The Butterfly Ball And The Grasshopper's Feast
(Purple Records/TPSA 7514)

A1.Dawn
A2.Get Ready
A3.Saffron Dormouse And Lizzy Bee
A4.Harlequin Hare
A5.Old Blind Mole
A6.Magician Moth
A7.No Solution
A8.Behind The Smile
A9.Fly Away
A10.Aranea
A11.Sitting In A Dream
B1.Waiting
B2.Sir Maximus Mouse
B3.Dreams Of Sir Bedivere
B4.Together Again
B5.Watch Out For The Bat
B6.The Feast
B7.Love Is All
B8.Homeward

ロジャー・グローヴァーがプロデュースしたロック・オぺラのコンセプトアルバム。本作の背景は19世紀初頭まで遡る。昆虫や小動物のパーティを題材としたウィリアム・ロスコの詩集「The Butterfly Ball And The Grasshopper's Feast」が1806年11月に出版される。これにインスパイアされたジョナサン・ケイプ社の編集者トム・マシュラーが、詩集に基づいたアラン・アルドリッジによる28枚のイラストとウイリアム・プロマーにより改作された詩からなる児童向け絵本を1973年に出版した。この絵本は好評を博し20万部も売れたそうだ。 これに目を付けた映画会社のブリティッシュ・ライオン・カンパニーが映像化の権利を取得し、TV用の短編アニメシリーズや長編アニメーション映画等が検討された。これらの映像作品用の音楽制作の企画がDeep Purpleのマネージャだったトニー・エドワーズに持ち込まれた(その前にPink Floydに依頼したが断られたという説もある)。トニーはまずJon Lordに話を持ち掛けたが、Deep Purpleで多忙だったため、Deep Purpleを脱退しPurple RecordのA&Rとしてプロデュースの仕事で名声を得はじめていたロジャー・グローヴァーに声がかかることとなった。 グローヴァーはこのオファーを快諾し、早速完全なサウンドトラックを書き上げ、Deep Purple等の人脈を駆使してDavid Coverdale、Glenn Hughesを始めとして、Ronnie James Dio、Eddie Hardin等、豪華なメンバーを集めてレコーディングを行った。 アルバムとシングル"Love Is All"は1974年12月に発売されたが、Lawtonが歌った"Little Chalk Blue"は1975年にロイヤル・アルバート・ホールで開催されたコンサートのプロモーション用の新曲で1975年にシングルとして発売されたため、当初のLPには収録されていない。ロジャー・グローヴァーは本来は"Little Chalk Blue"もRonnie James Dioに歌って欲しかったのではと思われるが、DioがRainbowで忙しかったため声質の似たLawtonに声がかかったのではないかと思う。
アルバムとシングル"Love Is All"のプロモーション用に"Love Is All"の短編アニメーションが公開されたが、これがヨーロッパ各国で好評を呼び、シングルはオランダ、ベルギー、フランスで1位を獲得した。アルバムの売り上げも好調だったとのことだ。

The Butterfly Ball And Wizard's Convention
Roger Glover And Guests / Eddie Hardin(VSOP LP 139)

The Butterfly Ball
Side One
1.Dawn
2.Get Ready
3.Saffron Dormouse And Lizzy Bee
4.Harlequin Hare
5.Old Blind Mole
6.Magician Moth
7.No Solution
8.Behind The Smile
9.Fly Away
10.Aranea
11.Sitting In A Dream

Side Two
12.Waiting
13.Sir Maximus Mouse
14.Dreams Of Sir Bedivere
15.Together Again
16.Watch Out For The Bat
17.Little Chalk Blue
18.The Feast
19.Love Is All
20.Homeward

Wizard's Convention
Side One
1.The Craig Song
2.When The Sun Stops Shining
3.Loose Ends
4.Money To Burn
5.Whose Counting On Me
6.Make It Soon

Side Two
7.Until Tomorrow Part I,II,III & IV
8.Light Of My Life
9.She's A Woman
10.Swanks & Swells Part I & II

