□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/09/12]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第258号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『状況判断?』  トリビアの泉という番組を何気なく見ていると,小学校お受験準備をしてい る子どもに一休さんのトンチを試すという企画がありました。100人の子ど もに試したら何人できるかという課題です。一休さんのトンチとは,橋を渡る 設定の中で橋の手前に「このはしわたるべからず」(このはしはわたってはい けません)という看板が立っているのですが,一休さんは,はし(端)ではな く真ん中を渡るという回答を導き出したのです。企画の結末は0人でした。  子どもは正直に「橋を渡ることができない」と受け取ったので,どこがなぞ なぞなのか理解できないようでした。壊れて危険だと思った子どもは,橋に石 を投げて確かめようとします。怖いものが出てくると思った子どもは,後ろ向 きに渡っていきました。子どもなりに真っ当に受け止めているようでした。目 の前に橋を見て,はし=端と読み替えるのは無理でしょう。さらにどうしても 渡らなければならないという強い意志もないようで,あっさり降参した子もい ました。  一休さんのトンチも,かなりこじつけっぽく,そういわれればそうだが,と いう代物です。我田引水であり,自分に都合のいい解釈を持ち出していて,下 手なディベートと思われるかもしれません。もちろん,一休さんの場合には, 背景があります。橋を渡らなければならない用事を抱え,一方で意地悪をされ るという設定です。意地悪に対抗するためですから少々のこじつけも許される, つまり意地悪を切り抜けることができるいいわけになっていればいいというこ とです。  現実の場では,公開される情報は信頼すべきです。立て看板を信頼するとい う前提から始まるから,子どもたちにとってはなぞなぞではなくなっていたの です。書いてあることを自分勝手に解釈することはいけないことなのです。危 険なことなのです。子どもたちが身の危険を賭けてまで別解釈をすることはで きなかったということは,とても素直に育っているという証でした。テレビ番 組の企画をする大人が,遊び心を弄びすぎたようです。  トンチという知恵は,時と所,状況の中で生きています。物知りが成功する とは限らないのは,状況の把握が間違っているからです。いろんな能力も発揮 する場を違えると逆効果になります。いざというとき,それが最も良いタイミ ングになります。子どもの育ちも同じで,立つべき時に立ち,しゃべるべき時 にしゃべり,数えるべき時に数えるのが一番です。子育てで見落としやすいの は,今がその時かという適時性の判断です。焦りが禁物です。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12願★       【ママお願い! ちゃんとできないと責めないで!】                             《V20:WHY-01》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○こんなこと・あんなこと!  クレヨンでピカチュウのぬりえをしています。ママがそばで見ています。 「そこの色はそのクレヨンの色じゃないでしょ!」,「線からはみ出さないよ うにちゃんと塗れないの」。「ワタシはこれでいいの」って言いたいけど,マ マの機嫌を損ないそうだから止めました。クレヨンの箱にはきれいな色がたく さん並んでいて,どれもこれも塗ってみたいんだけど,つまんないな! ママ はあっちに行って!  スパゲッティって長いからなかなか口の中に入らなくて,食べるのが難しい ね。お皿からこぼれることもあるけど,そうしたら「ちゃんと食べないからで しょ!」ってママに叱られちゃう。テーブルクロスに紅いケチャップが付いち ゃうから,汚れるって。でも,食べるものが汚すのってどういうことかな?  もしかしたらボクたちは汚いものを食べているのかな? 妹がこぼしたときは ママは何にも言わずに片付けていたけど,何故なんだろう?  お隣のおじちゃんと出会いました。おじちゃんが「ヨッ」と右手を挙げたの で,ボクも「ヨッ」って手をあげたんだ。そうしたらママが「ちゃんとごあい さつは!」って言うんだ。「こんにちは」って言ったら,おじさんが慌てて 「こんにちは」ってあいさつをしながら,ママの方に軽く会釈をしていました。 通り過ぎてから,「ちゃんとあいさつしなければダメじゃないの」ってもう一 度ママに言われちゃった。いつも「ヨッ」って言ってるんだけど!  「今日はどうだった?」ってママが聞くから,「別に何もなかったよ」って 答えています。「何もないわけはないでしょう,ちゃんと返事をしなさい」っ て! でも,どうだったって聞かれても,何を答えればいいのか分かんない。 いちいち今日はどんなお勉強したのかって全部話さなければいけないのかな? そんなことできないし,余計なことを言ったらまたママに叱られそうだし?  答える方はあれこれ考えて大変なんだから!  夕食前です。「手は洗ったの?」。「ハ〜イ」と答えながら,洗面所に行き ます。後からママの声が追いかけてきます。「決まっていることがどうしてち ゃんとできないの。いつまでも言わせないで!」。