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「第 52-09 章」 |
『子育ちは 構われすぎて 停滞し』
■子育ち12疑問■
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『子育ち第9疑問』
【親が庇護するが,子どもは阻害されるとは?】
《まえがき》
この子育て羅針盤では,子どもの育ちを6つの視点と2つの領域から理解することを目指しています。6つの視点とは,誰が育つのか,どこで育つのか,いつ育つのか,何が育つのか,なぜ育つのか,どのように育つのかという問に沿うものです。また,2つの領域とは,自分自身の育ち(私の育ち)と他者と関わる自分の育ち(私たちの育ち)という育ちの領域を想定しています。6つの視点にそれぞれ2つの領域を重ねると,12の論点が生じます。これが版の構成となります。
第1の誰が育つのかという問には,鏡に映っている自分を見ているもう一人の自分が育つと考えます。しっかりしろと自分を励ましているもう一人の自分が育たなければならないのです。これまでの子育て羅針盤の形式に添って,奇数章では,もう一人の自分の育ちを考えていきます。偶数章では,人は社会生活が必至なので,自分は他者と対等な関係を持つことができるように育つと考えていきます。他の5つの視点についても,同様とします。
この版では,大人と子どものすれ違いを題材にして,「子育て」と「子育ち」という対照について考えてみようと思っています。
《庇護》
今年の夏の暑さは特別ですが,「暑い」といえば,「夏は暑いに決まっている」と父親に叱られたものです。子どもの健康調査によると,汗をかくことができない子どもが増えているそうです。生まれてから空調された環境の中で育っているので,暑さに対する冷却機能である発汗の機能が封印されているのです。汗をかくことができないので,体温の調整ができず,発熱してしまいます。子どものためにと暑さ寒さから庇護していることが,暑さ寒さに対処する身体機能の開発・発達を阻害していることになります。
育ちとは,可能性の開花です。備わっている能力を使わせることで,目覚めさせなければなりません。汗をかいて冷却する機能,寒さに鳥肌だって熱を逃がさない機能,それは練習することで上手になります。その他の生きる機能,特に衣食住環境への適応力も,同じです。快適な環境,美味しいものだけを好きこのむという育ちをさせる庇護は,芽生えるべき育ちを阻害していると早く気付いて欲しいものです。もちろん,子どもを放っておくということではないことは当然です。
《阻害》
あっちに行って勉強しなさい。余計なことはしなくていいの! 子どもは子どものやるべきことに専念できるように,気配りしてちゃんと庇護しています。子どもは親のすることを見て真似をすることで生きることを学んでいくものです。追いやられたら,生きることがどういうことであるか体験できません。生きていくことについては何一つ知らないままという状況に阻害されます。例えば,日々の食事に込められている調理者の気配りに気付くことができないから,食べ物を粗末にしても心が痛まない若者になっていきます。
暮らしに関わることを「余計なこと」と切り離す言葉が,生きている実感を子どもから奪い去ります。「何のために勉強するの?」という疑問を抱くのは,勉強が机上の空論になっているからです。字を覚えたら,本が読めるようになった。社会の仕組みを勉強したら,さまざまな食材がどうして冷蔵庫に入っているのかが分かった。計算の仕方を勉強したら,お小遣いを上手に使えるようになった。暮らしにつながっていれば,勉強に疑問を持つはずはありません。勉強だけという庇護は,生きる勉強を阻害しているのです。
社会的な活動をしている団体の代表が集まって会合をしているときです。前向きな話が進んで,各団体がどのように取り組むかという意見が交わされていきます。PTA団体の代表から「忙しくて,今でもやりきれていないので無理」といった否定的な声が出てきました。代表という役職を「嫌々仕方なくやらされている」という思いがあるのでしょうが,自分が引き受けた公的な役柄を個人の気持ちでないがしろにしている印象です。私情に流されず,やるべきことをきちんとやり遂げる覚悟,それを示すのがお父さんの役目なのですが?
★落書き★
病気になるとあちこちで炎症が起こります。炎症はマクロファージという細胞が病原菌を攻撃した結果ですが,そのとき細胞からインターロイキンという物質が出てきます。これはリンパ球に作用して体の免疫効果を高めるのですが,一方で食欲を抑制する働きもあります。病気になって食欲がなくなるのは,免疫の副作用なので,無理して食べた方が早く回復するということです。寝込んだときにお母さんが必ず作ってくれたもの,そんな思い出を誰もが持っているはずです。
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