□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/08/08]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第253号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『対人関係能力?』  OECD(経済協力開発機構)では,成人として必要とされる技能・能力を 定義し選択する作業がなされています。そのうちの一つの柱として「社会の多 様な集団との交流」が掲げられ,具体的には「対人関係能力」,「協調性」, 「問題解決能力」が取り上げられています。その背景には,国際化や情報化と いうキーワードが示しているように交流社会のより一層の進展という状況把握 があります。また国内では,企業が求める能力として「コミュニケーション能 力」がトップに浮上しています。  優しく人に好かれる子どもに育って欲しいという親の願いも,根っこの所で は対人関係能力とつながっています。ところが,現実の子どもたちの育ちは, 人との関わりという面を置き去りにしています。遊びにしても対人関係が絡む 遊びが少なくなっています。その結果として,人と接する能力が著しく低下し ています。最近問題になっているニート(若年無業者)と呼ばれる若者の多く について,コミュニケーション能力の低さが認められています。  以上のようなことは,ずっと先のことでわが子には関係ないと思われるかも しれません。しかしながら,今の一般的な養育状況を続けていけば,事態はよ り深みに嵌り込んでいきます。意図的に変えていく必要があります。そこで, 親として暮らしの中で何をどうすればいいのかを考えて,実践しなければなり ません。「対人関係能力」という雲を掴むような言葉は額に入れておいて, 「人と分かり合う能力」,さらには「美しい言葉を使う能力」と置き換えてみ ましょう。  子どもとの対話で問題になっている一つは,親が分かり過ぎるということで す。家庭ではいい加減な言葉遣いでも親は分かってくれますが,外の世界では 分かってくれません。分かってもらうという努力をしていないからです。やが て,内弁慶になり,不登校へという道に踏み込んでいくことも考えられます。 そうならない場合でも,分かり合える狭い人間関係に閉じ籠もっていきます。 誰とでも話すことができるという能力のしつけは,家庭での対話から始まって います。  幼い子どもは使える言葉がまだ少ないので,親は分かってやるというフォロ ーが保護者として不可欠です。しかし,自分を名前で呼べるようになると,も う一人の子どもが生まれて言葉の量も増えているので,じっくりと語らせるた めに親は分かっていても待つようにします。「おやつ」と言ってきたら,「お やつがどうしたの?」。意地悪をしているような形ですが,自分の思いや気持 ちを言葉にして分かってもらう練習の機会をたっぷりと与えてください。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12願★       【パパお願い! 夕食後テレビばっかり見ないで!】                            《V20:WHEN-02》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○こんなこと・あんなこと!  夕食が終わるとパパはテレビの前に座って,野球中継に釘付けです。バッタ ーに向かって大きな声で「打て!」と怒鳴っています。聞こえるわけはないの に,おかしなパパです。「パパ,これ見て!」,「なんだ?」。パパはテレビ を見ながら声だけで返事をしています。園でパパの絵を描いたので,パパに見 てもらおうと思ったのに。残念! 野球なんかなければいいのに。パパはボク と野球とどっちが大切なんだろう?  「ママ,新しいパパを探してきて!」,「どうして?」,「だってパパはお 家にいるときパソコンばっかりしてて遊んでくれないもん」。ボクもゲームで 遊ぶことがあるけど,それは一人でいると寂しいから仕方ないんだ。パパがい るときはやっぱりパパとお話したいのに。パパってお家で何をする人なの?  ママはご飯を作ってくれたり,お掃除や洗濯をしてくれるけど,パパはお家で は何もしてくれない。  パパがテレビを見ているので,パパの膝に座り込みました。そこはちょっと ゴツゴツしていますが,ワタシの指定席です。ママのお膝は赤ちゃんに譲りま した。でもパパといっしょに見ているテレビはちっとも面白くありません。C Fのとき,ウサギが出てきました。「パパ,あのウサギ,何ていう名前?」, 「さあ?」,「知らないの?」,「ウン」。飛行機が飛んでいます。「パパ, あの飛行機どこに行くの?」,「さあ?」。「つまんないの!」。  テレビの前に座り込んでいるパパが,「ビール」って言っています。食事の 後の洗い物をしているママは,「・・・」。パパはしばらく待っています。マ マの所に行って「ママ,パパがビールだって」と教えてあげました。「そ〜お」 と言いながら,ママは手を動かしています。パパの言葉がママに届きません。 どうしてなのかな? しばらくしてママが言いました。「パパに,ビールがど うかしましたかって聞いてらっしゃい!」。  「パパ,あのね」,「ウン?」,「ママがね」,「また叱られたのか?」, 「ちがうよ,そうじゃなくて,ママがね」,「ママがどうした?」。どうして もっとゆっくりと聞いてくれないんだろう。