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「第 54-03 章」 |
『子育ちは 違い認めて 支え合い』
■子育ち12活力■
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『子育ち第3活力』
【他者と協調できる:個性尊重】
《まえがき》
この子育て羅針盤では,子どもの育ちを6つの視点と2つの領域から理解することを目指しています。6つの視点とは,誰が育つのか,どこで育つのか,いつ育つのか,何が育つのか,なぜ育つのか,どのように育つのかという問に沿うものです。また,2つの領域とは,自分自身の育ち(私の育ち)と他者と関わる自分の育ち(私たちの育ち)という育ちの領域を想定しています。6つの視点にそれぞれ2つの領域を重ねると,12の論点が生じます。これが羅針盤の方位構成となります。
この版では,「生きる力の育成を目指す教育内容・目標の構造」という提言の中で例示されている項目を参考にしつつ,子育て羅針盤の視点から考えてみることにします。
《他者と協調できる》
幼い娘の心の状態が寝言に現れました。1週間程「ごめんなさい」と何度も泣きながら,指しゃぶりして眠りに入っています。母親はその声を耳にしたときには反省をするのですが,日中になると,懲りずについ叱っています。さすがに長引いてくると堪えます。自分の気持ちをじっくりと問い直してみました。2歳の子を相手にして,何を焦っているのだろうという気付きがありました。大人げないという自覚が,2歳の子との関係に適正な間合いを持たせてくれました。協調できる間柄になったのです。
母親の気持ちが軽くなったせいで,眉間から縦皺が消えていきました。「ママ,笑っている,久しぶりね」と,娘は眠ったまま,何度も笑い声をたてています。目覚めると,ダッコをせがんでくるようになりました。夢の中で,ママが「怪獣」から優しい「正義の使者」に代わっていったのです。他者と協調できる? 2歳の娘は怪獣とは協調できず,正義の使者とは心地よい協調関係に入ることができます。他者と協調できたときの心地よさをしっかりと教えておくことが大事な子育てです。
《個性尊重》
学校で班学習がされています。中に「宿題をやってこない」児童がいたら,同じ班の児童から「班が困る」と責めたてられます。連帯責任を課されており,協調することが必至というプレッシャーがあります。皆で決めたという至上命令を突きつけられると,逆らうことは許されないという状況に追い込まれます。その責任を果たせない自分を協調関係から外さざるを得なくなり,結果として,学校に行きたがらなくなることもあります。班から脱落することを選択していきます。
班学習はメンバーのためになるはずのものです。各自が持っており弱点を,他のメンバーが持っている強点で補うことが目的です。連帯責任は班内で責任を強いることではなく,責任を持ち合うということです。宿題をやってこない子がいたら,先ずはそれを許した上で,どうカバーするかを目指す責任があるのです。各自の長短所を個性として容認し,重ね合わせることで班としての責任を全うする,それが班学習によって育てられる協調関係です。支えられると同時に支える,その確かなつながりが,人に安心感をもたらします。
子どもたちの集団は同世代中心であり,さらに,一度集団から外れると,集団に戻れない子どもが多くなっています。気を配ってやらないと,人間拒否に逸れていきます。小学校3年生の女子が,クラス分けで仲良し3人と別のクラスになりました。直後は,他のクラスに遊びにいっていましたが,やがて「あなたのクラスは違う」と拒否されるようになりました。仕方なく自分のクラスに戻ると,誰も相手にしてくれなくて,自分の居場所がなくなっていました。家の中に閉じ込もり,母親や大人としかつき合えなくなります。
★落書き★
実力が同じで優劣が付かないという状況を互角といいます。互いの角? どこから同じという意味が出てくるのでしょう。古くは「牛角(ごかく)」と書かれていました。その字の通りに,牛の角は左右共に長短・大小の差がありません。そこで,優劣の差がないことを例えるために使われてきました。今は互角と書いているので,訳が分からなくなってしまっています。「ご」という音の読みが,「牛」よりも「互」という漢字に結びつきやすかったのでしょう。
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