□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2006/07/31]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第304号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■子育て一言メモ■            『言葉は精神の顔である!』  一方通行の狭い道を車で通っているときです。若い女性の運転する逆走して くる小型車に遭遇しました。Uターンしてもらうスペースもないので無理して 何とかすれ違いましたが,驚きました。知らないということはこわいものです。 子どもたちが悪いことをしでかしたときに,その悪びれない態度に大人がむか つきます。悪いということを知らないようです。自分の行動がひょっとしたら 他人に迷惑を掛けているのではないか,そういう慎ましさが伝わっていません。  悪行をしでかしても悪いということを自覚していない人は,罰せられないの でしょうか。犯罪の世界では故意か過失かという分類以外に,無知という枠が クローズアップしてきたような感じがしています。無知であれば反省もあり得 ませんし,罰を与える高邁な意味も無くなります。特に少年犯罪の場合は,育 ちの途上なので無知であることを前提として,特別な対応をしてきました。し かしながら,無知であることが免罪符になりうるかということに,普通の人は 違和感を抱きはじめています。  人に対する慎ましさは自分に対するケジメから派生するものです。ケジメと いう言葉を教えられずに育ってしまったために,知らないうちに何の躊躇もな く悪行に手を出していきます。自分の気持ちを大事にするという美酒におぼれ 悪酔いしている世情の中で,子どもたちは程良い加減というバランス感覚を失 っているので,分からない,気が付かない,知らないという無自覚状態です。 自覚症状がない病は命取りになります。  親には子どもの保護責任があるとするなら,子どもが無知なために犯した罪 に対しては,無知なままに放置した親の業務上過失という形で責任を負わなけ ればなりません。具体的には賠償責任が発生します。類推としては不謹慎です が,有害商品を世に送り出した企業の責任と同じです。皮肉を込めて言えば, クールな金銭的世界ではやがて親のために「子どもによる加害事件の賠償補償 保険」なるものが売り出されかねません。とんでもないことでしょうか?  冒頭の言葉は1世紀のセネカの言葉です。けじめ? それって何? 慎み? そんな言葉は知らない! 言葉を知らないと行動のコントロールができなくな ります。進むも止まるも,信号の意味を知らないと,社会では混乱を生じ危険 を招きます。大人になるというのは,言葉を覚えていくことです。「いつ育つ のか?」という第三の問に対して「言葉を覚えたとき」と答えることができま す。言葉を共有できたとき,精神が交流しあい,社会的な行動が可能になりま す。話しても通じない人,変人として遠ざけられるのは当然です。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12モード★     【あなたのお子さんは,正しい言葉遣いをしていますか?】                            《V24:WHEN-01》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  〜伝わるように?〜  テレビから「おはようございます」と言われて応えていますか? テレビの 言葉は直接自分に向かって来ません。盗み聞きしている状態なのです。赤ちゃ んがテレビを見ながら声をあげて喜んでいます。自分の意思をテレビの人に伝 えようとしますが,テレビは反応してくれません。やがて,話しかけても無駄 だと覚えていきます。言葉に反応することができなくなり,外部からの言葉に よる働きかけに心を閉ざしていきます。テレビから言葉を習う子どもは,正し い言葉づかいが身につきません。  パパが「オーイ,お茶」と偉そうに言ってます。ママはいつもでしたら「ハ ーイ」と答えているのですが,疲れていたり忙しいとき,違った受け答えが飛 び出してきます。「お茶がどうかしましたか?!」。ママは何がお気に召さな かったのでしょうか? パパは「お茶」という言葉をその辺に放り出していま す。捨てゼリフなのです。聞く方はわざわざ言葉を拾いに行かなければなりま せん。誰に向かって言っているのか頓着しないような言葉づかいは失礼です。  言葉は「誰に向かって」発しているのかを,明確に表現しなければ不誠実に なります。「あなたに向かって」が「オーイ」(私はオイではない!),「お 茶を入れてくれるように頼んでいること」が「お茶」(私はお茶なんか飲んで る暇はない!)