□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/01/10]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第223号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『子育て守備陣?』  昨年は女児の連れ込み事件が相次いで,通学路の安全が脅かされました。子 どもをターゲットにする淫らな不心得が噴き出してくる時代とは,心の荒廃を いやが上にも見せつけてくれます。被害に遭うのは女児や女生徒に決まってい ます。娘さんをお持ちの親御さんは先行きを考えると不安を抱えてしまうはず です。帰宅時間には親が仕事で在宅していないという家庭では,ご近所や地域 に見守ってもらいたいと思っておられることでしょう。  地域の人びとはどう思っているのでしょう? 近くで事件が起これば地域ぐ るみでの見守り活動が実施されますが,普通にはそれほど熱心な取り組みはな されていません。せいぜい月に一回のあいさつ運動といった活動などの事業が 行われる程度でしょう。どこの子か,誰の子かも分からない子どもを見守りよ うがないとか,地域と関わりを持とうとしないで子どもだけを押し付ける親の 身勝手さなど,地域はそれほどお人好しではないという本音を抱えているので す。  お父さんたちはどう思っているのでしょう? あどけない笑顔を摘み取る犯 罪は,人として許されないことです。それを臆面もなく実行できるような人が 育っていることは,これまでの子育てが取り返しのつかない手抜かりをしたこ とを示しています。心の育てをないがしろにしてきたツケは,償いきれない罪 につながります。加害者は男の子です。弱い者に手を掛ける卑怯さを男児たち に教え込んでこなかったのは,父親の無為の罪なのです。男児が将来加害者に ならないように育児を・・・。  子どもを見守り育てていく主役は,あくまでも親なのです。野球で言えば, 投手と捕手というバッテリーが両親です。学校は内野手,地域は外野手です。 子育てという野球はピッチャーである親が投球をしなければ始まりません。も ちろんバッターは子どもです。ところが,バッテリーが所用で忙しくて野球場 に登場してくれないと,どうしようもありません。仕方がないので,先生とい う一塁手が投手,二塁手が捕手の代わりをしますが,結果として内野はがら空 きになって守備はガタガタです。  観客である世間は,ピリッと引き締まったゲームであれば,ちゃんと見守っ てくれます。ところが,乱れたゲームを見せられるとヤジを飛ばしはじめ,終 いにはグラウンドに飛び込んで来て引っかき回すようになります。子どもを取 り巻く雰囲気がざわついて落ち着かないのは,子育てというゲームが成立して いないからです。学校,地域が受け持っている役割を果たすためには,バッテ リーが打者ときちんと向き合うことが不可欠です。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12路★     【お子さんが,人の悪口を言い募ることはありませんか?】                         (質問18-02)《WHO-2》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○悪口の本音  砂場で遊んでいたら,「しんちゃんが叩いた」といって子どもが駆け寄って きます。はじめてのことではないので,一度はちゃんと注意しておいたほうが いいかなと考えます。しんちゃんの傍に近寄って,頭上からいくぶんこわい顔 で,「しんちゃん,叩いたらダメでしょ。怪我でもしたらどうするの?」と問 いつめます。しんちゃんは砂を掘っていた手を止めて,見上げながらきょとん としています。ママの後に隠れているかずちゃんを見つけて,やっと事情を察 しました。  「かずちゃんがボクの頭に砂を掛けたから,しないように払っただけなのに」。 ママは困りました。先に手を出したのは,かずちゃんのほうだったのです。も ちろん叩くということはいけないことですが,しんちゃんは叩くつもりではあ りませんでした。叩かれたと思ったかずちゃんの勘違いでした。幼い子どもの ぶつかり合いは,いわゆるケンカではありません。単なるトラブルであること がほとんどです。お互い様ということですから,黙って見守っておけば良かっ たのです。  友だちと遊んでいるとき,自分の思い通りにしようとしても,友だちが邪魔 になったり,友だちから邪魔をされたりすることがあります。子どもは相手を 咎めるつもりではなく,邪魔をする子の悪口を言い募ります。そんなとき,マ マはどうしていますか? 一緒になってお友達を悪し様に切って捨てています か? そんなことはしてませんね。もちろん,子どもの訴えを無視してはいけ ません。きちんと受け止めてやらないと,不快感というストレスが解消できま せん。  「そう,邪魔をされたの。嫌だったのね」。気持ちの裏にある本音を引き受 けることだけをすればいいのです。決してお友達のことに言及してはいけませ ん。ママがお友達の悪口を言ってしまうと,もう一人の子どももお友達は悪者 だと思ってしまいます。自分の邪魔をする者は悪者であるという価値観が植え 付けられてしまいます。そのような体験から学ぶべきことは,自分の思う通り にはならないということが社会の現実であり,決して相手が悪いのではないと いうお互い様のルールです。  人はしたことは覚えていませんが,されたことは忘れません。マイナスの体 験は生きていく上できちっと避けなければならない教訓になるからです。思い やりを教えるときに,「あなたがされたら,どう思う?」