"The Butterfly Ball"とEddie Hardinの"Wizard's Convention"をカップリングしたLP2枚組の作品。1989年に発売された。同時にCDとしてもリリースされた(詳細は下記参照)。 Lawtonが歌った"Little Chalk Blue"は本作のLPとCD以降のリリースで収録されるようになった。"The Butterfly Ball"単体のリリースとしては、1995年のCDリリース(REP 4567-WY)に初めて収録された。1975年のシングル発売から実に20年もの間、何度かLPやCDが再発されているが、頑として収録しなかったのはどんな事情があったのだろうか?。(逆に、本作に収録された経緯の方が興味深いと言うべきか?。)
なお、アメリカのラジオ番組でのロジャー・グローヴァーのインタビューを収録した7インチEPがプロモ用に同梱されたリリースもあったようだ。後のCDでインタビューや、ラジオ番組全体を収録しているリリースもある。


The Butterfly Ball And Wizard's Convention
CONNOISSEUR COLLECTION(VSOP CD 139)

上記の2LP盤のCD版、と思ったら、CD1枚に収める為か"Wizard's Convention"のトラック1,2,5,6の4曲をカットした全26曲を収録している。結果として、下記の"The Best Of Rare Collection/Deep Purple"の最後に"Swanks & Swells Part I & II"を追加した内容になっている。2LPをCD化するにあたって1CDに収める為に曲をカットするやり方は何故か当時よく見られた手法だったが、カットされた曲にDeep Purple関係のメンバーが参加していないことから、本作がDeep Purpleの作品の一環として企画された裏事情が透けて見える。
なお、ロジャー・グローヴァーのインタビューを収録したミニCDが限定版として添付されていた。

The Butterfly Ball And Wizard's Convention
DEEP PURPLE(TECP 40811〜2)

1991年にテイチクから発売された"The Butterfly Ball"とEddie Hardinの"Wizard's Convention"をカップリングしたCD2枚組の国内盤。CD1に"The Butterfly Ball"の本編20曲とロジャー・グローヴァーのインタビュー(11:27)、CD2に"Wizard's Convention"の全10曲が収録されている。併せて2冊のブックレットが同梱されており、一方がカップリング盤オリジナルLPジャケットのライナーノーツの英文と和訳および"The Butterfly Ball"関連作品のディスコグラフィ(日本盤も含む)(24ページ)、他方が"The Butterfly Ball"の英詩とロジャー・グローヴァーのインタビューの対訳(20ページ)となっているが、"Wizard's Convention"の英詩が記載されていないのは不自然な気がする。
CD2枚組で"Wizard's Convention"のフルレンス版をフィーチャーしたリリースは日本のみの発売のようだ。 また、インタビューは上記の1枚物CDに添付されたミニCDと同じ長さなので、同一内容と思われる。

The Butterfly Ball And The Grasshopper's Feast
(REPERTOIRE/REP 4567-WY)

1.Dawn
2.Get Ready(Glenn Hughes)
3.Saffron Dormouse And Lizzy Bee(Barry St.John,Helen Chappelle)
4.Harlequin Hare(Neil Lancaster)
5.Old Blind Mole(John Goodison)
6.Magician Moth
7.No Solution(Mickey Lee Soule)
8.Behind The Smile(David Coverdale)
9.Fly Away(Liza Strike)
10.Aranea(Judi Kuhl)
11.Sitting In A Dream(Ronnie James Dio)
12.Waiting(Jimmy Helms)
13.Sir Maximus Mouse(Eddie Hardin)
14.Dreams Of Sir Bedivere(John Bell,Martyn Ford)
15.Together Again(Tony Ashton)
16.Watch Out For The Bat(John Gustafson)
17.Little Chalk Blue(John Lawton)
18.The Feast
19.Love Is All(Ronnie James Dio)
20.Homeward(Ronnie James Dio)

