『子育ちは 心の言葉 品高く』
■子育ち12信条■
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『子育ち第6信条』
【抽象的表現を分別する!】
《まえがき(毎号掲載)》
子育て羅針盤では,子どもの育ちを6つの方向と2つの領域から考察します。6つの方向とは,「誰が,どこで,いつ,何が,なぜ,どのように育つのか」という問題視座です。また,2つの領域とは,「自分の育ち(私の育ち)」と「他者と関わる自分の育ち(私たちの育ち)という育ち」の領域を表します。6つの方向にそれぞれ2つの領域を重ねた12の論点が「子育て羅針盤」の基本的な考察の構成となります。
この第88版では,子どもが育ちによって身につけていく能力の具体的な形を考えていきます。人間としての複合的な能力を過不足無く獲得しなければなりません。もちろん個性的な能力の伸長は大事ですが,人間としての基礎的な能力のバランスが生きていく基盤になります。能力獲得のペースは子どもそれぞれに違いますが,成人までにはすべての力をそれなりに獲得できるように,側にいる大人がちゃんと導いておくようにしましょう。
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●抽象的表現と聞けば,事物を写実的に再現するのではなく,点・線・面・色彩などそれ自体がもつ表現力を用いた非具象的な抽象画を思い出されるかもしれませんが,それも含めてもっと大づかみにイメージをします。一つは,抽象的概念を表す名詞という言葉を考えてみます。例えば,「勇気」とか「平和」などです。平和とはと問いかけても,これと具体的に示すものがありません。捉え所がなくて教えるのが難しいですが,「平和だな」と思うことがあるときに,そういう状況を子どもと共感してください。
●抽象的表現には,「抽象論であり,わかりにくい文章」といわれる場合もあります。単に頭の中で考えられただけの意見や考えであり,物事の実体・具体性に欠けるということが批判されます。「口で言うばかりで実行が伴わない」ということも,類似の批判です。口で言うのは言葉であり,言葉そのものは事物とは違うので広くいえば抽象表現です。抽象と具体的な事物・行動がつながっていなければ,抽象は意味を失います。この点が,アニメの世界が虚空間であるといわれる所以です。
●子どもたちを悩ませる抽象表現の一つが,方程式の未知数を表すxです。xが具体的な数字でないために,イメージできないところが取っつきにくさになります。実はxは具体的な数字なのです。ただ解くまでは秘密という楽しみにしているのです。幼い子どもが喜ぶいないいないバーの算数バージョンだと思えばいいでしょう。見えていないのでよくは分からないけどそこに在る,そういう認識を育ててやりましょう。箱の中味は分からないけど,お土産がそこに在るといった経験です。開けるまでが楽しみ・・・。
●物事のあれこれを一々扱うことはできないので,抽象化した表現をすることがあります。世界の国々を5大陸に分けて5輪旗としてシンボル化しています。いろいろな植物の実の全体から「甘い」という一般的な性質を持つものを区分して「果物」という抽象概念を表す言葉もあります。複雑な世界を整理するために,いくつかの事物に共通なものを抜き出して,それを一般化して表現しなければ,考えを深めることができません。「本質を抽象概念でとらえる」という認識論です。「継続(具体)は力(抽象)なり」という表現手法です。
●世間が忘れかけると表面化する「いじめ」による自殺という悲しい現実があります。加害者や傍観者の一部は「あそび」と思っている風ですが,被害者は「いじめ」と認識するように追い詰められています。具体的な行動があれこれある中で,どれがあそびかという判別は,とき・ところ・ひとによって曖昧になります。したがって,いじめとなる可能性のある行動はあそびから除外するという分別が働かなければなりません。表現とは独りよがりであってはならず,共通に認識されなければ無用だからです。
●いわゆる若者言葉になるのでしょうか,むかつく,かわいい,やばい,といった単語でほとんどの場合を表現しているようです。上っ調子に聞こえて,あまり印象はよくありません。言葉に深みがないのです。心の内面に届く言葉を覚えて,その場に相応しい言葉を選んで,軽口や洒落のない,真面目な言葉を交わすようにすれば,心豊かな人間関係を持つようになっていくでしょう。抽象的表現はもう一人の子どもの精神的な糧になります。芯の強い子どもに育てるために,真善美につながる言葉を与えてください。
人が動物と違うのは,言葉を持っていることです。生きていく上で必要なコミュニケーションは,動物も鳴き声や叫びを通して可能にしています。単語による放言は,叫び段階のコミュニケーションであり,とても人間関係を結ぶコミュニケーションの用を果たすことはできません。即物的ではなく抽象的な表現を駆使することが,人としてなすべきコミュニケーションです。どのような品質の言葉を駆使できるか,それが生き方の品質と関わっていることを大人の経験として伝えてやりましょう。
★落書き★
チョコレートの原形は,メキシコのアズテック族によって作られた嗜好品で,苦い水の意味でチョコラトルと呼ばれるものです。カカオ豆を砕いて煮た汁を冷やし,各種の香辛料で味付けしたものでした。大航海時代にスペイン人が疲労回復に効くと飲みましたが,苦さが馴染まなくて,砂糖を入れて飲みやすくしました。やがて,固形化されて,英語圏に伝わってから「チョコレート」と呼ばれるようになりました。
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