[重言のいろいろ]    問題別入り口

 「3.言い方に関する問題」のうち、「重言(じゅうげん。じゅうごん)」に属するものをまとめて掲げた。重言は「重ね言葉」とも言い、「馬から落馬する」「日本に来日する」などのように、意味の同一な語句をむだに繰り返す言い方を指す。「かねてから(より)」「二度と再び」「びっくり仰天(ぎょうてん)」「昼日中(ひるひなか)」「むやみやたらに」などは重言とは言わない。また、「歌を歌う」「舞を舞う」などもこれ以外の言いようがなく、重言とは言わない。なお、重言に似た語に「畳語(じょうご)」がある。これは、「人々」「泣き泣き」「知らず知らず」などのように、同語を重ねてつくった複合語をいう。

 重言は一般に避けねばならない言い方とされるが、意識的に用いられる場合もある。「サイエンスの科学」「ケミストリーの化学」、「エンジンの機関」「ボイラーの汽缶」などがそれで、話し言葉ではよく使われる。一方、重言と気づかずに使っているものもある。「射程距離(しゃていきょり)に入る」「被害をこうむる」などは重言であるが、世間でかなり広く使われており、国語辞典の中にもこれを用例として掲げるものがある。

 ここでは、そうした重言をつとめて多く採録した。しかし、(正)(△)(誤)等のしるしは省略し、⇒の後に、重言を避けた言い方を示すだけにした。重言については、これは明らかにおかしいというものも多いが、使われる場によって(△)(誤)などのしるしが簡単には付けられない場合も少なくないからである。一般的には、話し言葉としては気にならないが、書き言葉としては抵抗があるといった傾向が見られる。 

あ行

か行

さ行

た行

な・は行

ま・や・ら・わ行

 

<あ行>

(あ)

 後(あと)で後悔(こうかい)する。

(例)怠けていると後で後悔することになるぞ。⇒…後で悔(く)やむことになるぞ。怠けていると後悔する…。

 あらかじめ予定する。

(例)それはあらかじめ予定されていたことのようだった。⇒それはあらかじめ決められていたことのようだった。それは予定されていたことのようだった。

(い)

 言いなりどおり。

(例)上司の言いなりどおりに行動する。⇒上司の言いなりに…。上司の言うとおりに…。

 石のつぶて。

(例)石のつぶてが頭に当たる。⇒つぶてが頭に当たる。(「つぶて」は、「投げつけられた小石」の意。)

 いちばん最後。

(例)いちばん最後に演技した選手が最高点をとった。⇒いちばん後(あと)に演技した…。最後に演技した…。

 いちばん最初。

(例)今日、いちばん最初に手掛けなければならない仕事はこれだ。⇒今日、いちばんに…。今日、最初に…。

 いちばんベスト。

(例)彼のいちばんベストの記録は100メートル11秒だ。⇒彼のいちばんよい記録は…。彼のベスト(の)記録は…。

 一切(いっさい)(または、すべて)一任(いちにん)する。

(例)この仕事は、君に一切(または、すべて一任したい。⇒…君に一切(または、すべて)任せたい。…君に一任したい。(「一任」の「一」は「すべて」の意。)

 今、現在。

(例)今、現在、電車はストップしている。⇒今、電車は…。現在、電車は…。

 いまだに未完成。

(例)展覧会に出す作品はいまだに未完成だ。⇒…作品はいまだに完成していない。…作品は未完成だ。(「未完成」は、漢文では「未(いま)だ完成せず」と読む。)

 いまだに未納(みのう)

(例)授業料がいまだに未納だ。⇒授業料がいまだに納められていない。授業料が未納だ。

 今の現状。

(例)今の現状から判断して、経営の立て直しには二、三年は要する。⇒今の状態(状況)から判断して…。現状から判断して…。

 色が変色する。

(例)日に当たって、カーテンの色が変色する。⇒…カーテンの色が変わる(あせる。さめる)。…カーテンが変色する。

 違和感(いわかん)を感じる。

(例)ここに越してきて一年になるが、いまだに周囲との違和感を感じる。⇒…いまだに周囲との違和感がある。…いまだに周囲との違和を感じる。(「違和感を覚える」ならおかしくない。)

(う)

 後(うし)ろから羽交(はが)い締(じ)めにする。

(例)警官は男を後ろから羽交い締めにして取り押さえた。⇒警官は男を羽交い締めにして…。(「羽交い締め」とは、相手の後ろから両手をわきの下に入れて首の後ろのあたりで組み合わせ、しめ上げて動けないようにすること。)

 後(うし)ろへバックする。

(例)止まっていた車が突然後ろへバックした。⇒…車が突然バックした。…車が突然後ろへ動いた(下がった)。

(え)

 沿岸沿(えんがんぞ)い。

(例)海水浴場に着くと、沿岸沿いにさまざまな店屋が軒(のき)を並べていた。⇒…岸沿いに…。…沿岸に…。

 炎天下(えんてんか)のもと。

(例)炎天下のもとでの作業で汗(あせ)だくになる。⇒炎天下の作業で…。炎天の下(もと)での作業で…。

(お)

 追うごとに。

(例)日を追うごとに経営状態が悪化する。⇒日を追って…。日ごとに…。

 お歳暮(せいぼ)の贈(おく)り物。

(例)取引先からお歳暮の贈り物が届いた。⇒取引先からお歳暮が届いた。取引先から暮れ(年末)の贈り物が届いた。

 思いがけないハプニング。

(例)行き先で、思いがけないハプニングが起こった。⇒…思いがけない出来事が起こった。行き先で、ハプニングが起こった。

 およそ千数百円。

(例)これは、およそ千数百円の品物だ。⇒これは、千数百円の品物だ。(「およそ」と「数」がダブる。)

 およそ二十分ほど。

(例)およそ二十分ほどして、男は姿を現した。⇒およそ二十分後に…。(「およそ」と「ほど」がダブる。)