*****《ある町の社会教育委員のメモ》*****

【ボランティアの交流?】

 社会教育の分野におけるボランティア活動を福祉関係のボランティア活動とどのように結びつけるかという課題を抱えています。この問題は,教育分野の幼稚園と福祉分野の保育園における「幼保一元化」の問題に重なります。所管が違う施設はその理念を異にするために予算や機構などに食い違いがあり,一元化は簡単ではありません。
 ボランティア活動についても,その組織に対する行政からの補助が福祉と教育分野で異なり,同列に扱うことができません。さらには,行政上総務分野所管の地域の安全に関わるボランティア活動も現れてきました。それらのボランティア活動を一括りにすることのメリットとデメリットを考える時期にきていると思われます。なによりも,ボランティアは住民であり,その活動は異なるとはいえ理念は同じであり,行政上の分野によって異なった扱いを受けるべきではないはずです。
 地域福祉関係の事業として,わが町にもボランティアセンターが設立されました。その活動の範囲を巡って,いろんな立場からの思惑が錯綜しています。基本的にはボランティア情報の一元化という機能が期待されているのですが,現状では福祉関係に限定されており,社会教育分野のボランティアは入っておりません。町におけるすべてのボランティアに関する情報が一元化されることが公的には表明されてはいますが,そこまでの推進力が欠けているようです。おそらく一元化に対する必然性が共通理解されていないためでしょう。

 ところで,ボランティアの分野ごとの違いを考えておく必要があります。福祉ボランティア活動は,困っているところや足りないところを手当てする現場的な要素が強いと考えられます。一方で,生涯学習ボランティア活動は,新しいモノやコトを創造するクリエイティブな要素があります。その意味で,河合隼雄文化庁長官は文化ボランティアという呼称を提唱されています。
 さらには,福祉や学習に関わる施設で活動しているボランティア以外に,身近な地域で活動しているボランティアも現れてきました。そのようなボランティアと交流をすることによって,双方がエンパワーしていけるという指摘もあります。
 ボランティアが個別に活動している状況では,閉鎖性が生じてくるというおそれもあります。分野の異なるボランティアがお互いに交流できる環境を整えることで,ボランティア活動の広がりや深まりが期待できます。そのためには,横断的な企画が可能となる新たな組織・機構を設けることが必要になります。一元化といった統合を想定した大がかりなものではなく,お互いに影響し合える接近の機会を持つことであれば,何とかなると思われます。

 町民による自立を促進するためにも,自発的な活動を広めていくためにも,考えておくべき課題があります。ボランティアのコーディネートやマネージメントの確立,行政とのパートナーシップの柔軟化,ボランティアの自己管理の徹底,ネットワーキングによる活動の効果的な連携,ボランティアの有償・無償の共通理解などが指摘されています。先ずはそれぞれのボランティア組織の指導者が同じ課題を考える機会を設けることから始めていくべきです。誰が猫に鈴をつけるか,根回しも必要になるでしょう。考えてみます。

(2007年05月06日)