ママがいつも言ってるように,テ レビの前のパパはお耳がよそ見をしているみたい。本当はパパのことをもっと 知りたいんだけど,パパから話してくれないから,話しかけているのに! こ のままだと居ても居なくてもいいパパになっちゃうよ! ・・・《大人ときちんと話ができるためには,父親との日常会話が基礎です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○伝わる!  「それを言っちゃあ,お終いよ」。売り言葉に買い言葉が畳みかけます。さ らには,怒りや嘲り,やっかみや妬みといったマイナスの感情から発する言葉 は,相手を傷つけるために発せられます。忌み言葉や差別用語も紛れ込むこと があります。抑制しておくべき言葉は,伝わらないように封印しておかなけれ ばなりません。夫婦ゲンカの場合でも,お互いの親の悪口など言わないのがル ールです。歯止めを失ったときの一言は,取り返しのつかない後悔の種になり ます。  最近,いきなり暴力的な関わり合いをするケースが増えてきたような気がし ます。問答無用という性急さであり,話せば分かるというステップを踏んでい ません。パソコンで言えば,プログラムが機能せず暴走しているようなもので す。言葉への感受性という面から読み解くと,敏感すぎるのか,鈍感なのかと いう判断が分かれます。言葉を曲解したり過剰反応したりするのを恐れて避難 しているのか,言葉が素通りして反応できないのかということです。  言葉と喜怒哀楽がきちんとリンクしていないのです。言葉は人と人との間を 結ぶ手段であることは周知のことです。子育ちの中では,子どもともう一人の 子どもの間を結ぶのも言葉であるということを意識しておかなければなりませ ん。自分の悲しさをもう一人の自分が言葉で表現する,自分の怒りをもう一人 の自分が言葉で表す,自分の喜びをもう一人の自分が言葉に換えるといった風 に,もう一人の自分が自分の最良の理解者になるのは言葉に拠ります。  ムカツク。何か分からないイライラを「ムカツク」という言葉で表して口に すれば,もう一人の自分が自分に寄り添うことができます。自分の気持ちを放 出できることで,ガス抜きができるようになります。自分の気持ちがもう一人 の自分までには伝わったのです。親が関わることは,このムカツクという幼稚 な言葉を洗練することです。自分勝手な表現であり他者に対しては捨てゼリフ に過ぎないので,誰にも伝わらないからです。  カラオケで歌う人が自分だけ酔いしれているように,独り言を言う傾向が強 くなっています。自分だけ分かってしゃべりまくり,周りの人に分からせよう という気がありません。ムカツクという言葉を,いつどこで何があってどのよ うに思っているのかといった情報としての必要な形式に整えることで,言葉が 伝わるようになります。誰も自分のことを分かってくれないと言わせないため に,分かってもらえるような言葉遣いをしつけましょう。 ・・・《生の気持ちは言葉で包まないと,人に届けるのは失礼に当たります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 言葉を交わす 人の輪で》 ※コミュニケーションのトラブルには,「言った」,「聞いてない」というケ ースがあります。パパにあれこれと話していたはずなのに,パパはほとんど覚 えがないという頼りないことがあります。伝えても,伝わっていません。逆に 言えば,聞いても聞き取れていないのです。言葉の伝達効率は気の合う,合わ ないという間柄に応じて大きく変動するということです。特に,聞く気がない 相手には,何を言っても無駄です。  「パパ」。「なんだい」。この応対が,父子の気持ちという回路をしっかり と接続する合図です。耳という聴覚器官は危険察知のためにあらゆる音情報を 受信していますが,その中から意識して聞くというフィルターを通して認識回 路に伝達していきます。一言で言えば,聞こうという気になっていることだけ が聞こえて理解されるということです。話をするときは,気持ちのコンセント がつながっているか,確認を忘れないようにしてください。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  朝のラジオ体操に参加しているということを書きました。5日の金曜日もい つものように出かけました。会場である神社の境内の横に児童公園があります。 その地上にキラキラ光るものが散乱しています。近寄ると小さな蛍光灯,豆球 が割られていました。あたりを調べると,あちらにもこちらにもあります。子 どもたちの通り道になるところは急いで拾い集めました。かなりの人が既に通 っていたはずですが,放置されていたのは驚きでした。  体操が終わって,残りの片付けを始めました。体操の世話に出てきている育 成会の大人たちは,さっさと帰宅していきます。子どもたちのことを考えれば, 放ってはおけないという気になるはずですが,自分の手を動かそうとはしませ ん。見て見ない振りをするのは,親として恥ずかしいことです。気がつかなか ったという言い訳もあり得ますが,子どもたちの環境への安全の気配りをして いない反省をすべきです。自治会役員の3人といっしょに小さなガラス破片を 拾い集めました。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【ママお願い! 悪いところばかり見つけないで!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○