□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2006/07/10]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第301号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■子育て一言メモ■        『自制ができぬうちは,自由だとはいえぬ!』  作文や日記を書くときは,過ぎ去った自分の気持ちや行動をもう一人の自分 が思い出そうとします。その時にもう一人の自分が目覚めます。このような自 分を語るという形が,内省と言われる行為の基本です。犯罪を犯した少年に更 生のために作文を書かせるのも,もう一人の自分を目覚めさせ反省させるとい う目的があるからです。きちんと育てなければならないのがもう一人の少年で あるということを示しています。  推理小説を読むことがあります。もう一人の自分は本の世界に入り込み,主 人公の探偵に同化します。決して被害者にはなりません。被害者は小説のはじ めに消えるからです。謎解きをしているもう一人の自分は疑似体験をしている ことになります。本を読むことで,もう一人の自分が自然に目覚めて,主人公 という他人になって得難い体験をします。読書はもう一人の自分を一回り大き く育てていると言うことができます。  子どもはヒーローやヒロイン遊びが好きで,自分がなったつもりで飛び回っ ています。もう一人の子どもが夢いっぱいの体験をしています。正義の味方と して振る舞うことで,正義が何かという意味は分からなくても,正義の行動が もたらす気持ちを身に付けていきます。意味の理解は後付でいいのです。もう 一人の自分は他者の体験をすることで育っていきます。友だち遊びも,いろん な役割を演じることを通して,自分の立場を見極める体験になっています。  冒頭の言葉は,紀元前6世紀のギリシャに生きていたデモフィロスが残した 格言です。自制はもう一人の自分が自分を制することです。もう一人の自分が 眠ったままでは,責任能力が無く社会人になれないのです。自由といえば何で もありというイメージが強いのですが,責任を負うことが伴わなければ,放縦 に過ぎません。一人ひとりがブレーキを備えているという前提で,自由が許さ れているのです。社会性の大事な要件として,もう一人の子どもに教え込んで ください。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12モード★     【あなたのお子さんは,他者の目で自分を見ていますか?】                             《V24:WHO-02》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  〜みんなの意味は?〜  子どもがモノをおねだりするとき,「みんなが持っている」と理由付けして くることがあります。もう一人の子どもが持っていない自分は他人と同じでな いと判断するからです。この他人と同じでありたいという気持ちは大切な社会 性の始まりです。大切だと感じているから,親との交渉に口実として持ち出し てきます。言い寄られた親が「本当に皆に必要なモノなら」と査定するのも, そこに社会的必然性を見つけようとしているからです。「人並みに」という暮 らしの知恵です。  子どもは知らないうちに悪さをしでかします。もう一人の子どもがまだ社会 的に未熟だからです。自転車を道の真ん中に放り出したままで遊んでいます。 道は往来をする場所であり,そこで遊ぶためには守るべきルールがあるともう 一人の子どもが自分に言い聞かせることができていません。通りがかりの人に 注意されても,何を言われているのか分からずポカンとしているのは,社会性 の未熟さのせいです。人が通るときに邪魔になるという他者の立場の経験が必 要になります。  社会性の未熟さは「みんな」という範囲の意識上の狭さに結びつけられます。 身内や親しい仲間だけを「みんな」と思っていて,いわゆる「赤の他人」はみ んなの範疇には入っていません。限定された「みんな」に止まって,社会性が 偏狭なものに固定化しているから,世間的な問題行動に発展していきます。袖 振り合うも多生の縁という感覚があれば,すれ違う人にも気遣いが出てくるは ずです。せめてあいさつや会釈を交わすことでもすれば,みんなの範囲が広が るはずです。  もう一人の子どもが「みんな」の目を持ちますが,それを他人の目にまで見 開けるように育てなければなりません。昔の人が「かわいい子には旅をさせよ」 といったのは,知らない他人の中に入ることによって,知り合っていたみんな をいったん無にすることによって,知らない人をみんなの枠内に繰り込んでい く経験を大事にしたのです。多くの他者との関わりを体験することによって他 人の目を取り込む機会になっていました。  ・・・思いやりとお節介の違いは,もう一人の子どもの社会性の有無です。  「余計なことはしないでいいの!」。折角のお手伝いをママは迷惑に思って います。二度手間になるのでママは余計に忙しくなります。でも,そのお節介 はぐっと我慢して思いやりとして受け取ってやってください。ママのことまで 考える経験を持ち合わせていないので仕方がありません。社会性の基本である 相手の事情を察するためには,相手と同じ立場に立ってみなければ分かりませ ん。大人のことまで見渡せる社会性はゆっくり育つものと気長に待つことです。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  〜ママへのメッセージ〜  ※社会性を発揮するのは誰?  夜道を歩いていると無灯火の自転車が音もなくすり寄ってきます。一瞬びく っとさせられます。自動車に乗っての帰り道,目の前にいきなり自転車が現れ ます。はっとさせられます。自転車に乗る人は勝手知った道なので,灯火なし でもこわくはないのでしょう。しかし,歩く人に対して身を隠して加害者にな る可能性,ドライバーに対して陰のようになって被害者になる可能性を考え及 んでいません。自分を見る他者の目を持っていないからです。  シートベルトを装着していないドライバーをたまに見かけます。シートベル トは自分のためにする安全策です。自分の命への気配りのない人は他人の命な ど大事に考えることはできないでしょう。とてもこわいと感じます。自分の身 の安全を図る客観的な視点は,他者の目を持つことと同義です。道路脇の草む らには缶や食べガラが放り込まれています。見られていると思わないからです が,もう一人の自分が居眠りしてのです。  思いやりは相手の立場になって考えることですが,もう一人の自分がいるか らできることです。自分を大切に思うのはもう一人の自分であり,他者の目を 持つもう一人の自分が他者も自分と同じ人として大事に思うのです。人が人間 らしくなるには,もう一人の自分がしっかりと育つことが必要なのです。優し い心とは,もう一人の自分がいなければ現れません。他者の目で見るとは,も う一人の自分が社会化するという意味です。  子どもは自分が他人の目からどう見えているかという視点を身につけなけれ ばなりません。自分を客観視することです。自分の行為が他者に対して及ぼす 影響を深く洞察する入り口であり,迷惑を掛けないような身の処し方につなが ります。これが最近の子どもに最も失われている点です。他者を意識すること で私的な思いにどれほど制動を掛けてみせるかが親としてのお手本のあり方で す。「ママだったら,こう考えて,こうする」とお話してやってください。               ・・・《子育ちは 人の振り見て 身を正す》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆次号予告☆     【あなたのお子さんは,自分の居場所を持っていますか?】                           どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  子どもにとっても受難の世情が現れているようです。身を守るために人を信 用してはいけないと指導しなければならないが,その結果は人を信じられない 子どもを育てていることになるという校長先生の嘆きを聞きます。そこには人 を白か黒かでしか見ようとしないディジタル思考があります。仲良しかケンカ か,それしかないとすれば人間関係は窮屈でしょう。人間関係に融通無碍な間 合いを持てるように指導してやることが次の課題になります。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○