□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/09/26]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第260号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『豊かさの創造?』  テレビで「世界一受けたい授業」という番組があります。その中で,竹中平 蔵先生が「希望格差社会」というキーワードを提示していました。希望を持て るか持てないかということで格差が生じるという趣旨です。豊かさの中でそこ そこ満ち足りていて,希望が持てないという状況にあります。さしあたって欲 しいものがないということです。欲しいものがないという若者に「それじゃヨ ットを持っているか?」と問うと,「持ってない,持てるわけがない」と諦め ているということです。  高望みであろうと,何とかしようとする意欲を持てば,前に進むことができ ます。見限ってしまうと現状止まりもできず,落ちぶれていきます。停滞した 閉塞状況は,前向きな動きが見えないことです。何とかなる,できなくて元々, そのような挑戦する気持ちは,希望に向かう気持ちです。この目指すものを持 とうとしない,あるいは見極められない,それがニートを産みだしてもいます。 立ちすくんでいる状態です。  この状況を切り開くのは,プロフェッショナルだそうです。考えてみれば, 殊更新しい提案とは思えません。かつての日本にはありふれていた人たちです。 プロ意識とか,職人根性というひたむきな気持ちに溢れた人たちが社会を支え てきました。今はそういう一途さをダサイと切り捨て,意味がないと捨て去っ て,時代の勢いが失速しています。バブルの時に創造活動よりも転がすだけの 金儲けに血道を上げた安易さから気持ちが抜け出せていないようです。  凝り性という面もプロにはあります。何もそこまでしなくてもといった丁寧 さが良いものを産みだし,暮らし全体の価値を高めてきました。間に合えばそ れでいいという妥協ではなくて,少しでも完成に向かおうとする意欲が,具体 的な希望となっていました。金のために仕事をするのではなく,仕事に打ち込 むことで結果としてお金がもらえるという真っ当な仕事意識です。生き甲斐の 実現として仕事をしていたのです。そういう先人の姿を思い起こせばいいので す。  技能の熟練という面も大事です。ちょいちょいとできる仕事を求めている傾 向があります。一人前になるのに10年掛かる,そんな仕事はあっさりと敬遠 されて廃れていきます。しかしその熟練の技がなければ,仕事の連鎖が壊れて, 技能の積み上げから成る産業という大きなものが衰退していきます。きちんと した部品がなければ,ロケットが飛ばないということです。若年者の減少によ る人手不足という以上に,技術基盤がボロボロになっていきます。希望とは手 の中に埋もれています。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12願★       【パパママお願い! 産まれてきたことを喜んで!】                             《V20:MATOME》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○こんなこと・あんなこと!  「ここはどこ?」。「口からス〜ッと何か入ってきた!」。「オギャ〜」と 誕生です。「身体がなんだかスーッとするのはどうして?」。「懐かしい臭い がする,ママの臭い」。「ママがすぐ傍にいるみたいだけど,どこ?」。「柔 らかいものが口に触るから思い切り吸ってみたら,口の中に甘いものが入って きたので思わず飲んじゃった。いいのかな」。「アレッ,ママから何か聞こえ てくる」。ドクン,ドクン。「ボク,眠くなってきちゃった,お休みなさい」。  「ア〜ン,ア〜ン」。「ごめんね,暑かったのね。少し風に当たろうか」。 「ウ〜ン,ウ〜ン」。「おしっこが出ましたか。おしめを替えようね。ほ〜ら, 気持ちよくなったでしょう」。「エ〜ン,エ〜ン」。「あら,バスタオルが巻 き付いて窮屈だったわね。緩めてあげるからね,これで楽になったわね」。 「ママはワタシのことを分かってくれるから,とってもうれしい。だから,い っぱいにっこりしてあげたくなっちゃうの」。  「どうしたの,こんなにズボンを汚しちゃって! さっさと脱いで」。「ボ ク,泣かなかったよ」。「何を言ってるの,汚して泣くこともないでしょ!」。 ママはズボンの汚れを払いながら何気なく膝小僧を見て,「どうしたの,この 擦り傷は? 血がにじんでるじゃないの。こっちにいらっしゃい,洗わなくっ ちゃ」。お風呂場でシャワーの水を擦り傷に当ててくれながら,泣きべそだっ たボクの我慢のしるしにママの手がそっと添えられました。  「ママ,その荷物持ってあげる」。「大丈夫よ。それに落としたら大変だか ら」。「落とさないように気をつけるから」。ママはちょっぴり不安そうでし たが,他にも買い物の包みがあったので,一つを持たせてくれました。しばら く歩いていくうちに,荷物の重さにふらついてしまいました。それでも必死に がんばって,最後まで運びとおしました。ママがうれしそうに「ありがとう, 助かったわ」と言ったので,ちょっぴり自慢げな照れた笑顔を返しました。  「ママ,パパ遅いね」。ママのご機嫌がよくありません。今日はママのお誕 生日なのです。テーブルにケーキが用意されています。「パパはママのことな んか忘れているんでしょ!」