□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/02/21]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第229号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『本当のこと?』  長崎県教育委員会が1月24日に,小中学生を対象にした生と死に関する意 識調査の結果を発表しました。西日本新聞17年1月25日朝刊の記事から, 抜粋しておきます。「死んだ人が生き返ると思いますか」の問に「はい」と答 えた割合は,全体では15.4%でした。年齢別では,小学4年生17.4%, 小学6年生13.1%,中学2年生18.5%であり,中学生の方が高くなっ ていました。中学生の方がテレビや映画に多く興味を持つ中で,生への関心も 高いために影響を受けているのであろうというコメントが付記されています。  そう思った理由については,「テレビや本で生き返る話を聞いたことがある」 が全体でほぼ半数の49.3%,「テレビや映画で生き返るところを見たこと がある」が29.2%,「ゲームでリセットできる」が7.2%でした。また, 中学2年生を対象にした「人を殺したときにどんな罰を受けるか,法律や制度 について知っていますか」の問では,47.3%が「いいえ」と答えました。 抜粋は以上です。  いろんなところで語られている「ゲームでリセットできる」からという理由 が,思いの外に少ないと思われませんか? テレビや本は本当のことを語り書 いていると素直に信用していることを伺わせます。不思議な事象を取り上げる 番組や記事がありますが,ありえないことだから楽しめるという逆転の鑑賞法 を知らないようです。本や現代版講釈であるテレビからだけ知識を得ている危 うさが見えてきます。論語読みの論語知らずという古い言葉が生き残っていま す。  子どもたちはぬいぐるみを友だちと実感しています。クリスマスのサンタク ロースを信じている子どもは,心いっぱいに温もりを育てています。でも,そ れは幼児期までです。児童になれば現実世界に向けた修正をしていく必要があ ります。夢のようなことと言いますが,想像の世界では不可能なことはありま せん。動物とお話ができるといったおとぎ話が,幼児期には当たり前の事実に なっています。お話の世界はあくまでもお話であるという目覚めが,幼児期の 卒業科目になります。  情報社会のまっただ中で育っている子どもたちは,情報に洗脳されていると 考えていた方がいいのです。言葉や画像で伝えられている情報は真実のほんの 一部に過ぎません。例えば,テレビを見ている犬が画面に出て来た犬に当初は 興味を示したにしても,すぐに無視するようになります。犬ではないと分かる からです。見たままを信じるのではなく,嗅覚という別の知覚を働かせている からです。簡単に言えば,視聴覚オンリーではなく,五感による情報認識が生 きる力を発揮させてくれるのです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12路★     【お子さんが,生きものをいじめることはありませんか?】                        (質問18-08)《WHAT-2》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○いのちの教育  台所に出没するゴキブリ。逃げていくママと,追いかけ回すママ。どちらで もいいんですが,ゴキブリは害虫なので抹殺して当然と思っていますね。おお むねママは虫が嫌いです。小さくてゴソゴソ動く生きものなので,子どもは興 味を持って掴まえたりします。外に出てわけの分からない虫を手に掴んで, 「ママ,こんなのがいたよ」と目の前に突き出してきます。「な〜に?」との ぞき込んで,「キャー,捨ててきなさい!」。  子どもは背が低いので,大人より地面が近くに見えます。動くものは目に付 きやすく,突いてみたくなります。アリが行列をしていると,その整然とした 行動を乱してみたくなり,足で踏みつぶします。アリの行列はひとたまりもあ りません。大騒ぎを見下ろしているとしてやったりと征服欲が満たされます。 虫けらという言葉があるように,虫に命があることなど思いもしないのが普通 でしょう。セミやトンボを追いかけて,狭い虫カゴに閉じこめて遊びます。命 を弄びます。  魚釣りにいきます。エサに針を忍ばせて魚をだまし討ちです。無理矢理水中 から引き上げて,飲み込んだ針をむしり取って,窮屈なバケツに放り込みます。 やがて魚は息が続かず,アップアップしてひっくり返っていきます。料理の際 には,生きたまま切り刻まれたり,熱湯に落とし込まれたりします。人は生き るために生きものを食材と名付けて食べています。ニワトリではなくかしわと 呼びます。牛ではなくビーフなのです。仕方のないこと?  周りにはたくさんの生きものがいて,人は否応なく関わりを持っています。 害虫という切り捨て,虫けらという玩具,食材という身勝手,何重にも価値尺 度を設けて,生きものをランク付けしてきました。人の歴史の中でできあがっ た生きもの観ですが,そこには人の哀しさが込められていたはずです。食物連 鎖という自然の過酷さを意識して背負うことで,人は生きる意味を弁えること ができます。命をありがとうという感謝,いただきますという言葉は,生きて いる呪文なのです。  小動物を友だちとして育っていく子どもが,時には悪ふざけでいじめてしま います。動かなくなった生きものが何を失ったのか,自分が何をしたのか,き ちんと後悔をする機会を持たなければなりません。