。  学校は学ぶところであり,教えるところではありません。学ぶ権利が優先し, 教えはそれに応えるという形になります。学びたくない者を無理矢理机に着か せて教えるというのは,子どもの権利を侵すことになります。今は権利の優先 が流行っていますが,それなら,子どもが学校に行きたくなければ行かなくて いいのです。学びたい子どもが学ぶ,それが学校のあるべき姿なのです。だか らといって,学びたくない子どもを放置することはできません。それは育てを 置き去りにします。  子どもに学びたいという意欲を持たせる育てが親の負う責任になります。学 びは考える力を培うことを目的にします。そこで,考えることが楽しいと思う ように育ててやればいいのです。大事なことは考える方向です。明日を楽しく 考えるようにします。人はあれこれ考えますが,過ぎ去ったことを悔やんだり, 明日のことを思い煩ったりすることは,考える力の無駄遣いになります。考え るというのは,どうすればうまくいくのかを見つけるためにすることです。  何も考えていない極楽とんぼは,今日だけを生きています。しかし,人は明 日に向かって生きてこそ幸せになれます。そのときに考える力が発揮されます。 明日のことは分からないので,二つの道が用意されています。一つは期待で, もう一つは不安や心配です。いいことを思い描いていれば,今を明るく生きて いくことができます。もちろん夢物語では意味がありません。ところが現実世 界には,先行き不安という不確定さもあります。その不安をどうすればクリア できるかが考えどころなのです。  学びは過去から学びます。幾多の人の経験から,こういうときは何を考え, 何をどうしてきたか,それが知恵と呼ばれるものです。学んで知恵を増やせば, それだけ先行きが見えてきて,不安は消えていきます。何も分からなかったパ ソコンも,マニュアルがあれば使えるようになるのが学びです。そのパソコン を使って何ができるのかを考えるのです。明日への道は考えるから拓けてきま す。学びは考える力を育て,考える力が明日を確実に自分のものにする約束と いう期待を実現してくれます。       ・・・《考える力が期待を,学びからの逃避が不安を生みます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育てには,学んで考えるという目標があります》 ※子どもとの約束をいい加減して,忘れたり反古にしたりしていませんか?  約束を守ることは大事なことです。それは人と明日を共有することだからです。 約束を破れば,あなたとは明日を共有できませんという拒否になり,明日とい う時間が幻であるというしつけになります。たかが子どもとの約束を大げさな, その気の緩みが子どもとの信頼関係や子どもの未来志向にバグとなって組み込 まれていきます。  ところで,中途半端な学びは言い訳上手になります。生兵法は大けがの元で す。知ったかぶりはここという場で大恥をかきます。学びにはこれで終わりと いうゴールはありません。だからいつも謙虚に学び続ける態度が大切になりま す。それなりの人たちがしでかす不祥事は,学びを怠ったからです。何も分か っていないという批評が出てくることからも分かります。これ以上学ばなくて も大丈夫,そう思い上がったとき,明日への扉は閉ざされていきます。もっと 学びましょう。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  暖房用具が蔵出しされました。私モリのクマさんは寒さが苦手なので,冬眠 したくなっています。それでも,昔に比べるとずいぶんと気候の暖かいところ に住み着いています。冬の寒さはもっと厳しかったと記憶しています。山奥育 ちなので軒先にぶら下がったつららで遊んだり,水たまりに張った氷の板を取 り出したり,霜柱をじゃりじゃりと踏みしめて登校していた頃を懐かしんでい ます。都会暮らしでそんなものが無いとなると,懐かしむのは身勝手なことで す。  人はいろんなことを勝手に思い描きます。想像するだけならタダですから, 苦労の伴わない夢も持ちます。現実のことは考えなければどうにもなりません。 気楽なことではありません。一つひとつをもれなく並べてつながりを考え,順 序を考え,創造していくのが生きることです。暦という時の流れを参照しなが ら,今は何をなすべきか,その見極めと実行の繰り返しが生活のリズムになり ます。餅つきの約束が結ばれました。考える世界では,もうお正月に入ってい るようです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆   次号では,【お子さんが,失敗しても考えないことはありませんか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○