□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ [2006/08/28]            【子 育 て 羅 針 盤】                              (第308号) □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ■子育て一言メモ■       『明日,何を為すべきか分からぬ人は不幸である!』  人の一生は弱い赤ちゃんにはじまり,年老いて弱くなって終わります。一方 で,社会生活は強くなければ務まらないというのが一般的なイメージです。で すから,子どもは学校に,お年寄りは施設にと,ちょっと脇にどけておくよう になります。お金もさることながら手が掛かるから子どもは要らないという気 分に流されて,子どもは激減し孤独を押しつけられ,他方で長寿社会になって 年寄りが増えて大変だという声をお年寄りは肩身の狭い思いで聞いています。  弱い者が気兼ねをしないで生きていける社会が心豊かな社会ですが,実際に は心貧しい社会ができようとしています。それが子育てに反映してきて,子ど もを育てなくしています。弱くてはいけない,弱さをマイナス価値と断罪する 非情さの前では,子どもはひとたまりもありません。自衛手段として,子ども は自分の弱さを否定して自惚れてしまい幼児のままで育ちを停止したり,弱さ を拒否して自暴自棄になり社会に反逆しています。弱かったら,生きていては いけないのでしょうか?  自分の弱さから目を背けたら,人の弱さが見えなくなり,暴君になります。 優しさは自分の弱さを知っているからこそ発揮できます。弱いからこそ弱い者 同士で社会を営んで生きてきたのがヒト社会です。自分が弱いと自覚してはじ めて,育ちへの意欲も生まれます。自分は強い大人だと思ったときに,成長は 止まります。未熟さを容認することが自己実現のスタートラインです。ソクラ テスの語った自分の無知を知れという言葉も,考え方では同じ意味です。  「自分は今弱いんだ」ということを容認した上で,助け助けられる人との関 係に込められている温かさを感じ取り,弱くてもできることがあると思うこと によって自らの存在価値を実感し,明日になったらもっといいことがあるとい う期待を持つことから,生きる喜びや意欲が生まれてきます。明日を楽しみに するためには,明日に向けてすることが見つかっていなければなりません。も うすることが無くなった,そんな状況では明日への扉を自分で閉めてしまうこ とになります。  冒頭の言葉はゴーリキーに拠ります。何もかも揃っていないと気が済まない, それはいいのですが,揃ってしまったらその先は目的を失います。豊かさの中 で人が意欲を失うのは不思議なことではないのです。子どもが大人にはなりた くないと思うとしたら,それは自分の将来を拒否することであり,育ちを停止 しようとするでしょう。逆転しなければなりません。「なぜ育つのか?」とい う第五の問に対して,「明日が楽しみであるから」と答えておきます。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★子育ち12モード★     【あなたのお子さんは,弱さを認めようとしていますか?】                             《V24:WHY-01》 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  〜弱さは明日に向かう条件?〜  それほど遠くない過去には,いじめを受けて自らの命を絶つ子どもたちがい ました。いじめという暗闇から脱出するためには,自分を消すしかないと思う ように追い詰められたのでしょう。一方で,たとえいじめられても死の直前ぎ りぎりのところで思いとどまっている子どもがたくさんいるはずです。いじめ られたらみんながみんな自殺するわけではないのです。何があっても生き続け ようとする気持ちを持っているからです。共に弱いのに,明日が無いか有るか が分かれ目です。  親は子どもに「生きる力」を持たせようと育てています。生きる力? それ はどういうことでしょうか? それはこの羅針盤の最終テーマですが,今の局 面で言えば,生きる目的,あるいは生きる喜びを持たせてやることです。生き る喜びが悩みに勝っている限り,死は決して選ばれることはありません。もう 一人の自分が生きる喜びを抱き,自分の持っている生きる力を発揮しようとす るとき,もう一人の自分は自分を生かし続けます。  最近は子どもたちの脱出法が変わってきました。追い詰められると過激な反 撃に突き進みます。例えば,火をつけて燃やしてしまうという単純で凶悪な手 口を学習したようです。少し昔にもネクラな姉がネアカな妹を刺した事件があ りました。姉はネクラでは生きられないと周りから言われ続けていました。自 分がネクラに見えるのはそばにネアカな妹がいるからと思いこみ,妹さえいな くなればと追いつめられていきました。自分の存在を脅かす妹を消すことで, 圧迫を回避しようとしたのです。  ネクラとは相対的なもので,たとえネアカであってももっとネアカな者のそ ばに行けば,ネクラに見えてしまいます。それよりも,ネクラであってはいけ ないのでしょうか? 人に可愛がられないとか,人との関係が結びにくいとい った心配があるのでしょうが,それほど気に病むほどのことではありません。 人の弱さを責めるのはルールのある競技の世界ならいざ知らず,暮らしの中で は卑怯なことです。ネクラであっても,弱くてもいいんだと,徹底的に認めて やるのが子育てです。  ・・・我慢と諦めとの違いは,明日に向かおうとする気持ちの有無です。  教室の前に「明るく元気な子」と大書してあります。ネクラで弱い子は毎日 それをどんな思いで見ているのでしょうか? 明るく元気でない子は仲間では ないといった雰囲気がある中で,登校する気持ちに水を差されていきます。