□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/08/15]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第254号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■               『末っ子?』  兄弟や姉妹が登場するお話が洋の東西にあります。きょうだいそれぞれの個 性が物語を彩りますが,ほとんどのお話で主題になるのは末っ子の優しさです。 兄や姉は有能だが冷たいとか,上昇志向が強くて意地悪といった風です。物語 の末っ子は3人とか4人きょうだいの末っ子という場合が多く,2人以下の少 子化という現状では生まれることを拒まれた子どもです。物語の世界は今はも う存在しない夢物語なのでしょうか?  ところで,末っ子はどうして優しく育ったのでしょうか? 3人目や4人目 の子どもを育てるとき,期せずして親は子育ての熟練者になっています。一言 でいえば,子育ちをしつけで邪魔することなく,子どもが育つのを離れた距離 から余裕を持って支えるようになれるからです。親が過ぎた日を振り返って 「よく育ってくれた」と思うとき,子育ての喜びが湧いてくることでしょう。 「うまく育てた」ということは決してないはずです。  親の熟練だけではなく,きょうだいの中で育つという状況も末っ子を優しく します。兄や姉の育ち,親との関わりを身近に見ながら,親の思いと子の思い の両方を見届けることができます。ある意味で鑑賞者,批評家という第三者的 な立場にいるからです。親のしつけが緩やかになり,子どもの中で揉まれると いう育ちが末っ子にはあります。自然なしつけができるということです。末っ 子がいない今では,このような育ちもなくなっています。  無い物ねだりをしてもしようがありません。どうすればいいのでしょう?  一つは祖父母の子育て経験を上手に取り込むことです。素敵な親(あなたのこ とですよ)を育ててくれた実績があります。受け継がないのはもったいないこ とです。もう一つは子どもだけではなく親子で異年齢のお付き合いをすること です。ママのネットワークがありますが,同年齢の集まりでは慰め合うことは できますが,学びという面ではあまり効果はありません。  参観などの機会をきっかけとして,普段から,兄や姉世代のよその子を気を つけて観察してください。そこには我が子の数年先の育ちがあるからです。あ そこまで育つという目標が具体的に見えるはずです。そのイメージを持たない と,我が子を大人と比べてしまうので,しつけが過剰になってしまいます。登 山ではいくらがんばっても一気に頂上には届きません。一合目,二合目という 目標に向かって少しずつ登っていきます。同じことです。ゆったりと行きませ んか? ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12願★       【ママお願い! 悪いところばかり見つけないで!】                            《V20:WHAT-01》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○こんなこと・あんなこと!  お外から帰ってきて,洗面所で手を洗いました。石鹸を付けて泡が出るよう にゴシゴシして,水できれいに洗い流しました。タオルで拭いて出来上がり。 ママが洗濯物を持って洗面所に入ってきました。洗濯機の蓋を開けて洗濯物を 入れた後,「石鹸をこんなに汚してダメじゃないの!」っていきなり叱られち ゃいました。手をきれいに洗っただけなのに。「汚れた石鹸は使えないでしょ !」。そんなこと言われても?  「冷蔵庫の扉をいつまでも開けっ放しにしないの!」。麦茶の容れ物を手に してコップに注いでいるとき,またママから注意されました。でもねママ,麦 茶の入れ物を両手で抱えているので,冷蔵庫を閉めちゃったら開けられないん だよ。どうして麦茶の容れ物を戻したらいいの? 冷蔵庫や何もかも家にある いろんなものは大人用にできているから,子どもの手には使いにくいんだよ。 ちゃんとしたくてもできないのを分かって欲しいな  ママが夕食の支度をしているので,絵本を読んでいました。ママは台所にい るとバタバタしているので,そばに行くと必ずあっちに行ってなさいと言いま す。「ごはんですよ」というママの声が聞こえてきましたが,絵本の半分ほど の所だったので「ハーイ」と返事をしながら,読んでいました。2,3ページ 進んだところでママがやってきて「どうしてさっさと食べに来ないの,要らな いの?」とお冠です。ちゃんと最後まで読み終えたかっただけなのに!  パパからお誕生日プレゼントに買ってもらったオモチャが壊れてしまいまし た。後でパパに見てもらおうと机の上に置いておきました。ママがそれを見て, 「どうしたの,オモチャをこんな所に置きっぱなしにして」,「壊れたから, パパに見てもらうの」,「壊したの,乱暴に扱うからよ,大事にするようにい つも言ってるでしょ」。乱暴になんか扱ってないもん。カチッと嵌めるために 力を入れただけなのに。壊したんじゃなくて,壊れたんだよ。  弟とママの3人で近くの公園に遊びに出かけました。砂場で塔を作っていた ら,そばにいた弟が足で踏みつぶしてしまいました。やり直しです。