Additional Tracks (Different Mixes)
21.Love Is All. Demo Version
22.Dawn
23.Magician Moth
24.Harlequin Hare
25.Magician Moth
26.No Solution
27.Waiting
28.Fly Away
29.Aranea

1995年に発売されたCD。Digipak仕様で、ボーナストラックとしてデモ・バージョンや別ミックス等、9曲を収録している。

ザ・バタフライ・ボール・ライヴ 1975
(COBY-91291)

1.Opening
2.Dawn
3.Get Ready(Glenn Hughes)
4.Saffron Dormouse & Lizzy Bee(Barry St.John,Helen Chappelle)
5.Together Again(Tony Ashton)
6.Old Blind Moile(Earl Jordan)
7.Magician Moth
8.Watch Out For The Bat(John Gustafson)
9.Aranea(Judi Kuhl)
10.Sir Maximus Mouse(Eddie Hardin)
11.Behind The Smile(David Coverdale)
12.Little Chalk Blue(John Lawton)
13.Waiting(?)
14.Sitting In A Dream(Ian Gillan)
15.No Solution(Mickey Lee Soule)
16.Love Is All(John Lawton,David Coverdale,etc)
17.Homeward(Twiggy)
18.Love Is All (Encore)
19.Ending

"The Butterfly Ball And The Grasshopper's Feast"をライヴで再現するコンサートが1975年10月16日にロイヤル・アルバート・ホールで開催された。コンサートにはアルバム参加メンバーに加えて、Ronnie James Dioの代役としてIan Gillan、さらにJon Lordまでが参加するという豪華な顔ぶれが揃った。 本作はそのコンサートの模様を収録したDVDであり、米盤は2006年、国内盤は2007年に発売された(VHS/Betamaxビデオが1985年に発売されたという情報もある)。内容はと言えば、映像としてはストーリーに沿ったアニメーション+着ぐるみの実写シーンとコンサートの実況が半々程度で、もっとコンサートに集中して欲しかった。(試写会で初めて見たロジャー・グローヴァーも落胆したそうだ。) Lawtonは持ち歌の"Little Chalk Blue"のみならず、Rainbowで多忙のため出演できなかったRonnie James Dioの代わりに"Live Is All"でも中心となって歌っており、大活躍している。

Roger Glover and Guests
The Butterfly Ball Show
(Elements of Crime/Elements-017)

ライブの音声を収録したCD。アンコールの"Love Is All"をカットした16曲が収録されている。CD本体に"NOT FOR SALE","LICENSED BROADCAST USE ONLY"と書いてあることから、ブートレッグの類と思われる。まさかオーディエンス録音ではないと思うが、音質は良くない。(DVDの音声を収録すればもっと良いはずだが。)ラストの"Homeward"に続く歓声がフェードアウトせずにブチッと切れる雑な編集もいただけない。

The Best Of Rare Collection/Deep Purple
(TECX-20921)

1.Dawn
2.Get Ready
3.Saffron Dormouse & Lizzy Bee
5.Old Blind Mole
6.Magician Moth
7.No Solution
8.Behind The Smile
9.Fly Away
10.Aranea
11.Sitting In A Dream
12.Waiting
13.Sir Maximus Mouse
14.Dreams Of Sir Bedivere
15.Together Again
16.Watch Out For The Bat
17.Little Chalk Blue
18.The Feast
19.Love Is All
20.Homeward
21.Loose Ends
22.Money To Burn
23.Until Tomorrow I, II, III & IV
24.Light Of My Life
25.She's A Woman