そろそろ手を洗いに行こう と思っていたのに,ママがいつも先回りをするんだから! ママはずるいよ。 もしかしたらママはボクをちゃんとさせていることが楽しみなのでは? もっ と信じてくれてもいいんじゃない? ・・・《ちゃんとするしつけは仕上げであり,前には荒削り手順があります》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○自己確認!  机上の空論ということが言われます。若い技師が考え抜いて設計した図面を 現場に持っていったとき,現場の職人にどうやって作れるのかと問われて窮し たという話があります。図面は完成図を描きますが,同時に製作の手順に適う, 実際に作ることができるような組み立てになっていなければなりません。それ は現場を知らなければ思いつくものではありません。新人社員が現場研修から 始まるのは,現場が現実世界だという意識を持たせるためです。  子どもの教育については,学校は机上の空論,家庭や地域が現場ということ になります。絵本の上では可愛いと見えるクマさんも,実際の熊は恐ろしい動 物です。アリさんも働き者ですが,下手に手を触れると嫌な目に遭います。絵 や文字の世界から学ぶものは,現実世界とちゃんと結びついてこそ生きた知恵 になります。家庭や地域では子どもは主役ではなく脇役であり,ごっこという 遊びで現実を疑似体験します。体験とは現実認識そのものなのです。  子どもたちが好きな面白いもの,それは今ではほとんどが玩具という人工物 です。暮らしのすべてが人工物からできている中では無理もないことです。だ からこそ,子ども時代は自然を中心とした現実を身体で体験することが必要に なります。それは自分自身の現実を知ることにもつながります。想像の世界で はどんなことでも可能ですが,現実の自分はできないことばかりです。それが 本当の自分だという納得をしたとき,人は何故学ぶのかという理由が分かりま す。  ニートと呼ばれる若者の出現は,これまでの子育ち環境に適った進化だと考 えられます。子ども大事さのあまり日常の暮らしから隔離し勉強していればと 塾通いに追い立て,現実世界に対する無関心,無気力,無感動を蔓延させ,繁 華街の浮き世に流されていくという淀みが広がっています。ニートが直面する 何をすればいいのか?という自問は,自分には何ができるかという自己確認か ら解き始めなければ解けません。献立を考えるのは先ず冷蔵庫の中を確かめて からです。  きつい,汚い,危険という仕事が忌避されてかなりの時が過ぎました。この 3K仕事は手の世界であり,頭の仮想世界ではありません。身体を使う現場を 離れて机上の空論の世界しか知らないから,自分という生身の人間が見えなく なっています。生身という感性が機能していないから,自分を大切にできなく て,さらには他人にも酷いことができてしまいます。自分の五体を使う歓びを 基本としない生き方は,不自然ということです。 ・・・《育ちとは自己確認から始まり,学習を通しての自己実現が目的です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 現実見つめ 歩むこと》 ※我が子の現実を受け止めないで,親の思い通りにならないと子どもを責めた り,自責に走ることがあります。子育ては3Kの典型です。親は自分の無力さ を嫌というほど思い知らされます。親の無力さ,それが子どもを思い通りに扱 えないということであれば,それが本当の現実なのだと受け入れることです。 そこから親の役割が何かという疑問は解けていきます。頭ごなしの支配者から 育ちに寄り添っていく伴走者に脱皮することができます。  子どもを目の前にして悩んで立ち止まっている暇はありません。現実の子育 てはタイムを取ることはできません。そんな風に自分を追い込まないでくださ い。子どもは自分でも育っていきます。状況は必ずよい方に向かっています。 誰しも幸せになりたいと願って生きているからです。確かに子育てはきついこ とがたくさんあります。それをきついと思うのは,今すぐこうでなければと焦 るからです。子育てという道は車でサッと行く道ではなく,歩道なのです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  台風14号が頭上を通っていきました。さいわい近隣には被害はありません でしたが,皆様にはいかがでしたでしょうか? 各地での惨状を報道から知る と心が痛みます。自然災害とばかりは言えないところがあります。来ることが 分かり,その影響も情報として得られる現在,できる対応をしていればと思い ます。自然という現実をテレビの画面でしか見ていないと,自分の無力さと人 工物の脆さを忘れ,用心という最小限の生きる力を発揮できなくなります。  隣地の田圃の稲刈りは済んでいたのできわどく免れていますが,各地で農作 物の被害もかなりあったようです。ところで,稲刈りの後の田圃には雀が群れ をなして食事にやってきます。台風の暴風が吹きまくっている日は姿を見ませ んでした。隣家の屋根の下で右往左往して苦労していました。ご飯抜きの一日 だったようです。被害をよそにのどかな日が戻っている,人の暮らしの有為転 変の非情な面も受け入れざるを得ないようです。負けずにがんばりましょう! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【パパお願い! 教えてくれるとき怒鳴らないで!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○