□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/04/04]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第235号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■             『もう一人の自分?』  自分のことが好きですか? 突然の質問ですが,答えは「YES OR NO ?]。普通には,好きなところと嫌いなところがあるでしょう。その上で,ど ちらかといえば好きということになりますね。現実の自分は,こうありたいと 願っている自分とは違うものです。そこで,ダメな自分と判定すれば嫌いにな ります。なんとかなると努力していれば好きになれます。よりよい自分であり たいという向上心は大事ですが,高望みはしないことです。  自分のことが好きになれる子どもに育ってほしいですね。ところで,自分の ことが好きになるというとき,誰が好きになるのでしょうか? 自分が自分を 好きになるということですね。二人の自分,絶対的な自分と相対的な自分が居 ます。気取っていえば,現実自己と自己概念という対比です。この羅針盤では, 自分ともう一人の自分という表現をしてきました。自分をもう一人の自分が好 きになるという構図です。そして,子育ての対象は「もう一人の子ども」であ ると考えています。  鏡に映る自分を「私は何と美しい!」と見惚れているもう一人の自分がいま す。子どもを産んだ産みの親と,もう一人の子どもを育てている育ての親がい るというわけです。この羅針盤では,育ての親を応援しています。もう一人の 子どもが人格であり,責任能力を持っているヒトです。成人とはヒトに成ると いう風に考えます。食べさせておけば子どもは育つという養育観は間違っては いませんが,もう一人の子どもの養育を放棄していることになるのです。  子どもが自分のことを「ボク,ワタシ」とか名前で表現するようになったと き,もう一人の子どもが誕生します。この羅針盤では,第二の誕生と呼んでい ます。その時期に,産みの親から育ての親にバージョンアップする必要があり ます。目の前にいる現実の子どもではなくて,ボク,ワタシと言っているもう 一人の子どもを養育する態勢に変わらなければなりません。親離れの時期,第 一反抗期とは,もう一人の子どもの誕生に伴う陣痛に相当するものです。  もちろん,この二人の子どもは仲良しでなければなりません。もう一人の自 分が自分のことを好きになれるような育ちが目標になります。そのためにどう したらいいのか,それがこの羅針盤の主なテーマなのです。この19版では, 12軸として考えていきます。12の軸に添ったバランスのとれた育ちが,健 全な育ちという漠然とした目標を具体化したものになります。親として子ども にどう接したらいいのか,その必要十分な手だてについてまとめていきます。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12軸★        【任せているから,考える子どもに育ちます!】                               《WHO-1》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○第1軸:任せる  子育てで遭遇する最大の壁は,子どもは親の思い通りにはならないという虚 しさです。親だからという焦りがあると,イライラして無理難題をしつけと称 して押し付けたくなります。その先は虐待に行き着きます。自分の子どもとい う気持ちが所有者という思いにすり替わったとき,奴隷や家畜の飼い主と同じ に強権を託されていると錯覚するようになります。自分の子どもだからどうし つけようと親としての監督権の中にあるという屁理屈を持ち出します。養育と 飼育とは違います。  よく言われることは,「子どもは親とは別人格である」ということです。人 格? 手元の辞書には「その人の物の考え方や行動の上に反映する人間として のありかた」とあります。未熟な子どもに人間としてのあり方を期待すること が無理だと判断すれば,子どもは人間ではないという結論にいたり,だから親 が監督責任を負うということになります。親の思い通りに強制することでしつ けをしなければいけないことになります。親が主導する「子育て」を優先しま す。  一方で,未熟ではあっても子どもは人間であると認めることもできます。未 熟さをカバーしてやりながら,人間として共に生きていくという中で,子ども 自身による成長を期待する育て方もあります。もう一人の子どもによる「子育 ち」を優先させることです。子どもには子どもの世界があり,親の世界とは多 少違ってはいますが,すぐ傍につながっている世界です。子どもの立場をある 程度認めてやることです。  親は家庭と仕事場を出入りします。同じように,子どもは子どもの世界と親 との世界を出入りしています。子どもの世界のことは子どもに任せます。遊ん でいる子どもには,遊びの世界を任せておきましょう。もちろん,遊びの世界 の外には危険があるので,そこはしっかりとガードします。危険に対する壁に なってやり,中では自由にさせておきます。それが見守るということです。遊 んでいるのに,口を挟んだり,手を貸してやっては,干渉になります。  早く,さっさと,ちゃんと,というかけ声は,必要なときだけにして,子ど もがしようとしている気持ちをしっかりと受け止めてやってください。子ども が何かに行き詰まっていても,取りあえずは任せておきます。