□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2004/12/13]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第219号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■               『分断社会?』  コミュニティ,コミュニケーションの第一音節com−は「共に」という意 味を持ちます。人が共感,共存,共同するという言葉と通じています。暮らし の場では,同じ釜の飯を食うとか,盃を飲み交わすといった形式が分かりやす い例であり,共通する何かを持ち合わせていることが条件です。同じ体験を持 っていたり似たような境遇にあるから共感できます。同じ仲間だから共存でき ます。同じ目的を持つから共同できます。  豊かさに向けて早い進展をしてきた社会では,世代毎の体験や境遇が全く違 って重なり合うことが少なくなってきました。親が体験してきた子ども時代の 遊びは,今の子どもには全く通じません。祖父母の世代の竹馬やおはじき遊び, 親世代の超合金合体ロボット,子ども世代のゲーム機,お互いに遊びを語って も共感できるはずがありません。祖父母世代の真空管や鉱石のラジオ,白黒テ レビ,親世代のカラーテレビやカセットテープ,子ども世代のCDや携帯電話, 歴史的な3世代です。  育った環境に共通性が見られない世代間では,つながるものが見当たらない ので,いきおい勝手に同居しているというだけになり,成人すると核家族のほ うが暮らしやすいという選択をするようになります。地域の人間関係も,世代 毎に分断されたり,勤め先や通学先といった所属縁のほうに引きつけられてい きます。子どもと大人が別世界に住んでいるから,子どもは大人を異世界のも のと感じてどう付き合っていいか分かりません。  会社に入って,上司という世代間の付き合いを迫られても困惑し,できれば 離れていたいという気持ちになります。傍にいると気詰まりになります。アフ ターファイブの付き合いはごめん蒙りますということになります。最近は社員 食堂も敬遠されるそうです。上司と一緒になるのが嫌なのです。また,上司が 仕事上の注意として言ってくることが理解できないと語ります。社会的価値観 が違っていて受け入れがたい,嫌なことは嫌,嫌なことだから聞く耳持たない ということのようです。  世代が細切れになったせいで,お互いに住む世界がとても狭くなっています。 親子の分かり合いが希薄になり,親が鬱陶しいという気持ちが育ちやすくなっ ています。例えば親自身が親父の所に行きたいと思っているかというと,おそ らく余程の用事がなければ行かないのでは? 親が断絶していれば,子どもも 断絶を学ぶしかありません。子育てをしにくい社会になっています。意識して 世界を広げるようにしなければ,とても窮屈で,子どもは引きこもるしかなく なります。先ず親から・・・。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育て12章★     【お子さんが,失敗しても考えないことはありませんか?】                             (質問17-11) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○ポイント  前号で,過去に学び明日に向けて考えるということを述べておきました。今 号では何をどのように考えるかについて話を進めておきましょう。もちろん, 子育ちにおいて必要なことに限定します。何もできなかった子どもが,特別に 教えなくても何やかやとできるようになります。子どもは育つものです。とこ ろで,幼い育ちは早いのですが,それは一応できるようになったという段階で す。上手にできるとか,ちゃんとできるとか,一人前になったのではありませ んね。  育ちの道を歩むためには,足が必要です。どんな足でしょう? 考える足で す。デカルトの考える葦ではありません。そんな高尚な話ではなくて,考える から育つことができるという簡単なことです。考えなければ育てないというこ とです。考えるといえば,勉強の世界のことのようですがそうではありません。 子どもにとって,育ちは常に課題と直面することです。すべてが初体験であり, ちゃんとできないことばかりなのです。考えないとどうにもなりません。  高いところにお菓子があります。ママのいないときに,見つけてしまいまし た。何度か背伸びをして手を伸ばしますが,届きません。そこであきらめたら, それまでです。周りを見回します。リビングに椅子があります。踏み台にして みようと考えます。引きずってくると,楽に届きました。考えたから,できま した。お菓子を勝手にご褒美にしています。後で叱られることも知らずに,考 えたらどうにかなるという大事なことを覚えていきます。  踏み台という知識がなかったら,考えることはできませんでした。椅子の上 に乗ったとき,背が伸びたようになって,パパと同じ高さになったことがある という記憶があったから,踏み台という言葉を知らなくても同じ知恵を思いつ くことができました。考えるというのは,経験を別の方面に大事なポイントと して応用することから始まります。似たようなことを以前にしたことがある, そんな記憶がたくさんあれば考えるポイントが増えてきます。  子どもが成長してくると,課題の難度は高くなってきます。何度も失敗しま す。あれこれ記憶を絞って考えても,うまくいかないことがあります。同じ失 敗を繰り返して考えていないように見えますが,子どもは繰り返しの中で一つ ひとつの作業を確認しています。