バタフライ・ボールの20曲に、Eddie Hardinが中心となって作成された"Wizard's Convention"のうちDeep Purpleのメンバーが参加した5曲を追加したコンピレーションCD。1995年にテイチクから国内盤として発売された。 "Wizard's Convention"の曲について言えば、"22.Money To Burn"はDavid Coverdaleがヴォーカル、"23.Until Tomorrow III"と"24.Light Of My Life"はGlenn Hughesがヴォーカルをとっているが、 "21.Loose Ends"はロジャー・グローヴァーがベースを、"25.She's A Woman"はJon Lordがピアノを弾いている程度。 バタフライ・ボールも含めてこのようなコンピレーションをDeep Purpleの"The Best Of Rare Collection"として発売するのはいかがなものだろうか。もっとも、同じ内容のCDが海外で発売された形跡もないし、国内盤の帯には「バタフライ・ボールとウイザーズ・コンベンションのベストテイク」と明記されているので、内容を誤解して買う人もいないとは思うのだが。

The Butterfly Ball And Wizard's Convention
DEEP PURPLE(TECW 30211〜2)

1996年にテイチクから発売された"The Butterfly Ball"とEddie Hardinの"Wizard's Convention"をカップリングしたCD2枚組の国内盤。1991年のテイチク盤と比較すると、CD1のロジャー・グローヴァーのインタビューがカットされ、"The Butterfly Ball"のボーナス・トラック9曲を追加収録している。1995年のREPERTOIRE盤に追随した形だ。ブックレットは一冊で、カップリング盤オリジナルLPジャケットのライナーノーツの和訳、および"The Butterfly Ball"の英詩が記載されている。 CDケースの背表紙とブックレットの内側には「紫の系譜」というタイトルが書かれているが、帯にはその記述がない。元々"Wizard's Convention"とのカップリング盤はDeep Purpleのメンバーによる作品との位置付けに振った企画だと思われるが、それをどこまで表面に押し出すか躊躇した形跡がある。帯に「紫の系譜」と謳わなかったあたりにその一端が垣間見られる。("The Best Of Rare Collection/Deep Purple"のように開き直って「Deep Purpleの作品だ」と言い切っているリリースもあるが。)

ROGER GLOVER and Guests
The Butterfly Ball
25th Anniversary Collectors Edition(Connoisseur EVSOP CD 265)

1999年に発売された25週年記念のHDCD(High Definition Compatible Digital)仕様のデジタル・リマスター版CD。本編の20曲の音源に加えて"Love Is All"のビデオを収録したエンハンスCDとなっている。私は本作を発売とほぼ同時に入手したのだが、当時使用していたPCで"Love Is All"のビデオを再生できず悔しい思いをした。後に趣味でPC自作を始めてその理由がわかった。私のPCがNECのPC-9800シリーズだったのに対して、CDのビデオがIBM-PC/AT互換機(いわゆるDOS/V機)用だったのだ。同じWindows95を搭載していても、PCアーキテクチャの違いによって機能の差が起こるという、今となっては当たり前のことが分かった懐かしい思い出である。

The Butterfly Ball
ROGER GLOVER and Guests(Vap/VPCK-85334)

2003年にVapから発売されたエンハンスCDの国内盤。シングルの紙ジャケット仕様。解説を日本のハード/メタル出版界の重鎮のS氏が執筆しているのだが、Lawtonの説明の部分でユーライア・ヒープの英語表記を"URIAH HEAP"と誤記しており、「その程度の校正もできなかったのか?」と凹んでしまう。

The Butterfly Ball
ROGER GLOVER and Guests(Vap/VPCK-85334)

2008年にビクターから発売されたエンハンスCDの国内K2HD盤。オリジナルLPのジャケットを再現した見開きの紙ジャケット仕様。
K2HDとはビクターが開発したCD音源の高品質化技術のことで、話が長くなってしまうのでCDとアナログ・レコードの関係も含めてこのページの最後に書いたので、興味のある方は是非読んでいただきたい。
なお、解説はVap盤のものを流用しているが、ユーライア・ヒープの"URIAH HEAP"との誤記は相変わらずで、いい加減にせんかい!!と思ってしまう。

The Butterfly Ball
And The Grasshopper's Feast
Roger Glover and Friends(MAR 182913-5)

