□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/05/30]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第243号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■                『夢!』  「Boys be ambitious, like this old man!(子どもたちよ,大志を抱け。 この年寄りのように!)」 明治期の札幌農学校に赴任していたクラーク博士 が残した有名な言葉です。通常は,前半の言葉だけが語られます。最近の子ど もたちは夢を持てなくなっているといわれていますが,その責任は今の年寄り にあります。次世代に何を残せるかという意識が希薄です。生きることは明日 に向かうことですが,明日への目線がなくなっています。  時代の特徴として明日が見えないともいわれています。変化の激しい世情の 行く先が見えないということです。暮らしの経済が不安定であり,先行きは不 安の中にあるという観測が一般的です。しかしながら,時代の流れを遡ってみ ると,どの時代でも先行きは不安であり,だからこそ近くは20世紀が戦争の 世紀に迷い込んだのです。人は明日を予想する能力を持っています。それは発 展の原動力ですが,同時に不安の推進力でもあります。  明日への不安を乗り越えるためには,パンドラの箱に残された希望にすがる しかありません。希望や夢は人の生きる力を発揮させる点火触媒です。夢がな ければ,生きる力は燃え上がることはありません。思い通りにならない現実に 押し込められて,生きようとする思いが圧縮されているとき,夢という点火が 作用することによって,明日はなんとかなるという生きる力の爆発が起こりま す。子どもたちの生きる力には夢を抱くことが欠かせません。  子どもたちの学力低下は推論する学力の不足に現れています。いくつかの事 実を組み合わせて総合的な判断をすること,それが推論であり,推察です。そ の結果として夢が具体的に描かれていくはずです。簡単にいえば,考える力で す。考えることが夢を生み出すのです。明日のことなど考えるのは面倒だとい う状況では,夢を持つことなどできません。ボーッとしていては夢はありませ ん。  考える力は明日への不安を生み出します。明日のことを考えると不安になる から,考えないでおこうとしているかもしれません。でもそれは,考える力の 使用法が間違っています。考える力とは,できるかもしれないという可能性を 見つける力なのです。下手な考え休むに似たりといわれますが,上手に考える というのはどういうことか,しっかりと学ばなければなりません。それを教え るのが年寄りの役割です。幼老共生の暮らしから夢が生まれてくるのです。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12軸★        【認めてやるから,待てる子どもに育ちます!】                               《WHY-1》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○第9軸:認める  子どもがママの言うことを聞かずに激しく駄々をこねることがあります。き つく叱っても,余計に煽り立てることになってしまい,手がつけられません。 困ってしまいます。子どもは何かを拒否しています。幼ければ,何が嫌なのか 分かっていないこともあります。自分を見ることのできるもう一人の自分が育 っていないからです。正体が分からなければ,言葉で表現することもできませ ん。ただ嫌だということしか伝えようがありません。  出せそうで出せないマイナスの感情を持て余しているので,子どもは混乱し てフリーズ状態に陥っています。とにかく出してしまえばいいのですが,その ためにはママが上手に引き出してやらなければなりません。その際に「どうし て?」と理由を聞き出そうとしがちです。でも,ひとまず理由は置いておいて, 取りあえず「嫌なのね」と,子どもの気持ちを受け止めてやることからはじめ ましょう。そんなことを言えば,子どものわがままが通るのでは?  嫌だけどしなければならないこと,嫌だけどすればいいことがあるようなこ と,嫌だけどすれば喜んでもらえること,嫌だけどすればできたと思えること, いろんな良い結果につながることがあります。嫌だけどという壁を乗り越える ことができれば,その先に育ちの道が拓けています。それでは,親として何を すればいいのでしょう? 子育ては子育ちを支援することと分かってはいるの ですが,どうすればいいのかという具体的なことが分かりにくいことです。  この状況で出来ること,親がしてやるべきことは,嫌だという壁を低くして やることです。子どもに向かって乗り越えよと言うことは励ましですが,一方 で壁の前で立ちすくんでいるのなら,その壁を低くしてやることも大事であり, そのことが支援という行動になります。子育ちの道にある障害を一切取り除く のではなく,子どもの力に合わせて低くしてやります。自分の力で乗り越えた という自信を子どもに持たせるためです。  嫌だという気持ちを和らげてやれば,やってみようかなという気持ちに切り 替わります。気持ちですから,気の持ちようという手が使えますし,ママに聞 いてもらって認めてもらえれば,気が楽になるという効果もあります。