できあが りそうになるとまた弟が近づいてきます。「ダメ」と押し戻したら,弟がしり もちをついて泣き出しました。「ダメよ,お兄ちゃんでしょ。どうして仲良く 遊べないの!」ってママが言います。仲良く遊べないのは弟の方なのに,どう してこうなるの? ・・・《悪いところが見えても,状況の中で生じうるはみだしに過ぎません》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○信頼!  車を運転しているときパトカーや白バイが目にはいると,なんとなく自己チ ョックをしながら緊張します。悪いところを見られていると思うと,警戒が先 に立ちます。見張られているというのは,人間不信への誘いになります。特に 相手が何らかの権威を持っているような場合には,ビクビクものです。勤務先 の意地悪な上司の目も似たようなものかもしれません。子どもの場合は怖い目 で見下ろしてくるママの目です。  大勢の前でスピーチをする羽目になったとき,とても緊張します。何を緊張 するのでしょう? 変なことを言ったり下手な話をして,恥をかかないかとか 笑われないかといった恐怖があります。危ない目には遭いたくないので,でき れば固辞しようとします。別の言い方をすれば,人の目が怖いのです。どんな 目でしょうか? 人の目は至らないところを探し出そうとする目だと思ってい るのですが,実は自分の目なのです。  人のスピーチを聴くとき「詰まらない話をして」といつも批判的に聞いてい る人は,逆の立場になったときの聞き手に自分の聞き方を投影します。訥々と 語る人の話に温もりを見つけようと聞くことのできる人は,堂々と話すことが できます。聞く人を自分のように信頼できるからです。スピーチの怖さは実は 自分の陰におびえているだけです。人のあら探しをする人は,人も自分のあら 探しをしていると思うから,臆病になり陰に隠れます。  素直な子どもの場合は少し違います。子どもたちが参観日を嫌がるとき,そ れは親の目が叱る材料を狙う陰険な目であると日頃のやりとりの中で感じてい るからです。そのようなままで育っていくと,やがて子ども自身が親の至らな いところを鵜の目鷹の目で探そうとするようになっていきます。事ある毎に文 句ばかり突きつける嫌な子に育ちます。親に似るという作用の悪い例ですが, どうせなら良いところが似て欲しいですね。  すねてしまう,いじけてしまう,それは思いも寄らない勘ぐりをされて,真 っ直ぐに認めてもらえないことへの抵抗であり開き直りです。少しでも認めて もらえれば,人を信頼することができるようになります。素直な子に育って欲 しいと願うなら,信じてやることです。結果として悪いことがあっても,それ は決して本意ではなかったと善意を見てやるようにします。子どもは大人のよ うな悪意を持ってことを起こすことは決してありません。 ・・・《疑いの目は際限なく広がっていき,自分を追いつめていくものです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 信じる愛を ありったけ》 ※親は子どものことを心配するものです。その中にはもしかしたらという疑い の目も出てきます。子どもがママに叱られるばかりでほめられることがないと 思うようなことがあれば要注意です。心配が過ぎて子どもの心を見逃し,終い にはねじ曲げてしまいかねません。子どもだから至らないのが当たり前,叱る のではなく大目に見て,どうすればいいのかを教えること,それがしつけとい うものです。  若者たちが同世代としか親密な関係を持てない,同世代でもコミュニケーシ ョンが浅くて上辺の付き合いに留めてしまうのは,育てられてきた結果です。 子どもたちがそうなりたいと選んで育ってきたわけではありません。その現状 に対して今時の若者はと非難めいたことを言ってのける大人の無知こそ責めら れるべきことです。生きる力を付けるなどと言いながら,どうすればいいのか を言えない体たらくが歯がゆいと思います。人を信じる,その一点が出発点で す。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  この版が始まる頃に植え付けられた稲が,穂を垂れています。濃い緑の葉が 茂る中に,黄色みを帯びてきた穂が太陽に照らされて輝いています。稲の育つ 力を信じて,太陽の命が降り注ぐことを信じて,水の管理を人の手で少しばか りお手伝いすれば,時が実りをもたらしてくれます。生きる力はそれぞれの中 にあります。育ての手は邪魔をしないようにちょっとだけ手伝い,命の育ちを 信じていればいいのです。  実りに感謝する気持ちが結集したとき,秋の祭りが生まれました。感謝は一 抹の不安を陰に抱えた信頼に対する賛歌です。信じ切ったことに対する喜びで す。感謝という気持ちが薄れているように見える世情は,信頼にすがるという 生き方をしなくなったせいでしょう。家族を信じるということが出発点ですが, 親子,夫婦の間で信じ切るという我慢ができなくなっているのかもしれません。 皆さんのように家族を信じている生き方が一番です。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【パパお願い! 手伝わずに寝てばかりいないで!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○