2018年にマーキー・インコーポレイティドから発売されたCD3枚組のボックスセット国内盤。同年にCherry Redから発売された輸入盤(PURPLEBOX016)に日本語解説と帯を付けて発売したもの。 内容が非常に豪華で、本編20曲を収録したCD1、デモ、別ミックス、ロジャー・グローヴァーのインタビューを含むラジオ放送を収録したCD2、"Love Is All"のシングルEPの3曲を収録したCD3の3枚がそれぞれカードボードの紙ジャケに入れられており、さらに20ページのカラフルなブックレット、オリジナルLPの見開ジャケットの内側をほぼ実寸大に再現したポスター。以上が頑丈なボックス・ケースに収納されている。
私が入手したのはfactory Sealedの新品だったのだが、日本語解説書の封入の仕方が雑で、ボックス・ケースに噛んだ形になって斜めに折り目が入っていた。日本で行われた作業だと思うが、まともな作業員が真面目にやった仕事とは思えない。せっかくの豪華な仕様なのに、こんな些細なことでミソが付くのは非常に残念だ。

The Butterfly Ball
Roger Glover And Friends(BELLE 213441-2)

2021年に発売された紙ジャケ仕様の国内盤2枚組CD。CD1に本編20曲をSHM-CD化。CD2にボーナス・トラック9曲と、ロジャー・グローヴァーのインタビューを含むアメリカのラジオ番組、そしてシングル"Love Is All"のEPとして発売された3曲を収録している。

[K2HD 〜CDとアナログ・レコードについての考察〜]
"K2HD"とはビクターが開発したCD音源の高品質化技術のことで、CDの16bit/44.1kHzのフォーマットの音声信号を192kHz/24bitにアップ・コンバートすることができる・・と言っても何のことかわからないと思うが、要するに20kHz以下に限定されているCDの音声信号から20kHzを超える高周波帯域の倍音成分を推定して追加することで、原音に近い音を再現する技術らしい。あくまでも「推定」なので、原音そのものの再現はできないと思われるが、ビクターの音響技術者が経験と勘(?)でよりアナログ・マスターの原音に近くなるようにパラメータを工夫しているとのことだ。 世の中には「ニセレゾ」と揶揄する向きもあるらしい。・・と、ここまで書いたが、私自身理解できていない。結局CDの16bit/44.1kHzのフォーマットに収めている訳だし、通常のCDプレーヤーで再生するのだから何がどう良くなるのか?。本作は恐らくアナログのマルチトラック・テープが残っているのだろうから、初めからそれを取り寄せて使えば良いわけだし、わざわざ高周波帯域を推定して再現するなど訳が分からない。
このほかにもCDの高品質化技術としては、SACD、SHM-CD、BSCD、HQCD、HDCDがあり、概要は以下の通りである。
・SACD(Super Audio CD)
通常の音楽CD(CD-DA)とは全く異なる規格の高品質化技術であり、詳細は省略するが再生には専用の再生機器が必要になる。SACDには2層分の記録領域があり、このうち1層を通常のCD-DAとして通常のCDプレーヤーで再生可能とする場合がほとんどである(SACD/CDハイブリッド仕様)。
・SHM-CD(Super High Material CD)
CDの素材として液晶パネル用ポリカーボネイト樹脂を採用することで、素材の透明性を高めて音質を改善する技術。
・BSCD(Blu-spec CD)
CDの素材として高分子ポリカーボネイト素材を採用するとともに、Blu-rayディスクのカッティングに使用される微細加工技術によりCDにデータを記録する窪み(pit)を高精度化することで音質を改善する技術。
・HQCD(Hi Quality CD)
CDの素材として液晶パネル用ポリカーボネイト樹脂を採用し、特殊合金を反射膜に採用することで音質を改善する技術。
・HDCD(High Definition Compatible Digital)
20/24ビットの量子化ビット数で記録された高品質の音源を、音楽用CDで記録可能な16ビットに変換する際、隠しコードを埋め込むことで、より高品質の復調を行う技術。通常のCDとしての再生も可能だが、HDCDとしての再生には専用のプレーヤーが必要になる。