嫌なの ねと受け止めてやることは,その気持ちから逃げずに一緒に向き合うことにな ります。ママと一緒に向き合えば,やがて「嫌だけど」という気持ちが頭をも たげてきます。子どもを認めるというのは,育ちの胎動を待つための時を過ご すことなのです。  ・・・《立ち止まりを認めてやれば,子どもの育ち力が反発力を蓄えます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○チャンス!  子どもと歩いていると,「ちょっと待ちなさい」と言わねばならないことが 度々あります。「待ってどうするの?」。そのことを理解することが育ちです。 何故待つのか,そのわけを理解させないと,子どもの生きる力にはなりません。 待とうという自発性が育たないと,いつまでも言われないとできないことにな ります。子どもに対するしつけは「○○しなさい」というパターンが多くなり ますが,そのわけを教えることが子育てなのです。  道に飛び出さないで,左右の確認をするために待ちます。できたてのラーメ ンは熱いかもしれないので,ちょっと待って,火傷をしないように確かめます。 いろんな局面で確認をするために待ちが入ります。確認をしたらどうなるので しょう? 「今だ」というチャンスをつかむことができます。道を横断すると き,渡るのは今! 熱いラーメンを前にして,食べ時は今! 機が熟す,その 前には必ず待ち状態があります。  テレビを見ない暮らしをすると,家族の中で会話が増えいろんなものが見え てくるようになった,という体験談がありました。テレビは休む間もなく情報 を押し付けてきます。視聴者に考える間を与えません。満腹状態の上にこれで もかと浴びせかけてきますので,ほとんど垂れ流し状態です。さらに,情報は いろんなことを考える素材ですが,選ばないと役に立ちません。無差別に押し 付けられる情報に溺れているから,考えることが留守になります。  情報をつかむコツは,待ち状態を創り出しておくことです。「これだ!」と いうチェックが入ることが大切です。求めていないと,選べないのです。レデ ィ状態であるから,チャンスをつかむことができます。学習の面でも,予習を しておけば,分からないところが自覚できます。授業の中で「そこだ」という チャンスをきちんとつかむことができて,理解が完成します。どこを聞けばい いのか分からない状態では,授業の効果はありません。  待つといえば,消極的な印象が強いことでしょう。漫然と待つのであれば, 確かにそうなります。でも,きちんとした目当てのある待ちであれば,積極的 です。チャンスが来るまで待つというパターンです。我慢する場合も同じです。 今は我慢するとき,チャンスがあれば行動を起こす,それまで待っておこうと 思えばいいのです。子育てにおいては,そのチャンスは必ずやってくると信じ 込ませることが大切です。明日を信じることが育ちの意欲そのものだからです。   ・・・《待ちかまえる構えが取れれば,チャンスを掴まえることが出来る》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 今日を認めて 明日を待つ》 ※ものごとを計画的に進める管理社会に慣れると,すべてのことが想定通りに 進捗するはずと錯覚します。その慣れを壊すために,無意図的にスポーツ競技 が楽しまれます。思い通りにならないのが普通であるという生きる本性に触れ るから,競技に興奮することが出来ます。人が努力しても結果につながるとは 限らない競技,そこに自然の中に仕掛けられている運命のいたずらを感じるこ とが出来ます。  努力すれば何でも出来ると押し付けられたら辛くなります。自分で思い込め ば抜け出すのは難しいでしょう。だから,努力することは止めようというのも, 振れすぎです。人が出来ることは努力することです。その上で,物事は人の意 志を越えた因子が絡んで実現されます。運が良かったという経験があるはずで す。その運の要素の一つがチャンスを掴んだかどうかということです。困難に 出会うとき,それはチャンスを待てというサインだと思ってみませんか? □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  欽ちゃん・香取の仮装大賞のテレビをちらっと見たとき,ちょうど家族に欽 ちゃんがインタビューしている画面でした。6歳の男の子が「大きくなったら 何になる?」と尋ねられて,「ジェントルマン」と答えていました。子どもの 口からえらく古くさい言葉が聞こえてきたので,フッと耳に留まったのです。 大人でさえ使うことのなくなったジェントルマン,そのせいかジェントルマン らしい男性が消えてしまっています。  ジェントルマンは英国の伝統なので,日本ではサムライ魂が対応します。伝 統を重んじることを捨てたことで,生き方の拠り所を失って,人としての芯が 持てなくなっています。武士は食わねど高楊枝。やせ我慢の権化みたいなイメ ージだけが強調されますが,我慢しないことがいいことというけじめの無さが, 世間を軽薄にしていることを考えると,何かおかしいと思います。気骨を持っ た育ちをさせられないのは,親世界の不甲斐なさではないでしょうか? ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆     次号では,【待てるから,幸せをつかむことができます!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○