自分がどのようにしているかを分析していま す。ここまではできているが,ここで失敗するというポイントを探そうとして います。それが見つかったら,少しやり方を変えてみようと考え始めます。見 守っていてくださいね。 ・・・《経験記憶を引き出し,確認しながら分析することが考える流れです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○保護と過保護  走ったら転びます。転んだら危ないので,走らないように注意します。走ら ないままにしておくと,走れなくなります。箸を使うとこぼしてしまうので, スプーンを使わせます。箸が使えなくなります。こぼさないように箸を使える ようになるための練習ができません。練習期間とは失敗することが許される期 間です。子どもはどこで練習するのでしょう。家庭と学校です。粗相をしても いいというゆとりが無くなると,子どもは育つことができません。  ちゃんとできないといけないという強制が働くと,子どもは萎縮してやろう としません。失敗したらどうしようと恐れるからです。失敗したときのことを 考えます。考えるのは,どうすればできるか,できた結果に向かうことでなけ ればなりません。考えることは楽しいことなのです。失敗してきたことができ るようになったら,うれしいですよね。そういう楽しさは失敗の後からやって くるものです。育ちが楽しい,そういう育て方をしてやりましょう。  親は保護者として,子どもの世話をやきます。子どもができない部分を補う ことで,きちんと暮らしています。靴下を穿かせ続けていると,子どもはいつ までも自分で穿けません。忘れ物はないねと親が毎朝注意していると,どうす れば忘れ物をしなくなるかを子どもは考えません。考えるのは失敗したときで すから,忘れ物をするという失敗が必要です。忘れ物をしたらどんなに困るか を経験して身に浸みて分からなければ,真剣に考えることをしません。  親のほうが心配して先回りするのが過ぎた保護です。普段の忘れ物程度の失 敗はさせておき,試験の時などのいざというときだけちゃんと注意してやるの が保護の適正な範囲です。保護と過保護の境目は,ちょっとした失敗を子ども に与えているかどうかにあります。親にとっては小さな心配をグッと飲み込め るかどうかです。育ちとは失敗しないことではなくて,失敗しなくなることで す。失敗体験をすることが育ちのスタートだと考えておいてください。親とは 気苦労なものですね。  子どもの育ちは自転車の運転と似ています。きちんと決められた真っ直ぐな ラインの上を走ろうとしても無理です。ラインから右に左に少しずつはみだし ては修正を繰り返して,進んでいきます。その修正ができるというのが,自転 車に乗れるということです。倒れないようになるのです。次第にはみだしも少 なくなっていくでしょう。もし,最初からはみ出してはいけないと強いると, 修正の仕方を身につけることはできません。          ・・・《失敗体験が育ちを,成就体験が喜びを生みます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育てには,失敗してもいいという不可欠なゆとりがあります》 ※ゆとりの教育ということが言われています。子どもにゆとりを与えるという よりも,親がゆとりを持って欲しいということかもしれません。子どもともっ とゆったり付き合って欲しいと願います。生活の忙しさをそのままに子どもに ぶつけているような気がします。暮らしのペースが速くなっている中で,スロ ーライフという動きが出てきました。食事も手づくりのゆっくりしたものにす れば,添加物の少ない材料を使えるはずです。子どもの育ちはゆっくりなので す。  もちろんすべてをペースダウンすることは現実的ではありません。大人社会 は変えようがないかもしれませんが,せめて子どものまわりの暮らしはゆとり を取り戻して欲しいと思います。大人のペースについていけなくなって,育ち をあきらめる子どもが現れています。追いつめられて反逆する若者,萎えて引 きこもってしまう子ども,享楽に逃げ込もうとする子どもが増加している背景 には,管理された子育てに走り余計な失敗を与えずに急き立ててきた大人社会 のゆとりの無さがあります。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  メールを受信すると,外国からの無関係なメールが半数以上飛び込んでいま す。消去の手間を押し付けられています。邦文のものでは,H系の案内や援助 交際の勧誘なども少なからずあります。手当たり次第に送りつけているようで, 何とも不愉快なものです。無視する他はないようで,なんとかならないものか と思います。匿名であることが品性を脱がしてみすぼらしい欲望を丸出しにさ せてしまうというのは哀れです。  あまり楽しい話ではありませんでしたが,そんな現実があることも心の隅に 止めておかなければなりません。ネット社会につながっている子どもにも,同 じ状況が訪れているとしたら,やはり大人はじっくりと見守っておくことが必 要です。正々堂々と暮らすのが表社会なら,ネット世界は表と裏が混在してい る怪しげな世界です。新世界の初期にはつきものの混乱現象なので,今しばら くの猶予期間が必要でしょう。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆   次号では,【お子さんから,助言を求められることがありませんか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○