以上、ありていに言ってしまえば、SACDとHDCD以外はCDのプアな規格内で何とか読み取りエラーを低減することを狙った技術であり、SACD/HDCDに至っては通常のCDとして再生する場合は何の効果もない代物だということになる。
話のついでにCDの出始めの頃を考えると、やけに高音を強調したキンキンした音だという評判を聞いた覚えがある。これは実は、20kHz以上の高周波帯域がカットされたことで耳の良い音響技術者には高音不足と感じられたために、CDの帯域内で殊更高音を強調したマスタリングが行なわれたためではないだろうか。さらに、デジタルというとサンプリングされたギザギザの波形のイメージがあり、「固い」という印象に追い打ちを掛けたのでは?。これが後に「アナログ・レコードは温かみのある丸い音」という評価が定着した原因ではないかと思う。
次に音楽CDの「デジタル神話」について。私も当初はデジタルなのだからどんな装置で再生しても同じ音が出る(少なくともCDプレーヤーからは同じ音声信号が出力される)と思っていた。しかし、そもそも音楽CDは長時間録音を可能とするために特殊なデータ・コーディングが行われているため再生時に読み取りエラーが発生しやすく、それを前提として再生時にCDプレーヤーで補正をかける仕掛けになっている。 そのため、デジタルと言っても再生環境によって出力される音が異なってくるのだ。読み取りエラーを前提としている以上、個々のCDプレーヤーによる補正処理の特性によって音が変わってくる。さらにCDの材質によってエラー発生率が異なるのでそれによる音の違いも出てくる。一時期、それを証明するために従来の材料と新材料(高品質ポリカーボネイト等)で同じ楽曲を収録して聞き比べるための2枚組CDが安価に売られていたことがある。
それではPC用のCD-ROMはどうなのか?。コンピュータ・プログラムなどは1ビットでも誤りがあればまともに動作しないのに問題にならないのか?。これはデータの冗長化というコーディング技術で元のデータを完全に再現することで解決されているため、問題にならないのだ。(例えば、8ビット・データに対する、1ビット誤りの訂正、2ビット誤りの検出を行うCRC等。)従って、コンピュータ用のCD-ROMは音楽CDに比べて格納可能なデータ量が少ない。
余談が長くなって恐縮だが、私はCD称賛派だ。何と言ってもアナログ・レコードはスクラッチ・ノイズとの戦いだった。CDによってそれから解放された喜びは言い表せない程だ。確かにアナログ・レコードは周波数帯域もダイナミック・レンジも広く、良い音を再生できる可能性がある。しかし、そのためにはレコード・プレーヤーの防振機能やターン・テーブルの回転精度、レコード針からカートリッジ、アンプ、スピーカーに至る再生装置にそれなりのクオリティが要求され、さらにそれを聴く人間の耳の良さも問われる。私はオーディオ・マニアではないので、そのいずれにも自信がない。だから「CD万歳」なのだ。 近年アナログ・レコードの再評価が進み、米国ではCDの売り上げを逆転したという話を聞く。日本でも大手レコード店の売り場面積におけるアナログ・レコードの割合がCDと同等か、より広くなっており、新譜のアナログ・レコードでの発売も増えている。そして、中には問題のスクラッチ・ノイズもアナログ・レコードの良さの1つだという意見もあって、もはや理解不能な状況だ。いったいこの先、どうなっていくのだろうか。
ところで、30年程前の話だったと思うが、アナログ・レコードをレコード針でなくレーザー光線で読み取るというプレーヤーが存在した。それならば確かにスクラッチ・ノイズの元になる塵の影響を電子的に取り除くことができそうな気はするが、当時で100万円以上もするとんでもない代物だったと記憶している。今やハイレゾの配信で高音質の音楽が楽しめる時代になっているが、ネット万能の現在となっては手元に音源を保持していることにどれだけの意味があるのかも含めて、今後の音楽業界の行方を覚めた目で見守っていく必要があると思うこの頃である。

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