スーパーで食材に化した姿 しか見ていないから,いただきますの気持ちが育ちません。いじめることをし ないから,哀しさの気付きが無くなります。犬や猫やウサギにまで酷い仕打ち をする子どもは,いのちから隔離されて,いのちの教育を受けていないのです。     ・・・《失われた命を感じることで,いのちは無駄にはなりません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○一度っきり  子どもは一度は小動物を身近で飼いたいという気持ちを抱きます。「面倒を みるから」と約束をしますが,永続きはしません。そのときは本当に固い誓い をしますが,時が経つと興味関心が移るという変化を自覚することができませ ん。子どもが持っている時間感覚は今現在であり,明日という遠い将来のこと など見通す力はまだありません。同時に,昨日のことも昨日に置いてきますか ら,約束は守られません。今やりたいことの足枷になる昨日の約束はなおさら です。  生きものの面倒をみないという放置は,ネグレクトという虐待行為になりま す。人の世界に連れ込まれた小動物は,自分で生きる道を閉ざされているので, 人の世話を受けないと生きていけません。面倒をみるといった中途半端なこと ではなくて,まさにいのちを預かっている重大事なのです。「忘れちゃった」 と簡単に言えるものではありません。そこでついママが「仕方がないわね」と 肩代わりをすることになります。でも,できればギリギリまで,その手は畳ん でおいて欲しいのです。  エサをやるのを忘れていたら夕食抜きという厳しさから,おやつ抜きにする という注意喚起まで,子どもの年齢と状況に応じて責任を引き受けさせるため の手だてが必要です。エサを食べられなかったらどういう感じがするかを実感 させるためです。口で言って分からせたつもりでも,それが心に刻まれること はありません。共感という定着作用が働いてこそ,忘れ去ることを免れます。 お仕置きといえば大げさですが,心に焼き付けるための熱い教育です。  次のステップがあります。どんな小動物でも飼育は難しいものです。普通は 短い期間で死なせてしまいます。夜店で掬った金魚や,かわいいひよこなどが そのような運命を辿ります。子どもは小動物が眠っているとか,ただ動かなく なったという程度の理解しかできません。いのちというイメージは,二度と動 くようには戻らないという死のイメージでしか伝えることができません。死ん でいない間が生きているという逆説です。お墓を造って,いのちの終わりを見 届けるセレモニーをして下さい。  身近にいる小動物や虫などの生涯を見届ける機会を持つことが,いのちの教 育になります。確かに楽しいことではありませんが,目をそらしてばかりいる と,子ども自身のいのちへの執着が育ちません。最近の傾向として,青春期の 迷いから逃れる道としてあっさりと自分や他人の死を選ぶ事例が増えています が,本当は選ぶ意味のない道だという自明なことが教えられていないからです。 いのちの尊さを教える数少ない機会を逃さないようにして下さい。  ・・・《生きている尊さを教えておかないと,自他のいのちを軽んじます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育てには,いのちの在りようをしっかりと教える責務があります》 ※転んで痛い思いをする,小さな傷を負う,熱を出して苦しい思いをするとい った,生きている中で味わう負の経験は,大事ないのちの教育の機会になりま す。生身の自分を実感することで,生きている自分を感じることができます。 不安定な気分に落ち込んだ若者がリストカットをするのは,痛みを感じること で自分の存在を確認できるためのようです。生きているのは肉体があるから, そんな単純なことを見失う若者が増えてきたのは,快適環境の中での育ちにな っているせいかもしれません。  暑い夏,寒い冬,遠い道,きつい坂など,身体が生きる努力をしなければな らない環境が激減しています。楽に暮らすことに慣れているから,身体という 自分を感じなくなっています。肉体感覚を使わなくなったことは,肉体という 実体を黒子のような存在に変質させてしまいます。精神的な弱さという特徴も, 身体から精神が遊離しているために,いかにも頼りない自分という気持ちに追 い込まれてしまうからです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  NHKの朝のドラマで,「生きてるだけで丸儲け」というおばあちゃんのセ リフが繰り返し出てきます。生きていることだけが価値のあること,財産や名 誉などは単なる付属物にすぎないという原点意識の伝統が持ち出されているよ うです。病気になったとき,生きていさえすればと思います。裸一貫という言 葉があります。その原点を忘れたとき,人はさまざまな迷いを招き入れます。 豊かさが当たり前になったご時世では,迷いは何層にも重なって,生き辛くさ えなっています。  自分のいのちは,自分で造りあげたものではありません。だからといって, 子どものいのちは親のものでもありません。親のいのちのお裾分けになるので しょうか? 親のいのちというのも違っていて,親の親のいのち,・・・。き りがありません。少なくとも,自分一人のいのちではないということです。大 事に生きてみようとすることが,つながるいのちに対するつとめでしょう。大 事に生きるって? 難しい問題です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆   次号では,【お子さんから,楽しみを奪われることがありませんか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○