。「そんなことないよ」。「もう待たなくてもい いから,ケーキを食べちゃおう」。「パパはママが熱を出したとき,一番心配 していたんだから」。ママはしばらく黙っていました。「もう少し待っていよ うか?」,「ウン」。「ただいま」。 ・・・《子どもの純真さに出会うから,優しい気持ちになることができます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○我が子!  「赤ちゃんはまだ?」。結婚して数年を過ぎると,そんな問いかけが当たり 前のように向けられます。望んで努力しているのに,一向にコウノトリが立ち 寄る気配がありません。諦めという言葉が思い出されそうになって,やっと恵 まれました。大きくせり出したお腹がそれまで答えられなかった返事をしてく れます。待ちに待っていた赤ちゃんですが,腕の中に抱いた赤ちゃんは可愛く もあり可愛くなくもある存在です。それでもやはり我が子です。  診察室に連れて行かれた我が子,室外の椅子に身じろぎもせずに待っている ママ。そんなママの肩をそっと抱きしめているパパ。何もかも要らない,ただ 無事であって欲しい! その願いが通じて我が子の笑顔が戻ってきます。日々 の何気ない豊かさを追い求める暮らしの中で,あれが欲しいこれも欲しいとい う気持ちが高まっていきます。いろんな意味で子どもも巻き込まれていきます。 一番大事なものが何であるかを見失わずに済みます。  我が子が学校に行くと,どこかホッとします。世話の煩わしさから解き放た れたという気持ちです。ママのペースにはお構いなくあれやこれやの世話を持 ち込んでくる我が子に,何年もつきあわされてきたのですから無理もありませ ん。もうそろそろいいのではと思ってもいいでしょう。それが子離れに入って いく時期だからです。少しずつ距離を置いていきながら,世話の手を出さずに 見守るようにすれば,育ちが見えて愛おしさが感じられるはずです。  我が子が外の世界で子どもたちと一緒に遊んだり学んだりしています。気を 揉みながらも親は代わってはやれません。つたないけれど一心不乱に打ち込ん でいる姿からは,健気さが伝わってきます。胸が熱くなることさえあります。 ビリでも臆することなくがんばっているあの子は私の子,そう言いたくなりま す。親バカという幸せを感じさせてくれる我が子に感謝します。今現在の途中 経過は参考データであり,育ちのゴールはずっと先です。慌てない,焦らない!  この子がいるから! 怖い言葉であり,うれしい言葉です。この子が私の邪 魔をするというのか,この子がいてくれるからがんばれるというのか,それは 親の心象であり,この子にはあずかり知らないことです。この子は親に授けら れた命をひたすら育むために,親に頼り親を学び親に笑みを向けているだけで す。我が子と親の間には命のつながりがあります。我が子は親の命を預かって いるのです。祖父母の命も預かっています。孫の命も・・・。 ・・・《我が子との関わりから,人は温もりや安らぎや喜びを手に入れます》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 産んでよかった ただ一事》 ※子どもを育てることで,大人は円熟することができます。自我という角張っ たものを出していると,か弱い子どもは傷つきます。子どもを庇い世話をする ためには,親はどうしても自我を抑え込んで気持ちを丸くせざるを得ません。 それが習い性になって,次第にカドが取れてきます。こう言っては語弊がある かもしれませんが,子どもを育てた人の方がそうでない人よりも大人と見なさ れる場合があります。  そんなことは結果に過ぎないことであり,子どもを育てることから親はたく さんの苦楽をもらいます。子どもが育ち終えたとき,いろいろあったけどとい う述懐が親としての役目を果たせた満足感を引き出してくれます。幸せとは苦 労があるから手にすることができることを実感できます。月並みなことですが, 人生の指針としてとても大切なことです。子育てから得るものはたくさんあり ます。皆さんも一度じっくりと考えてみてください。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  この号で「子育て羅針盤」の第20版は完結します。短い節目として5年を 数えると,取りあえず一段落を迎えることができました。5年前,子育てにつ いて講演をしているとき,出版した本はないかと尋ねられることが度々あり, ホームページを開くことを思い立ちました。さらに講演を文章化する作業を進 めているときに,毎週発行のメールマガジンにしてお届けできたらと思い立っ たのが始めでした。お陰様で購読して頂く皆様に支えられてここまで来ること ができました。  次号からは6年目に入ります。講演の資料としてストックし続けているもの がまだ残っています。それらをリフレッシュした形で織り込みながら,次週か らもマガジンを書き続けていこうと思っています。版が代わるとしても殊更斬 新になるわけでもありませんが,引き続きご購読をお願いいたします。なお, この子育て羅針盤は版毎の読み切り形式であっていつでも参加できますので, よろしかったら周りの方にお勧めいただけたら幸いです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆  次号では,【あなたのお子さんは,自主性を備えていると思いますか!】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○