と言って聞かせます ね。その場合に,されたという経験がある子どもはすぐに理解できます。もう 一人の子どもが育っていれば,自分の嫌な思い出を介して相手と自分の立場を 入れ替えることができるようになるからです。 ・・・《子どもの言う悪口は,自分の不快感を伝えようとしているだけです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○不信の波  勤め先の同僚と飲むときの話の肴は,上司の悪口と相場が決まっています。 どうしてなのでしょう? 悪い人?を共有することで,仲間意識が生まれるか らです。古来の独裁的政治家が利用してきた人間の奇妙な心理であり,隣国を 悪い国に見立てることで国民の結束を謀っていました。今でも,隣国なのに仲 の悪いペアというのが見かけられますね。身近な付き合いでも,同じ手が使わ れます。誰か適当な標的を見つけて悪口で色づけして,他の皆が仲良くなろう としています。  子どもたちも似たようなことをします。イジメです。揚げ足を取るような些 細な種を穿り出して,ほとんど言いがかりでしかない悪口を生け贄に被せます。 仲間づくりの幼稚な手段なのです。いじめることが目的ではありません。大人 の目がイジメと見るから,状況判断を誤ります。もちろん,深入りすると本物 のイジメに突き進んでいきます。いじめる快感を覚えてしまうと際限がないの で始末に困ります。人の悪口を言うという芽は早く摘まなければなりません。  人の悪口を言う癖が付くと,人間関係が結べなくなっていきます。表面では 愛想良くしながら,陰では貶しているという二重生活は破綻します。必ず巡り 巡って心底がばれてしまうものです。それよりもなお怖いのは,人を信じられ なくなることです。人が自分の悪い噂を話しているのではないかと,疑心暗鬼 に陥ります。それは自分がそうだから,人もそうだと考えるのが普通の成り行 きだからです。信頼することを基盤にしている人間関係が持てるはずがありま せん。  最近,学校の先生の悪口を言う親たちが増えてきたということを耳にします。 子どもたちが先生の言葉を信用しなくなり,不遜な雑言を返すことが増えてき て,学級の統制が取れないこともあるそうです。先生が自分の子どもを学校に やるのが怖いと言っています。一部なのでしょうが,先生を信頼しないように 扇動された子どもがいるのは教育を壊すことになります。また,人は自分が信 頼されていないと分かると,やることがいい加減になります。自滅的な悪循環 です。  悪口は自分に他者への不信感としてはね返ってきます。それを避けるために は,自分も含めて人は100点満点ではないという自覚を持つことです。お互 いに五十歩百歩であって,人のことは言えないという自制を利かせることです。 悪口を言うことで清い心が育つはずもありません。もう一人の自分が自分を育 てる上で,せいぜい他山の石とすること,人の振り見て我が振り直せという程 度に留めておきましょう。その方が明るい気持ちで生きていけます。    ・・・《悪口の波は増幅しやすく,我が身の内外に揺り戻してきます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育てには,常用すると囚われてしまう危険な感情があります》 ※欲はなく決して怒らずいつも静かに笑っている・・・。宮沢賢治はそういう 人になりたいと言っています。人は欲もあり怒ることもあります。そんな自分 だから,静かに笑っていられるようになろうと願っています。いつも日向の方 を向こうとすることで暗い気持ちに包まれていても日差しを感じることができ ます。人の気持ちは統制しづらいという意味で複雑ですが,目線を変えること で視界が広がれば,案外簡単に気分転換が可能です。明るい方を向くから明る い気持ちになれます。  ある小学校で,雨にも負けず風にも負けずの詩を皆で朗唱していました。心 づもりになる言葉を普段から口にしていれば,心の動きが真っ直ぐに向かうこ とができるからです。そんなことをしてどれほどの意味があるのかという疑い の目を持つとしたら,既に悪口病に罹患しています。信じてやってみる,それ が前向きに取り組むという態度であり,決して無駄にはなりません。人は意味 や効果を完全に見極められるほど利口ではないのです。いいことをしようとす る,それが子育ての道です。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  松の内も過ぎて,普段の暮らしが戻ってきました。冬将軍が律儀に訪ねてき ます。門前払いをしてもとても抗えません。諦めて受け入れ,ただ身を引き締 めて耐える時期です。寒さに弱いクマさんは,朝の床離れが辛くなっています。 背伸びをしてエイヤッと自分に号令を掛けて飛び出し,冷たい水で洗顔しさえ すれば,どうということはなくなるので,なんとかやっています。早く春が来 ないかな。  新年が始まったのですが,世間的には年度末に向けて事が動いていきます。 気分は新たになったのに,やることは後始末に向かうという奇妙な状態です。 年と年度の違いに振り回されているのですが,その元は太陽暦と地球気象のタ イムラグです。春夏秋冬。春から一年が始まるというのが,暮らしの暦になっ ています。3月まではやっておくべきことをし終えるという整理の期間です。 講義も残り時間を勘案してペース配分しなければなりません。忙しくなりそう です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,【お子さんから,後追いで泣かれることがありませんか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○