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「第 50-01 章」 |
『子育ちは 自らを知る 我がいて』
■子育ち12心能■
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『子育ち第1心能』
【自己心能】
《まえがき》
ハーバード大学のハワード・ガードナーが多重知能という概念を提唱しています。脳の研究によって,ある部分は視覚に,ある部分は聴覚に,ある部分は情動に関係しているというように脳の機能が分かってきたことを受けて提唱されました。提唱された多重知能とは,言語的知能,論理数学的知能,音楽的知能,身体運動的知能,空間的知能,博物的知能,対人的知能,内省的知能の8つです。
これらは学校教育の中で教科として成り立っていて,国語,数学,音楽,体育,図工,理科に対応しています。ところで,最後の方の対人的知能と内省的知能というのは教科として存在しません。この2つ,すなわち,人と人との間の関わりに関する知能と,自分自身の中を見つめる知能が,サロベイ,メイヤー,ゴールマンが提唱している情動知能(Emotional Intelligence)に当たります。
この版では,情動知能に基づく研究の結果を参考にさせていただき,羅針盤らしくまとめてお届けします。子育て羅針盤12章では,奇数章で自分自身に関する「私の育ち」,偶数章で人との関わりである「私たちの育ち」を考えていますので,構成が偶然にも一致しているということが幸いしています。
《自己洞察》
何はともあれ,自分をしっかりと意識しておく必要があります。私は何者であるのか,その自意識を持つことが生きていく上で大事なことです。そのためには,自分に寄り添う立場にいる"もう一人の自分"が自分を見つめていなければなりません。具体的にはどういうことかといえば,自分のことを名前で呼ぶことができるとき,もう一人の子どもが生まれたということができます。この子育て羅針盤は,子育ちとはこのもう一人の子どもの誕生と育ちであるとみなして,お話しを進めていきます。
○お子さんは,自分が思っていることや感じていることが分かっていますか?
鏡に映っている自分の姿を,自分であると認識することができる"もう一人の自分"が生まれたときに,人としての成長が始まります。親離れをするということは,親べったりの一体感を卒業して,親と自分は違う存在であると思うもう一人の自分の誕生に相当します。今自分はお腹が空いていると感じて食べ物をねだること,尿意を催したのでトイレに行くことなどをはじめとして,もう一人の自分が自分に寄り添っていることが,自分らしさの源です。
○お子さんは,自分の気持ちが変化することが分かっていますか?
朝目が覚めて起きようとするとき,寒いから嫌だなという思いがある一方で,起きなくてはいけないんだというもう一人の自分の説得に応じることが望ましい状況となります。気持ちが激しく揺れ動くと我を忘れますが,それはもう一人の自分が消されているということです。もう一人の自分はいつも自分に寄り添って,自分をより良く生かそうと自分に言い聞かせるようになることが,子育ちです。
○お子さんは,今の自分の気持ちを言葉で表すことができていますか?
自分ともう一人の自分の間をつなぐコミュニケーションツールは言葉です。通常,言葉は人と人とをつなぐツールであり,子どもに対して,「きちんと言わなければ分からないでしょ」という言葉が出てくることがあります。しかし,言葉は自分ともう一人の自分との対話のツールでもあるのです。自分の気持ちや思いを分かるのはもう一人の自分であり,もう一人の自分と自分の間に伝達手段がなければ不可能です。そのために,モノの名前といった具象言語の他に,喜怒哀楽などの気持ちを表す抽象言語の取得が不可欠です。
この号から,子育て羅針盤第50版に代わります。心能という言葉はこの版のために創り出した造語です。情動知能が心の知能とも呼ばれているというところから,心能と略して使っています。造語ですので,世間では通用しないことをご留意ください。
ところで,この版では,お子さんの状態に関してお尋ねするという質問形式にしています。子育ちを見守る尺度と考えてご利用ください。説明は別にして,質問している内容そのものについては,筆者の思いつきなどではなく,大学の紀要に掲載されている論文を参照していますので,それなりの検証を経たものです。お役に立つはずです。
★落書き★
コアラの食べ物はといえば,ユーカリの葉っぱです。コアラの盲腸は,堅くて繊維質の多いユーカリの葉を消化するために,長さが2mもあり,ユーカリ専用ということができます。夜行性でおとなしいコアラには,ユーカリは他の動物に邪魔されずに食べられる唯一の食べ物になっています。オーストラリアに生息する動物でユーカリの葉を食べるのは,コアラとフクロウムササビしかいません。誰も見向きもしないユーカリを独占的に食用にできるので,のんびりと木の上で昼寝ができるのでしょう。
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