では,聞く方の事情などお構いなしの甘え・無礼さが丸出しで す。夫婦二人だけの家庭ならまだしも,子どもが見ているところでは要注意で す。言葉を端折らずにきちんと文章にして話すような癖を付けることが望まれ ます。  言葉づかいを叱るとき,「誰に向かって言っているのか!」と注意すること を思い出してください。言葉とは相手に向けて正しく伝わらなければ意味があ りません。人間関係を橋渡しする言葉づかいは相手を意識することが基本なの です。「お腹が空いた」と子どもが言っても,(それがどうした!)と聞き流 してください。それは独白でしかないからです。それを察することは言葉のし つけから外れます。「ママに向かってちゃんと言いなさい」と,ママが正しく 聞いてあげるようにしましょう。  ・・・対話とおしゃべりの違いは,相手に対する敬意の有無です。  子どもたちの話しぶりが,いわゆるため口風になっています。同世代の中で おしゃべりしかしていなかったり,親や先生が親しみとため口を区別していな いせいなのかもしれません。人に対して敬意を表することができなければ,社 会性のしつけを疑われます。何も畏まる必要はありませんが,丁寧さは最小限 のマナーです。子どもだからと見過ごしていると,不作法さは染みついてしま います。相手に対して敬意を持てば,自然にお互いの言葉が重なり合えて,対 話になっていきます。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  〜ママへのメッセージ〜  ※母の言葉!  親は言いたいことをすべて子どもにぶっつけていますから,対話は充分と思 っています。その親の話し方は「言って聞かせて分かったわね」という上から 言い渡す形であり,話の中身は「禁止,命令,愚痴,小言,お説教」等でほぼ 40語に限定されているようです。親子の対話は勝負であり,親は負けられな いと思ってはいないでしょうか? その証拠に親が負けそうになると「ゴチャ ゴチャ言ってないで」と一方的に対話を打ち切ります。子どもは言われっぱな しになっているようです。  ある大学の先生が「お母さんにも声変わりがある」と書いていました。赤ち ゃんには夫も聞いたことがないような優しい声を掛けて,気持ちを分かってあ げています。子どもが成長してくると,声は厳しく1オクターブ甲高くなり, 「ハヤク,サッサト,チャント,キチント」と自分の気持ちをぶっつけるよう に声変わりをします。勤めに出るようになって母親の言葉が貧しくなったこと を悲しむ中学生もいました。言葉の身だしなみもおろそかにしないで下さい。  母親がおしゃべりである訳は,「子どもに言葉を教える先生!」だからです。 母国語と呼ばれているように,人は母の言葉を身につけていきます。母の言葉 は「もう一人の子ども」の育ちの母乳なのです。例えば,子どもにはなるべく 早く「危」の字と意味を覚えさせておくことです。学校で教わるときまで待っ ていては遅すぎます。知恵は言葉という形で記憶に残ります。いくら体験して も,そこに母の言葉が結びつかなければ無意味になります。  人は言葉によって脳の配線を整理し,物事を考え理解し,物心がつき人間ら しくなっていきます。赤ちゃんは「ほらママよ」と言葉を掛けられてママを認 識するようになります。肩を叩いてくれたとき,「優しいのね」と言ってやれ ば,優しさとはどういうことかが分かり身に付きます。休憩の後,「もうひと がんばり」と言うことで,続けることがガンバルことだと知ります。優しい言 葉を使えば優しくなれます。乱暴な性格だから言葉が乱暴になるのではなく, 乱暴な言葉を使うから乱暴な気持ちに染まっていきます。言葉のしつけをお大 事に!               ・・・《子育ちは 母の言葉を たっぷりと》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆次号予告☆     【あなたのお子さんは,美しい言葉遣いをしていますか?】                           どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  子どもはいつも家庭での話しぶりを見聞きして覚えていきます。ままごとを している子どもを見ると,家庭の言語生活がそのまま現れています。日常会話 を「単語」で済ませるような言語生活では,自分の思いを見境なくまき散らす ことしかできません。「ムカツク」といった捨てぜりふしか言えません。次の 課題である人と気持ちを通い合わせるには「文章」表現が必要なのです。蛇足 ですが,文章表現を駆使できないと,学校の授業についていけなくなります。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○