『子育ちは 言葉の母語を 摂取して』
■子育ち12定義■
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『子育ち第5定義』
【子育ちは,言葉を覚えて知恵を作り上げていくものである】
《まえがき》
この子育て羅針盤では,子どもの育ちを6つの視点と2つの領域から理解することを目指しています。6つの視点とは,誰が育つのか,どこで育つのか,いつ育つのか,何が育つのか,なぜ育つのか,どのように育つのかという問に沿うものです。また,2つの領域とは,自分自身の育ち(私の育ち)と他者と関わる自分の育ち(私たちの育ち)という育ちの領域を想定しています。6つの視点にそれぞれ2つの領域を重ねると,12の論点が生じます。これが羅針盤の方位構成となります。
この版では,子育ち,子どもが育つということを,12の定義として体系的に表現していきます。子育ち12定義は子育ちの全体を12の視点から理解できるように組み立てられています。この12定義を理解することによって,世にあふれている子育て論のそれぞれが,どの定義に連なるものかという位置づけが納得できるはずです。
《何時育つのか?》
テレビや情報機器の影響下で育っている子どものデメリットを知っておく必要があります。漫然と長時間テレビ・ケータイ・スマホに付き合っている最大の影響は,人間がぼんやりと過す時間を奪うことです。ぼんやりと過す時間にこそ,画期的なアイデアや,新しい発想が生れてきました。情報・言葉を受け入れるのに忙しいと,自分の言葉を発するいとまはありません。ぼんやりというのは,自分の頭脳による自発的活動の時間なのです。考えたことが言葉に結びついたとき,ぴかっとひらめくのです。
ところが,その肝心の言葉が,若者世代で明瞭さを欠いているようです。
1.語尾が伸びたり上がったりする(次の語を考えている)。
2.話が長々と続き,切れ目がない(ズバリと言い切れない)。
3.感覚的で曖昧な表現が多い(「やっぱり,とか,なんか,みたいな感じで」)
4.語彙が少ない(ヤバイ,かわいい,等の多用)。
5.発音が曖昧(言葉に自信が籠もっていない)。
空気を乱さない気配りが強くて,言葉の意味をぼかすような言い回しになっています。言葉につかみ所がないので,結果としてお互いが分かり合えなくなっていきます。
日々の暮らしにおける体験,気持ちといったもやもやしたものに言葉が付与されて名付けられるとき,意識的認知という段階に到達します。気になる異性,思うと落ち着かないという気分が,「それが恋」と言葉で定義づけされたときに,自覚できて,そうなんだと納得に至ります。花を見て,ホーと思う小さな感動,それが「キレイ」という言葉に結びつけられたとき,人と共感することができるようになります。美意識=キレイネ,思いやり=ヨカッタ,生命尊重=アブナイ,我慢=アトデ,自発性=ヤラセテ,社会貢献=マカセテ,のように,感性や知恵はその行動を表す言葉に結びつくと,具体化することができます。知恵のイメージを獲得できます。分かるとは,言葉によって切り取ることです。
話せば分ると言われます。何が分かるのでしょう? 話せば違いが分ります。お互いの違いを明らかにし,そこから現実を受容するようにします。ところで,親は子どもに向かって話すとき,言って聞かせるという姿勢です。「お母さん」「ナンネ,何か用事ね,早く言わんね」。「用が無ければ話したらいけないの!」。話せば分るではなく,話せば喧嘩となります。「これは魚?」「馬鹿ね,どじょうでしょ」。言って聞かせるパターンでは,話が続きません。違っている所から始めませんか? 「違うね!」「じゃ何?」。このように進んでいけば,子どもは考えようとし,知恵を招き寄せることができるでしょう。
記憶についてみておきましょう。人は言葉でものを考え,その記録として脳の配線が出来ていきます。日本人とは日本語でものを考える人になります。3歳児に黄色の蝶を1頭見せて覚えさせます(註:蝶は○頭と数えます)。その後,多くの蝶の中に紛れ込ませて,探させます。「黄色」という言葉を知っている子どもは良く当てます。そのわけは「黄色い蝶」と覚えることができて,色で見分けることができるからです。
赤ん坊は,「ほらママよ」と言葉を掛けられて,母親を認識するようになります。正しい言葉を身に付けないと,経験しても知識になりません。習っても身に付かないのは,言葉の力を無視しているからです。明治期の造語である,「銀行,演説,鉄道,労働,講演」等の言葉があるから,日本語で講義が出来ます。最近は,プロ,コンビ,パソコン,セクハラ,リモコン,スーパーなどのカタカナ言葉のままで捨て置かれているので,漢字に備わっているイメージ喚起力が欠損し,記憶としての定着力が脆弱になっています。
《何時育つのか?》
アナタのために,大人は言います。人の為と書けば,偽という字になります。当らじとも遠からずです? 親が子どものためにと突きつけると,子どもは「タイム」を取りたくなるかもしれません。小学校入学前に,親の方が焦ってしまいます。「本は一冊,船は一艘,鉛筆は一本,鶏は一羽」:何度教えてもなかなか覚えてくれません。たまりかねて大声で怒鳴ってしまいます。「鶏は何て言うね?」。子どもは目にいっぱい,こぼれそうに涙を溜めて,「コケコッコー」。
★落書き★
しば漬けのしばとは,どういう意味でしょうか? しば漬けの発祥の地は京都郊外の大原八P。平家の生き残りの建礼門院は洛北の尼寺,寂光院に入り,悲嘆の日々を送っていました。気の毒に思った里の人たちが献上したのが,このしば漬けでした。ナスやキュウリ,ミョウガなどを紫蘇の葉で漬け込んだしば漬けを,建礼門院は大いに気に入り,「紫葉漬け(むらさきばづけ)」と名付けたということです。しばとは紫蘇の葉という意味なのです。
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