□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/02/14]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第228号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■             『豊かさの不健全さ?』  「指によって月を示してもらうことは必要だが,実際に月をみるのは自分が 見るより他に方法がない」。お釈迦様の言葉です。教えることはできますが, 学ぶことは自分からその気にならなければできないということです。指によっ て示す,つまり指導とは心許ないものです。馬を水飲み場に連れて行くことは できる。でも水を飲むかどうかは馬の気持ち次第。先生たちの苦しみがそこに あります。その気にさせるのが教える技術ではないかと期待されますが,限度 があります。  月がどうした? 月なんか見て何が面白い? 月を示されても見る気もしな いのでは,示し甲斐がありません。無理矢理月を見せても,何の意味も受け取 れません。回りくどい話をしていますが,子どもが生きていく上で大切な知恵 という月があり,それをしっかりと見届け,暮らしの指針に取り入れなければ なりません。大切なことは決して面白くありません。どちらかいえば窮屈で面 倒で脇にどけておきたいものです。面白く楽しいことを求めていれば,生きる 知恵は疎かになります。  学ぼうという気持ちは,状況を変えたいというときに芽生えます。貧しい国 の子どもたちは,家族を楽にしたいから勉強したいと語ります。世の中の役に 立つ大人になりたいという,日本ではすっかり影の薄くなった目的を持ってい ます。豊かな暮らしをしたいという目的があれば,そこに通じる道が学びの道 であることは子どもにも理解できます。自らの将来を切り拓きたいという夢が, 学ぶことの意味を明確にしてくれます。  今の日本のような豊かな子ども時代は,かえって学びへの意欲を枯らしてい ると考えられています。豊かさの中ではこれ以上やるべきこともなく,ただ面 白いことを享受することしか残されていないからです。昔流に準えれば,大金 持ちの放蕩息子や娘という状況が思い浮かびます。すべてがそうではありませ んが,時代状況の傾向として,理解しておいたほうがよいでしょう。現実の暮 らしが苦しいということは別にして,暮らしのレベルが豊かなのです。  子どもには不自由な思いはさせないように,それが親の願いですが,育てる ためにはある程度の不自由さが必要なのです。向上心はなんとかしなければと 追い込まれるときに発揮されます。子どもであるからという理由で大人と違っ て我慢させられるとき,早く大人になりたいと思うのと同じです。ところで, 商業化の波は子どもを購買者に仕立て上げ豊かさを押し付けてきました。子ど ももお金が必要になってきた,そんな社会は不健全です。お金を欲しがる子ど もが育っていきます。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12路★     【お子さんから,貴重品を壊されたことがありませんか?】                        (質問18-07)《WHAT-1》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○壊した?  ママが大切にしていた香水を,子どもが惜しげもなくばらまいてくれること があります。ママの目が三角になり,口は四角に,顔は五角に角が生えてきま す。どうしたの?と言いたげなあどけなさも癇にさわります。そんな一瞬の怒 りが納まると,残っている量を確かめてキャップを固く閉めます。こぼれた香 水の名残を惜しむようにちょっと手の甲に付けてみたり? 子どもはママがし ていることをじっと見ていて,真似をしたいと思っているのでご用心!  装身具など,キラキラと目を惹くものはオモチャになりやすいかもしれませ ん。子どもの前で無造作にご開帳をしないほうが無難です。壊れやすいものは 手の届かないところに置いておきましょう。もっとも,一つ二つ壊されたら, ママのほうも用心することを学ぶことでしょう。その他に家の中にあるものを 台無しにされることは諦めないといけません。壁に落書きされたり,襖に穴を 開けられたり,新聞を破かれたり,パパの大事な書類を汚されたり,いろんな ことが起こります。  誕生日やクリスマスなどの特別なプレゼントとして高価なオモチャを買い与 えることがあります。子どもの喜ぶ顔が見たいという親心からですが,一方で 高価なものという気持ちがつきまといます。でも,子どもにとってはただのオ モチャです。親がハラハラするような乱暴な扱いをします。遊ぶことに熱中す れば,オモチャはただの道具になってしまうからです。貴重品では遊べません。 結果として,いずれは壊れてしまいます。もったいないと思うのは,オモチャ 遊びを忘れているからです。  ものは壊れるのが定めとはいえ,ものを大切に扱うことはしつけのテーマで す。壊れるのと壊すのとは違うことをきちっと教えましょう。オモチャが壊れ たのか壊したのか,見極めて,原因を教えることが肝心なポイントです。壊し たのであれば,何がいけなかったかを具体的に正しておきます。「乱暴に扱う からよ」。それでは子どもに通じないからです。放り投げて壊した,踏みつけ て壊した,倒して壊した,濡らして壊した,いろんなケースを学習させましょ う。  貴重品であるモノは,おいそれと手に入らないモノです。壊したら,もう手 にすることができないことを教えなければなりません。ママの貴重品の場合に はママが我慢を押し付けられるので,子どもには分からせようがありません。 子どもの持ち物の場合に壊したら替わりがない,我慢せざるを得ないというこ とを経験させる必要があります。