□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2005/11/07]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第266号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■徒然子育て想■              『主観の世界?』  タリウム? その硫酸塩は殺鼠剤や殺虫剤として使われ,有毒物質です。ち ょっと化学の本を開いて調べると,専門用語の他にどきっとするような,それ でいて一目瞭然の言葉が読み取れます。身の回りには置きたくない代物です。 それをこともあろうに,母親に飲ませる子どもがいました。虐待を受け続けた といったことがあって,近親の憎悪というのであれば正当防衛として過剰です が分からないでもありません。それでも,もっとも大事にしたいはずの母に向 けた心根は理解できないはずです。  最近,子どもが母親に牙を剥いている事例が散見されます。どうしてこんな ことになってきたのでしょうか? もちろんごく特別な事例ですが,とても気 になります。何が原因なのでしょうか? かけがえのない人,その典型が母と 子どものお互いであったはずです。何事にも例外があるとはいえ,割り切れな い悲しさがあります。女子生徒にとって母親は見ず知らずの人でさえなく,モ ルモットと同格になっているような報道内容が衝撃です。  母親の容態を観察しブログに掲載しているという冷酷さは,対象との関係を 一切拒否する客観性に通じます。裏返せば,孤独の世界に住んでいるというこ とです。母とのつながりが核となって,子どもは人間関係を結んでいきます。 人とのつながりは主観の世界ですが,思いやりや優しさという大切な資質は, 主観と客観のバランスの上に成り立ちます。人間らしさである主観の世界を子 どもに植え付ける,それは家庭教育の最大の課題ですが,かなりひ弱になって います。  「お母さん」。子どもが母を呼ぶ声に常に向き合っていればいいのです。呼 ばれた際に「何か用? はやく言いなさい」と切り口上風に答えているようで は,子どもは疎外感を感じます。呼ばれたら気持ちを子どもに向けることです。 子どもは格別の用がないときにも「お母さん」と口にします。夫婦の間で「あ なた」とただ言ってみたいときがあるはずです。甘えるといえば分かりやすい でしょう。つながりを確かめたくなる,そんな呼びかけを大切に受け止めてや ってください。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12設問★      【お子さんは,話の伝わり方を確かめていますか?】                            《V21:WHEN-02》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  ○共感の完成!  「何遍言ったら分かるの?」。親の心子は知らず。嘆く気持ちも分かります が,子どもには無理だと弁えてください。親になったことがないのですから, 子どもに親の心が分かるはずはありません。親の気持ちは親になって実感でき ているでしょう。切ないことですが,逆もあります。分かってくれないという 気持ちは,子どものほうも持っています。親は子ども時代を経験しているはず なのに,すっかり忘れています。  親は子どもの気持ちをちゃんと分かっていると思っています。そう自認して いながら,「今日はどうだった?」と尋ねて「別に」という返事を受けていま す。この頃何も話さなくなったと悔やんでもいます。何を考えているのか分か らない,そんな呟きも聞かれます。親子がお互いに分かり合えていないという 事実を真摯に受け止めることから始めましょう。コミュニケーションの大切さ は,分かっているという思いこみから脱したときに見えてきます。  家庭であいさつをしていますか? 普通には家族の間で一々あいさつなんか する必要はないと思われています。朝起きてきて「おはようございます」。そ れがコミュニケーションです。おはようという声の調子から,いろんなことが 感じ取れるはずです。あいさつは同じ言葉が交わされるところに意味がありま す。おはようという語りかけが無視されたら,拒否のメッセージになります。 時候のあいさつも,「寒くなりましたね」,「寒くなりました」という繰り返 しが基本です。  「お母さんできたよ」,「そう」。子どもはがっかりします。「できたね」 と言葉を重ねてください。子どもは分かってくれた,自分の気持ちが伝わった と感じ取ります。「美味しいね」,「当たり前でしょ,わざわざ手作りしたん だから」。子どもはそんなことを求めてはいません。「美味しいね」と共感し てくれればいいのです。返事をする前に,先ず子どもの気持ちを受け止めてや ることです。共感の基本は言葉を繰り返すことです。  ・・・《分かり合うというのは,理解することではなく共感することです》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  ○こんなこと・あんなこと!  西の空が夕焼けです。幼い子どもがママって言いながら空を指差します。 「きれいね」と受け止めます。それが子どもに指を差させた理由だからです。 子どもの思いと共感しているというサインとして,気持ちを表す言葉を使って みせます。ママと一緒にきれいだと思った夕焼け,その体験が美的な感覚を育 てていくことになります。ママの感性を子どもに移し込む手立てとして,共感 を伝える言葉を交わすようにしてください。それが子どもの求めている対話で す。  「ママ,今日も忙しいの」。ママが忙しいのは分かっています。ママがゆっ くりできるときがないかなとさりげなく尋ねてきます。身の回りの必要なやり とりだけではなく,どうということのない二人の時間を持ちたいと感じていま す。そうとはっきり言葉に出せばいいのにと大人は思います。でも,子どもは 自分の気持ちを掴まえて言葉にする力が未熟です。「忙しいの?」と言うのが 精一杯です。「だったらどうしたの?」というママの問には答えられません。  「今度ね」。子どもの要求をはぐらかすために,親がよく使う手立てです。 「今度っていつ?」,「今度は今度」。期限を切らずに先延ばしにしようとし ている親の魂胆をかすかに感じ取っています。子どもは具体的な言葉から覚え ていきます。曖昧な言葉は意味不明であり,伝わるものがありません。言葉と して不完全です。だから,聞き返します。ママの言う言葉は分からない,いい 加減と思うだけならまだしも,ママ自体を理解不能に感じるようになります。  今の子どもたちは,テレビから言葉を覚えます。テレビ番組の中の言葉はテ レビの世界で交わされています。見ているものに向けられてはいません。見て いるものが勝手に画面の外から見聞きしているというパターンです。幼い子ど もはテレビに向かって言葉を返そうとします。でもテレビはこちらの言うこと を完全に無視します。言葉は受け取るだけのものと刷り込まれます。子どもの 言葉を受け止めてくれる環境を作らないと,伝わる言葉を失っていきます。聞 いてやってくださいね。  ・・・《美しい言葉とは,伝えるのではなく伝わるように装った言葉です》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  《子育ては 母の言葉を 口移し》 ※本を読む,それは心の食事です。テレビの言葉はインスタント食品,本の言 葉は本格的食品と言えるでしょう。最近食育という言葉が創り出され注目され ていますが,身体をつくる食品だけではなく,心をつくる食品,言葉について も手抜きをしないようにお願いします。マイフェアレディでイライザがしつけ られたことは,言葉遣いでした。言葉が美しくなることで,立ち居振る舞いば かりではなく心も美しくなりました。言葉は人柄です。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  通りを歩いていると,甘い香りに包まれます。家々の道筋にキンモクセイと ギンモクセイが咲き誇っています。しばらく歩いていると,それほど香りを感 じなくなります。慣れてしまうのでしょう。人の感覚は慣れという特性を持っ ています。飽きるということにもつながります。生活習慣病が若年化している ようですが,暮らしぶりのパターンが慣れてしまって,感性が働かず,身体機 能が活動していないことも要因かもしれません。生活にメリハリを! ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆予告☆    次号では,【お子さんは,気持ちよく手伝いをしていますか?】             について考えることにします。どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●記事の一部、もしくは全部の無断転載・無断配布を禁じます。  掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○