□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2006/04/10]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第288号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■子育て一言メモ■               『体感?』  外遊びが少なく,テレビやゲームなどの視聴覚だけに頼った育ちが普通にな っています。家や学校という人工的な環境では,五感を敏感に働かし反応する という訓練が疎かになります。その結果として,もう一人の子どもの肥満化が 進み,生身の自分が置いてけぼりになります。ハードが揃っていないパソコン に高度なソフトがインストールされるようなもので,フリーズやシャットダウ ンが頻発します。キレたり,イラついたり,想定外の行動が出てきます。  もう一人の自分は,夢や空想の世界に飛び込んで,無限の能力を駆使できま す。それを再現しようとすると,身体の能力は有限ですから,思うようにはい きません。そこで,「もう一人の自分」が「自分」を拒否しようとします。自 己否定は自暴自棄になり,自閉の扉をこじ開けていきます。あるいは,「もう 一人の自分」が「自分」を避難させるために,他者を否定したり,責任を転嫁 して,反社会的な行動に及んだりします。自分との二人三脚がチグハグになら ないようにしなければなりません。  人の迷惑が見えないのは,自他の関係を円滑に結ぶことができていないから です。もう一人の自分が自分と仲良くしていれば,自分と同じである他者に対 しても思いが及びます。自分だけを大切にする幼児期を過ぎて,もう一人の自 分が自分を含めた「自分たち」という観点を持てるようになったとき,人の迷 惑が自分のこととして認識できるようになります。自分を見つめて実感を伴う ことのできる体験重視の環境を整えてやりましょう。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12迷路★     【子どもって,どうして人の迷惑が見えないんでしょう?】                             《V23:WHO-02》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  〜こんなこと・あんなこと〜  芸術の世界は感性が中心です。「痩せガエル 負けるな一茶 これにあり」 という俳句があります。のどかな田園風景を詠んだほほえましい句ですね。相 撲を取っているカエルとそれを見ている一茶の両方をながめている「もう一人 の一茶」がいます。カエルは嫁取りの競い合いをしています。一方で一茶はそ の頃娶った若いお嫁さんを相手に頑張っています。「カエルと一茶よ,おまえ 達は同じ境遇なんだ!」と,もう一人の一茶が詠んでいるのです。ひたむきに 生きている自分を感じているのです。  実感のない感性。かわいい女の子のキャラクターやフィギュアに恋する若者 は,異様です。その感性のズレは時代の特性かもしれませんが,やはり不自然 です。生身を受け止める感性が機能していないからです。あるプロデューサー が,「今の役者は表情,顔だけしか見せようとしない。知性でしかコミュニケ ーション(外界との対応)できない」と嘆いていました。背中で芝居ができる ためには感覚を生かすこと,実感という身体感覚を基準にしなければならない ことを大人が見失っています。  自我。自己認識であるアイデンティティは,もう一人の自分が依るべき基盤 です。人格の中心となる核は,自分と他者を区別化しつつ同時に同一化する作 業から得られるものです。自分は何者か? そこからプライドが産まれます。 そのためのキップが,名前(区別),姓(同一),性別,年齢,役割などの自 意識です。何者かである自分を見つめるもう一人の自分が,一般的他者との葛 藤を通して,他者と整合できるような自己形成ができます。「私は○○である」 と幾つ言えますか?  ノック。「入っていいですか?」という問いかけのサインです。相手に対す る自分の主張をし,それに対して相手からの許容を確認するための間が必要で す。ところが,ノックに返事をしたら,もう入ってきているということが増え てきました。ノックは「入ります」という自己主張のサインに変わっています。 相手の都合に合わせて自分の行動を決めているはずのもう一人の自分がいない ようです。自他の関係を見るもう一人の自分が,社会性を具現します。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  〜ママへのメッセージ〜  父親の出番。父親は母親を巡るライバル,つまり母を奪う人として登場する という役割を課せられています。母を妻に引き戻す夫としての魅力を父親は発 揮しなければなりません。父親が家庭にしっかりと存在感を発揮すれば,母子 一体感を壊されたもう一人の子どもが,父親と自分を比べるようになります。 つまり,父親は第三の人として,人の輪の最初の位置にいることになります。 自分と母親,その次に父親がいて,父親につながって社会の人との輪が意識化 されていくのです。  思いやり。自分と他人を同じ人間と「もう一人の自分」が納得するときに, 思いやりを発揮することができます。他人の気持ちは分かりません。自分だっ たらどう感じるか,どう考えるかということをもう一人の自分が仮に相手の気 持ちと想定します。こうして他人の思いを察することが出来るのです。その上 で,自分と他人を共に生かすために「自分は何が出来るか」を,もう一人の自 分が考えます。身につまされるという経験をしていないと,思いやりは生まれ てこないでしょう。  生活の場。家族の一員という自覚が芽生えると,もう一人の自分が自分を身 近な者と結び付けようとします。その同志意識が仲間意識に広がり,友だちの 中の自分という関係ができていきます。同じ園や学校の仲間,同じ地域の仲間 という具合に,仲間であるための枠組みが少しずつ大きくなっていきます。そ の枠組みを意識できるように,家庭生活の中でも大きな枠組みを作ってみせて ください。家族だけに閉じ籠もるような生活からは,他者を排除する頑なな枠 組みができてしまいます。              ・・・《子育ちは みんなの中に 自己見つけ》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆次号予告☆     【子どもって,どうしてじっと落ち着かないんでしょう?】                           どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  子どもには先ず人に迷惑を掛けないようにと教えます。一方で,大人は人の お陰をきちんと見極めることが求められます。「この仕事 皆でやろうと 人 に投げ」という川柳がありました。皆でやることは私のやることではないとい う逃げの姿勢があると,それは迷惑を掛けていることであり,同時にやってく れる人のお陰でなんとかなっているのです。やっている人は好きでやっている からやらせておけといった卑怯な逃げ口上は,社会の暗部を増長します。お陰 が見えていれば,幸いです。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○