必要に応じて, してみせるとか,ヒントを与えるとか,手助けをしてもいいですが,それを受 け入れるかどうかは,子どもに任せておきましょう。自分でするんだとあくま でもがんばっているのなら,そうさせておきます。未熟な能力であっても総動 員しようという気持ちを大切に!     ・・・《親が任せていると,もう一人の子どもが活動をはじめます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○考える機会!  何が食べたい? 献立に苦労しているママは,尋ねます。子どもはたいてい カレーやハンバーグなどの好物を提案します。「昨日,お肉を食べたでしょう! 他のものでなければ」。食事は日替わりするものという知恵を授ける機会です。 今日の献立を考えるときは,昨日,一昨日の実績を勘案するという物差しがあ ります。海や山の幸には旬という時期があり,今の季節は何が美味しいかとい う情報も取り入れなければなりません。もちろん,お値段も大事です。献立を 教材にして考える訓練です。  テレビを主体的に視聴する。主体的とは? 一言で言えば,考えるというこ とです。視聴した情報を記憶するだけでは,育ちはありません。それはただの メモリーに過ぎません。育ちはOS=operating system の構築です。情報を どのように組み合わせるか,どのように新しい情報に組み替えるか,そういっ た作業をすることが考えるという行為になります。自分なりの考えを創造でき るプロセスがきちんと機能しているかどうかが,主体的か否かの基準です。  ママの姿が見ません。子どもはべそをかくかもしれません。でも,しばらく すると探そうとします。ところで,捜し物をするときには,たいていは心当た りを探しますね。あそこではないかなという状況判断をしているはずです。子 どもも同じです。ママはあそこかもしれない? これまでに見て覚えてきたマ マの居場所のデータを思い出しながら,一所懸命に心当たりを考えます。子ど ももなんとかしようというときには,考える力を発揮できるのです。  遊びに出ていて,雨に降られることがあります。大あわてで雨の中を走って 帰ります。お家についたときはびしょ濡れです。外の雨は降り止んでいます。 しばらくの間どこかに雨宿りをしていたらよかったのに,という経験をします。 同じような事態に再び合うときには,その経験を思い出せば助かるはずです。 状況を適切に判断できる考える子どもに育ちます。今できることで最適なこと は何かを考えるように育てたいですね。  もう少し続けてみましょう。雨宿りをしてもなかなか雨脚の衰える兆しが見 えません。傘はなく,どうしようと考えます。傘にこだわればお手上げになっ て,泣き出すか濡れて帰ることになります。もしかしたら他人の傘を無断借用 に及ぶかもしれません。考える力を発揮できる子どもは,傘の替わりになるも のを考えます。ビニールの袋や段ボール箱,大きな葉っぱなど,手近にあるも ので利用できる物はないかを考えます。無いよりはまし,そういう対応のでき る子どもが逞しいですね。     ・・・《考えるとは,現状の改善と打開を願う気持ちの発露である》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 産みと育ての 二人親》 ※子どもの反抗は,自分に任せてほしいという意味があります。ママを拒否し ているのではありません。ママの保護や世話が子どもには干渉になる場合があ るということです。子どもはすくすくと育ちます。もう赤ちゃんじゃないとい う自覚ができてくると,自分でしたいという自立への段階に入っていきます。 もちろん,気持ちがあってもできないという自分の現実に直面するはずです。 思い通りにはことは運びません。  それ見たことか,と意地悪な目で見ないようにしてください。できないなり にもう一人の子どもはあれこれ考える機会を手にしているのです。どうすれば いいのか,どこかに手がかりがないかを探しています。ちょっと年の上の子ど もをじっと見ています。そこに自分にもできそうなたくさんの可能性が見えて いるからです。子どもは子どもの中で育つものですが,それはもう一人の子ど もが考える力を持っているかどうかに掛かっています。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  新年度が始まりました。子どもたちはまだ春休みの中です。入園,入学,進 級といった新しいステップに入る期待と不安の中にいます。もしかしたら,マ マの方が緊張気味かもしれませんね。あまり取り越し苦労や気に病むことは無 しにしてください。考えることはいいのですが,考えすぎないように。たいて いのことはなんとかなるものと思っていれば,気持ちが落ち着き,よい考えも 浮かんでくるものです。焦りや心配は考える上でブレーキになります。楽しく いきましょう。  この4月から大学への非常勤講師という職務が一つ追加されました。講義資 料の作成が必要で,少し多忙になりそうな雲行きです。前期の講義ですので, この版と並行することになります。今時の大学生の様子などがマガジンに時折 反映されるかもしれません。いずれも週一回というペースで大した負担ではな いように見えますが,その準備には数日を要します。マガジンも講義も氷山の 一角ということです。でも,なんとかなると高をくくっています。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆     次号では,【考えているから,子どもの自我が育ちます!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○