壊したモノをさっさと始末せずに,壊れたま まで手元に置いておくといったことも考えられます。嫌みっぽいですけど,忘 れさせないために?      ・・・《貴重品であることは,失って始めて実感できるものです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○親なんて  時は金なりといわれています。人にとってもっとも価値あるものは,時間で しょう。寿命という時間,人生という時間です。若返りたいという望みは絶望 的ですが,それは過ぎ去った時間が戻らないということです。一度しかない人 生,これ以上に貴重なものはありません。ところで,毎日の暮らしでは,時間 がいくらあっても足りないという忙しないことになっています。この子がいな ければどんなに楽だろうなんて思ってしまうことがあるはずです。子どもは時 間泥棒?  子育てに費やされる時間はかなりのものです。乳児期には一日のほとんどす べて,寝る時間まで持って行かれることもあります。少しは自分の時間を持ち たいと思います。休養のためでもありますが,自分のしたいことをしたいとい う気持ちが強いはずです。ショッピングやお食事の時間があれば・・・。幼児 期になれば,保育園や幼稚園に預けている間,自分の時間を取り戻すことがで きます。ヤレヤレ出かけてくれた。そのかすかな安堵感は,一方で子どもに追 放された不安感をもたらします。  子どもがいるばっかりに犠牲を強いられている。そんなことを考える迷い道 に踏み込むことがあるかもしれません。親なんてつまらないと思うこともある でしょう。それが普通です。でも,この子には自分が必要なんだという気持ち のほうが勝ります。自分が生んだ子どもなんですから。必要とされている,そ れがママ自身をかけがえのない存在として意識させてくれる入口です。ママが 費やす時間に比例して,ママ自身が貴重な存在感を付与されていきます。  人は,仕事の場,社会の場にいて,自分の存在感を感じようと励んでいます。 それは簡単に言えば,いなくてはならない人になることです。あなたがいない と困る,と言われたいのです。でも現実には,どんな人であろうと替わりはい くらでもいるのです。社長であっても,別の人に交代してさしたる支障はあり ません。定年で辞めていく人がいても,後は何の心配も要らないということで す。病気で仕事から離れたとき,後のことは心配しないでゆっくり休養をとっ てくださいと言われるはずです。  子どもにとって,ママは大事な人です。替わりはいないはずです。そう信じ てきたのですが,最近少しばかり心配です。ママが入院や所用でいなくなると いう状況を迎えた場合,子どもは一番に「ご飯はどうするの?」という心配を しています。私は飯炊きばあさんか!? 笑い事ではないですね。私は何のた めに苦労してきたのか,という虚しさを感じることになります。しっかりして くださいね,それでいいのですから。子どもに感謝されたいという我欲を持っ たら,親は自分を見失います。    ・・・《やってられないことを黙々とやるから,親の愛は尊いのです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育てには,人としてもっとも貴重な宝物の発見があります》 ※子どもよりパチンコのほうが大事? 信じられないことが起こっています。 子どもよりお金を稼ぐ方が大事? 先行きが心配になります。裏返せば,親よ りお金が大事ということになります。人の収支はトントンであることが原則で す。ぶったくりをしていると,爪弾きされます。親から受け取った数々の世話 を自分の子どもにきちんと返済することで,帳尻が合うようになっています。 親から世話してもらって,子どもの世話を端折っていたら,それは未納扱いに なります。後の請求が怖いです。  豊かさは貴重なものを失わせます。なぜなら,豊かさは奪うことで成り立つ 宿命を背負っているからです。自然から,環境から,多くの人から,いろんな 形で自分に引き寄せるから,豊かさがあります。子どもは親からあらゆるもの を奪います。豊かさの中では,分け前を惜しむために子どもを少なくしようと します。やがて,豊かさを食い尽くすときがやってきたとき,大きなツケが降 り掛かってきます。子どもは本当は幸せの打ち出の小槌なのですが,それを見 えなくするのが豊かさです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  聖バレンタインデーです。全国でどれほどのチョコレートが贈られるのでし ょうか? 一つのおこぼれが連れ合いから届くはずです。一緒に買い求めたの で間違いありません。クマさんは甘党のほうなので楽しみです。チビチビと味 わうつもりです。子どもの頃には無かったイベントなので,チョコのやりとり にまつわるドキドキ感が今ひとつピンと来ません。もらえるかどうかという期 待と恐怖の狭間は,子どもには結構シビアなものなのでしょう。  もらえなかったらどうしよう! そう思う人がいたらかわいそうだからと, 義理チョコという思いやりがあります。義理チョコでも無いよりはましという ことです。それが豊かさの一面です。本命でなければ無いのが当たり前,それ が普通のことであるはずです。もらえなかったらどうしようという恐れは,あ るのが当たり前と考える豊かさに甘えた思い上がりから生まれてきます。豊か さの陰におびえるのはつまらないことですが,社会の風が煽り立ててくれます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆   次号では,【お子さんが,生きものをいじめることはありませんか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○