保 健室なら登校できます。そこは弱い子だから温かく迎えてくれる場所だからで す。大切なことは,育ちは今も進んでいて,明日に向かっているという自覚で す。今は幼くていい,やがて成長していくから! 赤ちゃんのときのママの気 持ちを忘れないでください。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞  〜ママへのメッセージ〜  ※弱さと強さは両立する!  班学習で担当分ができなかったとき,みんなが迷惑すると責められます。自 分のことは責任を持ちなさいというわけです。みんなが決めたことが絶対的な 束縛になって締め付けてきます。その息苦しさから,学校への道は遠のいてい きます。班学習とは各自が単に公平に分担するということではなくて,班全体 として何事かをやり遂げる協力が目的です。得手不得手のある仲間が集まって お互いをカバーし合うということです。  自分のことは自分ですべきという束縛が強すぎると,何でも自分でできなけ ればならなくなります。みんな同じに育つということは,個性を殺すことです。 一人ひとりが持ち味を出すことが個性なら,そこには得手不得手や,強さ弱さ が必然として現れるはずです。弱い人がいるからこそ,個性を発揮できる場が 用意されます。お互い様という関係です。同じであることは,弱さを負の価値 に追いつめてしまいます。  少子化になると子どもには兄弟や姉妹がいなくなります。きょうだいも三人 以上でないと集団としての育ちができません。二人だとケンカした場合,互い にそっぽを向いていれば済みます。三人以上だと,三人目が仲を取り持とうと して,収まるようになります。兄や姉が弟妹たちを「いい加減にしたら」とな だめる役を果たすように育ちます。昔の多子時代には,クラスの3割程度が家 では兄姉でした。悪ふざけがあっても,「その辺でいいだろう」という兄姉と しての仲裁をし,他の兄姉も同調するので,いじめになる前でやめさせること ができていました。  子ども集団の基本はきょうだい関係です。弟がお兄ちゃんについて回って, よその子との縦関係が結ばれていきます。今はきょうだいがいないから,縦関 係の持ち方を知りません。縦の関係を持つことの重要さは,弱いものとのつき あい方を学ぶことです。弟や妹がついてくると,それなりにかばってやらなけ ればなりませんし,遊びでもハンディを与えなければなりません。免除したり, 肩代わりをしてやったり,いろんなやり方を考えます。この縦関係を通して, 子どもは年上の子に比べて自分が弱いことを知り,年下の子に対しては強いこ とを自然に納得します。弱くてもそれなりにつきあっていけること,強いもの が弱いものをかばってやらねばならない優しさを身につけていきます。               ・・・《子育ちは 弱さがあって 強さ追う》 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ ☆次号予告☆     【あなたのお子さんは,明日を楽しみにできていますか?】                           どうぞお楽しみに! □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ★編集後記★  耐性の不足,キレてしまう暴発,パトカーに追われて激突死,邪魔になって 抹消,世情に見受けられる気になることを並べていくと,そこに一つの失われ たものが浮き上がってきます。それは長い目で見るという余裕です。我慢すれ ばいつかは逆転する,小さな過ちの内に止まれば次には取り返しができる,少 し離れて時を待つ,といった先のことを見越した判断ができなくなっています。 過去から現在,それはさらに将来につながっているという生き続ける意志を持 つことが次の課題になります。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban] ●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より) ●発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)   「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear    ・・・・・・「掲示板」もご相談などにご利用下さい。・・・・・・ ●掲載記事の著作権は筆者に有り、筆者の許可なく複製・再配信等を行う  ことはできません。事前に下記アドレスまでメールのご一報を下さい。 ■《講演》のご依頼は,メールで気軽にお問い合わせ下さい。 ※著者へのメッセージ: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ●配信の協力を頂いている発行支援システム ◆インターネットの本屋さん『まぐまぐ』= http://www.mag2.com/   登録・解除= http://rap.tegami.com/mag2/m/0000046251.htm ◆メルマ***『melma!』= http://www.melma.com/   登録・解除= http://www.melma.com/mag/37/m00019737/ ◆無料メルマガ発行サービス『メルマガ天国』= http://melten.com/   登録・解除= http://melten.com/m/2166.html ◆よりすぐりメルマガサイト『めろんぱん』= http://www.melonpan.net/   登録・解除= http://www.melonpan.net/mag.php?005885 ※解除される方は,登録された配信先の解除手続きをして下さい。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○